◇fiction◇
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生きるのって、駅のホームで通過電車を待ってるようなもんだよね。
そう言ったのが誰だったのか思い出せない。
ポンという音とともにシートベルトの着用を促すサインが消えた。
隣では◆が、気持ちよさそうに寝ている。
彼女の足下に落ちてしまったハワイの観光ガイドを拾って
前のネットのなかにいれた。
前方のモニターでは映画の上映が終わり、
飛行機の現在地を示す地図の画面に切り替わっている。
まもなく着くようだ。
意外と早かったな。
ちいさな声でそうつぶやくと、
左肩にもたれかかっている◆が起きないように、気をつけながら、
トイレに行くために立ちあがった。
どこかに通り過ぎていく、ただそれを待つだけ。
charaの詩にそんなのがあったっけ。 |
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(May 2004)
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