「震えてる…。怖い…?」
「怖く、ない。けど…」
「何?」
「…わかんない。でも、震えが、止まらないんだ」
クス、と少し微笑いながら、ルックは部屋の明かりを落とした。
闇に包まれた部屋。
唯一明かりといえば、窓の外の星が、微かに放つ光りだけ。
その闇のなかで確認できるものは、お互いの息づかいと、熱を帯びた体...
僕は闇のなかで、ゆっくりと目を閉じた。
ずっと君を見てたのに、気付かなくて、ごめんね?
いつも、どきどきしてるのは、僕だけだと思ってた。
いつも、求めているのも僕だけだと思ってたんだ.....
いつも傍に居てくれたけれど、気が付かなかった。
わかりにくいよ、ルックの『すき』は。
「だから、傍に居たじゃない...?」
いつもと同じ、少し呆れたような顔で....
だけど、いつもと違う、照れたような目で....
優しく僕を抱きしめてくれたから。
ずっと、待ってたんだよ......?
僕も......
ルックの腕がゆっくりと僕の肩から背中の方へ降りていった。
そっと、耳元に唇が触れる。
「んぅっ…」
それだけで、体中に電気が走ったみたいにしびれて、立っていられない。
優しく、熱い吐息が耳元にかかるたび、ビクビクとからだが反応して、さっきとは違う震えが全身を伝わる。
唇が、耳から首筋へと移っていくと、僕はもう、ガクガクと震えるからだを支えきれなくなっていた。
「…っん!ルッ…クっ...!」
必死でルックにしがみついて、体を支える。
ルックは、唇を首筋から離すと、僕の体をそっとベッドに沈めた。
キシ、と軽くベッドの軋む音がやけにはっきりと聞こえる。
されるがまま、ベッドに横たわる。
ルックはゆっくりと僕の体に跨り、またそっと、唇で僕の首筋をなぞっていく。
「ンッ...あっ!」
首筋が熱い。体中の血が、ルックの触れた所に集まっていくような感覚に襲われる。
これから起こることへの興味と、期待と、少しの不安で、僕の心臓はもの凄い速さで脈打っていた。
首筋に、頬に、唇に。
優しく、ゆっくりと...
軽く口付けられる。
その度に、僕の体は敏感に反応して我慢ができずに声をあげてしまう。
ルックの手がそっと、僕の黄色いスカーフをはずして上衣のボタンを外してゆく。
「ンぁっ...!」
冷たい指が、するすると胸元をなぞって、敏感になっている体は一層強い反応をしてしまう。
固くなっている胸の突起のまわりを、くるくると焦らすようになぞりながら、それでもルックは、一番敏感になっている部分は触れずに、僕の反応を愉しんでいるようだった。
「る...く...ぁっ...!」
ルックの指が刺激を与える度に、まだ足りない刺激を求めるようにムズムズとした感覚が、背中にはしる。
「まだ、駄目だよ...もう少し、我慢してて...」
そう言いながらルックは、手を動かす事は止めずに、喘ぎを漏らす僕の唇を塞いだ。
さっきの軽い口付けとは違う、貪るような、激しいキス。
舌が滑り込んでくると、その生温かい感触にまた、新たな刺激を受けて、どうするのかもわからずにただ、絡み付いてくるックの舌に自分の舌を夢中で絡めた。
闇のなか、唾液の絡み合う音が響く。耳に入ってくる淫靡なその音にさえ、熱が上がってゆく。
−−熱い...
今まで、感じた事のなかった感覚。
触れ合っているところから、熱で溶けていってしまうんじゃないかと思う。
何も考えられなくなるくらいに、頭の中はぼんやりとしているのに、体に受ける刺激だけには過剰な程に反応していた。
闇に慣れた目に、ルックの白い肌が映る。
いつのまにか、お互いの服は脱ぎ捨てられていて、柔らかい肌が重なっている。
素肌で抱きしめられて、頬をなでたルックの手がゆっくりと、首に、胸に落ちてゆく。
そして、敏感になっている胸の突起を掌で弄ぶように転がして勃ち上がらせると、舌先で軽く突いた。
「っあっ!...ンあッ!」
待っていた、より強い快楽に、体が小刻みに震える。
そのまま舌で突起を舐めあげられると、ざらざらとした感触に一層、快楽の波が押し寄せてくる。
「...気持ちいい?...まだだよ。もっと...」
「はっ...アァん...」
舌での刺激はそのままに、ルックは、右手を僕の下腹部へと下ろしていった。
すでに勃ち上がっていた僕のものを、軽く握ると、その先端から溢れ出てきていた透明な液体を指ですくい取り、撫でつけた。
「ンあぁっ!」
びりびりと背中に快感が伝う。熱は更に増して、もう限界に近かった。
「大丈夫だよ、もう我慢しなくていい...」
そのまま、ゆっくりと手を上下に二、三度擦りあげられたかと思うと、全ての熱が一箇所に集まったかのような快感を得て僕は一気にそれを吐き出し、果てた。
勢い良く飛び散った熱を、体に受けたまま、ルックは僕自身を口に含むと、残っていたものを搾り取るように吸い付く。
絶頂を迎えて敏感になっていた体は、すぐさま反応して、また勃ちあがる。
「あっ!んぁっ!」
「るっ.くっっ!...あっ!」
夢中で、名前を呼び続けながら、ルックの体に手を伸ばした。
柔らかい髪に指先が触れる。
そのまま、僕を刺激し続けるルックの肩を握り締める。
「ル...くっ...!ん、やぁっ...!」
快感に身を任せながらも、顔が見えないことで不安が微かによぎる。
それに気付いたのか、ルックは僕のものを口から離し、僕の体をそっと抱きしめて、口付けた。
「ずっと...傍に、いて、くれる....?」
口付けを交わしながら、途切れ途切れに聞いてみる。
答えの代わりに、熱いキス。
さっきよりも、もっと激しく舌を絡める。
唾液が音を立てて絡み合い、頬に伝っていく。
もっと、もっと深く溶けあいたい。
なにもかも、全て一つになってしまうくらいに...。
激しいキスを交わしながらも、ルックの手はぼくの体に刺激を与え続けていた。
手は次第に僕の秘部へと近づき、そっと指の腹を秘部に押し当てた。
「ひゃっ!」
「...力、抜いてくれないと、出来ないよ?」
驚いて唇を離した僕に、ルックは優しく言いながら、また口付ける。
初めからわかっていた事なのに、今更ながら、其処に刺激を受けただけで、また体が固くなる。
怖くはない。
僕が、こうなる事を望んだのだから。
指で解すように優しく愛撫されてゆくと、さっきとはまた別の快感が背筋を通ってゆく。
少しづつ、指が深く入ってくるのがわかる。
唾液と、さっきの熱が混ざり合って濡れた秘所は、難なくルックの細い指を飲み込んでしまう。
一本、二本と増え、深く挿しいれられた指が、ゆっくりと動き出して中を刺激しはじめると、少し窮屈に感じていたものが違感覚へとかわっていった。
「あっ!ンはぁっ...!」
「ル...ク、何か、ヘン...、あっ!あぁっ!」
「リン...大丈夫...だから」
「ふ...ンあぁッ!」
くちゅくちゅと、音をたてて指を出し入れするルックに必死でしがみつく。
するっと、指が抜けたかと思うと、足を広げられて腰を浮かされる。
次の瞬間、鈍い痛みと、異物感が体の奥に走った。
「ぃっ!ゃあぁっ!」
「リン...。少しだけ、我慢して...」
「んっ!んぁあっ!」
キシキシと、ベッドの軋む音と、くちゅくちゅと秘部を掻き回される音が部屋に響く。
痛みと、それとはまた別の痺れに、ただ喘ぎだけが漏れる。
汗なのか、涙なのかわからないものが頬に伝っている。
少しずつルックの動きが速くなって、それに併せるように、痛みよりも痺れに似た感覚が勝ってくる。
その痺れに身を任せ、時折与えられる優しいキスに溺れて、何もかもが溶けてゆくように思える。
ルックは右手で僕のものを掴むと、ゆるゆると擦りだした。
「あっっ...!アァんっ!」
「ル、ックっっ!...あぁっ!」
内と外に、同時に与えられた刺激に、これ以上ないほどの快楽を覚えて、僕は何も考えずにルックだけを求めていた。
「もう、あっ!...も、だめ...っ」
「ん..いいよ...一緒に、いこう...っ」
「んぅ、ん!あぁっ...っ!」
さらに激しく腰を揺さぶられ、自身を掻きたてられ、僕達は、同時に絶頂に達して熱を放った。
疲れきって、動けずにいる僕の中から、ルックは自身のものを抜き出すと、汗と、涙と、精液にまみれていた僕をそっと抱き寄せた。
「ルック...?」
「...リン、大丈夫?ちょっと、キツイ体勢みたいだったから。」
「ん...最初は、痛くてびっくりしたけど...//」
ルックの体を抱きしめ返すと、その肩にうっすらと血が滲んでいるのを認めて、ハッとした。最中に僕がつけた傷だった。
「ごめんね!ルック!僕のせいで...っ痛!」
起き上がろうとした瞬間、鈍い痛みが、今まで快楽を貪っていた部分に襲った。
「こういうことで、謝らないでよ...。」
「リンのほうが暫くツライかも知れないけど、僕は謝らないからね。」
拗ねたような、照れたような顔で、呟く。
何故だか...
その時やっと、ひとつになれた事の実感が、すごく湧いてきて...
僕はすごく鈍くて、何でもゆっくりしかできないから、こうなるまでにも随分時間がかかったけど...
ずっと、望んでいた事だったから...
ぎゅうっ、とルックを抱きしめた。
「痛いよ、怪我してるんだから。」
呆れたように言うけど。
ルックも僕と同じように、こうなる事を望んでいてくれてたって、自惚れてもいい、よね....?
だから、もう少しだけ.....抱きしめさせていて。