静まり返った自宅の浴槽で、オレは思いきり
伸びをした。
 やっぱり入浴は深夜に限る。
 ちょっと眠いけど。
 皆が寝ている時に皆のいない空間に篭るのが
現在我が家で一人きりになれる方法だった。
 賑やかなのは楽しい。
 皆といると嬉しい。
 だけど、やっぱり一人になりたい時ぐらいあ
るわけで。
 「家族が増えるのはいいんだけどなぁ」
 先日、家族がまた増えた。
 ザンザス…。
 色々とあったけど、今はもう憎くも何ともな
い。
 こちらは受け入れ準備が完了しているのだけ
れど、彼はまだ馴染んでくれない。 
 彼にはもう居場所がないのだから、その居場
所をお前が作れ。
 父さんは軽く笑いながらそう言って、オレの
肩をポンと叩いた。
 頑張ろうとは思っている。
 家長の父さんが家族にしろと言うのだ。
 それに、オレだってザンザスとちゃんと仲良
くなってみたい。
 きっと、たくさん話せば心を開いてくれる。
 そう信じて、このところしつこくザンザスに
話しかけまくっている。
 全然うまくいかないけど…。
 「誰かの居場所なんか作ったことないから
なぁ…」
 大きく溜息を吐いて、顔半分をお湯の中へと
潜らせる。
 そして、その状態でまた溜息。
 泡がぼこりと水面に浮かび上がった。
 

 ガタリ。
 オレが音を作らなければ無音のはずの空間に
小さく固い音が生まれた。
 視線を音の方へと向ける。


 そこには。
 何故か。
 裸の。
 ザンザスが、いた。


 ぶ。
 驚いた勢いで顔が更に深く浴槽に沈み、お湯
を少し飲んでしまった。
 慌てて顔を出し、浴槽の外へと吐き出そうと
試みる。
 そんなオレをザンザスは面白そうに見下ろし
ていた。


 「楽しいか?」
 「楽しくないよ!」


 ザンザスを睨みつける。
 お前のせいで変な物飲んじゃったんだぞ!?
 仕舞い風呂だったんだぞ!?
 瞳でそう訴えたけれど、多分伝わっていない。


 …って。
 あれ。
 今、ザンザスから話しかけてきた。
 オレが頑張って話しかけても殆ど無視なのに。
 これってもしかして仲良くなるチャンス!?



 言いたかった言葉を全部飲み込んで。
 汚いであろうお湯と一緒に飲み込んで。
 オレはへらりとザンザスに笑いかけた。


 「どうしたの? こんな時間に。急に風呂に
入りたくなった?」
 「お前こそ、何故こんな時間に入浴している」
 「や…オレはその、何となく深夜の風呂が好き
だから…」
 語尾が小さくなる。
 本当の理由は…皆をうざがっているみたいで、
言えない。
 「じゃあオレも何となくだ」
 無表情でそう言うと、ザンザスは浴槽に入り込
んできた。


 ………。
 …………?
 え……一緒に入る気!?



 うちの風呂場はそんなに広くない。
 むちゃくちゃ狭いわけではないけれど特に広く
もない中流家庭の一般的な風呂場。多分。
 というわけで、浴槽だって大きなものじゃない。
 つまり、どういうことかというと。
 ザンザスとオレが一緒に入ると、身動きがとれ
なくなる。
 しかも何故か向かい合わせに座っている。


 「お前が風呂場に行くのを見かけたんで何とな
く入ってみることにした」


 確信犯か!
 最初からオレと入るつもりだったのか!?
 何で!?
 オレとお前で一緒に入っても何一ついいことな
んてないのに!
 もしかして窮屈な入浴が好きとか!?
 イタリアにはそういう習慣があるとか!?
  


 頭の中で色んなものがグルグル回っている。
 そんなオレの首をぐっと掴むと、ザンザスはオ
レの…まだ京子ちゃんにも捧げていないオレの唇
を…きつく、吸った。 



 「ん…んううううう!? んんーーんんん!!」



 ぎゃーーーーーーー!!!!

 声に出してそう叫びたかった。
 でもザンザスが離してくれなくて。
 仕方なくザンザスの顔を両手で拒んだ。
 しかし、かなり力を入れているはずなのにザンザ
スは離れない。
 頬を抓ってみたり叩いてみたりしたけれど無駄
だった。


 これは一体どういうつもりの嫌がらせなんだろう。
 外国ではキスは挨拶だっていうし、挨拶のつもり
なんだろうか。
 こんな挨拶の仕方は滅べばいいと思う。


 諦めて、この苦痛が一刻も早く終わるように祈り
出した頃。
 事態は更に悪化した。
 こう…にゅるっとしたものが口の中に入ってきて。
 ……舌。
 その単語が浮かぶのに数十秒を要した。
 ……………。
 舌入れる挨拶なんてあるかーーー!!
 ちょっと!
 これは洒落にならなくない!?
 頭の中のオレが円を描くようにじたばた走り出す。
 オレがそいつを何とか抑えようと頑張っている隙
にザンザスは事を進めていっていた。
 
 「ん…は…っ…はぁ…っ」
 唇をただ塞がれていた時よりはマシだけれど、やっ
ぱり息苦しい。
 そして気持ち悪い。
 舌を噛み切ってやろうかとも思ったけれど、そん
なことをしたらザンザスと仲良くなろう計画が台無し
だ。
 オレの口内を十分に舐めまくった後、ザンザスは
やっと首と唇を解放してくれた。
 ぜえぜえと肩で息をしながらザンザスを睨みつける。
 どういうつもりだと問いたいのに、声がなかなか出
てこない。
 「美味かったぞ」
 口角を吊り上げるザンザスに顔が一気に熱くなった。
 「ううう…うま……っ!!」
 美味かったってなんだーーー!?
 オレの口は味なんかしない!!
 いや、するかもだけど!!
 美味いとか、そういう味じゃないはずだし!!
 気持ち悪いこと言うなああああああ!!!
 うう…なんか涙出てきた。
 「おい」
 オレの気持ちなんかお構いなしに、ザンザスはオレ
の顎を持ち上げた。
 「何でそんな顔してやがる? お前が望んだことだ
ろうが」
 「な……っ!?」
 「お前の母親に聞いた。お前がオレと仲良くしたい
のだと」
 「へ!?」
 「違うのか?」
 違わないだろう? と自信に満ちた顔で見下ろして
くる。
 …確かに、違わないけど。
 「…分かっていたなら、話しかけた時に応えてくれ
てもいいじゃん…」    
 「会話など無意味だ。そんなものでオレと通じ合え
るとでも思ったか」
 普通はそれでいいはずなんだけど…。
 やっぱり、こいつはよく分からない。
 無理かな…仲良くなるの…。
 あーでも、決めたことだしなあ…。
 うーんうーんうーん…。
 「そんなものはボンゴレに伝わる方法を使えば一瞬
で解決できる」
 「…何だよ…それ…」
 ザンザスが不敵な笑みを浮かべたのが見えたような
気がした、次の瞬間。
 オレは顔を浴槽の縁に押し付けられていた。
 下半身が何だかおかしい。
 浮いている。
 視線を移動させ背後を見遣ると、ザンザスがオレの
足を持ち上げていた。
 プールで泳ぎの練習をしている子がよく誰かに手を
持ってもらって泳いでいる。
 今のオレはそれの足バージョンをされている。
 顔が冷たい。
 浴槽の中は温かいけど、縁は結構冷えていた。
 …ていうか、何してるんだザンザス。
 何されてるの!? オレ!!
 「行くぞ」
 楽しそうな声が降ってきた直後。
 下半身に激痛が走った。
 「いっ!!!! うぁ…は…っ……!!」
 頭が真っ白になった。
 呼吸のリズムがおかしくなる。
 痛みは一瞬では収まらず、…だんだんひどくなって
きているようだった。
 
 
 痛い。すごく痛い。
 何でオレがこんな目に。
 駄目だ。
 殺される。
 もう敵じゃないはずなのに。
 このままじゃ…駄目かも。
 

 何とか思考を正常に戻す。
 まず現状を把握しようと試みる。
 どこが痛いのか。
 …尻。
 ………の、穴。
 ……何でさ。
 ………何か、入ってる?
 …………何、が………?
 そろ〜と背後を確認する。
 ………。
 よくは見えないけど。
 信じたくないけど。
 もしかしたら、かなり低い可能性だけど…、ザン
ザスの…あ…アレが……。
 アレ…。
 え…。
 えええええええ!?
 だ、だってオレ、男だし!!??
 



 「そんなに痛いのか? まだ先の方しか入れて
ないぞ」
 まだって何だーー!?
 これ以上入れるなーーー!!
 抜けーー!!
 今すぐ抜けーーー!!
 「う…うぅ…っ」
 痛みのせいで、想いを言葉に出来ない。
 「恨みがましい目で見るな。ボンゴレに在る以
上、皆通る道だ。お前の父親も通ってきた道だぞ。
これぐらい軽くこなせなくてどうする」
 ボンゴレってそうなの!?
 父さんも!?
 ど、どっち側!?
 母さんを裏切っている感じがするから入れるほ
うは嫌だけど…でも入れられている父さんっての
も……うう……何なんだよ…ボンゴレ…。
 「進むぞ」
 言葉だけ落とすと、ザンザスは淡々と作業を進
めるかのように侵入してきた。
 痛い。
 痛いだけだ。
 こんなので親交が深まるなんて、絶対嘘だ。
 でもボンゴレの一員になるための通過儀礼なの
だとしたら拒むなんて出来ない。
 いや拒めよ、と自分でも思うけど。
 皆やってると言われると、弱い。
 
 

 きつく目を閉じる。
 何か違うことを考えていればすぐに終わるかも
しれない。
 ずんずん中に入っては出ていき、また入ってく
るザンザスを感じながら、オレは明日何をしよう
か考えていた。
 明日は日曜日。何でも出来る。
 むちゃくちゃ楽しいことをしよう。
 今こんな目に遭っているぶん、幸せいっぱいな
日曜日にしてやる。

 
 
 「つまらん」
 暫く同じ動きを繰り返していたザンザスだった
が、飽きたのかそんな言葉を吐き出した。
 じゃあ、やめてくれ。
 「やっぱり獲物は泣き叫んでこそだな」
 獲物!?
 オレ!?
 うんうんと自分の言葉に頷くと、ザンザスはオ
レのアソコを握りこんできた。
 「ちょ!!」
 ちょっと待てーーー!!
 それは洒落にならない!!
 いや、今でも十分洒落になってないけど!!
 そんなところ、何だって男に触られなきゃいけ
ないんだ!!
 「や…やめ…っ」
 やめてくれるわけがなかった。
 なんてったって、ザンザスだ。
 もにもにと軽く揉んでくる。
 ザンザスのくせに力任せに握ってこないのは…
まあよかったけど。
 「う…ぅ…んっ」
 「どうだ?」
 「ど…どうだって…」
 「少しは気持ち良いか?」
 「きっ…気持ち良くなんか……ぁんっ!」
 ザンザスの手の動きが急に速くなった。
 「や……め…っ…んんん…あああっ!!」
 「良い声で鳴くようになったじゃないか」
 「ば…馬鹿…ちょ…待って…あ…っ」
 「待つと思うか?」
 楽しそうな笑い声をあげると、ザンザスはオレの
アソコの頭を親指でぐりりと捏ね回した。
 「う…ああああっ!!」
 屈辱だ。
 何で…何で、こいつにこんな声をあげさせられて
るんだ。
 オレはただ、家族になりたいだけなのに。
 家族…。
 そういえば、こいつは家族がどんなものか知らな
いのかもしれない。
 9代目がいるけど、でも、ファミリーの中では家
族というよりボスって感じだろうし。
 ファミリーは家族だけど…でもちょっと違うし。
 とにかく。
 もしかしたら、これがこいつなりの愛情表現なの
かもしれない。
 そうだ。
 こいつ、言ってたじゃないか。
 オレがこいつと仲良くしたいと思ってるって。
 そして、それを手っ取り早くするのがこれなん
だって。
 正直、意味分からないけど。
 「気持ち良いか? 気持ち良いだろう!?」
 オレが喘ぎ声をあげるたびに、ザンザスの明るい
声が耳に届く。
 「はぁ…んっ…あうあぁ…っ」
 これが愛情表現だというのなら。
 「き…もち…いーよ…」
 小さく頷く。
 これで、家族になれるんだろうか。
 家族っていうか別のものになりそうだけど。
 「…そうか」
 オレの返答に満足そうな笑みを浮かべると、ザン
ザスはオレのあそこを一気に扱きあげた。
 「や…あああああああっ!!!」
 白濁の液体が浴槽に勢い良く注ぎ込まれた。
 お湯に混じっていく様をぼんやりと眺める。
 …イってしまった。
 ザンザスの手で。
 諦めの息を吐こうとした時、ザンザスが動きを再
開した。
 「や、ちょ、ま…まだ!?」
 「何を言っている。オレはまだ満足してない」
 満足って!!
 「や、あ、あ、ああっ!!」
 敏感になった体がザンザスの動きによって熱を
持っていく。
 「やあ…っ…んあ…は…はぁ…」
 止まらないザンザス。
 どんどん速くなるザンザス。
 とても楽しそうなザンザス。
 …何かもう、どうでもよくなって。
 オレはザンザスに体を渡すと、感じるままに声を
あげていた。




 「何もさ、中で出さなくてもいいだろ…」
 「他に何処で出せと?」
 「女じゃないんだし…中で出しても何もならないよ」
 「お前なら産める」
 散々オレを突き回した挙句、中出ししたザンザスに
恨み言を言ってみたが、効果はなかった。
 もしかして、ザンザスは男でも子供を産めると思って
いるんだろうか。
 親の背を見て育って…?
 これ…皆通ってる道って言ってたな…。
 やっぱり9代目もこういうことしてて…それでザンザス
が男でも子供を産めると思うようになったとか!?
 うう…。
 ボンゴレめ…。


 とりあえず。
 明日になったら、皆に10代目候補から降りると宣言
しようと決意した。




              おわり☆










私があまりにザンツナザンツナとうるさいので、誕生日プレゼントとして頂いちゃいました!
本当にありがとう碧ちゃん!
しかもずうずうしくおねだりしてサイト掲載の許可まで貰っちゃいました!
私と同じようにザンツナに飢えてる方がいらっしゃると思うので、この幸せを少しでもお裾分けしたかったのです…!

自分勝手なザンザス様素敵!流されやすいツナ可愛い!
ザン様とツナの子供なら最強の11代目になれそうですねv
大丈夫、ツナなら産める!


















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