アズーリ伝統の『鍵』を破壊出来るか!?

2001年11月7日・埼玉サッカースタジアム2002
日本代表 VS イタリア代表

いよいよ目前に迫った2002年・日韓ワールドカップ。
日本代表監督フィリップ・トルシエ氏はこの試合を
「W杯の開幕戦だと思って挑め」
選手達にそう言って奮起を促した。
ただのフレンドリー・マッチ(親善試合)ではない、それくらいこの試合を重要な
一戦と位置付けていたのである。

イタリア代表チーム。

アズーリの異名で日本中のサッカーファンが注目する強豪が11月6日、ついに来日。
アズーリとはイタリア語でマリン・ブルーの意。
代表のユニフォームのカラーからサッカーファンからそう親しまれるイタリア代表は
W杯3度の優勝経験を誇り、日韓W杯も優勝候補に上げられる
名門中の名門なのである。

アズーリの監督はセリアA最多優勝経験を誇る”優勝請負人トラップ”こと
ジョバンニ・トラッパトーニ監督。
GKは24才にしてアズーリの守護神を務めるジャンルイジ・ブッフォン(ユヴェントス)。
昨年のユーロ2000で大活躍した、フランチェスコ・トルド(インター・ミラノ)が
控えというのだからまったく恐れ入る。
3バックはアレッサンドロ・ネスタ(ラツィオ)、ファビオ・カンナバロ(パルマ)、
そして来期で現役引退を発表したパウロ・マルディーニ(ACミラン)。
この強固な守備陣があってこそ、アズーリのゴールには

”カテナティオ”
(イタリア語で錠前、もしくは南京錠の意)
を掛け続ける事が可能なのである。
しかし今年のアズーリはカテナティオだけではない。何と言っても

イタリアサッカー史上最強と評価される驚異の攻撃陣。

トップ下からファンタジー溢れるラストパスを連発する
”王子様”フランチェスコ・トッティ(ASローマ)。
その控えには”色男”ステファノ・フィオーレ(ラツィオ)。
そして2トップはフィリッポ(ピッポ)・インザーギ(ACミラン)と
”貴公子”アレッサンドロ・デルピエロ(ユヴェントス)の”デルピッポ・コンビ”。
さらにディビアッジオ、キエーザ、ディバイオなど日本だったらレギュラー間違い無し(笑)の
一騎当千の強者達が控えに名を連ねる。
さらにトッティ、インザーギ、デルピエロの驚異のトライアングルを
擁しているにも関わらず、トラップ監督が
「復帰したらこの男を中心にアズーリを編成し直す」とまで明言している
”野牛”クリスチャン・ヴィエリ。
現在ポストプレイヤーとしては世界最高の選手と評価されるヴィエリと、
”イタリアの至宝”と称されるスーパースター
ロベルト・バッジョの代表復帰も
視野に入れているのだ。
伝統の
カテナティオに加え、文字通り史上空前のアタッカー陣。
トルシエ監督が「W杯開幕戦のつもりでいけ」というのも充分うなずける。

もうスグ完成予定の真奈美本の原稿を描く手を休め、ワクワクしながらTVの電源を入れる。
サッカー専用スタジアムとしては、国内最高の設備と集客能力を誇る、
試合会場である埼玉サッカースタジアム2002。
アズーリとのAマッチとあって、6万以上の大観衆を飲みこんだ。
時差ボケで冴えない表情の(笑)アズーリが入場。あれ・・・?
キャプテン・マークをつけているのは5番のカンナバロではないか。

「マルディーニは出ないのか・・・」

やはりスタメンでも3バックの左サイドにはユリアーノ(ユヴェントス)が入る。
いきなり幕の内弁当の鮭を落したようなガッカリ気分。
日本代表は前日、トルシエ監督が示唆していた通り、中田をスタメンから外し
トップ下には森島(セレッソ大阪)を起用。
日本は実質的な3トップ、3−4−3の攻撃型フォーメーションでアズーリに挑む。
セレッソは残念ながら2部落ちが決定したが、森島には奮起を望みたい。

19時22分、キックオフ。
アズーリの面々は時差ボケに加え、渋滞のせいでアップも満足に出来なかった状態。
その最悪コンディションのアズーリに、ホイッスルと同時に日本は襲いかかった。
「もしイタリアのDFラインが破られるとしたら、マルディーニがいない左かな・・・」
そんな事を考えたりしたら、まさか本当にそうなろうとは(苦笑)。
前半10分。左サイドを突破した小野が、稲本にパス。さらに稲本が柳沢にクロスを入れる。
走りこんでDFラインの裏を取った柳沢はドンピシャリ右足で
ボレーを叩きこむ!
正に驚弾! 前半10分、柳沢のダイレクト・ボレーで日本が先制!!
先制は日本!!
ココ、マークを外されたユリアーノ、GKのブッフォンは呆然。オレも呆然だ(笑)。
さらに日本の猛攻は続く。
しかし先制された事でアズーリの闘志にも火がついたようだ。
ゴール前、デルピエロからのリターンをココが返し、さらにそれをデルピエロが
ヒールで(!)でトッティへ。3列目から飛び出したガットゥーゾにトッティがラストパス。
この間何と6秒弱!! デルピエロ、トッティ、これがアズーリが誇る
”ファンタジスタ”達の真の力なのだ。
曽ヶ端がファインセーブによって防ぐものの、徐々にアズーリも本気モードに切り替え始める。
23分、ザンブロッタとガットゥーゾが正に”セリエAのプレス”でボールを奪う。
ユヴェントスとACミラン、イタリアを代表する名門の中盤の心臓部を担う
この二人のスタミナは本当に無尽蔵の印象すら受ける。
しかし日本も反撃。30分小野のスルーパスなど、惜しいシーンが続出。
互角で前半が終了。

冒頭で、埼玉サッカースタジアムのことを、”国内最高の設備を誇る”などと書いたが、訂正。
どうやら芝生だけは最低レベルのようだ。
前半だけでピッチ上がボコボコになってしまっている。
こけら落としとなった、浦和レッズ対横浜Fマリノスとの試合でも、
芝に足を取られてケガ人が出たが、それが今だ改善されていない模様。
後半戦開始。
アズーリは足を負傷しているディビアッジオに代えてザネッティを、
そしてトッティに代えてこれがアズーリデビューとなるドニをトップ下に投入。
日本も高原に代えて鈴木、そして森島に代えトルシエ監督との確執が噂される中田英を
トップ下に投入。お互い勝負に出た感がある。
お年の割には元気いっぱいのトラップ監督(失礼)、立ちあがって大声でドニに指示を出す。
そのトラップ監督の願いが通じたのか後半6分、
デルピエロが蹴ったCKのこぼれ球、日本ゴールに突き刺したのは
ドニだった!!
アズーリのデビュー試合で同点ゴールを決めたドニは大喜び。
負けないくらいトラップ監督もピョンピョン飛び跳ねて大喜び(笑)。
こうなるともう、攻撃的なトラップ采配にも冴えが出る。
14分、今度はデルピエロに代えてデルベッキオが登場。
24分、またしてもドニ!! 狙いすましたダイビング・ヘッド!!!
しかし狙いすぎて、僅かにポストの外。頭を抱えるドニ。
ウルトラス(日本代表サポーター)もこの決定的な場面には、思わず声を無くす。
トルシエ監督も22分、柳沢に代えて西沢を、29分、波戸に代えて明神を、
さらに30分、稲本に代えて伊東を投入するが、どうもトルシエ監督というのは
選手交代がいつもワンテンポ遅い気がする。
最悪コンディションながらも、自軍ゴールにガッチリと『鍵』を掛け続けるアズーリ。
後半44分。鈴木に代って
ゴン中山登場!!
この日一番の大声援。
残り少ない時間ながらも、懸命に走るゴン。やはりこの男のプレイは熱い。
タイムアップ。1−1の引き分け。
W杯のV候補・アズーリ相手に引き分けたトルシエ監督はご満悦な表情。
対してトラップ監督は悔しさを滲ませる。
「カウンターを早く仕掛け過ぎたのは反省しているが、同点になって良かったよ」
それでもトラップ監督は最後は笑顔で会見を締めくくった。
「日本のマスコミの皆さん、来年夏にまたお会いしましょう」

柳沢驚異のダイレクト・ボレー。そしてアズーリの本気のプレイ。
本当にエキサイティングなゲームだった。
ただ、新聞等は「互角の勝負」などと書いていたが、
6速全開だった日本に対し、アズーリはアイドリングの状態だった事を忘れてはいけない。
さらにトルシエ監督と中田の確執。
来るべきW杯へ向けて、まだまだ日本がクリアしていかなければならない
問題点はたくさんある。

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