◆ サンダー・ストーム ◆

「今日はパーフェクトな展開だった。チームとBMW、ミシュラン、そしてカストロールには
本当に感謝しているよ。これだけ速いクルマを用意してくれたんだからね!!」
(ラルフ・シューマッハ)

正に磐石のチェッカー。ラルフが完璧な勝利!!

「レース終了まで雨は降らない」
 首脳陣を強引に説き伏せ、1ストップ作戦を起用した、ラルフの読み通りだった。
酷暑のセパンも何のその、カストロールの新成分ガソリンの力を得て、
モンスターエンジン・BMW−V10は2万回転の咆哮を上げる。
 ミシュラン・タイヤもそのトラクションを隅々まで路面に伝え、誰も若きエースの駆る
白と紺のマシンを追える者はいなかった。
 王者は最後の意地を見せ、力ずくで表彰台ゲット。
”オフの王者”マクラーレンはフリー走行時の好調も空しく、
メルセデスV10が白煙を吹き上げる。
かつての”最強チーム”の称号を取り戻すため、ウィリアムズの挑戦が始まった。

2002年F1GP第二戦・マレーシアGP。
東南アジア特有の酷暑の中、”3強”は必勝態勢で挑んできた。
まずはオフのテストでは圧倒的な速さで各コースレコードを次々にブレイクし、
ジャーナリスト関連から今季の「優勝候補大本命」との評価を受けた、マクラーレン・メルセデス。
アドリアン・ニューウェイお得意のエアロダイナミクス・マシン、MP4−17シャシーは
開幕戦ではお世辞にも真価を発揮したとはいえず、新エースのデビット・クルサードと
キミ・ライコネン、そしてチームとメルセデスの首脳陣達の
気合の入れ方はハンパではなかった。
それがマシンにも伝わったのか、金曜日のフリー走行では1−2を決める。
3位に王者ミハエル・シューマッハを挟んで、4位と6位にはウィリアムズの
若き暴れん坊コンビ、ラルフ・シューマッハとファンパブロ・モントーヤ。
昨年、そして開幕戦での課題だった「低速コーナーでハンドリングが不安定」という弱点を、
ほぼ解消しつつあるようだ。
しかし5位にはトヨタのミカ・サロが割り込み、またも関係者達をアッと言わせる。

「気分はいいけど、何かをコメントするには早すぎるよ」

1位になった、キミ・ライコネンのセリフである。

もっとも土曜日の予選となると、マクラーレンはまたもその輝きを失ってしまった。
ポール・ポジション争いを演じたのは王者ミハエルと暴れん坊モン吉だった。
両雄の対決はアタックするたびミハエルが優位になり、
結局ミハエルが通算44回目のポール獲得。以下2位モン吉、3位ルーベンス・バリチェロ、
4位ラルフ、5位ライコネン、6位デビ・クル。
要するにフェラーリ対ウィリアムズの直接対決と言ってもよかったわけで、
「開幕前の大本命」マクラーレンは完全に脇役に。

「メルボルンとは逆だよ。タイヤが路面に全然マッチしていない」

怒りのデビ・クルのセリフである。
「ミシュラン・タイヤはパフォーマンスを劇的に向上させた」と喜ぶウィリアムズ勢とは
あまりにも対照的。
見るとマクラーレンのタイヤは全然溶けていなく、まるでハード・タイヤの様。
やはりメカニカル・グリップ(トラクション・コントロール)に
今だ問題があるのか?
2戦目にして初めてまともに予選アタックを経験した佐藤琢磨は15位。

琢磨を応援する日本国旗が・・・

いよいよ日曜日、決勝戦。「降雨確率50%」の報にチーム関係者は頭を悩ます。
「レース途中で雨が降る」と読んだフェラーリは、ミハエルもバリチェロも
2ストップ作戦を採用。
イヤ、フェラーリだけではなく、多くのチームが雨に備えて2ストップ作戦を取った。
しかし上位陣では1チームだけ、1ストップ作戦を取ったチームがあった。
ウィリアムズである。

決勝スタート!!

の第一コーナーで何と、PPミハエルと2位モン吉が接触し、
ミハエルはフロントウィングを失い、最後尾まで転落してピット・イン。
若菜本の完売ハッピー気分が吹き飛ぶ衝撃の展開。

大アクシデント発生! ミハエルとモン吉が接触、ミハエルのフロント・ウィングが脱落!!

これで3位のバリチェロがトップに立ち、2位ラルフとの差を広げ始める。
しかしラルフ曰く

「全然慌てなかったよ。ルーベンスが2ストップ作戦なのは知っていたから」

だそうで、実際の話レースの焦点はラルフが最初で最後のピットストップと、
バリチェロの2回目のストップが終った時、二人がどんな位置関係にあるか・・・だった。
3位のライコネンはこの二人にまったくついていけず、誰がどうみても優勝争いは
この二人に絞られたのは明確だった。
15周を終え、上位陣の一角が崩れた。デビ・クルがエンジンブローで姿を消す。
さらに2位に浮上したライコネンもまったく同じ症状でリタイヤ。

「今日はキミも僕も素晴らしい結果を残せるハズだったんだ。でも今季のマシンが勝てる
パッケージである事は分かっている。必要なのはアト少しの信頼性だけだ」

あくまで前向きなデビ・クルのコメントである。
何はともあれ、これでルノーのジェンソン・バトンが3位に浮上。

結局雨はラルフの読み通りに一滴も降ることなく、
バリチェロが2回目のピットストップを終えた時点で、ラルフは24秒前方を独走。
これではバリチェロも手の施し様が無い。
さらにそのバリチェロのフェラーリも白煙を吹き上げ、
また、モン吉が図太い走りで激しく抵抗するバトンをも捉え、ついに45周目
ウィリアムズは1−2体制を築く。
さらにバトンは不幸なことに、サスペンションに深刻なトラブルを負ってしまう。
「3輪走行になるほどだった」そうで、ついにファイナル・ラップで
ミハエルにもオーバーテイクされてしまった。
結果はラルフが今季初勝利、通算4度目の表彰台の中央に上がる。

「兄貴とファンパブロは気の毒だと思ったけど、こんなのレースじゃ”よくある事”だよ。
2週間前のメルボルンでは、僕のアクシデントのおかげで兄貴がいい思いをしたんだからさ」

などと、余裕シャクシャクなラルフのコメントである。

ミシュラン・タイヤを中心に据えた、ラルフとウィリアムズ・チームの戦略も見事だった。
しかしスタート直後の接触がなければ、勝利の女神は誰に微笑んだかなど、
まったく予想はつかない。

そう。今年はいつになくレースが荒れる。ならば次戦ブラジルGP、
ホセ・カルロス・パーチェでも「何かが起こる」可能性は充分にある。

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