私の行く道は、私の進む道ではない。 最果てまで平坦な、陽の当たる道。歩いても手に入れるものがない、望むもののない。 私は、平穏な中流家庭に産まれ、平凡な道を歩く予定だった。 それは成功している。一男を成し、二度の結婚をし、職を持っている。老いてもそれなりに子供に財産を残せるだろう。表向きは。 昔から、私は知っていた。ーー希少価値のある自分と、何も得ることの出来ない自分を。 昔というのは誇張しすぎだろうか。しかし、物心ついてから、世界がずれていくことを不安と共に期待で見守っていた。決定打が来る事を、のぞんでのぞんで、そして、それは訪れなかった。 微笑みながら去る機会は訪れず、生まれながらに余生を過ごす事を決定付けられていた事を知る。 それでも、今でも待っている。 「あなた、待ちなさい。」 「ディースのひとりか。なにか? 契約違反は何もしていないはずだが。」 「いえ、あなたに興味があるの、囁くものがいるの。あなたは、私の同志かもしれないわ。」 「『私』? 『私たち』でなく? 」 「ええ、私。ディースではなくオイジュスとしての同志じゃないかしら。異端子さん。」 「正確には、違うだろうが、それにしても、よく見える目を持っている。さすがは調和淘汰機構。」 「あなたも、見えているようね。それに、そんなわかりきったことはいらないわ。」 「そうか。女性の喜びそうなところはしらないが、それでいいなら、おいで。」 私は、自分をこわす男を待っていた。 この世界は、その男を産まなかった。 そのまま、私は余生を送っている。あだ花は何故咲くのだろう。 道を歩きながら、私は、私の辿るべきだった道を探している。途中で途切れるその道を。 おしまい |