九達郎 ふむ、ゆり、いるのだろう? ゆり いるけど? それにしたって、見つけるの早いよ。もっとゆっくり来なきゃ。 がらりと襖を開けて、のそのそと押入れからゆりが出てくる。
九達郎 ゆっくり来たら、おまえはその中で寝てしまうだろう。良くない癖だぞ。 ゆり ふあああ(欠伸)。だって、集中できるから。 九達郎 時計も持ってないのだろう。気付かれなかったら、いつまでも入っている気か。 ゆり だーいじょうぶ。九達郎が見つけるでしょ。 九達郎 あたりまえだがな。ーーそろそろ、お茶にしようと親爺様が呼んでいたが。なんだ、まだ眠いのか。 ゆり スグ覚める。ねえ、なんで俺のこと、ゆりって呼ぶの。いまさらだけどさ。 九達郎 本当に今更だな。 ★
九達郎 親爺様、ゆりがどうして名を呼ばないかと言うんだが、理由を知らないか? 親爺様 よんどるじゃろーが。 九達郎 正確には「何故、ゆりと呼ぶ」だ。 親爺様 そりゃ、なんでゆりと呼ぶのかね。あの子の名前は、ゆりじゃないのに。それに釣られてコウもゆりさんと呼ぶからのー。わしも釣られてるが。 九達郎 ゆりに似合っているからな。 親爺様 九達郎、おまえは賢いが、時々間抜けになるのー。 九達郎 ーー…なに? 親爺様 確かに、呼んどるがなー。ゆりは、おまえに、自分の名前を呼んでほしんじゃろ。あだなじゃない方をな。 九達郎 ………………ふ。 親爺様 「ふ」? 九達郎 ふふふふふふふふふふふふ…、今行くぞ…! ゆり!! 親爺様 (間抜けじゃのー。ゆりも九達郎も、こんな面白いもの見逃しとるコウもなー。) ーーって、これじゃあ、あとがきじゃねえよ。 おかしいなー。おかしいなー。こんなだったら、小話扱いにしたほうが良かったなー。 あとがき書く根性は損なわれましたので、これをあとがきに…(あとがきじゃないけど)。 おしまい |