髭なしの頃のアギルでした。(一応、文に入れているが自分でも忘れるため。)



「アギル、ササン。」
 珍しくも小さな声で、サシンは子供達に声を掛けた。応えはない。しょうがないかと扉を開く。夜半に気付いたら、寒くなっていた。興味がある事になると、周りが見えなくなる。それほど興味のない事は、周りが適当になる。今回は、最後のページをめくった時に、暗さと寒さを知覚した。その時にふと子供達の事が頭を過ぎった。
「あーぎる、さーさーん。」
 足を忍ばせ、子供には大きい寝台に寄っていく。二つ揃った頭に、矢張りこっちだったのかと笑う。双児の所為かーー、それよりインプリンティングの所為だろう、常に一緒にいる。
 時折、この二人に嫉妬と苛立ちが湧き上がる。ただ、成長すれば、それらも収まるだろう。ここまで設定したのだ、思い通りにならない筈はない。
 そんな事より、寝床だ。
「……。」
 二人の寝顔を等分に眺めてから、苦笑いする。
「ああ、これはダメだ。」
 健やかに眠っている二人はどう見ても、あの相手に似すぎていた。
「前々から似ているとは思っていたが、こうするとやはり血の繋がりが目立つな。」
 実は、生まれた時に呆然としたのは秘密だ。髪の色も瞳も考えていたのと違っていた。失敗だと思っていたが、少しずつ、似通った所が見えてきた。時折見せる表情、いつだったか気付いた目の形、仕草。それはそれで問題だ。ーー結局は失敗になる。
 どうも誰かが嘲笑っている。この国に逃げ込んでから、どうも思い通りにならない。最初から無理だと言われている、誰かに。
 いつかは、帰るつもりだが……。
 最初から決めていた事、それもが誰かに決められた事のように思えた。
「アギル! ササン! 起きろ!! 」
「……なぁに?」
「ねむいー。」
 寝ぼけた声が、毛布を剥ぎ取られることで悲鳴になったのを口先で笑いながら床に転がり落としていく。
「なんかむかつくから、相手しろ! 武器(えもの)持って、外だ。一本取れるまで、寝んな! 」



 サシンが子供達と寝ないわけ。




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