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「参謀って、偉い人に耳打ちするだけの仕事だと思ってました」 山側合宿所内の憩いの場。 「だが確かに、参謀を名乗り続けていく為にはそういった典型的なイメージを取り入れていく必要もあるかもしれないな」 柳はつぐみにスッと近づくと、彼女の耳元に口を寄せる。 (きゃああー!やっ、柳さん、近い!近いですー!!) 彼とのあまりの距離の近さに、つぐみの顔が一気に真っ赤になる。 「…小日向」 そして、そんな状態で耳元で囁かれたらまともな態度でいられる筈が無い。 「お前は殿様役なのだから、もっと落ち着いて堂々としていなければ駄目だろう」 テニスとは全く無関係の分野で、立海式スパルタ訓練の餌食になってしまったつぐみだった。 ・・・・・・・ その日の夕方、食堂。 「やあ教授、調子はどうだ?」 博士と教授の会話に、柳の向かいで食事をとっている赤也と、丁度その後ろを通りかかった向日が割り込んできた。 「柳先輩、あれって何やってたんスか!?」 どんどんテンションが上がっていく赤也と向日に、柳は不敵な笑みを向ける。 「良い機会だから言っておくが、あえて過激な言葉で言うと、俺は小日向を落とす為に狙っている。だからお前達、邪魔はしてくれるなよ」 そこに、夕食当番でようやく全員分の配膳を終えたつぐみが自分の食事を持ってやって来た。 「遅くなってすみません」 当然の様に自分の隣の席を勧める柳。 「じゃあ邪魔者は退散するぜ。ニヒヒ」 それを見た向日と乾は、ニヤニヤとした笑みを浮かべて去っていった。 「何だか凄く盛り上がってたみたいでしたけど」 そんな二人のやり取りを眺めながら、柳生が残りの立海三人に小声で話しかける。 「向日君の性格からして忍足君と日吉君に話すでしょうし、不動峰の人達に伝わるのも時間の問題でしょう。そうなると、二人は事実上山側公認のカップルということになりますね」 ウキウキと答える赤也に、うむ、と頷いて返す真田。 (しかしまあ、流石は我がチームの参謀だけあって見事な策士ぶりだな、蓮二) あえて人前で仲の良い様をアピールしたり、同性に向けて彼女に気があることを堂々と宣言したりすることで、他の男が彼女に言い寄り辛い空気を作り、ライバルの発生を気にすることなく彼女へのアプローチに専念することの出来る状況を整える………という作戦なのだろう。 |
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