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あの無人島生活でつぐみが柳と、そして彩夏が幸村と結ばれてから、二人の彼女は一緒に立海テニス部に差し入れを持って度々顔を出すようになった。 それから一週間後。今日も今日とてやって来た二人の彼女を笑顔で迎える幸村。 「今日も皆さん頑張ってますね」 そして、走り込みから戻ってきたテニス部の面々が目にしたものは。 「お疲れ様でーす!はい、これ飲んでちゃんと水分補給してくださいねー!」 俗にエプロンドレスなどと呼ばれる、ふりっふりの純白エプロンを制服の上につけた二人の女子だった。 「なっ………お前達、その格好は何だ!」 唖然とする真田だったが、その他のメンバーには軒並み好評。 「なかなか可愛いじゃねえかぃ」 「ふふ、俺の目に狂いはなかったね。似合ってるよ、彩夏」 人前で堂々とハグしてリア充ぶりを見せつける幸村彩夏組。 「…………………………」 受け取ったドリンクを飲むことすらせず、無言かつ無表情でつぐみを見つめ続ける柳。 「ほらみろ精市、蓮二も呆れているぞ」 幸村の言葉に、柳は顎に手を当てて、ふむ、と小さく頷く。 「…いい。実に、いい。すまないが、今はこれしか言葉が出てこない」 (友人相手にこんな表現を使いたくはないのだが、正直、割れ鍋に綴じ蓋という言葉が頭から離れん………) いつの間にやらラブラブオーラ全開状態になっていた柳とつぐみを複雑な気分で眺めつつ、真田は内心ひとりごちたのであった。 ・・・・・・ 次の日の立海テニス部・部室。 「精市、昨日家に帰ってからあのエプロンの魅力について一時間程度解析を試みたのだが」 そう言って幸村が鞄から取り出したのは『萌えキャラコスプレ衣装カタログ』という本。 「ふむ、この頭の飾りはなかなかにそそるな」 「あー………あのよ、真田が『どこからツッコんでいいか解らん』って顔してるんだけどよ………」 腕を胸の前で組んで苦悩に満ちた表情で椅子に座り込んでいる真田を気遣うジャッカルの発言は、幸村と柳の耳には届かない。 「どうかな、蓮二。気に入ってくれたなら今度二人が来てくれる時の為に準備しておくけど」 そのやり取りを聞いた柳生が、眼鏡をキラーンと光らせて鞄から本を取り出した。 「でしたらば柳くん、こういうのは如何ですか?」 柳生が柳に手渡した本、そのタイトルは『コスプレ衣装全集〜麗しのメイド編〜』。 「これは、世に無数にあるコスプレ衣装の中からメイド服をフィーチャーした特集本です。これならば、柳君の好みに合致する衣装も必ず見つかるはずです!」 得意げに眼鏡をクイックイッさせる柳生と、「こっちの衣装の方が絶対可愛いと思うんだけどなー」と少しむくれ気味の幸村の二人を、仁王は「ハッ」とまとめて鼻で笑う。 「二人とも、まだまだ青いのう」 知らない間に幸村の手から抜き取っていた『萌えキャラコスプレ衣装カタログ』の違うページを見開き状態にして、柳の眼前に勢い良く突きつける仁王。 「…なっ!こ、これは………!」 柳が目を見開いて驚愕する。 「あー、こういうのるろ剣とかで見たことあるぜぃ」 脇から暢気にコメントするブン太と赤也。 「着物ならこちらで手配出来る。精市、お前にはこのヘッドドレスをお願いできないだろうか」 「あー………何だ、その…今日は本当に良い天気だな。絶好の練習日和だな、うん。こういう時は無心になって練習に打ち込もうぜ、な?」 皆に背を向けて部室の窓からただただ青空を眺め続ける真田に優しい言葉をかけたのは、ジャッカルだけであった。 |
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