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「俺は強い日差しがあまり得意ではなくてな…。いつもは日傘を持ち歩いているんだが、例の海難事故で紛失してしまってな」
「それは弱りましたね…」


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それから数日後の、8月2日。

「元気だったか、お前達」
「お父さん!あれ?あの船ってもしかして…」
「ああ、お前達が乗ってきた船だよ」
「じゃあ、みんなの忘れ物とか残っていたりするの!?」
「ん?そうだな、置き忘れとみられる物が何点か残っていたな」


(俺に話があるとのことだが…その内容は多分、俺が彼女に告げたいことと一致する可能性が高い。ならば、俺の方が先に話を切り出すべきだ………)

彩夏の伝言を受け、つぐみの待つ見晴らしのよい丘へと向かう柳。

「あ…蓮二さん!こっちです」
「つぐみ、待たせてすまない…む、それは」

大きな木の下で佇むつぐみは、大事そうに和傘を抱えていた。

「船でこれなくしたって言ってたから、見つけたらすぐ渡さなきゃと思って」
「そ、そうか。ありがとう、助かる」

笑顔で和傘を差し出すつぐみに、笑顔で応えて受け取りつつも、内心気が気じゃない柳。

(彼女の話とは………もしかして、これだけなのか!?)



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「あの時は、お前がこの傘だけ渡してさっさと帰ってしまうのでないかとヒヤヒヤしたぞ」

そして約一年後の、ある初夏の日。

「あ、あれは単についでで…。そもそも用事がそれだけだったら、わざわざ呼び出さずに直接届けに行きますし」
「フッ、それもそうだな」

晴天の眩しい日差しの中を、相合傘で散歩する柳とつぐみの姿があった。

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