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「ここの生活にも慣れてはきましたけど、正直早く帰りたいっスよー!ここじゃテレビは見れねーし、夏だってのにアイスも食えねーしー!」
「元々そういう状況下に身を置くことで精神鍛錬を行なうのが目的の合宿だろうが!たるんどるぞ赤也!!」

山側合宿所の食堂。
椅子に腰掛けながらテーブルの脚を苛立たしげに何度も蹴る赤也に、真田の怒鳴り声が飛ぶ。

「まあまあ真田さん、切原くんもいつもと違う暮らしが続いて疲れがたまってきてるんだと思いますし、少しぐらいの泣き言は大目に見てあげても…」
「確かに、普段と比べると生活のほぼ全般が不便を強いられている状況ですからね。切原くんの気持ちも解らないではありません」
「というか、常に暑いってだけでも相当しんどいぜよ。俺は暑いの苦手じゃき」

真田を宥めようとするつぐみに、フォローの体を取りつつも赤也に便乗してやんわり愚痴を漏らす柳生と仁王。
そんなメンバーのやり取りを眺めて、柳は「ふむ」と軽く唸る。

「何かこの環境で出来る、気軽なストレス解消法があればよいのだがな」
「ストレス?そんなものは身体を動かして吹き飛ばすに限る!今のトレーニングで足りていないというのなら、更に量を増やせばいいだろう」
「いや、ハード過ぎる運動は心身共に負担を増大させることになり、ストレス解消という観点だとかえって逆効果だ。もっと簡単で、リラックス効果をもたらすことの方が良いだろう」
「む、そうか………」
「そう言えば、何か柔らかいものを掴んだり握ったりすると、セロトニンが分泌されて精神が安定するという話を聞いたことがある」

そこまで言うと、柳はテーブルを挟んで相対している真田から視線を外し、自分の隣に座っているつぐみの姿をじっと見つめた。

「蓮二…何故そこで小日向を見るのだ?」
「ん?ああ、いや、これは………」

柳が言い淀んでいると、つぐみは合点がいったとばかりに両手の平をぱんと打ち合わせた。

「あっ、解りました!ソフトテニスですね!」
「はあ?意味わかんね。ソフトテニスやるとストレス無くなるってコト?硬式じゃだめなのかよ」
「そういうことじゃなくって、前に柳さんとテニスの話になった時に、授業でソフトテニスならやったことがあるって言ったことがあったから、柳さんはそのことを思い出したんじゃないかと思って」
「いやだからソフトテニスとストレス解消に何の関係があるんだっつー…」
「ソフトテニスのボールが、先程柳くんが言っていた柔らかいものに丁度良い、ということではないでしょうか」

疑問符連発でつぐみに絡む赤也に、柳生が解説を入れる。

「ああー!ナルホド!!確かにあのぷにぷに感は絶妙だもんなー!」
「と、そうやって理解したところで、ここに軟式の球なんぞありゃせんけどのう」
「あ、そうですよね………」
「いや、大分奇抜な訓練をしている者もいるようだから、もしかすればそういう目的で島に持ち込んでいる者も探せばいるかもしれん」
「柳生先輩、ところてんを作る要領で何かそういう柔らかいもの作れないっスかね?」
「ところてんを食用以外の用途に用いるのは止めていただきたい!」

「(………背負った時の背中の感触から察するに、軟式ボール以上のボリュームと弾力を持ち合わせる確立が99%以上……………いや、そんな事を推察してどうするつもりなのだ柳蓮二!!)」

和気藹々と柔らかい物談義に花を咲かせる他のメンバーをよそに、一人胸の内を悶々とさせる柳であった。

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