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「え?嘘?エイプリルフール??」 四月一日の夜、水度坂家屋敷の勘久郎の自室。 「勘久郎様への無礼を承知の上で憲剛様に協力致しましたこと、もはや謝罪の言葉もございません」 勘久郎の言葉からは、遠足当日の朝に雨天中止を告げられた小学生の如く深い落胆の色が滲み出ている。 「………寧々ちゃん、顔を上げて」 だがそこは水度坂勘久郎、寛大であった。 「………ぅあっ!?」 急にあごを掴まれて呻く寧々。 「寧々ちゃんってば、いつから他の男に誑かされて僕を騙すような悪い子になったんスかねぇ〜?」 頭を上げさせたのは許したからではなく、詰問する為だったようだ。 「なぁに?憲ちゃんから金でも貰ったんスか?それともまさか、彼と寝たとかぁあぁ〜?」 体勢だけ見ればいわゆる『首クイ』という萌えシチュだったが、実際の状況はそれとは真逆だった。脅威度SS。 「ひっ……ち、違いますっ………」 死への恐怖にガタガタ震える寧々を、なおも冷酷に糾弾する勘久郎。 「わっ…私はただ………」 白状というよりもはや懺悔と化した寧々の言葉に、勘久郎の追及がピタリと止まる。 「あぁ、困ったスね〜………本当はもっとみっちりお仕置きする気でいたんスけど、君にそんなこと言われちゃうとね〜……」 勘久郎の表情が、ふと、和らいだ様な気がする。 「……………!!!」 何故か関西弁が混じっていた。 「じゃ、僕、お風呂入ってくるスわ」 そう言って勘久郎は立ち上がると、寧々を連れずに一人で自室を後にした。アヒルのおもちゃも持っていかなかった。 ちなみにアヒルのおもちゃは後日、どういう意図なのか勘久郎によって水度坂病院の院長室に飾られることとなり、寧々が訪れる度に部屋の主の笑顔と共に彼女に得体の知れない威圧感を与えてくるのであった。 |
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