{C}
「今日のご飯は〜、煮込んだお肉〜♪食後にお菓子も、どこどこど〜ん♪川の向こうから〜、次々やってくる〜♪お菓子と〜、お肉の群れ…」
「おい、アネット…」
「ふぇ、フェリクス……え、あの、聞いてた?もしかして、あたしの歌、聞いてたの?」
「ああ。お前の声が聞こえたから、ここに来た」
「えっと、あの〜……」
「アネット、俺はお前の歌が好きだ」
「え…え!?ちょっと、いきなり何言って……」
「お前さえ良ければ、もっと聞かせてほしい」
「な……………何よ!こんな変な歌好きになる訳ないじゃない!本当は馬鹿にしてるんでしょ!?フェリクスの意地悪!もう知らないっ!!」
「おい、アネット、待てっ………行ってしまったか……。水やりは、俺が終わらせておいてやろう…」
{B}
「あ、フェリクス。確か、温室の掃除の当番だったよね?」
「そうだが」
「あたしが終わらせておいたから。あと、倉庫の片づけもあたしが先に……」
「……何の真似だ」
「な、何でって…………そんなの決まってるじゃない!あなたに振り向いてほしいから!歌だけじゃなくて、普段のあたしのことも見てほしいから!!」
「お、お前……」
「どうしてそんなことも分からないのよ!フェリクスの馬鹿!意地悪!もう知らないっ!!」
「おいアネット!待っ……。また、行ってしまったか…。アネット、そんなことをしなくとも、俺はいつだってお前のことを……」
{A}
「書庫のお掃除、楽しいなあ〜♪魔法で一発、どかんと一発〜♪どかんと更地に〜♪」
「おいアネット」
「どかん、と……。な……何でフェリクスがここのいるの!?」
「お前の歌が聞こえたからだ」
「な、なんだ、通りすがりかぁ……びっくりした…」
「お前は自分が歌って踊っているところを他人に見られたくないと思っているのだから、歌っている時に会いに行けば必然的に二人きりになれるからな」
「偶然じゃなかった!あたし明確に狙われてた!!」
「今日という今日は逃がさんぞ。さあアネット、俺の為に歌ってくれ」
「ちょっ、や……離してー!!」
「俺は、更地になった書庫のその後が気になって仕方ないんだ……。アネット、お前の口から聞かせてほしい」
「そんな真剣な目をされたら断れないじゃない、もう……。わかった!あたし、あなたの為に心を込めて歌うね!!」
そうしてアネットがフェリクスを想って紡ぎあげた書庫の歌は一時間越えの超力作となり、最終的には書庫のみならずフォドラ全土を更地というか焦土にした。
{A+}
「ふう……。はい、これでお花のお手入れもおしまい!……って。フェリクス、何で隠れてるの?」
「飾らないお前の素の姿をじっくりと眺める為だ」
「やっ、やだ、何言ってるのよもう!恥ずかしいじゃない!!」
「アネット、俺はお前の虜なんだ。寝ても覚めても、戦場でも、何時如何なる時もお前のことが頭から離れない……」
「あ、あたしだって!いっつも目はあなたのことばっかり追っちゃうし、頭ではあなたのことばっかり考えてるんだからね!!」
「アネット……」
「フェリクス……」
「愛しているぞアネット!!」
「フェリクス大好きーっ!!」
それから二人はしばらくの間甘いひと時を過ごしたのであった……。
おわり
※オチとかはないです