懇願



壁に押し付けられて。
両手を頭の上で押さえつけられて。
耳元で囁かれて。
彼の声が心地いい。
「どうしたの? 抵抗しないの?」って
低くて穏やかな声で聞かれただけなのに、
身体を捩ってしまう。
けれど私は彼の腕の中で、大して身動きが取れない。
彼の舌が、私の耳を這う。
何かが背中をかけぬけて、足の力が抜ける。
両手にぶらさがるかのように、だらり、としてしまい、
不思議な声が、いつもより早い息遣いが、彼の首筋にかかる。

彼が、私の名を呼ぶ。

スカートの中に、彼の空いた方の手が入る、
と思ったら、するすると下着を下ろされてしまう。
そこについた、液体。
つつつ、と、糸を引いて太ももに絡めつく。
彼はそれに気づいてないかもしれない。
でも私はすごく恥ずかしくなって、声も大きくなってしまう。
私の耳から唇を離した彼は、一度私の顔を見、意地悪く微笑んだ。
そして私の手を掴んだまま、ベッドがある方に移動する。
私をベッドに突き倒す。
ベッドのスプリングがきしむ。

彼がこっちを見ている。
膝を立てた上体で倒れこんでしまった、だから彼にはあそこが見える。
もう、いっぱいになっているあそこ。
別に着衣なんて乱れてない、取られた下着以外は。
それなのに、弱い光を受けているだけなのに、てらてらと光る…私の…。
自分には見えていないはずなのに、それがなんだかよくわかる。
彼は私の足をぐぐ、と開く。
ちょっと笑った彼の口元。
これから私はどうなるんだろう、どこまで堕ちていけるんだろう…

私は彼に、目で懇願した。






2005.5.7





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