やつらは5匹いた・・・ジャロンが「犬」と呼んだものはわたしが見たことのない奇怪で醜悪な生物だった。サルと犬を混ぜたといったらいいのだろうか? ゴリラのような姿勢をし、立ち上がるとわたしの身長にやや劣るぐらいのそれはやせこけ、針金のような体つきだった。ケロイド状の皮膚にはところどころ薄茶色の毛が生え、ぐちゃぐちゃうにつぶれたしわだらけの小さな顔の奥には緑に鈍く光る目が見え貪欲さと残忍さをたたえていた。どの一固体も同じではなく、それぞれが手足の生える一や本数がちがったし、顔の位置も背中から生えてるものがあれば、体の前面に首のあるもの、股間、としか思えない位置から上向きに首が生えているものがあった・・・それらはみな低い声でうなりながら、部屋の中をぐるぐる何かを探すかのようにさまよっていた・・・そして、指先には研ぎ澄まされた短刀のような鉤爪が汚らしく光っていた・・・
一匹がこちらを向く・・・あ、わたしに気付いた! いや! こっちを、みてる!
「gufuaaaaaaaagggghhh!!!」
奇怪な声を上げ、こちらに向かってくる!
いや! こないで!!!
あとづさって逃げようとするけど、だめ、体が動かせない!
そ・・・そいつの、股間で、何かがうごめく・・・
いや! 赤い、長大なグロテスクなものがググーって伸びてゆく!!
よ・・・欲情してる・・・!!! ダメ、今、あんなやつに襲われたら・・・
頭の中に、身の毛もよだつようなモンスターに陵辱され、はしたなくもだえる自分の姿が浮かぶ・・・そんなの・・・・そんなの・・・ぜったいに・・・・いや!
あ、その一匹に、気が付いて・・・ほかの・・・化け物たちも!
く・・・くる! 恐怖感がいやまして、全身が力がぶるぶる震えてくる・・・
「しばらく相手をしてもらえ・・・俺はちょっと出かけてくるからな・・・」
そ・・・そんな!
いやぁああ! いやあああああああああああ!!!!!!!
「安心しろ、まだお前にはさわらせない・・・それから、おまえもあまりきもちよくなりすぎないようにしておいてやるよ。」
ジャロンは、もう一度私に目隠しをすると、わたしのお尻の、サインのある辺りをぐっとつまむ!
「ああああああああああ!!!!!!!!!!」
わたしは、まるで焼き鏝を押し付けられたかのような声を上げ、からだをそらし、天を仰ぎ見ていた。
* **
ジャロンとリザディア人が姿を消すと、再び目隠しをされ、拘束されているわたしに向かって、犬たちはゆっくり近づいてきた・・・
やつらの声と、強烈な体臭と、そして・・・その気配・・・いや、そう呼ぶにはあまりに濃厚で邪悪すぎる、そう、情念の入り混じった殺気、そして淫気が四方から迫ってくるのが感じられた・・・
犬たちは少しづつ、少しづつ、輪を縮めてくる・・・
「いや・・・・いやあああ!! こ・・・こないで・・・こないでぇ!!!!」
ジャロンの烙印の呪いによって敏感になってしまった全身・・・いや、敏感なんてものじゃない、神経束を全部体外に引き出されて、そしてその先にひりひりする薬を塗って向きあげられたかのように、今では空気の粒子までも意識してしまう。
「やだあああ!! いやああああああああああああ!!!」
どのような結界をジャロンが結んだのか、犬たちは私の身体に触れることは無かった。しかし、彼らは、触れるほんの少し手前、まさにミリ単位の距離まで近づき、いやらしい叫びを上げ、不潔な器官を勃起させ、そして、さまざまな体液をしぶかせた・・・
私にはそれで十分すぎる刺激だった。ジャロンののろいのおかげで敏感になったからだは、この、獣たちが身の回りを取り囲み、声を上げ、その獣の剛直を勃起させ、激しく欲情している中に放り込まれるだけで発狂寸前に追い込まれていた・・・
***
「・・・ううう・・・はぁああああっ!!・・・も・・・もうだめ・・・もうだめぇえっ!」
岩の壁に囲まれた部屋の中に私の狂ったような声と、獣たちの出す、おぞましい叫び声が満ちていた。
「guffffffffffeeeeeeeeghhhhh!!!!!!!!!」
「hhhhhhuuuuuuuuuuuhwaaaaaa!!!!!!!」
「gguryyyyuuuu! Guryyyyyyyyyyuuuu!! Gufuuuuaaaaaaaaaaaaaaawwwwww!!!!」
「い・・・・いやぁああああああああ!!! もう、いやぁああああ!!! 殺してぇええええ!!!!」
もう何時間こうされているのだろう? 目隠しをされたわたしは、両手両脚を大の字の形に広げさせられて部屋の真ん中に拘束されたままの姿勢で、身体が溶解し、腐乱しかけているような醜怪な獣どもになぶられ続けている。
いや、正確に言えばそうではない、獣たちはジャロンが施した何らかの拘束によって、私の身体には指一本触れていなかった。ただ、私の裸身に欲情し、その、異様な形と大きさの性器を起立させて私を取り囲み、大きく口を開けて唾液を滴らせ、その舌を、鼻先を、硬い爪の伸びた指先を、そして・・・どろどろの液を滴らせた、ごつごつと節のあるペニスを私の皮膚から数ミリのところまでちかづけてくる。そして・・・ああ・・・大きく割られた内腿を、いやらしく、なめ上げるかのように、そのぶつぶつの舌をひらひらさせながら泳がせたり、 硬くしこった乳首をそのとがった歯で、今にも噛み潰さんばかりに、あごを開閉したり、腰骨のでっぱりから、敏感な脇下にかけてを、欲情した、狂気に包まれた奇声を上げながらひしゃげた鼻先を触れんがばかりに行き来させたり・・・・
触られなくても、やつらの体温を感じるだけで、やつらの、ぐずぐずに崩れた肉体を近づけられるだけで、通常の愛撫や陵辱に比べるべくも無い性感と汚辱感に襲われていた。
もちろん、目隠しをされたわたしには彼らがどう動いているのか、見えるわけが無い。でも、ジャロンのバイオブランディングをつかって神経系を狂わせるトリックに犯された私には、やつらのが何をしているのかが手に取るように分かった。いや、わかるなどというものではなかった。まるで、私の周囲、いやこの部屋中に自分の神経が張り巡らされてしまったかのように、目に見える以上にはっきりとやつらの一挙手一投足を感じた。一匹がその爪の先を背中のくぼみにそってなで上げるように上下させれば、私は背骨が折れんばかりに身をそらせ、血を吐くような叫びを上げた。他のやつが、あしをひらかれ、谷底があらわになった私のお尻の割れ目にそのいやらしい舌を滑り込ませれば、肌に触れられてもいないのに、全身をぶるぶる震わせ、浅ましい咆哮をあげ、他の一匹が割り開かれた足の間にもぐりこみ、顔を上向けて、むしゃぶりつくかのような汚らしい音を上げれば、身体を硬直させ、絶叫を上げた・・・
***
このような陵辱(?)が何時間続いただろう・・・・
とても・・・とても熱かった・・・溶けそうだった、引き裂かれていくようだった、 まるで雷に打たれたかのように全身が激しくしびれた。体中から、そう、わたしは全身の皮膚からだらだらと淫らなジュースを垂らして、身体を小刻みに震わせながら、これまで味わったことも無いような強烈な感覚の応酬に全身を、いや、全存在をもみくしゃにされて、赤黒いどろどろの意識の空間でのたうっていた。
「もう・・・死なせて・・・・死なせてえええ!」
本当にそう願った。死ねたら、気絶でもできたらどんなに楽だろう? 官能と汚辱。快楽と嫌悪。止め処も無く襲ってきた。いてもたってもいられなかった。 これだけ強烈な感覚なのに、どのような、そう、ドゥイエに与えられた変態的な官能よりも数倍すごく、そしてどのような拷問で与えられた苦痛よりも鮮烈な恥辱なのに・・・わたしは一度も気を失うことも・・・そしてイクこともなかった・・・ただ、延々と地獄のような刺激と掻痒感が続くだけだった・・・・
「おねがい! おねがいだからぁ!! い、いかせてぇっ! こ・・・殺してぇええ! もう・・・もう、・・・おねがいだからぁ! どっちかにしてぇええええっ!!!!」
もう、どうしようもなかったら・・・これ以上・・・これ以上続いたら・・・私・・・
「グフォフォフォフォーっ!!」
私の言葉が分かるのか、「犬」たちが同時にあざけるような声をあげる・・・でも、たとえ分かったとしても、私の願いなどかなえる気は無かったのだろう。 やつらは、ひとしきり笑い終えると執拗に私の身体に対するもどかしい、そして、焼け付くような陵辱を延々と繰り返していった・・・・
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