直線上に配置

 

次の日、わたしはいつものようにアラームの音で目を覚ました。気がつくと自分の寝室にねむっていた。大佐が運んでくれたらしい。着替えを済まし、時間どうりに艦橋にでむいた。「ドゥイエ大佐殿……」わたしが声をかけた艦長席はからだった。

「おはよう、コタニ少尉。これから最後の試験。飛行だ。君が飛ばすのはこの船自体だ。わたしは既にゴール地点にいる。ゴールはアルゴ星だ。此処から準ワープで半日の距離だ。ただし、その途中で小惑星帯をとおる。この大きい機体でそこを無事に通り過ぎなければいけない。フライトコンピューターの中からその地域に関する飛行情報はすべて抜いてある。基本的に方角と勘のみで飛んでもらう。もうひとつ、飛行中君の身体の反応をデータとして取る。そのためのスーツを用意した。椅子の上においてあるからそれに着替えるように。では、今から30時間後に会おう。」

 

わたしは椅子にのっている厚手の赤いジャンプスーツを手に取った。そしてその場で着ている普段着を脱ぎそのスーツに着替えた。緩衝材のぬるっとした感触に神経が毛羽立つ。艦長席の右脇のモードボタンを押し、シングルハンド用のギアを出すとわたしは躊躇なくスクリーンに写ったアルゴ系外太陽の東側55海里に照準を合わせトップワープで船を発進させた。

 

     **

 

「・・・ここを通れって?」

小惑星帯は真近で見るとまるで巨大な粒の霧でも吹いたように密度が高かった。各小惑星はそれぞれ直径数キロという大きさだが、その間隔は狭く、数百メートルに過ぎない。横幅が120メートルもある機体を通すのは決して簡単ではない。「でも、やるっきゃないわね」わたしは船のスピードを落とし、 ゆっくりと岩石群の中に進んでいく。右、左、そう、だんだんペースがつかめてきた。慎重に、でも時間がかかりすぎたらだめ。わたしは、大きな機体をリズムよく揺らしながら曲がりくねった宇宙の回廊を飛ばしていく。

 

右に、左に激しく船をバンクさせ、また、時に真下の方向に向かって一気に機首を傾け、時には真上の方向に向け機首を持ち上げた。無重力の宇宙で方向感をつかむためにベクトル180に向けてつけられた人工重力の影響でほんの少しの不快感に襲われながらも、わたしは何とか20ミリワープのスピードを保ちながら星の間を抜けていく。

右、左、左、右、下、下、下、上!

(な・・・何とか一段落・・・)

目の前に小惑星の無い、クリアなスペースが見えてくる。あそこまで行けばしばらく行きがつける、そう思ったときだった。

コントロールコンソールに赤い字が点滅する。『異常:コンフォートコントロール』。

空調がいかれた!大型のクルーザーはもともと激しいマヌーバーを前提に作られてはいない。激しく機をバンクさせつづけるうちに電機系統に異常が出たのだろう。わたしは、最後の小惑星を左にかわしながら機の全システムステータスのスキャンをかける。「大丈夫、飛べる」ご丁寧にエアコンの回路だけがいかれている。ログをチェックする。飛行時間はあと20時間ぐらい。(冷えこんでくるわ。急ぎましょう)

私はさっきまでついていたエアコンの熱を逃す前に次の小惑星帯に突入する事を目指し、再度機をワープさせる。

 

2つ目の小惑星対についたときには機は思い切り冷えこんでいた。航行にかかる装置に支障は出なかったけれども室内は既に0度に近づいていた。

(このままじゃ…)

手がかじかんでしまう・・・そうだ! 私は今日渡された宇宙服の腰のベルトをチェックする。あ、あった。そこについている小さな金具を探り、三角形のボタンを押しこむ。途端に暖かさが全身に広がっていく。スーツのヒートシステムが聞き、体の機能がトップコンディションに戻った直後に機は次の小惑星帯に突入した。

 

     ・・

 

熱い…、わたしは、さっきよりずっと密度の高い小惑星帯の中で機を激しく左右にバンクさせ衝突を回避しながら過度の熱気に煽られていた。スーツヒートシステムはあまりに効率がよすぎた。吸湿性の低い生地と私の肌の間には気持ち悪いほど汗がたまり、厚手の服がぬるぬると肌の上を滑った。そして、熱せられた血が頭に上り、意識が途切れがちになる。体中がボーっとほてってまるで起きたばかりの時のように体が落ち着かない感じがする。

『ビー・ビー・ビー』

危険物の接近を知らせるアラームが鳴り響く。私は慌てて逆方向に機をバンクさせる。よけられた! 次の瞬間、目の前のがゆれ、頭を殴られたような衝撃が走る。

『左舷で衝突。エンジン出力15パーセント減。……ダメージミニマル』

いけない。注意力が欠けている。

「もうぶつけないわ!」

気を引き締める。

集中しようとする、でも、だめ!どうしたの?あたまがボーっとして…ア、体がますます熱くなってくる。仕方が無いわ。

私は右手で操縦桿のトップを握り、左手で襟のジップを下ろし胸元をはだける。

右、左、右!  下へ!!

あ、だめ。どうして!?温度がどんどん上がってくる。それに、意識がなんだか、ボーっとして…

私はジッパーをベルトまでおろし・・・だめ、ベルトを引きぬき、ジッパーを股間のところまでおろす。あ、機を真下へ!

今度は上!

体中から汗が吹き抱いてくる。それが蒸気となって上に上がり、空中で冷やされて氷の霧となり目の前を漂う。私はボーっとした頭で、前方のディスプレーと私の間に漂う、その神秘的な氷の粒に気を取られてしまう。

はっ!いけない!

慌てて目のピントを船外に移す。丁度目の前に大きな石の塊が迫っている!

し、下!

慌てて機体を押し下げる。

上!

右!

熱い、わたしはスーツをはだけ、両袖から腕を抜いて素肌を晒す。

機体をねじって、 スピードアップ!左へ!!

右へ! 上! 前に! 前に!

ぬ…抜けた・・・・!!

やったわ…!

2つ目の小惑星帯を抜けた!

私は自動操縦に切り替えると椅子に持たれかかり、脱いでいた両袖に腕を通し、息をついた。画面には一面、クリアなスペースが広がっている。

 

「もう小惑星は無いわね・・・」そう思った次の瞬間、

『ブー!ブー!ブー!ブー!』

機が急激に揺れ始める!  磁気嵐! 全ての計器がめちゃくちゃに揺れ始める。嵐に船を翻弄されるに任せたら機体がばらばらになってしまう!私は船の蛇行を最小限に止めるべく必死に操縦桿にしがみつく。

『ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!ピピッ!』

え、何!?私は別のアラームに驚く、画面に赤い点が点滅をはじめる。

(仮想敵!)

練習用の敵機シミュレーターらしい。でも、いくらシミュレーターといえ、その無人機はトレーニーの乗っている船を銃撃するようプログラムされている。

赤い点は三つに分かれる。

(やってくれるじゃない!)

撃ち落してやるわ! 

わたしは機を安定させたまま、3機のシミュレーターに向って突進する。そして、相手の射程に入った瞬間、下方に機をスライドさせ、敵の後ろに回りこむ。

「うまいじゃないか。コタニ少尉」

途端に聞き覚えのある声が右のすぐ脇、いや、右の肩口から聞こえてくる。慌てて右を向く。そこに誰もいないことに気がつくと同時に、ねばねばした手が私の左のウエストに回りこむ。

「はっ!」左下をみるとスーツに包まれた私の左のわき腹がいびつな形に波打っている。

「た・・・大佐?」

途端に私の右のおっぱいがせり上がり、見なれた男の顔となって私と対面する。

「君の飛行技術は見せてもらったよ。間近でね。」

そんな! 私が着ていたスーツはずっと変身した大佐だったなんて・・・急にカーッとかおが熱くなる。同時に、この異常事態にそれほどおどろかない自分が誇らしく思えてくる。

「最後の試験だ。あの3機を撃ち落せ。」

「わかってるわ! 見てて!」私は目の前で回避行動を取るシミュレーターの真中の一台のに向けて変化軌道談を撃ちこむ。1秒後、弾は2機の間で爆発しシミュレーターは残り1機になる。

「逃がすなよ」

応える前にわたしは機をクォーターワープに入れ猛追する。

「ちっ!小惑星帯にはいる気!」

もう一度速度を落とし、小惑星の間をすり抜けながら、シミュレーターに照準を合わせようとする。だめ、うまく会わない!機敏で小さいシミュレーターはこちらの艦では通れないようなギャップをうまく切りぬけていく。それでも、私は少しづつ距離を縮め、こちらの銃撃も何発か着弾させる事に成功する。

「うまいぞ。良い集中力だコタニ少尉、もう少し難度をあげてもいいな!」

「はい!」

私は誉められた事を有頂天になってこたえてしまう。次の瞬間!

「ひ・・・ひゃぁああああああ!!」

まるで濃硫酸をからだの新にたらされたかのような強烈な感覚が私を襲う!腰の中心から、全身を蕩けさすような強烈な官能が襲ってくる。

「腹を嘗められただけでだらしないぞぉ!」

揶揄するようなドゥイエ大佐の声。下を見ると、スーツがドゥイエ大佐の顔の形に凹み、その顔が上下に傾きながら、私のお腹を嘗め上げている。

「は・・・はい!」

必死で操縦席でからだがせりあがっていくようなその感覚に耐え、わたしは操船を続ける。

「もっと、もっと気が散るようになるんだからな!」

「あ・・・ひぃいいいいいいい!!!」

別の舌が右のわき腹を嘗め上げてくる・・・そして徐々に、わきの下へ。

その間も、私は何とか小惑星の間を抜けながらシミュレーターを追いかける。

く・・・うううううううぅううぅ!!!

でも、大佐は更に意地悪にしかけてくる・・・

(く・・・これ、本当に訓練なの?!)

そう疑問に思ってもどうすることも出来ない。シミュレーターは隙があればこちらの後ろについて攻撃しようと狙ってくる。しかも一つ間違えればぎざぎざとした角を突き出している小惑星にぶつかってしまう。もう、何とか早くこいつをやっつけて安全空域に逃げるしかない!

(でも・・・これ・・・い・・・いやぁああ!)

そんな私の苦闘をあざ笑うかのように、ドゥイエ大佐はブーツの中で私の足の指を一本一本丁寧にしゃぶり上げ、敏感な背中に別の舌を這わせてくる。

「ま・・まけない!!」

必死にスクリーンに気持ちをむけ、何とかシミュレーターに近づけていく。

「おう、うまいぞ!ヒトミ!」

感心しはげます声とは裏腹に、私の耳にイヤラシイミミズのような触手が忍び込んでくる。背筋ががくがく震え全身がカーっと熱くなる。

(もう少し、もう少しで・・・)

両足がぐっと広げられ、股間に生暖かい息が吹きかけられる・・・

「はぁぁぁぁああ!」

甘ったるい自分の声が遠くの方で聞こえてくる。前方の小惑星が減り、画面の真中にシミュレーターが出来る。 

(ロック・オン!)

その瞬間、

『ズリュリ』

と言う感触と共にヌメヌメとした蛇のようなものが股間を滑りぬける。目の奥がツーンとするような感覚がはしり、涙が沸いてくる。全身が硬直し、マグマのようなものがからだのそこから沸きあがってくる。

(ま・・・まけないのぉ!!)

心の中で雄たけびを上げ、引き金を引き絞る。

ロケット2発がシミュレーターに向って飛び出し、1秒後、かけまわっていた無人機は宇宙の藻屑と化した。

私は更にロケットを2基うちだし、目の前の小惑星を破壊し、クリアなスペースに機を送り出した。

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