■蓮×ピリカ
- 最近心の蟠りがとけないのは、SFが始まったらもうお兄ちゃんに会えなくなるからだと思ってた。
でも違った。SFの予選通過のお祝いに、葉さん家にみんなで集まったとき気付いた。
開会式直前、オラクルモニターで見たあの人―――道 蓮さん。
「…………」
気付けば私は、蓮さんのことばかり見ている。
「……?」
あ…。私の視線に気付いた蓮さんがこっちを向く。私は慌てて目を逸らす。
こんなことを続けているうちに、あっという間に時間は経ち、もう寝る時間になっていた。
(結局、お話も出来なかったな…)
布団に入りながら何も進展しなかったことに後悔する。明日にはもう帰っちゃうかもしれないのに…
(……今から会いに行っちゃメーワクかな…)
でも、今行かなきゃもう二人きりで話せるチャンスはない…。そう思った私はお兄ちゃんが寝てるのを確かめ、部屋を出た。
- 「……………」
蓮さんの居る部屋に着いたけれど、どうしても声を出す勇気が出ない。
(だいたい、蓮さん起きてるのかしら…。それに、こんな夜中にやっぱりメーワクよね)
私は諦めて部屋の前から立ち去ろうとした。その時―――
「……誰だ、さっきから」
「!」
突然部屋の中から呼ばれて、私はびっくりしてその場に立ち竦んでしまう。
何でわかったんだろう…?……でもこれはチャンスかも知れない。私は断られるのを覚悟で思い切って言葉を返した。
「あ、あの、こんな夜中に失礼なのは判ってますけど…お、お話、させて頂けませんか?」
「ホロホロの妹か…」
「そ、そうです」
「……入れ」
「え?…い、いいんですか?」
まさかこんなにあっさりいくとは思わず、へんな返事を返してしまう。
「…変な奴だな。自分から聞いておいて。入るならさっさと入れ」
「は、はい!」
私は緊張しながらドアを開けた。
- 「し、失礼します」
ガチャ…
ドアの向こうには、蓮さんがダンベルを両手に持って背中を向けていた。
「…話とは何だ?」
背中を向けたまま蓮さんが聞く。
特に何を話すかなんて決めてなかった私は、必死で質問を考える。
「あ、あああの、蓮さん、いつ帰っちゃうんですか?」
「遅くても明日の夜だ……そんなことを聞くために、昼間から俺の方を見ていたのではあるまい?」
「え…」
バレてた…。痛いところを衝かれた私は、また必死で質問を考える。
「れ、蓮さんは実家に帰るんですか?」
「ああ…」
「やっぱり…お別れを言いに?」
「………そんなものではない」
暫くの沈黙の後で蓮さんが答える。その声には何か重いものがあるように思えた。
気になった私は、無礼を承知で聞いてみた。
「じゃあ…いったい……?」
「…復讐だ」
「え?」
フクシュウ―――?
予想していなかった答えに、私は少し混乱してしまう。
「復讐って……家族に何かされたんですか?」
蓮さんのダンベルの動きが止まった。
- 「…この刺青を見ろ」
蓮さんが浴衣をはだける。私は言葉通りに背中を見る。
蓮さんの背中には、名前は分からないけど、どこかで見たことのある模様が刻まれていた。
「これは俺の親が道家の教えとして刻んだものだ」
未だ重い声で蓮さんは続ける。
「俺はその教えに惑わされ数多の命を手に掛けてきた。この罪は今更どうしようと贖える問題ではない。
だから俺は俺の親父を殺すために貴州へと帰る。そして自分を乗り越える」
蓮さんの声からは悲しみのようなものが伝わってくる。
「……本当にそう思ってるんですか?」
自然に言葉が口を衝いて出る。
「なに?」
「本当にそうすれば自分を乗り越られることができるなんて間違ってると思います……
それに自分の親を殺すなんて、それじゃ逃げてるのと同じです…!」
「ふん…兄に似て、口だけは達者なようだ……貴様には関係の無い話だ。話が済んだならとっとと帰れ」
「か、関係なくなんかないですっ!」
自分でも驚くほど大きい声になる。
「ええい黙れ!おまえに何が解る!?…第一なぜそんなに俺を気に掛ける?」
「それは………」
私は口籠ってしまう。
「そら、大した理由もない癖に……正義ぶるな、この偽善者が」
「…なっ……」
再び蓮さんがダンベルを上げ始める。
「……………!」
私は強く言い返されて興奮していたのだろうか。
私は蓮さんのその反応が気に食わなく、気付いたら後ろから近付いてて―――
「ん…?…んっ……!?」
ゴトッ
振り向いた蓮さんの唇を奪ってた。
「好きだからです………蓮さんのこと…」
私は自分の想いを打ち明けた。と同時に、我に返った。
- 「……あ」
「貴様……自分が何をしたか解っているのか?」
直視できなくて表情さえ判らないけれど、その声には威圧感が隠っていた。
「ご、ごめんなさいっ!」
(どうしよう…殺される……!)
私は目を瞑り、その場にへたり込む。そして動けなくなってしまう。
時間が戻るなら、何も言わずに出ていったのに……
でも今更後悔してももう遅い。私は震えながら、覚悟を決めた。
ちゅ……
「!?」
突然口に感じた柔らかい感触で目を開ける。
「……!」
目の前に、蓮さんの顔があった。
- 私、今、蓮さんとキスしてる……
そう気が付くのには暫く時間が掛かった。蓮さんが顔を離す。
「……んっ…な、なんで…」
「………全く、この俺の心を動かすとは……とんでもないことをしてくれたな、貴様は」
蓮さんは少しだけ口元を歪めて言った。
「――――!」
嬉しかった。
恐怖から逃れたからじゃなくて、ただ純粋に…嬉しかった。
「蓮…さん」
ちゅ……
今度は、二人の無言の同意の上でのキス。
「んっ……んふっ……ちゅ…………んんっ!」
唇の感触を楽しむように、夢中で啄んでたら、蓮さんが舌を入れてきた。
びっくりしたけど、私に拒む理由は何もない。私も、蓮さんの舌に自分の舌を重ねる。
「ちゅぷ……ちゅぱ……ふぁ…」
舌に感じる堪能的な感触に体が熱くなり、次第にぼぅっとしてくる。
「…ん………あ……!」
不意に唇が離され、畳に押し倒される。
これから何をされるかは解る。でも不安は拭いきれない。
「………嫌か?」
それが顔に出たのか、蓮さんが少し心配そうに聞いてくる。
「い、いえ……ただ…ちょっと怖いだけです」
「安心しろ…出来るだけ優しくしてやる……」
そう言って私の緊張を解すように、唇を重ねてくる。- 「んっ……ぷはぁ」
唇を離す。私の緊張は少し解けたみたいだった。
「もう平気です……来て…下さい」
「ああ…」
浴衣の懐から手を滑り込ませて、蓮さんが私の胸を、まだ残っている緊張を揉み解すように愛撫する
「ん……!ふあぁぁ…!」
蓮さんの少し汗ばんだ手が私の胸の先っぽに触れる度、声が漏れてしまう。
「あ…!やぁっ…!…いぃ……」
「敏感だな、貴様は」
「こうゆう時ぐらい、ピリカって…呼んで下さい……」
私がそう言うと、蓮さんは顔を心做しか赤くして、
「ピ…ピリカ…」
って呼んでくれた。
私は蓮さんを両腕で抱き寄せて、キスをした。
「ピリカ……」
今度は耳元で優しく囁いてきた。耳にかかる息がこそばゆい。
「あっ……」
太股の辺りが急に疼き出す。蓮さんの言葉に呼応するように、自然にもじもじと動く。
脚を擦り合わせる度に、あそこがクチュクチュと嫌らしい音を立てる。
「…もう我慢出来ないのか?」
「……わかってるんなら、そんなこと聞かないで下さい…」
自分でも顔がどんどん紅潮していくのが解る。
蓮さんのバカ……恥ずかしいよぉ…
「わかったよ…」
クチュ…
「ひぁ…!」
- 「何だ、もうこんなに濡れているじゃないか…」
「あぁっ…!そ、そんなこと、言わないで…恥ずかしいです……あ…!…っっ!」
わざと音を立てて、蓮さんがあそこを掻き混ぜてくる。私の頭は、羞恥でいっぱいになる。
でもきもちいい……自分でするのとは全然比べものにならないくらい……
私が絶頂するまでそう時間は掛からなかった。そして、あそこの一番敏感なところを強く摘まれた瞬間―――
「あ、あああぁぁっ…!!」
私は、達した。
まだぼうっとした目で、蓮さんを見つめる。
蓮さんは自分の浴衣の帯を解いて裸になり、そそり立ったモノを私の方に向けた。
大きい……入るのかな、私の…あそこに…
- 「心配か?」
その心境を察したのか蓮さんが聞いてくる。
「え……い、いいえ」
私は首を横に振って否定する。ここでやめたら、きっと蓮さんに嫌われちゃう。
「なら……いくぞ」
蓮さんが覆い被さるように腰を落とす。私のあそこに蓮さんのモノが音を立てて潜り込んでくる。
「い、痛っ……!」
すごく痛い…本なんかで見るのとは全然違うじゃない……
「む…済まない」
腰の動きを止めて、蓮さんが悪いことをしたみたいな顔をする。
「そんなことないです…来てください…」
ズプ…
「あああぁぁっ…!」
再び挿入を続けていく。途中で何かがぷつっと破けた感じがした。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
全部入った…
蓮さんの、火傷しそうなくらい熱く感じる…
- 「動いても、いいか?」
「はい…」
腰が動く。最初は痛いだけだったけど、だんだん気持ち良くなってくる。
「あっ、あっ、ああっ……!!」
それと同時に蓮さんの腰の動きも速くなる。
さっきイっちゃって敏感になってるから、もう持たなそう…
「蓮さん…!私っ…!…もう……」
「…もう、少し…我慢しててくれ……」
蓮さんはまだ足りないみたいだった。
一緒にイきたい私は、近くにあったシーツをぎゅっと握って我慢する。けど…
「も、もう…ダメッ!!」
「くっ…俺もだ……!!」
その言葉をきいて、私は一気に達した。
「あ、ああああぁぁっ…!!」
我慢してた分、快楽が私を襲う。
蓮さんのが…私の中で、飛び散ってる……
……私の記憶は、そこで途切れた。
「―――――はっ!」
布団から飛び起きる。……って布団?
「………あれ?」
辺りを見回しても、お兄ちゃんとコロロが寝てるだけ。
(蓮さん……は?)
私は昨夜のことを思い起こす。
(えっ…と、私は蓮さんの部屋に行って……それで…え、えっちして………それから……どうしたんだっけ?)
それからは覚えてない。多分私、気絶しちゃって…でもちゃんと浴衣を着てるし…体も…汚れてない。
(蓮さんがやってくれたんだ…)
そのことを想像すると顔が熱くなる。
(起こしてくれれば自分でやったのに…ああもう…恥ずかしい………っとと)
急に力が抜けて布団にへたり込んでしまう。体が怠い…それに眠い……。
時計を見る。……もう二時。
(明日…ううん、今日、蓮さん帰っちゃうんだ……)
もう逢えないと思うと虚しくなる。でも―――
(…お別れ言わなきゃ……明日は、ちゃんと話せるかな………)
私は目を閉じた。