残り香

 

僕は眠れなかった。

船室の窓から黒くのたうつ波を見ながら、僕は眠れなかった。

泣きすぎたせいで、まぶたは重いのに目は冴えているのだ。
何度目かわからない溜息をついた時、船室のドアを叩く音がした。
「こんばんは。リゼルグ、起きてる?」
「ミイネさん?!」
慌ててベッドから飛び下りた。
ドアを開けると、X−LAWSの制服姿のミイネさんがいた。
大人でも、もうとっくに眠っていなきゃならない時間だというのに。
「どうしたんですか……?」
ミイネさんも眠れなかったのだろうか、と思いつつ訊いた。
「入ってもいいかしら?」
「……どうぞ」
僕がうなずくと、彼女は船室の中に入り後ろ手にドアを閉めた。
「今、あかりをつけま……」
「いいのよ、そのままで」
「でも……」
「いいのよ」
薄暗がりの中、白い制服がわずかな光を集めていた。
そしてミイネさんは、優しく微笑んでいた。
「リゼルグ」
「はい……」
「あなたはセックスしたこと、ある?」
「ええっ?!」
予想していなかった質問に、僕はしばらく絶句してしまった。
「あ、ありません……けど……」
「そう、だったら――」
ミイネさんの目が細まった。
「あなたのはじめてを、私にもらえる?」

その顔は優しく微笑んでいたのだけれど、目は真剣だった。
僕はドキドキして、震えた。自分の唾を飲みこむ音が、いやに大きく聞こえた。
「――は、はい……」
「ありがとう」
突然、顔に柔らかいものが押し当てれられた。
ミイネさんの胸だと気づいたのは、次の瞬間。
抱きしめられていることに気づいたのは、その後だった。
「ミイネさん……」
「リゼルグ……」
ミイネさんの指が、僕のパジャマの背を撫でる。
時々、引っかくように爪を立てられて、ゾクっとした。
「僕、僕、どうすれば……」
「……胸、さわってくれる?」
恐る恐る、ミイネさんの胸に手を伸ばした。
撫でると、下着をつけていないことがわかった。制服の下、柔らかな乳房の真ん中に、硬い突起がある。
「はぁ……っ」
ミイネさんの吐く息が、僕の耳をくすぐった。

両方の手でミイネさんの乳房を包み込んだ。
硬くなってきた乳首を指先ではさんで転がすと、ミイネさんは「あっ、ああっ」と声を上げる。
そこが気持ちいいんだと思い、僕は指の動きを繰り返した。
「あ……はぁっ、リゼルグ……」
ミイネさんは脚をもじもじとくねらせた。
「下も、触って……」
「下?」
「ここ……」
ミイネさんは軽く脚を開いて、スカートを持ち上げた。
斜め下を向いた顔は、少し恥ずかしそうだ。僕は唾液を飲み込んだ。喉が鳴った。
脚の間に手を入れると、ぬるっとしたものが指に絡んだ。
驚いて引き抜く。指先は粘りのある液体でテラテラと光っていた。少し潮くさいにおいがした。
ああ、これが女の人の「濡れる」ってことなんだ。
知識では知っていたけど、実際に目にするのは初めてで、僕はものすごくドキドキしてしまった。
部屋が暗いせいで、嗅覚が鋭敏になっている。ミイネさんのにおいを強く感じる。
パジャマの下の僕の性器が、ビクン、と脈打った。

「いやよ、リゼルグ……においをかがないで」
「ご、ごめんなさいっ」
無意識のうちに鼻を動かしていたらしい。慌てて再び、指を差し入れた。
股のあたりはストッキングまでぬるぬるになっていて、その奥の下着、その奥の柔らかい肉とこすれる不思議な触り心地がした。
「あっ、ぁんっ、指、動かして…前後に……アンッ!」
前の方を触ると、ミイネさんがひときわ大きな声を上げた。
「あぅ、そこっ、いい、いいの……っ」
背を抱く力が強まった。僕は無我夢中で指を動かす。
「ア――っ、あっ、あっ、ああっ」
指の下の突起が、どんどん硬く、大きくなってくる。
それに比例するように、僕の性器も張り詰めてきた。
「あ!」
爪が引っかかったのか、ストッキングの破れる感触がした。
下着のすべすべした布――シルクだろうか――が指に張り付いてくる。
「ご、ごめんなさい……」
「いいのよ……続けて……お願い、やめないで……」
ミイネさんは泣きそうな声になっていた。言われるままに僕は指を動かす。
布越しの突起は、形がはっきりわかるほどに尖ってきている。
「あっ、あっ、あ……わたし、わたし、もう……っ!」
膝がぶるぶると震える。僕を抱く力が強まる。
腰がガクンと落ち、指が突起を強く押したその瞬間――
「あ、あああああああ―――――ッ!!!!」
ミイネさんは大きな叫びをあげた。同時に熱い液体があふれ、僕の手を濡らした。
「あ……ああ……ああ…………」
ずり落ちるようにして、床に膝をつくミイネさん。彼女の柔らかい頬がちょうど僕の股間に当たった。
僕の性器はとても硬くなっていて、とても恥ずかしかったのだけれど、体をずらすとミイネさんが倒れてしまいそうだったので、そのまま立っていた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
熱く荒い呼吸をパジャマ越しに感じる。なんてもどかしい刺激。耐えきれなくなって身をよじったその時、
「リゼルグ……」
ミイネさんが僕の性器を撫でた。思わず「ひっ」と声を漏らす。
「こんなにしていたのね……可愛い子…………今度は私が気持ち良くさせてあげる」
その声は母さんのように優しかった。

ミイネさんは僕をベッドに座らせると、下着ごとパジャマのズボンを脱がせた。
上を向いた性器が顔を出す。恥ずかしくなって目を閉じた。
ピチャ……
「あっ!」
不意に先の方に濡れた感触がした。目を開けて見ると、ミイネさんが音を立てて性器を舐めていた。
先端をピチャピチャと舌が往復する。
「う……っ、はぁあ……」
「ん……んん…しょっぱい液が出てるわ……んっ」
「や、やだ……ああっ!」
カリの下をなぞるように舐められた。それが気持ちよくて、思わず声を出してしまう。
「あっ、ああぅ……んっ」
「可愛い、リゼルグ……んむ…」
「ああっっ!」
ミイネさんが僕を飲み込んだ。
深く咥えながら性器の裏側を舐めしゃぶってくる。口の中は熱くて、柔らかくて、とても気持ちが良かった。
「は、あ、あっ、ミ…イネさん……っ」
「んっ、んっ。んっんっ」
ミイネさんのの頭が、僕の股間で上下に動く。柔らかい毛先がそれにあわせて太ももをくすぐる。
右手が睾丸を包み込み、優しく撫ではじめた。
「あうううっ、あっ、あああっっ!」
生まれて初めての感覚。船の揺れがめまいを誘う。頭の奥がぼうっと霞んでくる。
この心地よさにずっとひたっていたい……そう思った時、前ぶれなくミイネさんが僕を口から引き抜いた。
「ミイネさん……や…」
やめないで。
言おうとした僕の口をふさぐように、ミイネさんがキスをしてきた。

「ん…んんん……う……」
母さんが寝る前にしてくれたキスとは全然違う、いやらしくてとろけるようなキスだった。
舌が僕の内壁をれるれると舐め、唇がちゅぱちゅぱと僕の舌を吸う。
「んんー…んむ、ん…………んんッ!」
ミイネさんの手が、性器を握った。そのまま上下にしごきだす。最初は優しく、徐々に激しく――
動きにあわせて、快感がどんどん高まっていく。ピーク寸前まで追い詰められる。
「ん、んんん……ん、はぁっ!」
こらえきれず、唇を離した。
「う…そ、そんなにされたら僕……う…っ」
「……イきそうなの?」
「は、はいっ、僕、もう、あっ!」
「それじゃあ……」
ミイネさんは性器を握ったまま、座っている僕の上にまたがった。
「私の中でイって……リゼルグ」

 


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