ねがいごと

 

『炎』に二人が住み初めてから二年目の夏が訪れた。
今日は七月七日。七夕だ。
その日の夕方、アンナは縁側で去年と同じく葉達に採りに行かせた笹を眺めていた。
時折流れ込んでくる風を受け、笹の葉がさらさらと音を立て、清々しい香りを運んでくる。
そんな他愛無いことで愉しんでいると、向こう側からぺたぺたと裸足で古びた板作りの廊下を叩いて、
「よお、何してんよこんなとこで」
葉がアンナの隣に腰掛けた。
「見りゃわかるでしょ。涼んでるのよ」
予想通りの返しに苦笑する。
葉の服装はアンナと同じで浴衣姿だ。ひんやりとした風が頬を撫でる。
「おー、いい風入んな」
持ってきた団扇は必要ないと、横に置いた。
「なあ、アンナ」
「何?」
「短冊、なんて書いた?」
葉の何気ない質問にぴくりと肩を震わせる。
「な、何だっていいじゃない」
アンナは笹から視線を外し、葉の置いた団扇で顔をせわしなく扇いだ。
「…あんたこそ何書いたのよ」
「ん? オイラか? オイラはな…」
体の向きを変えずに今より少しだけアンナの方に腰をずらして、耳元で囁いた。

「………! お、おバカ……」
それを聞いたアンナは、過敏に反応してしまった顔色を悟られまいと、ぷいとそっぽを向いた。
葉は予想通りの行動に、頭をぽりぽり掻いて、また苦笑する。
「アンナ」
なによ、と決まり悪そうに振り向いたアンナの唇にゆっくりと顔を近付けて、軽くくちづける。

夏の夜空に浮かぶ天の川にある二つの星が、少しだけ紅くなった二人の頬を照らした。


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