鳳長太郎。氷帝学園中等部2年。テニス部所属。
爽やか。いい人。背が高くて銀髪。父親が弁護士でそこそこ裕福。
俺に対する周囲の認識はだいたいこんなものだ。
ある意味それは正しいけど、あくまで作られた俺のイメージに対するものだ。
自分で言うのもなんだが、顔は悪くないし成績もいい。
ぶっちゃけテニスも上手い。氷帝テニス部正レギュラーで2年は俺と樺地だけだ。
実際モテるし、この歳で女の子(正しくは女の人)に不自由したこともない。
爽やかなのは意識してやってる訳じゃない。多分俺が、男子が盛り上がる猥談に参加しなかったりするからだと思う。
別に猥談が嫌いなわけじゃなく、あまりにガキくさくて興味がないだけだ。
姉の友達に誘われるまま(彼女は俺が中学生と知らなかったらしい)何となくついていって、関係を持って以来、
その手の年上のお姉さん達と後腐れなく楽しいんでいる。何故か年上から異様にモテるのだ。
足がつかないように、学内の関係者には関わらないようにしている。あくまで相手は年上だけ。
おかげで今のところ殆どバレてはいない。俺を爽やかだと思ってる同級生の奴らが知ったらきっと大騒ぎだ。
人の為に何かしてあげるのも苦じゃない。マメな方だと思う。
でもそれはいい人だからじゃなく、裏にそれなりの打算があるからで…
俺の行動をみんな勝手に善意に受け取ってくれているだけだ。
そんな風に考える程度には俺は性格が悪いと思う。素行だって褒められたもんじゃない。
学校生活は上手く行ってるし、プライベートも充実してるし、俺の人生順風満帆!なんて思ってたけど。
まさか自分が同性の先輩に本気になるなんて落とし穴があったとは…
楽なおつきあいに慣れてしまった俺にとって、一人の人間を愛しく思って、独占したいなんていう欲望が
自分の中にあることに戸惑った。
相手が男だというのも「何考えてるんだ俺」と少なからず悩んだ。
それこそ、『サーブだけ』(あの応援なんとかしてくれ…)の俺のスカッドサーブの速度が3割減するほど、毎日悩んだ。
でも、好きなものはしょうがないと開き直ったら驚くほど自然に気持ちを認められた。
一旦受け入れてしまえば想いは日々募るばかり。遊ぶのもすっぱり止めて、テニスに打ち込んでいる。
そうすることが宍戸さんと手っ取り早く一緒にいられる方法だから。
宍戸さん。俺が初めて心の底から好きになった人。
「どこが?」と聞かれれば「全部」、「何時から?」と聞かれれば「気がついたら」としか答えようがない。
他のヤツがそんなこと言ったら「はあ?何言ってるんだ」と俺でも思うだろう。
でもほかに答えようがないから仕方が無い。
去年の春、テニス部に入部した時の第一印象は、はっきり言ってサイアクだった。
やけに髪が長くて口が悪くて自信家で。感じの悪い先輩だと思った。
でも、人一倍陰で努力する姿や、意外と後輩の面倒見がいいところ、ぶっきらぼうな態度の裏側にある優しさに気づいてからは、
いつの間にか目で追うようになった。
先輩たちにイジられて、すぐムキになる姿なんか可愛いくて年上とは思えない、とか思ってるうちに引き返せないところまで来ていた。
恋は盲目。今の俺にぴったりだ。俺の世界は全てが宍戸さんを中心に回っている。
本人だけは俺の気持ちに全く気がついていないみたいだけど、(周りが気づいてて同情の視線を投げてくるのが、無性に腹が立つ)
今はまだそれでもいいと思ってた。
アレコレ色々したい気持ちがないとは言わないけど、アクションを起こして嫌われるくらいなら、
一緒にテニスが出来る今の関係が幸せだった。
そう思っていた。
都大会が始まるまでは…
あとがきみたいな言い訳
こんなの長太郎じゃない…ような気がして仕方が無いです。誰なんだろ(笑)
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