なあ、誕生日っていうのは、『おめでとう』って祝福される日じゃなかったのかよ?
俺は生まれてから15年間、ずっとそう思ってたぜ…









9月29日。今日は俺の誕生日だ。
朝からクラスの女子の有志が、怪我ばっかしてた俺のために(もう部活引退してめったに怪我しないけど)
キャラクターモノの絆創膏を山ほどくれた。気持ちは嬉しいが、プーさんやパンダの絆創膏をどうしろというのだ…。

昼休み、跡部が俺のところにやって来た。当然のように、樺地も一緒だ。
「よう、宍戸。これ誕生日プレゼントだ。樺地」
「ウス」
俺は樺地から渡された包みを受け取った。中身はよく判らないが、包装された立方体だった。

「わざわざ有名な業者から取り寄せてやったんだ。感謝しろよ。行くぞ、樺地」
ニヤリと笑って、恩着せがましく言うと樺地を連れて自分の教室に帰っていった。

一人になった俺は、ごぞごぞと包装を解く。
やっぱ跡部がくれるものだから、高級品かもしれない、といらぬ期待してしまう。

出てきたのは、黒い箱に金文字。薬っぽい外見だ。
「『絶倫無双U』?これって…精力剤じゃねぇか」
思わず口に出してしまって、慌てて俺は机の中に隠す。あからさまに高そうな品であった。
俺は、人に見られないように説明書きを読んでみた。


『選ばれた人の究極の至宝、『絶倫無双U』
 貴方の夜の生活はますます充実。
 ハブ・マムシ・スッポンの胆・オットセイエキス・ガラナ粉末・亜鉛・
 田七人参・(7年根)・マカ粉末・コブラの胆嚢・蛇胆・サソリ・海蛇…』



とんでもないものばかり入っている気がする。
「何で俺にこんなもんよこすんだ、あいつは。いらねえぞ」
俺は、がっくりとうなだれた。その拍子に、一枚のメモがヒラヒラと落ちた。
「『鳳の相手は大変そうだしな。てめぇの方に必要だろ?』って…くっそぉ。跡部のヤツ」

怒りに震えて、返品に行こうと席を立ち上がったら、忍足と岳人がやって来た。
(ちっ、また面倒ななヤツラが来たぜ)
とりあえず、何を言われるかわかったもんじゃないので、跡部から貰ったものは見つからないように隠す。
「宍戸、誕生日おめでとうさん。これ、俺と岳人からプレゼントやで」
「おう。お前に必需品だからなー。これでバッチリだぜ」
この気持ちが悪いほどの笑顔に、とても嫌な予感がする。
「てめーらからもらいたくねぇけどな…」
「宍戸、失礼だぞ」
「せや。俺ら一生懸命考えたんやからな」
「そうかよ。ありがとよ」
取ってつけたように、礼を言った。
「なあ、鳳からは何もろたん?」
忍足が興味津々と顔に書いて聞いてくる。
「別に、何も貰ってねえ」
俺は正直に答えた。今日はまだ長太郎に会っていない。
でも、きっと何か用意しているに違いない…それも相当困ったものを。

「アイツ、『俺をたっぷりあげます』とか笑顔で言いそうだよな」
「せやねー。確実に寝かせてもらえへんやろね」
ニヤニヤしながら勝手なことをぬかしやがる。
本当にそうなりそうで恐いから、せっかく俺が考えないようにしているのにコイツらときたら。
「うるせぇな。用が済んだらとっとと帰れよ」
シッシ、と追い払うとブツブツ文句をたれながら、戻っていった。

義務感でもらった袋を開けると『医療用ワセリン』と書いたチューブが出てきた。
「これ、なんに使うんだ?アイツらわけわかんねぇな」
俺が首を捻っていると昼休み終了のチャイムが鳴った。
跡部に返品に行く時間もなくなったので、とりあえず、貰った二つをカバンに放り込んだ。
そして、不幸なことに、俺はそいつらの存在を忘れてしまった…



長太郎が「プレゼントがあるので家に寄って行って下さい」と言ったので
俺は部活が終わるのを待って、長太郎と一緒に家に向かった。
部屋に通されて待っていると
「宍戸さん、誕生日おめでとうございます!」
満面の笑みとともに、ラブリーな包装の箱を渡された。
今日初めてまともっぽいものだったので、俺は純粋に嬉しくなった。
「開けてもいいか?」
「どうぞ」
いそいそとリボンを解いて中をあけると… ←クリックしてみてください


巨大なハート型のチョコクッキーがいた。俺は脱力してしまった。
美味そうなんだけど、これはないだろう、長太郎…
「なあ、これってどこかに注文したのか?恥ずかしくなかったのかよ」
「何言ってるんですか。昨日調理実習で俺が作ったんです。味は保証つきです」
自慢げに長太郎が言った。
ってことは何か?長太郎は授業中クラスのやつが見ている中でこんなもん作ってたのかよ。
気持ちは嬉しい。嬉しいけど…
「てめっ、クラス中にバレバレってことかよ。恥ずかしいじゃねぇか」
俺は思わず立ち上がって、大声を出してしまった。
「いやだなあ宍戸さん。そんなこと今更ですよ」
「イマサラ、なのか?」
そうなのか?俺と長太郎の関係は周知の事実なのか?俺はへなへなと座り込んだ。
「そんなにショック受けなくても大丈夫ですよ、ね?」
俺を覗き込んで笑顔で言われて、「そうだな」と答えるしかなかった。

せっかく貰ったから食べないと悪いかと思って少しかじってみたら、長太郎が言ったとおり味は悪くなかった。
「うまい…と思う」
「よかったです」
あんまり嬉しそうに笑うから、これはこれでいいのかもしれない、と思った。
思ったより普通のプレゼントだったので、また散々な目に会わされるかも…
と心配したことをちょっとだけ反省しつつ、俺はクッキーをモソモソと食った。

「ところで宍戸さん、カバンの中のそれってプレゼントですか?」
俺のカバンをじーっと見ながら長太郎が言った。
「あ、忘れてた…」
「何貰ったんですか?」
とても見せられるものじゃないけど、隠せば余計に怪しいし…
「なんでもねぇよ」
「じゃあ、見せてくださいよ」
ずいっと距離を詰められ、俺は反射的にカバンを背後に隠す。
「何で隠すんですか?」
「あ、いや…その…」
「俺に見られたら困るんですか?」
「そういうわけじゃ…」
「ならいいじゃないですか」
俺は恐慌状態で、カバンをとにかく死守しようとした。
「わかりました」
長太郎がそう言ったので、ああ、諦めてくれたのか、と言おうとした瞬間、顎を捕らえられて唇を塞がれた。
開きかけていた口は容易に舌の侵入を許してしまい…口内を蹂躙されて俺はぼーっと力が抜けてしまう。
やっと解放されて、肩で息をついていると目の前で長太郎がカバンを開けていた。
「お、まえ…卑怯だ、ぞ」
やっとのことでそう言ったが、すでに手遅れだった。
跡部からもらった『絶倫無双U』を手にとって、しげしげと眺め
「宍戸さん、俺、そんなに満足させてなかったですか?」
と真剣な表情で言う。
(そんなわけあるか。俺はいつもいっぱいいっぱいでガクガクでグッタリだ!)
「そうじゃねぇよ。跡部が、俺に、ってくれたんだ」
思わず正直に答えてから、己のウカツさに頭を抱える。
「跡部さんもいいとこあるじゃないですか…これで宍戸さんもっともっと俺に付き合ってくれるんですね?」
(ニコニコ笑いながらそんなこと言うなー)
俺の心の叫びなどお構いなしにもう一つの袋の中身を取り出した。
「あ、それは忍足と岳人がくれたんだけどよ。そんなもん何に使うんだ?」
「本気で言ってますか?宍戸さん」
「あたりまえだろ」
「宍戸さん、もうこんなもの必要ないんだけど。あの二人もなかなか…」
「ああ?」
「使い方、教えてあげますよ」

あ、この顔は…ヤバい。ヤってる最中によく見せるこの顔は、俺に恥ずかしいことを言わせたり、
なんだかんだと言葉巧みに意地の悪いことをいうときの顔だ。
俺は本能的に危険を察知して後ずさりしたが、すでに遅かった。
腕を捕らえられてあっというまに押し倒され、手際よく制服のズボンを下着ごと脱がされてしまった。
暴れようにも、長太郎に全身で押さえつけられてびくともしない。
そんな俺にお構いなしに、長太郎は医療用ワセリンを開封してたっぷりと出すと、あろうことか俺の後ろに塗り始める。
「ひぃあっ」
感触の気持ち悪さと冷たさに思わず声を上げる。
俺は、瞬時に理解した。
(そういうためのものだったのか…ちくしょうあいつら余計なことばっかりしやがって…)
「なっ、長太郎。ソレ、使い方、わ、かった…ぁぁ…から、も、やめっ」
「せっかく貰ったんですから、使わないともったいないですよ」
そんな間にも指を差し入れられ、内部にまで執拗に塗りつけられる。
卑猥な音に耐えかねて抗議するが、抑えられない声が邪魔をする。
「やめっ、ろ。…あっ…んん」
指を増やされ、かき回されて頭がおかしくなりそうだ。
「こんなところでやめていいんですか?いいわけないですよね?」
俺の分身は、すでに俺の意思どおりに言うことを聞いてくれなくなっている。
たしかにやめられたらツライのだが、こんなのはちょっと、否、かなり嫌だ。
「それに」
指の動きを止めるどころかますます激しく抜き差ししながら、長太郎が言った。
「どうせ、今日は最初からそのつもりでしたから。本当の誕生日プレゼントはこれからたっぷりもらってくださいね」
(ああああやっぱり…。今日は俺の誕生日のはずなのに。なんでこんな目にあわなくちゃならないんだ…)
「あ、なんならさっきの『絶倫無双U』一緒に飲んでみますか?」
長太郎が追い討ちをかける。それだけは勘弁してくれ。きっと俺は死んでしまう。
「飲まなくていい…」

諦めるしかないらしい。俺は腹をくくってそう言ったつもりだったが、喘ぎ声に埋もれてしまった。

その後、散々啼かされて、気絶するように眠ったらしく気がついたら、翌朝だった。
もう、誕生日なんて…大嫌いだ。

最初からこうなることはある程度決まっていたようなものだが、あの3人が妙なプレゼントを渡しやがったせいで、
俺の被ったダメージは確実にでかくなった。
俺はあいつらにどうやって八つ当たりしようか考えつつ、フラフラしながら登校するのだった。


言い訳のみたいなあとがき
宍戸さん、お誕生日おめでとうございます!…でも全然おめでたい感じにならなかった。お祝いする気持ちはあるのに〜
自分設定の流れだと、3年生の誕生日の時点じゃここまでの関係になってないはずなんだけど
番外編ってことで、ちょっとネタっぽく、お下品な感じになりました。
『絶倫無双U』名前は適当につけてみましたが、実際10万近いお値段であの内容のものが売ってます。
宍戸さんはウカツなのでクスリを鳳宅に忘れてきて、いつ出てくるのかと怯えることになります(笑)
私の中で長太郎はお誕生日になると自分をたっぷりプレゼントしてくれる人です(迷惑な)
宍戸さんは所詮長太郎にぞっこんlove(笑)なので、あんな目にあっても長太郎にはあまり文句は言わないと思います




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