腹筋を鍛える男 ROUND.1 事の起こりは… g「なあ、宍戸。最近鳳のヤツ暇さえあれば腹筋してるらしいじゃん」 s「ああ、そうみたいだな」 x「ほんまやったんや」 s「おう。屋上で昼飯食った後とかもやってるぞ」 x「へぇ〜。アイツそないに筋トレ好きやったかいな?」 g「アレじゃん?仮面ライダーみたいな腹筋目指してるんじゃねぇ?ギャハハ」 s「…(長太郎のハラはすでに割れてるけどな)」 x「何やろうね?宍戸、ジブンは知らんのか?」 s「サーブの速度アップのためにって言ってたけどな」 g「それだったら背筋鍛えるんじゃねーの?」 s「アイツの場合、背筋ばっか強くなってバランス悪くなっちまってるから腹筋も強くして、  もっと速いサーブ目指してるんじゃねえのか」 x「よう知ってるやん、宍戸」 s「聞いたらそう言ってたんだよ」 x「せやけど、ホンマにそれでサーブ速なるん?」 s「さあな。俺、次音楽だから先行くぜ、じゃあな」 g「ああ」 宍戸さん、退場 x「なあ、岳人。ホンマにそんな理由やと思うか?」 g「それも理由の一つだと思うけど、何かあるんじゃねぇ?鳳だし」 x「せやなぁ…日吉にでも探り入れさせとこか」 g「だな。俺らも授業行こうぜ、侑士」 ROUND.2 先輩風を吹かす テニスコートにて g「おーい、日吉」 h「何ですか、先輩達。邪魔するならコートに来ないで下さい」 x「ジブン相変わらずやね」 g「そうだぞ、日吉〜先輩は敬うもんだぞ」 h「で、何か用ですか?」 g「(スルーされた…)最近、鳳が腹筋マニアになってるって知ってるか?」 h「…ええ(この人達何言ってるんだ)サーブの速度アップのために頑張ってるって  言ってました。無駄な努力じゃないかと俺は思ってますけど」 x「冷たいなあ〜チームメイトやんか」 h「…(忍足先輩マジウザイ)だから何が言いたいんですか?練習に戻りたいんですけど」 g「ああ、日吉悪ぃ。侑士、絡むなよ。」 x「堪忍(岳人、日吉には何か気ぃ使いよるなあ)  そんでな、鳳が突然腹筋鍛え出したのにはウラがあるんちゃうかと俺らは思ぉとるわけですよ」 h「は?何言ってるんですか?(っていうかどうでもいいだろ)」 g「それとなく鳳に聞いてみてくれよ、日吉。な?」 h「何で俺が…(そんなどうでもいいこと)」 g「カバジじゃダメだしよ。お前にしか頼めないんだ。絶対何かあるって。  お前だって知りたいだろ?」 h「俺は別に…」 x「日吉、先輩の言うことは素直に聞いておいたほうがええで?」 h「…(引退したくせにうっとおしい)」 g「な、頼む。今度練習みてやるからさ、侑士が」 x「俺かい。って何やその不満そうな顔は」 h「いえ、別に」 g「それによ、絶対宍戸絡みだと思うわけよ。面白そうだと思わねぇ?」 h「(やっぱり。またこの人は…)宍戸先輩が絡んだ鳳のことに関わるのはイヤです」 x「大丈夫やて。それとなく聞いといてくれればええんやし。  俺が練習相手で不満なんやったら跡部も連れてったるわ」 h「………!わかりました。でも期待しないで下さい」 g「日吉、サンキュー」 x「頼んだで(なんやコイツ〜跡部とやったら練習したいんかい。俺傷つくわ…)」 h「練習戻りますんで、失礼します」 x「俺、納得いかへんで…なんやねん。俺は氷帝の天才やで」 g「何ブツブツ言ってるんだよ、侑士〜。しょーがねーだろ、お前。跡部にはかなわねぇよ。」 x「…せやね(ガックンひどいわ)」 g「さーて、早く日吉探ってきてくれねぇかな〜」 x「…せやね……」 ROUND.3 貧乏くじを引く hi「鳳、お前腹筋鍛えてサーブ速くなったのかよ」 ch「ん?ああ。ちょっとだけかな。どっちかって言うとめいっぱい打ってもコントロールが  付くようになったかもしれない」 hi「…(うかうかしてられねぇ)じゃあ、本当にサーブのためなんだな、腹筋」 ch「まあ、そうかな?他にも目的はあるけど、日吉には関係ないことだから(笑顔)」 hi「(くっ…本当にむかつくぜ)そうかよ。俺帰るから、戸締り頼んだぜ」 ch「ああ、お疲れ」 日吉、帰宅 ch「宍戸さんのためだなんて、別にわざわざ教えてやる必要ないもんな」 長太郎ひとり居残り、腹筋にいそしむ。 翌日、屋上にて hi「あ、向日先輩」 ga「なんだ日吉〜お前がこんなトコ来るなんて珍しいじゃん」 hi「教室で聞いたら屋上だって言われたんで」 ga「わざわざ悪ぃな〜。んで、何の用?」 hi「昨日の、鳳の話ですけど…」 ga「ああ、あれな」 hi「他に目的はあるけど俺には関係ないから言わないそうです」 ga「なんだよー。ケチだなアイツ」 hi「(ケチって…)俺もう義理は果たしたんで」 ga「あ、ああ。うん。サンキュ。変なこと頼んで悪かったな。侑士に言っておく。  俺でもよければ練習付き合ってやるから」 hi「ありがとうございます じゃあ」 ROUND.4 当たって砕けた 放課後テニスコートにて ga「ゆうし。やっぱり何かあるみたいだぜ」 x「やっぱりか」 ga「もう直接聞いてみるしかないな」 x「アイツが素直にクチを割るとは思えへんけど、ま、ダメもとでいってみよか」 x「なあ、鳳。ジブン腹筋鍛えてるんはサーブのためだけやないんやろ?」 「いきなりなんですか」 ga「他にナニがあるんだ?」 「ふぅ…」 ga「ため息つくな。日吉に聞いたんだぜ。他に目的があるって。  減るもんじゃないし言ってみろよ」 「たとえそうであったとしても、先輩たちには何の関係もないことですから(笑顔)」 ga「鳳ナマイキだぞ。いいじゃん教えてくれたって」 x「岳人、もうやめとき」 ga「何だよ侑士。お前だって気になるだろ?」 x「それはそうやけど」 「…フゥ。向日先輩、そんなに知りたいなら直接カラダに…」 ga「!!ひぃっ。いい。もういい。俺は何も聞きたくないし知りたくない。行くぜ、侑士」 x「(まさか…本気やないやろけど…困ったヤツや)ほな、鳳、邪魔したな」 「俺が宍戸さん以外の男に何かするわけないのに… まあいいや。  これでうっとおしくなくなるだろうし」 x「岳人〜泣くなや」 ga「泣くか、バカ侑士」 x「関西人にバカ言うたらあかんのやで」 ga「…」 x「どないしたん?」 ga「…いや。宍戸ってえらいやつかもしれねぇ、と思ってよ」 x「ハハハハ。ある意味そうやねぇ」 ga「俺マジびびった」 x「まあ、アイツが岳人に何かするとは思えへんけどな」 ga「もう、俺関わりたくねぇからな」 x「ジブンから言い出しよったくせに。ま、ええわ。俺に秘策があるねん。まかしとき」 ga「秘策ってなんだよ」 x「ひ・み・ちゅ」 ga「うわっ、キモー」 x「キモイ言うな。傷つくやろ」 ROUND.5 困った時の跡部様頼み x「跡部、ちょっとええか?」 a「あぁ?俺様は忙しい。とっとと用件言いやがれ」 x「実はカクカクシカジカで…」 a「ハン、くっだらねぇ」 x「(むかー鼻で笑いよったで今)」 a「てめぇら暇だな」 x「跡部、頼むわ。ジブンだけが頼りやねん」 a「…フッ、まあいいだろう。鳳のサーブが速くなってるか試してやるのも悪くねぇ」 x「やっぱりテニス馬鹿…けど、ホンマはそれだけやないくせに」 a「てめぇ何か言ったか?」 x「言ってませんて。よろしゅう頼むな?跡部」 a「上目遣いすんな、気持ち悪ぃ。じゃあな、俺は帰るぜ」 x「俺は気持ち悪ないでー」 a「うるせぇよ、バーカ」 x「どいつもこいつも、ホンマ腹立つわ」 跡部、コートに降臨 hi「鳳、跡部さんが呼んでる」 「何だろう?珍しいね、跡部さんが部に顔出すなんて。」 ka「ウス」 hi「お前なんかやらかしたのか?」 「記憶に無いけど…」 「跡部さん、俺に用って何ですか?」 at「鳳、お前サーブ改良してるんだってな」 「はい」 at「俺様にその成果を見せてみろよ」 「えええ?跡部さんにですか?」 at「お前のサーブを取れるヤツなんていねぇから、レベルアップしてるか  他のヤツじゃわかんねぇだろ。練習台になってやる」 「ありがとうございます。お願いします!  (って言ってもまだそんなに効果出てないと思うんだけど)」 at「俺が取れなかったら、前に欲しがってたモンをやるよ」 「!本当ですか?」 at「ああ。ただし」 「(やな予感)」 at「余裕で取れたら俺の言うこと聞いてもらうぜ」 「何でですかっ」 at「俺様が練習を見てやろうっていうんだ、ただってわけにはいかねぇな。  安心しろ。別に無茶な要求する気はない」 「跡部さんが勝手に練習相手になってくれるって言ったんじゃ…モガッ」 ka「ウス(鳳、やめろ。跡部さんの機嫌を損ねてくれるな)」 「でも、カバジ…」 ka「…ウス(頼む、鳳)」 「…わかったよ、カバジ」 hi「鳳、てめぇが負けなきゃいいだけの話だろ」 「簡単に言ってくれるよなぁー日吉」 hi「下克上だ」 「…わかった」 ROUND.6 俺は、負けない x「ほんなら、10本中5本以上跡部が返したら跡部の勝ちな。あ、フォルトはカウントせえへんで」 a「それでいいぜ」 c「お願いしますっ(思い切り手加減されてる気がする)」 x「よっしゃ。スタートや」 c「行きますよ、跡部さん。一球入魂!」 a「甘い、甘い。おらよっ」 物陰にて s「長太郎、何やってるんだよ…あと1本取られたら負けちまうぞ」 g「跡部、いいぞー」 s「岳人、てめぇは何でここで隠れてんだ」 g「(鳳怖いからとはぜってー言いたくねえ)なんだっていいだろ。あ、鳳決めやがった」 s「いいぞ、長太郎」 g「何だよ宍戸、跡部が勝たなきゃ意味がねぇんだよ」 s「は?何でだ?」 g「…鳳の腹筋の理由を聞き出すんだ」 s「あのなぁ…サーブのためだろ?まだそんなこと言ってやがるのか」 g「別に理由があるってアイツが認めたんだよ」 s「そうなのか」 g「ああ」 s「くだらねぇな」 g「お前だって知りたいだろ?」 s「・・・う、別に…」 g「嘘つけ〜。って跡部勝っちまったみたいだな」 s「だな。長太郎のやつ、情けねぇなあ」 g「跡部相手だからな」 c「ハァハァ…ありがとうございました(まだ跡部さんには全然かなわないや)」 a「鳳、ちょっとは速くなってきてるが、まだ俺様に取れないほどじゃねぇ。  確率が上がってるのは褒めてやる。もっと練習しろよ」 c「はい(この人やっぱりすごいよな…ちょっと変だけど)」 a「で、だ(ニヤリ)」 c「(来たよ)」 a「お前の筋トレの理由は何だ、アーン?」 c「…は?」 a「言うこと聞くって言ったよな」 c「(どうせ忍足さんたちにそそのかされたんだ)そんなこと知りたいんですか?  忍足さんたちが聞いてくれって頼まれたんですよね…」 a「(チッ、ばれてやがる)ごちゃごちゃ抜かすんじゃねえよ。とっとと言え」 c「聞いて後悔しませんか」 a「俺様は後悔するような生き方はしてねえ」 c「(はいはいそうですか)知りませんよ…」 a「勿体ぶりやがって。最初から素直に吐けばいいんだよ」 c「…実は………(ボソボソボソ…)」 a「!!!!なっ…(赤面)」 c「だから聞かないほうがいいですよって言ったじゃないですか」 a「……俺は何も聞かなかったことにするぜ。じゃあな、鳳。練習しっかりやれよ」 c「はい」 a「おい、カバジ。帰るぞ」 k「ウス」 x「こら待たんかい、跡部〜カバジは部活やろ」 a「うるせえ」 ROUND.7 知らない方がいいこともある x「で、何やったん?」 at「……(言いたくねえ。俺様の高貴な口が腐る)」 x「だから何やったんって聞いとるやろ」 at「うるせぇよ。あんなヤツと一緒にやっていくの大変だな…カバジ」 ka「ウス(跡部さんがこんなこと言うなんて。鳳、何言ったんだ?)」 x「なんやなんやーーー。教えてくれたってええやんか」 at「黙れ。約束だから後で教えてやるよ。(ただしメールでな…)」 x「早く知りたいのになぁ、景ちゃんのいけず」 at「ああ?何か言ったかこのエセメガネ」 x「なんでもありません。で、やっぱ宍戸絡みだったんか」 at「……ああ(宍戸は俺の知らない世界に行ってしまった)」 x「やっぱりなぁ。何やったんやろねぇ。カバジも知りたいやろ?」 ka「…ウス(知りたくないような気がする)」 at「カバジもそう思うだろう?お前は知る必要ないぜ」 ka「ウス」 x「俺にもわかるように会話してや〜」 真相を知る ga「あ、侑士来た。俺帰るな。じゃあな宍戸っ」 sd「おう。またな」 ga「侑士、聞いたか?」 x「いや。跡部のやつ言いたないて」 ga「はぁ?何だよソレ」 x「後で教えてやるって言ったきりカバジと帰ってもうたわ」 ga「そんなに言いたくないことなのか?」 x「みたいやで。宍戸絡みには違いないらしいけど…あ、メールや。噂をすれば跡部からやで」 ga「珍しいじゃん」 x「ホンマやね。何々、『口が腐りそうだったからメールにしたが、文面にするのはもっと  不快だと今気がついた。約束した以上仕方ないがな。鳳が腹筋を鍛えているのは、  腹筋を今以上に堅く強くして、宍戸と正面から抱き合ったときに…腹部に当たる…』」 ga「なんだよ侑士。途中で止めんなよ」 x「こんなことやと思ってたけど、まさかホンマに…」 ga「一人で納得するなよ」 x「岳人、自分で読んでみぃ」 ga「ケータイ貸せよ。『腹部に…あ……」 x「ジブンかて黙ったやないか」 ga「『…以上だ。サーブは副産物にすぎないですよ、とか抜かしやがった。アイツを副部長に  したのは失敗だったかもな。この話題、二度と俺の前でするんじゃねえぞ。じゃあな』」 x「…あー…聞かんほうがよかったかもしれへんな」 ga「…だな」 x「宍戸くんはそのうち身をもって筋トレの成果を感じることになるんやねぇ(遠い目)」 ga「ああ。やっぱり宍戸ってえらいやつだぜ」 x「せやね」 ga「帰ろうぜ、侑士」 x「なんか疲れてもうたな、ガックン」 ga「……」 Final 腹筋の誤った使い方 sd「跡部との勝負、惜しかったな」 「ああ、あれですか。ま、仕方ないですよ」 sd「悔しくないのか?」 「まだ時期尚早っす」 sd「そうなのか」 「それに、本当は宍戸さんのためなんですから(笑顔)」 sd「は?俺?お前意味わかんねぇよ」 「まだ途中ですけど、とりあえず効果のほどを…」 sd「おい、ちょっ、何処行くんだよ」 身をもって知る 「ハァッ、ハァ…どう、ですか?宍戸さん」 sd「あっ、あぁ。何がっ…」 「ほら、こうすると」 sd「やっ…」 「宍戸さんのが擦れて、ヌルヌルしてる」 sd「んあっ。やめっ…ろ…もっ、ダメ」 「やっぱ、く…ゥッ、効果あったみたい、っすね」 sd「はぁっ。て、め…そんなために…腹筋…あぁぁ」 「イイですか?俺、頑張って、よかったです」 sd「(コイツどーかしてるぞーーーーでも、すげーイイ…)」 「もっと鍛えて、ハァッ…もっともっと悦くしてあげますから…待ってて下さい、ね…」 sd「もっぅ、十分っ、だ…勘弁してく…れ…ょ、ちょ…た(てかテニスのために鍛えろよーー)」 「ダメ、です」 sd「あぁっ。ダメだ…ちょ…たろ…あ、ああぁぁぁっ」 「くッ、宍戸さんっ」 sd「てめぇはアホか。そんなことのために鍛えても俺はちっとも嬉しくねぇからな」 「素直じゃないんだから。さっきあんなによがってたくせに」 sd「…なっ(赤面)あれは、その……(ゴニョゴニョ)」 「気持ちよかったんでしょ?いいんです。俺にはわかってますから」 sd「………」 「これからもっと鍛えないと」 sd「(もういいって)もしかして、岳人とか忍足に言ってないだろうな」 「さあ。跡部さんには白状させられましたけど。  あのサーブ練習もどうせ忍足さんたちに跡部さんが頼まれたんじゃないっすか?」 sd「…あいつら…殺す」 「いいじゃないですか。イマサラ、ですよ、宍戸さん」 sd「(てめぇがそんなんだから…俺がますます…)」 「そんなことより、宍戸さん」 sd「あん?なんだよ」 「もう一回、ね?」 sd「え、ってオイ。長太郎、コラ、はなせっ…あっ…」 夜はまだまだこれからだ by長太郎