All For You


酷いよねー・・・
いきなり出て行けだよ?

何か悪いことしちゃったのかなぁ・・・?

別に怒ってなかったけど、でも何か罪悪感って言うのかな?
オレが悪いみたいな。
やっぱり何かしたのかなぁ?

どうしようかなぁ・・・?



  人気のなくなったいつもの喫茶店。
  つーか、俺が人気をなくしたっつった方が正しいんだけどな。


  「・・・で、あそこまでして一体何なんだ?」


  「好きであんなコトしたわけじゃねぇっての」


  コトの成り行きは今月はアイツの誕生日だっつーことで・・・
  誕生日なんざ、どーでもいいモンなんだよ。俺にとっちゃ。
  でも、アイツは誰よりこういう行事っつーモンを大事にしてる。


  それに・・・


  『誕生日かぁ・・・』
  『あぁ?んなモンがどうしたよ?』

  街を歩いていると、今日が誕生日らしい、小さな女の子が親にプレゼントを買って貰っていた。

  『生まれて来てくれてありがとうって言う日なんだよね?』
  『さぁ・・・俺にとっちゃロクでもねぇ日なんだけどな』
  『どうして?』
  『まぁ、いろいろあるんだよ!・・・そりゃあ雷帝サマはさぞかしお祝いされただろーがなぁ』
  『・・・そんなのしてもらった事なんてないよ』

  意外な返答が返ってきて暗い表情なんかしやがるからどう返事するべきか悩んだ。
  そんなに祝って欲しいのかぁ?とからかってやろうかと思ったけどんなツラされちゃーそれも無理。

  『あそこではたくさんの人が死んでるんだよ?それなのにオレなんかの誕生日に笑ってなんか過ごせない!
  毎日毎日、一人でも犠牲者がなくなるようにするので精一杯、暢気に誕生日なんていってられないし、
   正式な誕生日なんてのも分からないんだよ?』
  『・・・・・』
  『楽しく過ごす日なのかもしれない、でもそんなのオレなんかには必要ないんだよ』


  それを聞いたのが去年のアイツの誕生日。
  まだ奪還屋を初めてそんなに経ってなくてお互いのことなんか殆どと言ってイイほど知らない。
  もちろんその日に誕生日だなんて知らなくて。
  でも、まさか、アイツがそんなこと思ってるなんざ正直予測もつかなかった。

  絶対「今日オレ、誕生日なんだよ!」とかヘラヘラ笑って言ってくるんだろうなとか思った。


  だから、今年は。
  俺の誕生日なんざどうでもいいけど、せめてアイツには笑って過ごして欲しいってのがあって。



  「・・・馬鹿みてぇ・・・」
  「その馬鹿は俺に一体何を相談したいんだ?」

  ・・・すっかり忘れてた・・・

  なんつーか・・・自慢して言うことじゃねぇんだけど・・・
  人にモノなんざやったことはねぇし、祝ってやったことがねぇ。
  だから、どうしたらいいもんかと。
  この俺様が情けないことに、このマスターに相談しようと。

  だから銀次に出て行けと行ってココから追い出し、夏実は休みにしてもらい、
  客は(珍しく一般客なんざいたんだなぁ・・・)突然ですが閉店で〜すと愛想かまして出て行って貰った。
  銀次には何もなしに突然出て行けっつったからかなり悪いことしたとは思ってるんだけど・・・
  ま、夜には腹空かせて帰って来るだろうと見込んで。
  でも今は夕方っつーか夜に近い状態だから少々遅くなるかもしれねぇけど・・・まぁ大丈夫だろう。

  「このツケはデカイからな」
  「それはあの馬鹿の誕生日終わってからっつーことで・・・」
  「他人の為にそこまで考えるなんざ、お前らしくねぇなぁ・・・」
  「うっせーよ」
  「アイツのことだ。食いモンでいいだろーが」
  「そんなモンじゃなくて・・・こう・・・もっと・・・なんつーか・・・」
  「別に恋人にやるとかそんなんじゃねぇんだし・・・」

  恋人じゃねぇけど好きなもんは好きなんだっつーの!
  ・・・とか言いたくても言えねぇ・・・みっともなくて。
  いつから好きなんか知らねぇ。気が付いたら・・・みたいな。
  さて・・・あと1日・・・どうするかなぁ・・・




 「あ、今日18日なんだぁ・・・」

 暇なので街中をウロウロしていてふと目に付いた電光掲示板。
 そこには4月18日という今日の日付。

 「明日・・・誕生日なんだぁ・・・オレ・・・」

 蛮ちゃんと奪還屋になって2回目の誕生日。
 ・・・とか言っても何もないけどね。
 プレゼントとか、お祝いとか、そんなの必要ないから、
 これからもずーっと、何回先の誕生日も蛮ちゃんと一緒に奪還屋出来たらいいなぁ・・・

 「でも本当に明日が誕生日か分からないしなぁ・・・」

 天子峰さんに拾って貰った日ってことになってるんだ。
 だって親の記憶もないし、でも誕生日がないのはあまりにも可愛そうだって。
 それからはおめでとう!って言葉は貰える。
 でもちゃんと祝ったりとかなんかしたことない。
 だって・・・犠牲になっていく人がたくさんいるのにそんなことできない。
 みんなは犠牲になった人達の為にも、いっぱい生きなくちゃ!とか
 いろいろ言うけど・・・オレはそんなんじゃイヤ。

 自分だけそんないい思いしてちゃいけないんだって・・・



 気が付くと夜。何時なのかは分からない。だたぼーっとウロウロしてて・・・
 お腹すいてきたからご飯の時間帯辺りなのかなぁ・・・?



  「なーにやってんだよ?」
  「・・・蛮ちゃん・・・」
  「顔暗いぜ?何かあったのか?」
  「ううん。どうしてココが分かったの?」
  「ま、出て行けっつったの俺だしなぁ・・・」
  「あ・・・ゴメンなさい!」
  「何で謝る?」
  「だって・・・オレなにかしたのかって・・・蛮ちゃん怒らせたのかなぁ?って・・・」
  「あぁ・・・それはな・・・」

  ・・・と何か言いかけた蛮ちゃんの声を制止したのはオレのお腹の音。

  「・・・・/////ご、ゴメンなさい・・・」
  「まぁ、そりゃあ腹も減るわな・・・」
  「怒ってない?」
  「ぜーんぜん!それよかもう夜中だぞ?」
  「え?え!?うそ!!!」
  「腹減ったら帰って来るだろーとか思ってたのにいつまで経っても帰ってこねぇから・・・」
  「ゴメン・・・」
  「さっきから謝りすぎだっての!ほら、行くぞ!」
  「・・・どこに?」
  「・・・ちっと待て」

  妙に笑顔な蛮ちゃんが何か怖いです・・・

  でも夜中って・・・そんなに考え事してたっけ・・・?
  ボーっとしてたらドコウロウロしてたのかも分からなかったし・・・
  って考えても迷うのには変わりないんだけどね。

  「あと20分かぁ・・・ちっとゆっくりしながら行けば十分だな」
  「ねぇねぇ、何が??」
  「気にすんなって」
  「気になるよ!」


  いつもより遥かにゆっくりな歩くペース。
  暫く歩いているといつもよく通る道。いくら方向音痴なオレでも分かるこの道。

  「・・・ホンキートンク・・・??」
  「お、やっと分かったか?」
  「でも夜中だよ?もうとっくに閉店・・・」

  してるはずなんだよ?だって・・・・って今何時か分からないけど。

  「ほら!電気消えてるじゃんかぁ〜・・・何するの?」
  「ま、今日だけは特別っつーことで・・・」

  と言って蛮ちゃんはポケットから鍵を出しました。これってココの鍵・・・?
  でもどうして蛮ちゃんが持ってるのでしょうか?

  「ホントはパ〜っとするのがいいんだろうが、ま、まだまだ今日は長げぇしな!」
  「・・・・?」

  中に入って電気を点けるといつものカウンターにちょっとだけ豪華な食事。
  こんなメニュー・・・あったっけ・・・?

  「ま、俺様が一番に祝ってやるんだ、感謝しろよなぁ・・・?」
  「・・・ねぇ!今何時・・・?」
  「あと、10、9,8・・・・」
  「え?何が・・・?」
  「1,0!誕生日おめっとさん!」
  「あ・・・」

  さっきのカウントダウンは日付が変わるまでのカウントダウン。
  それでおめでとうってことは・・・今日、19日・・・。

  「え・・・覚えててくれたの・・?」
  「まぁ、な。」
  「うそぉ・・・」
  「去年すっげー興味なさそうに言ってたけどな、顔には書いてあんだよ。祝って祝って〜ってな」
  「何それ・・・」
  「このメシは俺様から!って・・・コレだけっつーのもアレなんだけど・・・」
  「ううん・・・全然!・・・ありがとぉ・・」
  「ってオイ!泣くなよ!」

  知らなかった。こんなにおめでとうって言われるのが嬉しいなんて。
  今まで何とも思ってなかったのに・・・
  蛮ちゃんだからなのかなぁ・・・?こんなに嬉しいのって

  「え・・?じゃあ・・・出て行けって行ったのも・・・」
  「あぁでも言わねぇと絶対居座るだろーが・・・」
  「怒ってたんじゃないの?」
  「馬鹿!むしろ怒られるのは俺の方だっつーの・・・」

  ちょっと困った様な顔をしてる蛮ちゃん。こんな顔初めて見た・・・
  オレの為にこんなことしてくれたんだ。

  「で、でもオレ!蛮ちゃんの誕生日何もしてないよ!!!」
  「あ〜・・・オメー、寝てる俺に向かっておめでとーっつってたよなぁ・・・?」
  「あ、アレ・・・知ってたの!?」
  「俺はアレで十分だっつーの、ホラ!メシ食え!腹減ってんだろーが」
  「でも、オレ・・・・」
  「だぁ〜!もうしつけぇなぁ!好きなもんは好きなんだっつーの!祝って何が悪いんだ!?」
  「す、き?」
  「好きな奴の誕生日祝って何が悪いんだっつてんだよ!」

  ・・・好きって・・・友達〜とか、家族〜とか、そんなんじゃなくて・・・?
  愛とか恋とかそういう・・・?蛮ちゃんが・・?オレを・・・?

  「そっかぁ〜・・・そうなんだぁ・・・!!!」
  「・・・んだよ・・・」
  「オレね、今さっきおめでとって言って貰ってすごく嬉しかったんだ!
   今まで天子峰さんとかに言われてもどうしてもやっぱり前みたいな考えになっちゃって、嬉しくなかった。
   でも、無限城から出て、初めておめでとうって言って貰えて、すっごく嬉しかった。
   出て行けって突き放してまで、お店借りてまででもこうやって祝って貰えて・・・蛮ちゃんだから嬉しかったんだよ!」
  「・・・・なんかムリヤリっつーか・・・・」
  「いいの!オレも好き!だぁいすき!ありがと!!!」
  「・・・ま、喜んで貰えてよかったっつーことで・・・・」




 「銀ちゃん、お誕生日おめでとぉ!!!!」
 「わ〜!ありがと!みんな!」

 ったく・・・・この前までのあのカッコつけた言い分は何だったんだっつーの・・・
 な〜にが「オレなんか誕生日祝わなくていいんだぁ〜」だよ・・・
 ヘブンやら夏実やら糸巻きやらに祝って貰ってヘラヘラしてんじゃねぇか・・・
 
 あれから、俺の作った飯食ってありがとうを連呼しながらそのままカウンタで寝て、
 起きて見れば波児がみんな呼んでパーティー開くとか抜かしやがって・・・・

 本当はあの時、うっかり好きなんざ言う予定なんか全くなかった。
 そりゃあ今日に言えたら言ってやろうとか思ったり思わなかったり・・・
 みっともねぇんだよ!この俺様があの馬鹿を好きになって、好きって言って振られて奪還屋は解散〜なんてなったら!
 ・・・とか思ってて言わないでおこうとか思ってたんだけど・・・なんつーか・・・勢いで・・・

 そりゃあアイツも好きとか言ったけどよぉ・・・なんつーか・・・なぁ・・・


 その後も数時間、宴会は続いて終わったのは19日が終わりかけの深夜。



  「蛮ちゃん?どうしたの?」
  「い〜や〜・・・よかったなぁ・・・」
  「うん!でもね、オレ、どんなプレゼントもいらないから蛮ちゃん、ずーっと一緒に居てね?」

  ・・・・天然でこういう事抜かしてんのかコイツは・・・

  「あぁ・・・・」
  「あー!!!あと1分で終わっちゃう!!!」
  「じゃあ・・・もうちょいと・・・19日楽しむかぁ?」

  そう言ってサングラスをずらすと、俺の意図が分かったのか、

  「うん!蛮ちゃん大好きぃ!」

  だから・・・抱きつくなっての・・・このまま襲うぞ・・・?
  ま、一応両思いっつーことで・・・まだまだこれから時間はあるしな。

  「じゃあ・・・行くぞ?」
  「うん!」
  「happybirthday・・・・」







『初めて』が蛮ちゃんで、銀次君ホントに嬉しそうv (誤解を招く言い方はヤメなはれ)
一番好きな人に真っ先に祝ってもらえるなんてイイですよねーv

照れながら、迷いながらも銀次の為に何かしてあげようと
美堂さんらしからぬ不器用さが、萌え!
それだけ銀次のコトを大切に思っているんだなぁ。

それぞれの独白と想いが交差して・・最後に両想いに・・v
とても幸せ気分になるお話しですー!

ゆあ様〜、素敵なSSをフリーにして下さって有り難うございました♪

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