いちめんのみどり、 ぽつぽつときいろ。 まじるきんいろ、 はるのかおり。 f l o w e r * p o p 空の青さが次第に濃くなってゆく。 雲の白さがいっそう引き立つ。 彼は、野原へ行きたいと言った。 たまには何処かへと、いう気もした。 窓から入る甘ったるい風。 薄い日光に蝶が踊り、 温い空気に若草が揺れる。 「うわぁ」 感嘆の声。 西新宿からそう時間のかからない位置に、 こんな場所があるなんてと、銀次は微笑った。 緑の中、ところどころに散らばる黄。 草の中からひとつ摘んでは立ち上がり、 ひとつ摘んでは手に収め。 ふと吹いた風が黒髪と金髪を揺らす。 なぜかいたずらに強くて、銀次の手の内から 摘んだばかりのたんぽぽがいちりん舞い上がった。 後ろに居た蛮がそれを掴む。 「あ、ありがと」 「‥ん」 銀次はそれ以上摘もうとせずに地面に腰を下ろした。 花はいのち。 あんまり可愛らしくて健気だったから。 持って帰ってHONKY TONKに飾って貰おうかと考えたけれど。 地から離れた花はすぐに生きられなくなってしまうだろうから。 これ以上はやめようと、つまんだいちりんから、手を離した。 隣に座った蛮が銀次の髪を長いゆびで梳く。 心地のいいくすぐったさ。 ある日突然大切な人を失くしたことで 変わったこの髪の色を、 彼は好きだと、言った。 瞳はちゃいろい。 不似合いなほどまぶしい金色。 嫌いで堪らなかった。 好きだと、言ってくれて。 銀次の手の中から花をひとつ蛮が手に取る。 うすい金色の間に、蜜色のダンデライオン。 珍しくやさしい声で、似合うとつぶやいた。 肩に頭を乗せると、空いたほうの肩を抱かれる。 温い空気も甘ったるい風も心地良い。 こんな日もいい、と思う。 帰ってから貰った小さなおしばなは、 口では何も言わない彼からの誕生日プレゼント。 世界でひとつのたからもの。 |
あぁん、もうv どうしてこんなに簡潔な文章で、ココまで萌えな蛮銀ワールドを 表現出来るのでしょうか・・! 本当に霧咲さんの文才が羨ましいのです。 ほんの何気ない行動から、2人の互いへの想いが ひしひしと伝わりますv 説明文も、余計なセリフも一切省いたムダのないSS。 なのに行間からは豊かな感情やイメージが溢れて来るなんて スゴイのですーーv 霧ちゃん、素敵なSSをフリーにして下さって有り難うございました♪ |