俺と蛮ちゃんは相棒で、恋人で。
   俺は、蛮ちゃんが大好きで。
   蛮ちゃんは、俺の全部で。
   俺にとっての一番は蛮ちゃんだから、
   蛮ちゃんにとっての一番が、俺だったらいいのに・・って、
   いつもそんなことを思ってる。

   だから俺は、蛮ちゃんのためだったら何だってするよ。

   蛮ちゃんの傍に居るためだったら、どんなことだって、できる。





   蛮ちゃんの誕生日。

   俺は、蛮ちゃんが生まれてきてくれたことを、
   俺を見つけてくれたことを、全ての神サマに、
   そして、蛮ちゃんに感謝した。

   プレゼントとか、そういうのはしてあげられなかったけれど、
   あの夜、確かに俺は蛮ちゃんと、心ごと全部がひとつになれたと、
   そう、思ってた。

   だから、俺の誕生日。
   おめでとうの言葉も、なんにもいらないから。
   『ずっと一緒に居てね』って、
   この心の中だけで、わがまま言わせてくれれば、それで良かったんだ。

   なのに、蛮ちゃんがくれた邪眼のプレゼントは、
   俺が独りぼっちになる悪夢。

   どうして?

   なんでわざわざ俺の誕生日に、あんなもの見せたの?
 




   「・・・・・誕生日、だから?」



   蛮ちゃんは、キスしてくれた。
   俺のことが、嫌いになったワケじゃない。
   何か理由があったって言うの?
   あの悪夢に。

   「・・・わかんねぇか、って・・・どういう意味だよ」

   誕生日は、大切な人が生まれてきたことを感謝する日だよ?
   生まれたことの意味なんて解からなかったって、言ってた蛮ちゃん。
   でも、解かったって、俺と出会って解かったって、そう言ったよね?
   俺のこと、離さないって。

   蛮ちゃんの傍にいたいって俺の気持ち、解かるハズだよ?
   ううん、俺にあんな邪眼かけたのなら、蛮ちゃんはもう解かってる。

   それなのに。

   どうして夢の中の蛮ちゃんは俺を残して逝っちゃったの?
   俺を、独りぼっちにするの?

   嫌だよ。
  
   あんなのは嫌だよ。

   俺は、ずっと蛮ちゃんの傍に居たいのに。

   ・・・そうだよ。
   俺は、蛮ちゃんを守ってみせるよ?
   この命に代えてもね。

   蛮ちゃんを失うぐらいなら、あの刃をこの身体で受け止めたって構わ・・・

   「・・・あ」



   ヤイバヲ ウケトメテ

   バンチャンノ ウデノナカデ イキタエテ

   ツメタイイシニ スガタヲカエテ クリカエス コトバ



   ――― your side anytime



   『いつもそばにいるよ』



   墓標に書かれた言葉。

   息絶える蛮ちゃんが最後に囁いた言葉。





   「ははっ、あはは・・・・・」

   どうして、こんなことに気付かなかったのかな。

   「意味・・・ないよ」



   蛮ちゃんが見つけた、生まれてきた意味。
   ふたりで、生きることの意味。



   俺も、解かってなかった。









   「・・・・・早かったな」

   「それって嫌味のつもり?」

   「さぁな」

   蛮ちゃんのところに戻ろうって思ったものの、
   どんな顔して帰っていいのやら。
   散々迷った末に、テントウムシまで辿り着いた俺に、
   車を降りて、凭れながら煙草を吸ってた蛮ちゃんが、言う。

   「え・・っと・・・」

   「乗れよ」

   それだけ言って、蛮ちゃんはさっさと乗り込んでしまうから。
   一度は逃げ出した蛮ちゃんの隣に、俺はもういちど乗り込んだ。

   急発進するテントウムシ。



   行き先はわかってたけど。

   待てないって、 思った。

   「・・・・・停めて、停めてよ蛮ちゃん!!」

   切羽詰ったような俺の声に、蛮ちゃんが驚いて路肩に車を停める。

   「どうした?」

   言わなきゃいけないことは、いっぱいあったのに。
   何から伝えたらいいのか、わからなくなって。
   頭の中で、ひっくり返ったおもちゃ箱みたいに散らばってる言葉の中から
   やっとの想いで、ひとつだけ拾い上げて、

   「俺・・・・・一緒にいたい」

   言ってから、これじゃ何も変わってないってことに気付いたけれど、
   それでも蛮ちゃんは、優しく笑ってくれたから。
   これでいいんだ。
   なんだか、ホッとして、
   俺は蛮ちゃんの袖をぎゅっと握り締めていた手を、弛めた。

   「・・・芸がねぇな」

   「なっ!?」

   何だよ!? 何だよ、芸って!!
   俺がマジメに話してるのに。



   でも、それは蛮ちゃんの照れ隠しだって、知ってるから。

   「・・・そんなの、必要ない」

   蛮ちゃんの瞳をまっすぐに覗き込んで、

   「蛮ちゃんと・・・」

   蛮ちゃんの唇にキスをして、
 
   「俺が、ここに居れば・・・」

   蛮ちゃんを抱き締めて、

   「・・・それで、いい」

   そう、囁く。







   「・・・っふ、ぁ・・・ぅん・・・んんっ・・・・・」

   蛮ちゃんの唇に、弄ばれて。
   昂ぶる身体。
   火がついたように、全身が熱い。



   蛮ちゃんとふたりで、大切な想い出をいっぱい見てきたあの山荘まで、
   もう、どうにも待てなくて。
   今すぐ、蛮ちゃんが欲しくて。
   いつもの安ホテルまで行く時間すら待てなくて。
   本当はテントウムシの中だって構わなかったけれど。
   蛮ちゃんが連れてきてくれた、公園の前のホテル。



   窓の外に広がる街は、蛮ちゃんと俺が出逢って、
   そして、これからもふたりで生きてゆく場所。

   「・・・・アアッ!!・・ばん・・・ちゃ・・」

   蛮ちゃんの唇と指に愛された場所が、
   痺れたみたいに、疼いてる。

   誕生日。 命の連鎖を託された日。

   何も生み出すことのできない、俺たちだけど、
   だからこそ、こうすることで俺たちは、互いの命を感じているから。

   熱くて。
 
   熱くて。

   このまま、溶けてしまいそう。

   「・・・っあ!! ゃあ・・ん・・・・・っは・・ぁ・・」

   蛮ちゃんの指が離れてしまって、
   揺らめく腰、
   疼く、体内。

   「・・・・・もぅ、ねぇ・・っ!! はや、く・・・」

   「あぁ、・・いくぜ?」

   「・・・ふ、ぅ・・・んああぁぁっ!!」

   誰も近づけない。

   誰よりも俺の近くに、蛮ちゃんがいる。

   「・・・っ!! ンな心配すんな・・・・離れねぇからよ」

   出て行こうとする蛮ちゃんを引き止めたくて、絞め付けてる。
   解かってるよ、蛮ちゃん。 俺たちは離れない。
   けど今は、俺が、そうしたくて、してる。

   だって、いくら俺に気付かせるためだって、
   やっぱり蛮ちゃんはイジワル過ぎたから。
   まだ、この身体のどこかに、あの痛さが残ってる。
   悲しくて。
   例え夢の中でも、俺の隣に蛮ちゃんが居なかったのが、悲しすぎて。

   「・・・それ以上、絞めンじゃねぇよ・・・持たねぇ」

   仕返ししたくなる。

   「・・・・くっ!! テメ・・・っ」

   「ん・・っあ!!・・・アアッ!!・・・やっ・・」

   掠れる蛮ちゃんの声と、
   一瞬で反撃されちゃう俺。




   それでも、誰よりも近くに蛮ちゃんを感じて。

   誰よりも蛮ちゃんの近くにいる、俺。




   溶け合って、混ざり合って。

   ひとつになって。

   こんなにも、満たされる。

   「・・・銀次」

   「・・・・ぁ・・ん・・・・・ちゃ・・・ぁ・・」

   「・・・いなく、なンじゃねぇ・・・・・」









   目覚めた景色は、いつもとちょっとだけ違ってるんだろうけど。

   蛮ちゃんがいて。

   俺がいて。

   隣で、吐息を感じることができたなら。

   きっと、これからも同じ朝が来るから。





   your side anytime



   いつもそばにいるよ










   END





・・・はぁ〜〜vv  もうもうコメントするのは無粋な気がします。。。

ひたすらこの切なくて、でも甘くて、綺麗なSSの世界に引き込まれますよね・・v
読み終わるのがもったいなくなりました!

心底互いを求め合う2人の、真摯な駆け引きにうっとり〜なのですv

そこはかとなくあやうい愛が、余計に2人の想いの深さをカンジさせてくれて素敵〜〜

かえで♪さま、こんなにスバラシいSSをフリーにして下さって
有り難うございましたー! 銀誕万歳〜〜

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