金色の野良猫を拾った。









『Heaven's Drive』




あの日―――――

気紛れで立ち寄った無限城の片隅で。

孤独に押し潰されそうになって。

心の中で必死になって助けを求めて。

今にも死にそうな顔してやがったから、ついはずみで連れて帰っちまった。

それだけでも十分俺様らしくないってのに。

毎晩あの城を眺めては置いてきた仲間の心配ばかりしやがるのが、無性に腹立たしくて・・・無理矢理モノにした。
くだらねぇドラマじゃ有るまいに「忘れさせてやろうか」なんて、アホな台詞を吐いて、抵抗する唇にむりやり咬みついた自分の姿は今思い返しても呆れ返る。

有り得ねぇ話だが奴はそんな俺の言葉を信じたのだ。

痛みに耐えることで、自分の罪が許されるとでも思ったのか、それから何度も身体を繋げたが奴は抵抗しなかった。
それをいいことに俺も新しく手に入れたこの玩具を精々飽きるまで適当に利用すればいいと思っていた。
・・・始めのうちは。

あれから1ヶ月。

認めたくはねぇが、俺の中にはあの時とは違う感情が生まれちまってる。
そして、そんな俺の気持ちに気付いているのか、最近は銀次の態度も変わって、文字通りギクシャクした関係になりつつある。
生活のために銀次と始めた奪還屋。受け継いだスバルが塒になると、24時間共に生活をするすることを余儀なくされた訳だから、気付かれても不思議じゃない。
そろそろ潮時か、と、どこか冷めた頭で考える反面、これから先の、銀次の居ない世界を想像できない女々しい自分に腹が立つ。




     *     *     *     *     *




「・・・ったく、オメーに助けられるようになったらこの俺様も終わりだよな」

仕事の途中に考えごとをしてやがったのは銀次の方なのだ。
当然、狙われたのも銀次。
叫んで銀次の前に飛び出した俺に気付いて、更に前に回りこんで俺の盾になろうとして銀次は腕に怪我をした。

「あの程度のヤロー、俺様に任せときゃどうってこと無かったのによぉ!余計なことすっから、しなくていい怪我すんだよ!」

「でも・・・蛮ちゃんやりすぎちゃうから、相手の人大怪我しちゃうよ?」

「あーのーなー、テメーの命が狙われてるって時にンなこと言ってられっか?・・・ってか、俺の話はいいんだよ!!」

実際、初めて出逢った時から銀次は随分変わっちまった。それが俺の所為かどうかはともかくとして。
無限城で拾った、全身から尖ったナイフのような殺気を出しながら、それでいて今にも泣き出しそうなツラをした『雷帝』はすっかり成りを潜めちまった。
コレを帝王だの、悪魔の化身だのと言ってたやつらの気が知れねぇ。
人懐っこい笑顔で周囲の人間を虜にしていくなんざ、俺には絶対あり得ねぇ能力だが、最近、もしかして自分もその罠に掛かった一人じゃねぇかと思うと頭を抱えずにはいられねぇ。

「見せてみろ」

売り言葉に買い言葉みたいな会話を繰り返しながらスバルまで戻り、乗り込むと同時に銀次の腕を掴む。
予想通り、大した傷ではなかったが、そこから流れた血の跡が、妙に俺の欲をそそった。

「んっ・・・な・・に?!」

血の跡を舐め取りながら銀次を見上げると、動揺を隠せないという表情で俺を見下ろす視線とぶつかった。
視線はそのままに、舌を這わせながら挑発的な笑みを浮かべ、わざと射抜くような目で見つめてやる。
全ては計算の内。卑猥に舌を這わせる感触とそんな俺の姿、そして、こうして妖しく視線を絡ませることで銀次は堕ちる。
・・・はずだった。

「いっ・・・・や・・だ!!はなし・・てっ」




予想外の力で撥ね退けられ、怒りの感情すら湧いてこなかった。




     *     *     *     *     *




「ごめ・・・っ・・俺、そういうつもりじゃ・・」

「もういい。俺が悪ィんだよな・・・もう二度としねぇよ」

銀次の態度が変わったときから覚悟はしていたこと。
誰かと一緒にいたいなんて、子供の頃に捨て去った筈の感情。
それでもコイツの太陽のように輝く笑顔を、官能に頬を染める表情を、少しでも永く傍にいて見ていられたらと、似合わねぇ夢を見た俺に与えられた。これは罰。

「・・・怖ぇか?」

「え?」

「俺が怖ぇなら・・・・無理して奪還屋続けるこたぁねぇからよ」

「違うっ!!・・・蛮ちゃんの所為じゃ・・ない」

喪失感。
銀次と出会う前は当たり前だった感覚が。痛い。

「俺・・ね、このままでいいのかな・・・って・・・」

徐に話し始める銀次に、耳だけを傾ける。

「一人で、無限城出て・・・みんな置いて。
蛮ちゃんと一緒にいると・・・何て言うか・・幸せ・・で
忘れちゃいけないって思うのに・・・みんなの事
俺が・・・・・・・殺した人たちの事
でも、俺・・蛮ちゃんに・・・
蛮ちゃんは、俺に合わせてくれてるだけだって・・わかってるから
俺ばっかり、蛮ちゃんのこと・・・・・好きになっちゃって
蛮ちゃんの優しさが・・・・・苦しい・・・」

「・・・・っ!」


気付いた時には、銀次を抱きしめちまってた。


「・・バカだな・・・オメー・・」

あの時の、あんないい加減な俺の言葉に、未だに本気で縋ってたなんてな。

「忘れる必要なんて無ぇ。いや、忘れちゃいけねぇ・・・何があっても。・・・二度と同じ過ちを繰り返さねぇ為に、な」

「うん」

「まぁ、今更善人ぶっても俺やオメーのやってきた罪は許されるもんじゃねぇけどよ。それに・・・」

不意に、フワリと銀次が俺に抱きつき、首に顔を埋める。
コイツの方からこんなことをしてきたのは初めてだ。

「俺・・・・・蛮ちゃんのこと・・本気になってる」

どうすればいい?と、戸惑いの視線を向けて。それは俺が今日まで抱えてきた同じ感情。
その問いかけの表情に、言葉ではなくキスで答える。昨日までと、それは変わらない筈なのに、伝わる熱は溶けてしまうほどに熱くて、どうしてこんなにも満たされるのか。
本気になってる。同じようにその現実に戸惑いながら、先に告白したのは銀次。俺は最後まで、いや、未だその事を伝えられずにいる。

敵わねぇな。

オメーの強さには。


俺が同じ気持ちだって教えてやったら、オメーはまた輝くような笑顔で笑うんだろうな。
でも、教えてやらねぇ。・・・ちょっと悔しいからよ。

「・・ねぇ蛮ちゃん?」

「あん?」

「さっき、何か言いかけた・・・」

別にわざわざ改めて聞かせるような話でもねぇけどよ、こうなったら覚悟決めさせてやろう。・・・なんてな、これは俺の我がまま。
もう一度キスを交わす。深く。優しく。

「こんな関係になっちまってる俺らは、どこまでも罪深いってこった」

唇が触れる程の距離でニヤリと笑いながら答えてやる。

「いいよ。蛮ちゃんと一緒なら地獄に堕ちても」

そんな言葉を返されて、俺も覚悟を決めなおす。

「いいんだな?銀次。もうこっから先は止まれねぇぜ」

何処までも、俺らの答えってやつを見つけるまでな。
たとえ明日終わりが来たとしても。
この罪が許される日など来なかったとしても。

「・・・けどな、地獄なんかじゃねぇよ」

一回しか言わねぇからよぉく聞きやがれ。



辿り着いた先がどんなところだって、例えそこが本物の地獄でも。

オメーと2人ならそこが。







楽園なんだよ。









END








相変わらず意味不明で申し訳ないです(^^;A
サイト1万打を記念して何かせねば、と大急ぎで作りました(爆)
このような駄文でよければフリーにしますので持ってって下さって構いません。
イメージPHOTOは、hare's 写真素材さんよりお借りしています。

あぅ…それにしてもホントに蛮ちゃん語り、苦手です(TT)
日記での予告通り、一応あるアーティストの曲をイメージしたつもりvv
ってか、タイトルそのまま使ってるし… ( ̄  ̄;)
歌詞見てるとホント蛮銀ソングなんですってばvv
そのまま歌詞を読むと銀ちゃん視点になるんだけど
それを無理矢理、蛮ちゃん視点に変換して書こうと思った時点で破綻してました(−−;|||
Heavenを訳しても楽園にならないことぐらいわかってますんでツッコミ要りません(爆)
今更だけど、最近この曲『TWINS』と並ぶぐらい気に入ってるんです☆

2003.9.9 10000hit Thanks!




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ううっ。ステキ過ぎて言葉は要りませんデス〜。
僭越ながら
ワタクシがこれまで拝読致しました 「出会って間もない頃の2人」SSのなかで
かえで様のこのお話が一番好きvvです。
こんなにもスバラシイ爽やか萌え(何だ?そりゃ)を有り難う御座いますvv

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