「キリト」


その呼び声に反応したのは、足元まで走って擦り寄ってきたリルだけ。

グレーの毛をそっと撫でてリビングへと足を運ぶと、そこには
先程まで資料を見ていたはずのキリトがソファに体を沈めて寝息をたてていた。

にゃぁ・・・と鳴くリルに『しーっ!』と人差し指を立てる。


普段は眉間に皺を寄せ、色々な事を考えている彼も
寝顔だけは本当にあどけない。

体を縮ませている姿はまるで“猫”のようだ。


きっと疲れているんだろう、と向かい側のソファに座り彼の様子を伺うと
足元をうろちょろしていたはずのリルが、キリトのすぐ側で丸くなって眠っていた。

時折、ふさふさのしっぽがぱたんぱたんと左右に揺れる。


(・・・猫の親子みたいだな・・・)


そんな事を思いながら、雑誌の1ページ目を捲った。














「ん・・・どこだここ・・・」


むくっと起き上がってみるとそこは自宅ではなくて。
ぼーっとする頭で考えた結果、ここは潤の家らしい。


(ああ・・・何時の間にか寝ちゃったんだな・・・)


「にゃぁん」


リルがこっちを見つめてパタパタとしっぽを振っている。
そのままとてとてと歩き始め、行き着いた先-向かい側のソファ-には
雑誌を広げたまま、寝息をたてている潤の姿があった。


「にゃー・・・」

「・・・鳴いてたら起きるだろ」


ひょいっとその小さな体を持ち上げ、先程まで自分が寝ていたソファに深く腰掛ける。

いつも口角を上げよく笑っている潤も
寝顔は本当に凛々しいものだなーと思った。

こんな寝顔を見れるのは自分だけかと思うとフッと口元が緩む。


「お前の主人も寝てるし、帰るか」

「にゃぁん」


抱いていたリルをそっと足元へ下ろすと
テーブルの上に散らばっていた資料をかき集め、鞄の中へと押し込んだ。


「じゃあな、リル。・・・おやすみ、潤」


リルの頭をそっと撫で、テーブルに手をついて立ち上がろうとすると
急にその手をぐいっと掴まれた。




「・・・起きてたのかよ」

「今さっき目が覚めた。帰んの?」

「お前寝てたしな」

「今起きてるんだけど?」

「・・・じゃあ居る。」

「また寝ちゃうんじゃないの?」

「お前だって眠いんだろ」

「・・・じゃあ一緒に寝ますか」







広いダブルのベッドに2つの体を沈めて
真っ白い毛布に包まれ

2人の間には、くぁぁ・・・と欠伸をする猫、1匹。



「おやすみ、キリト」

「・・・おやすみ」




END








++++++++

えー・・・あのー・・・潤キリというか『潤とキリト』みたいな。
やっぱりあの2人はナイスコンビ☆と言われるような2人であって欲しいです。
っていうか、リルってこんなに懐いてないですよね?(笑)
いいのいいの!動物は何でも可愛いんだ!





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