花が咲いた 黄金色の大きな太陽
この世界が 一面明るくなったかのように 眩しい黄金色
真っ青な空が 負けてしまいそうな そんな感じ
「・・・・あ、向日葵」
コンビニの帰り道、民家の畑に生えるそれを見つけた。
ふと、足を止めるキリトに少し先を歩いていたタケオも立ち止まる。
寄り集まるように植えられて首を上げた向日葵は、真っ直ぐに大輪の花を咲かせている。
「あ、ホントだ。種欲しいかも」
「何で」
「え、ハムスターの餌になるじゃん」
「あっそ・・・・・」
隣で笑うタケオをちらっと見て、キリトは再び視線を戻す。
ふと、一本だけ首を下げた向日葵を見つけた。
上を見上げているその群れの中で、たった一本だけ、俯くかのように。
あたし 自信がないの
みんなみたいに 綺麗に咲けるとは思えなくて
だって あたし何やってもうまくいかないの
うまくいったと思っても そう思ってるのは あたしだけ
周りについていけてないよ 寂しい
だから あたし 自信がないの
やっとの思いで咲かせた花も やっぱり 中途半端でしょ
真っ青な空の下。
まるで競うかのように、独り占めしたがるかのように 存分に上を見上げる向日葵の群れ。
「・・・・・そんなこと、ない・・・・」
「え?何か言ったか?」
口の中で呟いたキリトの言葉にタケオは怪訝そうに聞き返す。
「キリト?」
だって
皆 始まりは平等なはず なんだ
遥か遠く地平線に、先が見える人なんていない
見えないから下ばっか見て 下ばっか見ながら 自分の歩幅数えて
ただ歩くことだけで 頭がいっぱいになっていく
でも そのうちきっと 自分の歩幅も大きくなって 進む速度もどんどん速くなって
何も見えないことに 何か意味があるのかもしれないって 気づくから
自信がないなら それでいい 見栄っ張りより カッコイイよ
不思議そうに首を傾げるタケオの手を掴んでぎゅうっと握ってみた。
一瞬驚いたようにこっちを見て、でもすぐにそれ以上の力が返ってくる。
「キリト」
「ん?」
「こっち向いて」
「何だよ・・・っ・・!!??」
大輪の向日葵の下。
不意に重なった唇は温かく、そして何よりも優しくて。
たった一本俯いた向日葵が風に揺れて、黄金色の涙を落とした。
「・・・・・・タケオ」
「ん?」
「・・・・・・・・なんでもない」
「何だよ、呼んどいて変な奴」
帰ろうか、と、また手をしっかりと握る。
タケオに引かれて帰り際に、キリトはもう一度、その花を見上げた。
「・・・・・・お前も咲ける・・俺なんかより、ずっと綺麗に・・・」
あたし 自信がなかったの
咲かせた花も 見上げる高さも 何もかもうまくいかなくて
いつも皆に隠れて 見つからないように息を潜めてた
でも いつかきっと また
あたしの種が生まれて 地面に落ちて 太陽めがけて昇る時
何かが変わってるかもしれないって なんだか今なら思えるわ
あたし ずっと 自信がなかったの
でも でも 今度こそ
咲いて あたしの花 誰よりも素直に 誰よりも優しく
暑い暑い太陽の下。
空を見上げる向日葵は、毎年黄金色に輝いて。
自分もまた、同じ手の温もりとこうして見上げる眩しい空。
「・・・・あ、向日葵」
でも 俯いて 息を潜めるその姿は
もう 二度と見ることはなかった
咲いた あたしの花
誰よりも優しく 誰よりも温かく
xxxend
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『月光+都市』の管理人:メテオさんから開設祝いってことで頂きました!!
読んでる途中で何故か号泣・・・
本当に素敵な文章書く人です。さんきゅーメテオさん!!