俺の心は揺らいでいる。

止まる事が出来るのか分からないくらいに揺れている。

此れを激しい動悸と云うのか。

それとも優柔不断と云うのか、自分ではよく分からない。

だけど・・・。

 

 

 

「水野」

乱暴に引き止められる。

声を聞いて誰だか直ぐに分かる。

男にしては少し高い声、そしてこの不機嫌そうな声。

「椎名・・・」

「何嫌そうな顔してんの?」

今、椎名に会うのは嫌だった。

だからと云って顔に出したつもりは無かったのだが、出ていたらしい。

「別にそんなつもりじゃ・・・」

「まぁ、別に良いけど、どうすんの?」

彼が何を言っているのか簡単に分かった。

「どうするって・・・」

「俺にしなよ」

そう言った椎名の顔は不敵だった。

余裕の笑みと言っても良いかも知れない。

「・・・考えとく」

「あっそ」

俺がそう言うとつまらなさそうに皆の元へと戻っていった。

「はぁ・・・」

ため息をつき数日前の出来事を思い出した。

 

 

 

「水野君・・・」

突然呼ばれ俺は着替えるのを中断して風祭の所へ行った。

「どうかしたか?」

「あの・・・その・・・」

風祭の歯切れが悪い。

普段が普段なだけにこういったことは滅多に無い。

「風祭?」

だが、話をしない事には前に進まないので俺は聞く。

「僕は水野君が好きですっ!!」

「・・・え」

顔を真赤に染めた風祭がイキナリ声を出した。

しかも大きい。

周りに居た選抜面子は俺たちの方を見ていた。

「あの、突然だけど、僕、水野君のこと・・・」

風祭、流石にこれは突然過ぎるだろ・・・。

せめて場所くらいは選んで欲しかった。

と俺が心の中で突っ込んでいる間も風祭は何かを喋っている。

「か、風祭・・・」

取り敢えずは風祭を止めて場所を移動して改めて会話をしようと持ち掛けようとした時だった。

「じゃ、俺も告白しよー!!俺、藤代誠二は水野竜也が好きです。付き合って下さい!!」

「・・・な!」

数秒会話が理解出来なかった。

明らかにノリで告白してきたように見える藤代。

「言っとくけど、本気だよー」

俺の考えが分かったのか訂正さえもしてくれた。

「・・・信じられないんだけど」

「何だよ、それ!!風祭は信じるんだろ!?」

俺は首を上下に軽く振る。

風祭は冗談でああいう事は言わない。

俺はそう信じている。

「水野君・・・」

妙に感動した様子で俺を見てくる風祭。

いや、別に、好きだとか言った訳では無いんだが・・・。

「待った。俺も告白するから」

俺と風祭の間に入ってきたのが椎名だった。

「ねぇ、水野、好きだよ。だから俺にしなよ」

「え、あ」

どう反応していいか分からない。

本当かどうか判別できないからだ。

「本気だよ、水野」

やけに熱っぽい眼差しで俺を見てくる椎名。

嘘だろ?とか迂闊に口には出来ない状態へと押し遣られている。

「水野、好き」

唇に柔らかい感触。

周りから悲鳴やら、息を飲み込む音が聞こえた。

「あ、ずりぃ!!俺もー」

とか言って藤代までも便乗してくる。

誰か嘘だと言ってくれ・・・。

 

 

 

そんな感じで数日間俺は皆から憐れみの眼差しを貰いながら過ごした。

普段話さない奴らにでさえ、肩にポンっと手を置かれて・・・。

中には面白がって俺が誰を選ぶか賭けている奴もいた。

そう、俺はまだ選んでいない。

そして断ってもいないのだ。

何故ならあの時気が動転して・・・『考えさせて』何て言って逃げてしまったものだから。

考えても誰が良いなんか分かる訳じゃない。

断れば良いのだ。

一番良いのは全員断る事なのだ。

だが、それが何故か出来ない。

何故なのかを考える。

そしてまた一日が過ぎる。

 

 

 

風祭は良い奴だ。それに藤代だって良い奴だ。

だったら、椎名はどうだ?

これといって何かを思い浮かぶ訳でも無いが、妙に引っ掛かる。

『俺にしなよ』

その言葉に妙に胸が疼く。

嫌いか?と聞かれれば嫌いじゃない。

好きか?と聞かれればそうでも無い筈なのに・・・。

椎名の事ばかり考えている自分に気付く。

・・・俺が好きなのは椎名なのか?

分からない。

でも、今心を占めているのは椎名。

 

 

 

「椎名・・・」

「何?」

「え、あ」

呟いた言葉はどうやら本人に届いてしまった。

「俺を選びなよ、幸せにしてあげるよ?」

「うそ臭いんだけど・・・」

思わず本音が出た。

「・・・もうちょっとだけ待ってあげるよ」

「・・・ごめん」

「でも」

「え・・・?」

「諦める気も譲る気も無いから、俺にしといた方が良いよ」

耳元で囁きながら俺に微笑みかけた。

それはとても綺麗だった。

 












キリリクは翼オチという事だったんですが、見事に失敗してしまいました。
翼→水野  にしても、自信過剰の翼です。
多分初の翼よりの小説だったんですが・・・・どうでしたでしょうか?








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