太陽と月

 

 

お前は太陽で、俺は月。太陽の光によって月は輝いている。そう、だから、俺らの関係はきっと太陽と月。別にお前が俺を輝かせてくれてる訳じゃないけど。

お前の周りには人が集まる。その笑顔の下に沢山の人が。人懐っこい笑みを浮かべ世渡り上手。きっと俺もその笑顔に惹かれたのかも知れない。

月は太陽に惹かれる。自分を輝かせてくれる光だから。

だけど太陽はそんな事は無い。沢山の惑星がある内の更に小さな月なんかに惹かれる筈は無い。

そう考えるとますます月は俺で、太陽はシゲに思えた。

 

いつもは暗い帰り道だったが今日は何故か明るかった。どうして?と思いふっと空を見上げる。

「お、満月やん」

あまりの綺麗さに少しばかり見とれる。

「あかんよ。そんな綺麗なん皆に見せたら」

月に向かって呟く。傍から見たら怪しい人に間違いは無いのだが、何故だか今のシゲはそんな風には見えない程、月が似合っていた。

「・・・たつぼんみたいや」

綺麗で、少し妖しく、そして、孤独な感じがする。沢山ある星の内で、月だけが輝いているように見える。

何処か不思議な力で人々を魅了させる。でも、誰とも接したがらない雰囲気を持つ。ただ自分が此処にいるかを示すためだけに光っているように・・・。本当は人々の夜道を照らす事が出来るのに。

 

 

やっと午前の授業が終わり昼休みになった。皆は騒々しく机を移動させ昼食の準備や、友達と話たりしている。

騒々しいのが苦手な水野は屋上へ行こうと思い、片手に弁当を持ち席を立った。

「あれ?たつぼんやん、どっか行くん?」

教室を出た所でシゲに呼び掛けられた。

「屋上で・・・食べようかと思って」

「俺らもええ?」

シゲの周りには風祭と不破が居た。

「あぁ、別に良いけど」

 

「ポチ、その卵焼き美味そうやん」

「あ、じゃ、食べます?」

「ほんまに?有難うな〜」

屋上でのランチタイムは別に教室に居た時の騒々しさと変わりはしなかったが、何故か心地良いのと同時に少し胸に痛みが走ったような気がした。

「おー、ポチ、これ美味いで!」

卵焼きを食べ終わったシゲは満足そうな笑顔で言った。

「ふむ、佐藤は実に美味しそうに食べるな」

「マジで美味いんやって!!不破センセーも食べてみ」

「ふむ・・・」

「あ、じゃ、不破君どうぞ」

そう言って風祭は不破に卵焼きを差し出した。

「ふむ、頂戴する」

そう言うや否か口の中にいれ、考え出す。いや、考察していると言った方が正しいだろう。

「・・・確かに、美味い・・・のかも知れない」

「どないやねん!ハッキリせぇ!」

「・・・美味い」

「それでええねん。最初からそう言えばええのに」

俺はその光景を眺めるしか無い。

笑顔のシゲを見ているだけしか出来ない。

「水野君・・・?」

ボーッとしていた俺を心配してか風祭が俺の前にひょっと顔を出す。

「あ、風祭、どうした?」

「水野君が何か元気無かったみたいだから・・・」

「いや、そんな事無いけど」

「そう?なら良かった」

心配そうにしていた顔が一瞬にして笑顔に変わる。

「風祭、俺の卵焼き食べるか?」

「え?」

俺の突然の言葉に吃驚した表情を浮かべる風祭。

「あ、いや、別にいらないなら良いけど・・・」

「ううん、有難う、水野君」

そう言うと俺の弁当箱から卵焼きを一つ取る。

「美味しい・・・」

「そうか、良かった」

俺と風祭はよく分からなかったが笑顔になりながらお互いを見ていた。

「ちょう待ちぃ!!そこ!何和みムードになってんねん」

「別に・・・」

和みムードになんかなってない、そう言おうとした時だった。

雲のすき間から太陽が出て来て、俺らを照らした。シゲの金色の髪は反射して眩しくて、でも、綺麗だった。

「たつぼん?」

突然どないしたん?そう言いながら近寄ってくるシゲを見て、やっぱり太陽なのだと実感させられた気がした。

「何でもない」

そう答えるもシゲは更に近づいてくる。

「・・・・・・・」

黙ったままのシゲは俺の髪にそっと手を置いた。

「・・・・・シゲ?」

「いや、たつぼんの髪の毛がキラキラ光ってて綺麗やなぁ、って思って」

お前の方が綺麗だろ、何て口に出して言える訳も無く、ただ黙る事しか出来ない。

「たつぼんって月みたいやね」

「そういうお前は太陽みたい・・・」

ボソッと言った言葉はシゲにはきっと届いている筈で、でも、何も言おうとはしないシゲの手を俺はそっとどかした。

「・・・そろそろ予鈴が鳴るし、教室に戻るか」

風祭と不破にそう言って、弁当箱を片付け始めた。

「なぁ、たつぼん」

黙っていたシゲが突然口を開いて俺の名を呼ぶ。

「今日一緒に帰らへん?」

「別に良いけど」

「ほな、決まりな」

 

太陽は照らす。月は魅せる。

実際の太陽と月の距離は縮まる事は無いだろうけど、俺らの距離は一歩ずつ、僅かにだが、きっと縮まっている。

太陽は月が好きで、月も太陽が好き。

その気持ちに気づくのはいつだろう・・・。

 

 

END

 




久々の更新で御座います。突発的過ぎる小説・・・。微妙だなぁ。
でも、水野はシゲの事を太陽だと思ってると思います。自分には無いものだからね。



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