子供らしさ

 

 

イライラする。

別に普段からイラついている訳では無いのだが今日は特別イライラしている。

それはきっと目の前にいる人物のせいなのだろう。

「・・・・・」

会話は無い。親しい訳でも無い。むしろどちらかと云うと仲は悪い方だと思う。自分から会話を切り出そう何て考えも無かったが、流石にずっと沈黙というのも疲れてきた。

「おい」

「・・・何だよ」

「取り敢えず店でも入るぞ。こんな所にいても寒いだけだ」

「あぁ・・・」

何で魅せに誘ったのか分からない。そのまま帰ると一言言うだけで終わったはずなのに。

 

 

出会ったのはほんの・・・いや、もう30分前だ。たまたま寄った本屋にたまたま居た水野に会った。声を掛ける気も無く素通りしようとした時、偶然にも水野が振り返った。ただそれだけだ。

流石に知らない素振りを見せる訳にもいかず、挨拶を交わした。

そして、何となく一緒に本屋を出た。

で、現在に至る。

「・・・・・」

相変わらず沈黙。何か喋れよ・・・とこいつに期待した所できっと無理だろう。

「飲めよ」

「・・・あ、あぁ」

テーブルの上には紅茶とコーヒー。その品がテーブルに乗ってから5分は過ぎているだろう。

水野は躊躇いながらもカップを手にして一口飲んだ。

「美味しい・・・」

「そうか、良かったな」

温くなってはいるだろうが、この店の紅茶は美味しい。時々休みの日に来るのだが、冷めていても何ら影響は無い。まぁ、温かいうちに飲む方が良いに決まっているが・・・。

自分が美味しいと思っているものが他人にとっても美味しい物だというのは嬉しい。それがたとえ苦手な奴であるとしても。

水野はその紅茶を心から味わうように飲んでいた。

その時ふっと頭に過ぎったのは選抜中の出来事。

プリンを取り合った。あの真新しい記憶。今思うと少し情けない気さえする。それほど食べたかった訳でも無いのだが・・・意地になっていた。

まぁ、思い出すのはこの辺にして、水野の反応が気になる言葉を口にしてみた

「ここはケーキも美味しいぜ」

ニヤリ、そんな表情だったかも知れないと思いつつ水野の反応を待った。

「本当か?」

「あぁ」

「・・・・・今度食べに来る」

今度、という言葉を強調しながらそう言った。

多分、水野は甘いモノが好きだ。

でも、水野は俺の前で食べたくないのだろう。弱みを握られる。とかそんな風に思っているのだろう。

あまりもその子供さ加減に迂闊にも可愛いと思ってしまった。

「何笑ってんだよ・・・」

怪訝な顔をして言う水野も可愛いと思ってしまう。ツボにはまったんだ。と自分を納得させながら、何でもない、と答えた。何のツボかは自分にも分からないが・・・。

「じゃ、いつ食べに来る?」

「は?」

訳の分からない、という顔をする水野にケーキ、と付け加えた。

「いや・・・それは俺1人で・・・」

「別に良いじゃねぇか。俺に来るなとは一言も言ってなかったぜ」

「そうだけど・・・」

「それてもなんだ?俺とは来たく無い・・・そういう意味か?」

「そうじゃないけど・・・」

ハッキリとしない水野にイライラする。最初のイライラとは何処か違う。何処が違うのか何て分からないが。

「来週の日曜な、はい決定」

「え!?」

「・・・嫌か?」

「・・・別に」

少し考えた表情を見せてから答えた水野に笑いかけた。普段滅多に笑わねぇからレアだぞ、と心の中で思いながら。

まずは様子見から始めますか。

 

 

end





久々に書きました。どうして私が書く三上はこんなキャラなんだろう・・・。もっと格好良くさせたいし、堂々と俺様という感じも出したいのに。
あぁ、ロマンティスト三上が誕生・・・



戻る

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!