Cut

 



 

頭を撫でるように動くその手が妙に心地良くて。

眠りを誘うかのように静かなこの空間がまた心地良くて。

珍しく喋らないお前の事を不思議に思いながらもこの空間を堪能していた。

 

 

「少し伸びたか?」

髪の毛をいじりながら目の前の人物、シゲに問う。

「せやな、伸びたんちゃう?」

「そうか・・・」

別にそれ程気になっていた訳でもない。ただシゲの長い髪を見てふと思ってしまった。

自分も伸びたのでは無いか?と。

「何?気になるん?」

「あぁ、少しな・・・」

別に切りに行く程でも無いが、一度思うと気になってしまう。

俺がそう思っている間にも、シゲは何かを考えながら俺を見ていた。俺の視線に気付いたシゲは何か含んだ笑い方をしながら言う。

「私が切りましょうか?お嬢さん」

「・・・気持ち悪い」

「なんやのそれ!!」

不自然な標準語、しかも『私』・・・かなりシゲに似合わない。

「人の好意を無駄にしよって」

「別に切らなくて良いとは言ってない」

「もう、素直ちゃうんやから〜!」

相変わらずのふざけた感じで俺に返す。

「変にするなよ」

「はいはい、お坊ちゃんは我儘なんやから」

「シゲっ!!」

 

 

 

家には誰も居なかった。

 

俺はシゲに鋏を渡し、椅子に座る。

「頼むから変にしないでくれよ」

「分かっとるって」

ちょっと心配だったがシゲに任せる事にした。納得はいかないが、シゲは器用だし流石に俺の髪型まで変にするという事は無いだろう・・・多分。

 

耳に心地良い髪を切る音。

撫でられているようで、そうじゃない・・・。不思議な感覚。

静かだけど心地良いこの空間。

シゲが作り出すこの空間・・・。

シゲの指があまりに心地良くて眠りに誘われそうになる。

「たつぼん」

「・・・ん?」

「出来たで」

「・・・・・」

いつの間にか鏡を持っていたシゲはそれを俺に見せる。

「どや?」

「有難う・・・」

別に特に変わってはいなかった。そう、言うなれば元に戻っていた・・・とでも表現した方が良いかも知れない。

「まだ毛落ちるやろうしな・・・洗う?」

「・・・・・」

俺は言葉に出さすゆっくりと頷いた。

 

 

「ちょっ、何でお前まで入って来んだよ!!」

「何ってサービスやんか!最後までやるんが美容師の仕事やで」

「何言ってんだよ!!早く出ろよ!」

シゲが風呂場に入って来た。・・・裸で。

俺はというと言われた通り髪の毛を洗おうとしていた所で・・・勿論裸だ。

「ええからええから、遠慮せんと」

「してねぇよ!」

「ほら、座りぃ」

「ちょっ、シゲっ!」

自分から座ったというより押し付けられた、と言ったほうがこの場合は正しいだろう。シゲが俺の肩に手を置き押し付ける。勿論それじゃ俺は立つことも出来ず結局は座るしか出来なかった。

「はーい、お客さん、熱くないですか〜?」

と、お決まりの台詞を言う。

「熱い」

「え、嘘やん!?」

「嘘だよ、バーカ」

「なんやの・・・最近たつぼん俺に対する扱い悪いで・・・」

拗ねたように言いつつも手は動いている。

「ほんまに熱かったりしたら言うてな?」

「分かった」

そう返すものの特に言う事は無いと思う。シゲは器用に髪の毛を洗うし、湯も丁度良いくらいだ。

ただ気になるとすれば・・・あれだ。

俺も裸な訳で、シゲも裸・・・俺の背中に触れるシゲの素肌の感触が妙に熱くて、ドキドキする。

・・・何か恥ずかしいだけど。

 

「たつぼん、終わったで」

「あ、あぁ・・・」

「どないしたん?」

「べ、別に・・・」

何で俺こんなに焦ってるんだろう。ただ髪の毛洗ってもらっただけだってのに・・・。

「たつぼん?」

「別に何でもねぇよ!!さっさと出るぞ」

そう言いながら俺は風呂場を出て行った。

「ちょ、たつぼん・・・」

 

「たつぼん、ドライヤーあらへん?」

「何で?」

「乾かさなあかんやろ?」

「自分で出来る・・・」

「遠慮せんと、たつぼんはお客さんなんやから」

何のだよ・・・と思いつつも言ってくれるのだから、という気持ちでシゲにドライヤーを渡した。

「ええ子やな」

何か言うのも疲れてきたので黙って椅子に座った。

「無視かいな・・・まぁ、ええけど」

呆れた様子では無く、何処か柔らかい笑みを含んだような感じだった。

少し煩いなぁ、と思いつつもそのドライヤーの音も段々と心地良くなっていく。

シゲの指が髪の毛を撫でる。

水を含んでいた髪が段々と軽くなっていく。

「サラサラやな」

シゲのボソリと言った言葉。聞えていたけど何も返さなかった。

その指が心地良くて・・・。

その声が心地良くて・・・。

「たつぼん・・・好きやで」

ドライヤーの音に掻き消されるくらいの声の大きさだったとは思うのだが、はっきりと聞える。

「・・・・・・・・」

「たつぼん・・・」

ドライヤーの音が消え、シゲの指も止まる。

髪の毛に触れたのはシゲの唇だった。

 

 

 

 

End






久々に書いたのでまたもリハビリ小説という感じでしょうか・・・文章が意味不明すぎる。
雰囲気てきにはほわ〜?みたいな何か柔らかい感じを出したかったんですが・・・ギャグっぽくなった・・・。









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