「寒いな」
「あぁ」
続かない言葉、紡げ無い自分。
季節外れの雪は自分を慰めるような、戒めるような、そんな気がする。
フワリフワリ、手を伸ばせば手の中に入り直ぐ消える。
触れては消える。
消さない為には触れなければ良いのか?…そうでは無い。そうでは無いがそう思わずにはいられないのはどうしてだろう。
それは君が今にも、消エテシマイソウダカラ。
「水野、上着」
「良いよ…黒川だって寒いだろ」
「…別に」
「嘘つけ…」
「良いから着とけ。お前見てるとこっちが寒い」
「…何だよそれ」
「ほら」
自分が着ていた上着を着せ、後ろから抱きしめる。
「ちょっ、黒川!?」
「これなら俺も暖かいし」
「……少しだけだぞ」
「あぁ」
フワリフワリ。
春に降る雪は積もらない…。
それは、全てを溶かす暖かさがあるからだ。
フワリフワリ。
……なぁ、水野。俺はお前の春になれるか?
ホントはお前が春で俺が雪なんじゃないかって思うよ。
でも、俺はお前の春でありたい…。
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2006.3.9