木の上の魚には悩みがありました
湖の底の小さな仲間は、何も喋れず、あまり動けない様子です
けれども魚はどうやって仲間を助けてあげればいいのか分かりません
そこで月に祈りました
――――お月様お月様、どうすればたった一人の仲間を救えますか?
月は答えます
――――銀の鏡に閉じこめられた魚は、月の光で解放されます
魚はそれを聞いたとたん湖の底に戻っていきました
「魚さん、君を救う方法が分かったよ。さあ、僕と一緒に水面近くまで上がろう」
けれども鏡の中の魚は、決して鏡からでてこれず、鏡は魚には重すぎました
魚は悲しそうに呟きます
「ああ、どうすればこの初めての友達を月の光にあてさせてあげられるだろう?」
月は遙か遠く、湖の底まで光は届きません
するとその時、魚の隣にするすると何かが降りてきました
釣り針です
村の風変わりなおじいさんは、魚が全然いないこの湖で、夜釣りをするのが趣味でした
本当は昼間にしたかったのだけれど、昼間は人目が気になるので夜にしています
「しめた、この釣り針を借りよう!」
魚は頑張って鏡の取っ手に釣り糸を絡ませました
するすると鏡は上昇していきます
ぱちゃん
湖に釣り糸を下ろして、初めての反応におじいさんは驚きました
そして引っ張り上げて、がっかりしました
「なんだ、鏡か」
その鏡は月の光を受けてキラキラと輝きました
すると、驚くことにその鏡から何かが飛び出してきました
ぽちゃん
小さな銀色の魚は、鏡を飛び出すと湖に潜っていきました
おじいさんはびっくりしました
するとその魚を迎えるように、湖の底から魚がもう一匹あがってきました
二匹の魚は、嬉しそうに寄り添って、湖の底に潜って行きました
後に残ったのは、目をまん丸にしたおじいさんと、きらきら輝く月だけ……
戻る
木の上の魚トップへ
童話トップへ
ホームへ