the necessary one 3
そんなことを逡巡している間にも俊の舌先が蘭世の秘裂をこじ開けその中心に差し込まれる。
「・・ぁ!ぅ・・・は・・・・ぁ・・」
意識とは別に身体が高まる。
浅く抜き差しされるそれは今までされたことが無い。
指とは違う動きが蘭世の胎内で新たな快楽を生み出す。
ままならない身体すらもその手助けにしかならない。

・・やめて・・やめて・・・

・・・・こんなのはいや・・・いや・・・

・・・違う・・違う・・・・

後から後から溢れ出す蜜に俊はそこを今度は指で嬲りだす。
「ぁぁ!!!あ!!!」
指先の動きと併せるように舌で芽の周りをなぞり、時折先端を舐めあげる。
その都度胎内の指を締め付け快楽ををイヤでも知覚させられる。
抑えようとする声すらもとめられない。


・・・何があったの・・・

・・どうして?・・

・・・・・何も言ってくれないのに・・なんで・・・?


・・・私は・・・



・・・・・私は・・・・


「いやぁ!!!」
俊の責めが蘭世の身体の快楽を無理やりにでも引きずり出す。
それに抵抗できないまま絶頂へと導かれる。
「・・や・・やめ・・だめ!・・も・・・やぁぁぁ・・・・!!!」
快楽と涙と悲しさとが入り混じった切ない声が台所に小さく響いた・・・・・・

蘭世の絶頂を知ると俊はようやく身体を解放した。
そっといとおしむように腕を拘束していた紐を解く。

ピシッ・・・・・

蘭世の手が俊の頬を叩いた。
真っ赤な眼で蘭世が俊を見つめる。

「どうして?」
逃げを許さない一言。


・・・判らない・・・・


ある種の無表情を取り繕い俊は蘭世を見た。
「答えて。」

俊は答えない。

ー否

答えられないのだ。
判らないから。

何故今自分がこんなことをしているのかが。
自身がもてあましている苛立ちをぶつけているに過ぎないことだけは判っていたけども。
なにに苛立っているのかが判らない。

どれくらいそうしていただろう。
時間の感覚すらなかった。

蘭世は棒立ちする俊の横を通り帰り支度を整えると玄関へと歩いた。
「!・・・」
靴を履いて玄関を出ようとするその瞬間何かを言おうとした。
でも結局何も言わずにそのまま部屋を出て行った。

俊は追わなかった。
追うことが出来なかった。

その日から俊がいる時間にアパートへ蘭世が来ることが無くなった。



「真壁、決まったぞ。タイトル戦。」
蘭世と逢わなくなって1週間くらい立った頃トレーナーから言われた。
「・・そうっすか・・・いつ。」
「2ヵ月後だ。やっとここまで来たな。」
「・・・・・ハイ。」
まだ気持ちは決まらないままだ。
自分の中もまだ決着はついてない。
それでもー

・・2ヶ月・・か・・・

俊は天を仰ぐ。
ロードワークや柔軟にもう逃げているわけには行かない。
試合なのだ。
それも夢にまで見たタイトル戦。
目標だったはず。
「そうだな・・・・」

眼前におく目標としてそれは悪くないものだった。
自らの慢心を省みるためにも。
そして自分のためにも。
これからの、ためにも。

がむしゃらに身体を痛めつけるしかなかった。

帰りにコンビニで夕食を買って帰るものの食べる気力は無い。
空腹にならない程度に食事を取る。
そんな数日が立った頃いつものように帰ってくると玄関のノブに小さな袋がかかっていた。
中を見れば包みが一つ。
「・・・あいつ・・・・」
曜子に聞いたであろう蘭世からの食事が届いていた。
以前のようにお弁当箱というわけにはいかないが使い捨ての容器に入れられていた。

・・あんなことをしても、か・・・・

俊は苦しげに息を吐いた。

・・・どうして、あいつは・・・・

でもまだ許されていないことは判っていた。
声も姿も無い。
ただ、食事だけが届けられる。

「蘭世!」
「神谷さん。」
ばつ悪そうに蘭世は曜子に声を返した。
「最近、ジムに来ないんだもの。」
そういう曜子は車から手を振った。
横に力がいるのが見えた。
「どうしたの?こんなところで、デート中じゃないの?」
「デート中よ!」
と堂々と言ってのけながら蘭世を手招きする。
「丁度ね見つけたから後つけたの。蘭世の。」
「まぁ。」
顔を見合わせて笑う。
「俊の調子どう?」
「え?あ・・・ジムに来ないって神谷さんが言ったのよ?」
「違うわよ!」
真剣な眼で蘭世を見つめる。
「どこかおかしいって言ったでしょ。前。」
「・・・・・・」
「何か、あった?」
「・・・何も・・ないよ・・・」
「・・・・そう?」
「・・うん。だってほら。今だって・・・」
片手の袋を軽く持ち上げる。
「なら・・・いいけど。」
曜子は不審気に蘭世を見やる。
「デート中に他の人と話しているとやきもち焼かれちゃうよ。」
「いいのよ、私とデート出来るんだから!」
と曜子らしい口調で言うと
「本当に?大丈夫?」
「・・・・大丈夫よ・・・」
そう小さく答えるとそれ以上曜子も言葉を無くし
「何かあったらちゃんと言うのよ!!」
そう言って窓を閉めた。
小さく蘭世も手を振るとゆっくりと走り始めた車を見送った。
「・・・・・・多分・・・・」
ため息、一つ落とした。

・・・・何も出来なかった・・・・・
・・おかしいのは気がついていたけど・・何も・・・・
・・・・どうしたらいいのか、わからなかった・・・

受け止めていればよかったのか?
それとも撥ね退ければよかったのか?

距離感がわからなかった。


どうすれば、良かったんだろう・・・

あの日から蘭世は後悔ばかりだった。
そんな中試合が決まったと曜子から電話を貰った。

まだ顔を合わすのは怖いー

それでも心配だったのだ。

私が出来るのは、これくらいだから・・・・
そう自分に言い聞かせて。


試合3日前、チケットが蘭世の手元に届けられた。
送り主は
”真壁 俊”


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