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「ふっ、ふっ、ふっ。今日はどんなことをしてやろうか」

 屋敷の北にある部屋に向かいながら、ヴァールが思わす声を漏らす。

 その顔にはとても天使とは思えない淫靡な表情が浮かんでていた。


 様々な偶然が重なり、天界にて捕えられた4人の悪魔っ娘の管理を

ヴァールは任されている。

 魔界と違い、ここ天界では悪魔達は本来の力を振るうことは出来ない。

 それを良い事に、ヴァールは悪魔を調伏するという建前の元、

4人の悪魔っ娘達に対して淫らな調教を行っていた。

 とりわけ、この北の部屋に閉じ込めたダリアがヴァールのお気に入りだった。


「あいつは氷の属性だから、蝋燭で虐めた時は凄かったな。それに最近は

お尻の開発も進んできたし、今日はもう指をもう一本増やして拡張するか?

 でも、ちょっとマンネリだしな……。そうだ、今日はアレでいってみるか」

 扉を前に、しばし悩んでいたヴァールだが、ようやく今日のプレイ…

もとい、調伏の内容が決まったらしい。口元にイヤらしい笑みを浮かべながら

封印を解除し、扉を開いた。


「おーっす、ダリア。今日もたっぷりと可愛がってやるからな。楽しみだろ?」

 その声が聞えないハズはないのだが、ダリアはベットの上で

じっと座ったまま、壁に掛かった絵を見詰めている。

 ただ、愛らしいネコ耳だけが扉の方へと注意を向けていた。

 自分の方を向かないダリアに構わず、ヴァールは言葉を続ける。

「今日はどうやってダリアと楽しもうか色々考えてきたんだよ。

 ほらこの間は蝋燭を使ったし、その前はお尻を責めただろ?

 なんつーかちょっとココのところ過激すぎたかなって思ってさ…」

 自分を辱める言葉を聞いても、ダリアの表情はほとんど変化を見せない。

 しかし、ネコ耳がピクピクと反応し、しっぽは落ち着かなくパタパタと動く。

 このギャップが堪らなく可愛らしい。


「だから、今日は【無垢の芽生え】を使って、プラトニックに楽しもうかなって」

 それを聞いた瞬間、今までほとんど変化を見せなかったダリアの顔に

困惑の表情が浮かんだ。

 【無垢の芽生え】…相手を強制的に若返らせる呪文を秘めたロールだ。

 幼くなったダリアに対して、ヴァールは決して乱暴な扱いはしない。

 小さな口に幾度と無くキスを繰り返し、羽毛で撫でるように身体中に

 優しく手を這わせる。

 焦らず、幼い性感をゆっくりと開発するかのようにダリアを高め、

 慈しむように肌にキスをする。

 そして幼くなったダリアは心だけは大人のまま、子供の体では到底

耐えきれない快感を与えられ、絶頂をむかえるのだった。

 懐からロールを取り出しその封を解こうとした時、ダリアが口を開いた。

「………それは、止めて…」

「え…?」

 ダリアが責めを拒むのは珍しいことではない。

 それでも、そのほとんどが形式的なものでしかなった。

 だが、今の声にはいつもとは違いハッキリとした拒絶の意思が

込められていた。

「えっと… なんで?」

 普段とは違う様子にヴァールが手を止め、若干戸惑いながら聞きかえす。

 【無垢の芽生え】で若返ったダリアに対して、酷いことをした記憶は無い。

 頭の中を「何故??」の文字が飛び交っていった。

 そんなヴァールから顔を背けるかのようにダリアが僅かに横を向く。

「……………から…」

「えっ?」

 その声は小さなく、殆ど聞き取れない。ヴァールが思わず聞き返した。

「……っ!」

 その途端ダリアが鋭い視線で睨み付け、きゅっと唇を噛んむ。

 二人の間の空気が張り詰めた。

(なんだよ… 初めてこの部屋に連れて来たときみたいに…)


 ダリアは激しく抵抗したことはない。が、天界で捕まった当初は

拒絶の意思が全身から溢れ、部屋の空気を重くしていた。

 それでも時を重ね、少しずつ打ち解け、今ではダリアもヴァールの

与える責めを嫌がってはいない……ハズだった。

 それなのに、今この部屋の空気は時を違(たが)えたかのように重苦しい。


 その緊迫を破ったのはダリアだった。

「他のことなら なんでもするから…。 それだけは… イヤなの」

(コイツがこんなに嫌がるなんてな。しかも理由を言わないし…

 うー 気になる…)

 とは言えダリアは結構強情だ。このまま問い詰めても話しはしないだろう。

「ったく…。分かった。んじゃ、今日はこのロールは使わないよ」

 部屋の雰囲気を振り払おうと、やや大げさな動きでロールをしまう。

 その様子に、ダリアが真偽を疑う眼差しを向ける。

 しっぽがパタパタと動いてるのは、警戒しているからだろうか。

 その目に射すくめられたまま、居心地が悪そうにヴァールは言葉を続ける。

「俺が今までウソついた事……もあるけど。 今回は絶対だ、信じろって」

「……ホントに、 …使わない…?」

 上目づかいでダリアが見上げてくる。微かな疑いと怯え、そして信頼とが

同居した瞳が悪魔的に可愛いらしい。

「…ああ。そのかわり、ちゃんと別の責めを受けてもらうぞ」

 そんな表情に思わず赤面しそうになって、ヴァールはわざと

横柄な態度をとって告げた。

「………」

 コクリとダリアの顔が縦に振られた。

 先程まで張り詰めていた空気が、ようやく和む。

(さて、どうしようか)

 僅かの間、思考と嗜好を巡らせた後、ヴァールは机を指し示した。

「それじゃ、今日はあの机を使おうか…」

「………」

 ダリアは何も言わずにベットから立ち上がると、机の横まで歩を進める。

「どうすれば良いかは、分かってるよね」

「…………自分ですれば、…いいんでしょ」

 言葉は素っ気なく、表情もいつものように頑(かたく)なまま、返答した。

ただ、しっぽだけは内心の動揺を伝えるように忙しなく動いている。

(コイツ、絶対ポーカーで勝てねーな)

 その様子を眺めるつつ、ヴァールは内心苦笑する。

 氷の仮面から見え隠れするダリアの内面が微笑ましい。

 と同時にヴァールの内に、ダリアを思いっきり可愛がりたいという想いと、

 意地悪をして虐めたいという一見矛盾した欲望が燃えあがった。


 そんなヴァールには目もくれず、ダリアは机の角に股間をくっつける。

 両手を支えにし、体重が掛かり過ぎないよう注意しながら恥丘を押しつけ、

 角を柔肌へと食い込ませていく。

 そのまま、ゆっくりと自分の感じる部分を探すように腰を動かしはじめた。

「ん……ふぅ………んっ…」

 敏感な場所を角が通過するたびに、僅かな喘ぎが唇からこぼれ落ちる。

 だが、その声はいつもに比べて激しさがない。

 決して感じて無いわけではないのだが、どうも集中できていないようだ。


「ダリア。おもらししてもちゃんと片付けてやるから、もっと思いっきり動けよ」

「……ッ!! そ、そんなこと… しないッ…」

 殆ど表情を変えず擦り付けていたダリアの頬に、羞恥の色が浮かび、

批難を湛えた瞳でヴァールを睨み返す。

「そんなことないだろ。ダリアはおもらしオナニー娘なんだから。やっぱり

イキながらすると気持ちいいのか?」

 否定の声に耳を貸さず、なおもヴァールは続ける。

「………」

「なくて七癖とも言うしな。おもらし癖ってのもあるのだろう。それにこの

部屋でならおもらしの片付けも簡単に出来る。心配はないぞ」

「…そんなに お…らしって言わないで… んんッ…」

 ヴァールの言葉を拒みながらも、羞恥心がダリアの身体を熱くしていった。

 いつもの冷たい眼差しが快楽に蕩けはじめ、洩れる声のトーンが高まる。

(やっぱりダリアは恥ずかしさが快感に変わるんだ)

「いいじゃないか、ダリアのお洩らし姿はとても可愛いよ」

 なおもヴァールは言葉で嬲った。そのたびにダリアの表情が艶を帯び、

机にすりつける腰の動きが過激になっていく。

「んくッ… ん…、ふぅッ、 ふわぁ…」

「だいぶ感じてきたみたいだな」

「………!」

 ヴァールに対し、批難の色を湛えた目が一瞬向けられる。

 が、ダリアはすぐに視線を落とし自慰に集中していった。

「ああっ、 んんッ… くぅ…」

 スリスリと腰を動かし、湧きあがる快感に耐えるようにきゅっと目を瞑る。

 机の角がクリトリスを押しつぶすたびに唇が噛み締められ、

 それでも押さえきれない喘ぎ声が、静かな部屋に艶めかしく響いた。


「ふふっ、一心不乱に腰を動かして… ダリアはイヤらしい娘だね」

 急に耳元で声を掛けられ、ダリアがビクンと体を固くした。

 いつの間にか背後に立っていたヴァールが、その手を前掛けへと伸ばす。

「ほら、前掛けをめくってやるから、続けろよ」

 耳元に囁きかけながら、股間を被う服を捲り上げダリアに咥えさせる。

 机と、肌の間にあった厚い布がなくなり、刺激がよりダイレクトに

性感へと変換されていった。

「んんんッ… ふぅぅぅッ!! んんッ、 んふぁっ……」

「このほうが気持ちいいだろ? いいか落とすなよ」

「ふぅん…… んんッ… んううぅぅ…」

 こくこくと頷きながら、ダリアは喘ぎ声を前掛けへと染み込ませる。

 敏感な秘裂と机を隔てているのは薄いシルクの下着だけだ。

 吸収力のない布地から溢れた愛液が、腰の動きに合わせて

ぬちゃぬちゃとイヤらしい音を立ていく。

「ふぅん… んんぅッ、んふぅ……」

 クリトリスを机の角に擦り付け、自分から腰を回すように動かす。

 敏感な小豆が固い角で押しつぶされ、柔肌にめりこみながら

 掻き回される。そのたびにダリアの表情が蕩けていった。

「すっかりクリトリスオナニーが気に入ったようだな」

「んッ… ううん… ふぅッ……」

 オナニー少女の首がぷるぷると左右に振られるが、まるで説得力がない。

 むしろ羞恥心が快楽を加速させ、より激しく腰を擦り付けだす。

 ダリアは自分が与える快感に酔いしれ、没頭していった。

「ふふっ今日はな、もうちょっと趣向があるんだ」

 その痴態をまじまじと見ながら、そっと耳元に息を吹きかけて告げる。

 そのままダリアを押さえ込むように、背後からヴァールも机に手をついた。

「…っ? ふぁ、ふぁに…」

 密着してきたヴァールに驚き、快感に耽っていたダリアが肩越しに

後ろを見上げる。

「……いいことだよ」

 と、言い終わると同時にヴァールの右手がパチンと音をたてた。

 途端に濃縮された神気が机の角へと集まっていった。

「んんッ!? んふぅぅ───!!」

 シルクの布をあっさりと通過して、神気が秘所へと染み込んでいく。

 魔族に対して反属性である清められた気が、ダリアの敏感な粘膜を

チリチリと刺激する。

 強すぎる刺激から逃れようと、ダリアは腕に力を込め暴れだす。

「だ、だめッ! 刺激ッ… 強…い!! やぁッ…」

 堪えきれず前掛けを落とし、首を左右に振りながら許しを請う。

「ほら、クリトリスが触れてるからきついけど、こっちなら大丈夫だろ?」

 ヴァールが逃げ腰になっているダリアをぐいっと持ち上げた。

 クリトリスに当たっていた机の角が、秘裂へと移動する。

「ああッ!!  ふぁぁぁああああ んくぅ……」

 若干刺激が弱まったとはいえ、神気を帯びた角が秘裂に食い込む感覚に

ダリアの全身が仰け反り、ヴァールにもたれ掛った。

「ダメだよ。ちゃんと自分でしなきゃね」

 後ろに反ったダリアの姿勢を戻させ、ヴァールが密着させた腰を揺すり出す。

 そのヴァールの動きが伝わり、スリットが机の角へと擦り付けられる。

「んはぁぁッ!! ダメェ… ああっ、ああああ──」

 ただでさえ神気に刺激されていた秘裂が刺激されたのだから堪らない。

 股間から湧きあがる快感のあまり、ダリアの手足から力が抜けてしまう。

 途端に机の角が秘裂に食い込み、その上で自己主張を続ける蕾に

ニアミスする。


「ああッ… ふわぁッ! くぅんんッ!!」

 背後からヴァールに密着され、逃れる術もなくダイアの腰が淫らにうねる。

「んんッ、 くぅぅぅ!! ああっ、ダメ! ダメッ!!」

 そのたびに柔肌に食い込んだ角が、新たな刺激を紡ぎ出し、

 純白で雪のような肌が神気に酔って桜色に染まっていった。

「ふぅッ… 、んんっ… んはぁっ! ああ──!」

 段々とダリアの動きが激しさを増し、喘ぎ声が高まる。

 下着で吸収しきれない愛液がダリアの脚を伝い落ち、周囲に淫臭が

篭もりだす。

「ふわぁ─ッ!! あ、ああっ──  くぅぅ────!!」

 神気によって生み出される快感に翻弄されながら、ダイアは快楽の

頂きに追い込まれていった。


「っと、まだイッちゃだめだよ」

 ヴァールはイク直前まで高まっていたダリアを後ろから抱きかかえると、

机から引き剥がし、そのままベットの縁に腰を下ろした。

「ぁ… な、なん…で…?」

 息を荒くしたダリアが、絶頂寸前の潤んだ瞳でじっと見詰めてくる。

「ほら、こうして…」

 その質問には答えずに、ダリアをひょいと持ち上げて自分の脚に乗せると、

くるりと振り向かせる。丁度、脚の上で抱き合うような形となった。

 ヴァールの両手がダリアの背に廻され、きゅっと力が込められる。

 恋人達が抱擁するように、二人の体が重なり寄りそっていく。

「んっ… はあぁ…」

 密着した下腰に熱く固い塊を感じ、ダリアが吐息のような声を洩らした。

 互いの視線が交錯し奇妙な沈黙が訪れる。

 だがそれも一瞬で、すぐにダリアは全てを委ねたように力を抜くと、

 肩口に頭を預けてきた。

 

(うわぁ、完全に俺を信頼しているよ…。それなのに……)

 そんなダリアを抱きしめながら、ヴァールの胸の内では葛藤が起きていた。

 以前に感じていた「可愛がりたいという想い」と「意地悪をして虐めたい欲望」。

 それが極限にまで高まっている。

 トクン、トクン…

 高鳴る鼓動は自分のものか、ダリアのものか。

 自分が一体どうなってしまったのか。

 幾ら考えても答えは出ないように思えた。

 だから……、それを確かめるために、ヴァールは腕に力を込めていった。


「んッ…」

 力を入れた分、二人の腰がより密着していく。

 ダリアの口から微かに声が零れ、白魚のような指がヴァールの背後で服を掴む。

「それじゃ、動くよ」

 抱きしめ合ったまま、ヴァールが腰を動かし始める。

 重なった股間が擦れ合い、互いの感触が快感へと変っていく。

 ヴァールの動きは焦れったい程ゆったりとしたものだったが、

 一度絶頂の手前まで追い込まれていた官能を目覚めさせるには十分だった。

 すぐにダリアの肌が上気し始める。

 頬が触れ合うほど身を寄せていたヴァールには、その様が手に取るように分かった。

「ダリア、気持ちいいんだろ?」

 そっと息を吹きかけ、耳元で囁く。それだけでダリアの背筋がビクンと戦慄(わなな)いた。

 高まった自らの体温で、ダリアの身体が仄かに香気たつ。

 ヴァールはその香りを愉しむように深く息をつき、処女雪を思わせる真白な

首筋へと唇を這わせていった。

「ぅん… ああ、ん… んぅ」

 微かにくすぐったいような、それでいて魂が蕩けて行くような愉悦。

 ダリアは自分に与えられる快感に耐えるように、

 あるいはそれを確かめるように、きゅっと服を握りしめる。

 ヴァールの動きに合わせて、互いの身体が上下に揺り動いていた。

 その度に二人の服を通しても、はっきりと感じる硬いモノが

 秘裂を擦り、その上で自己主張する蕾を小突く。

 机の角による鋭い快感に比べればソフトな刺激は、一気に絶頂に

 導くことなく、それでいて確実にダリアを高めていった。


「…んっあッ  だ、だめっ…」

 唐突にダリアの声が跳ねあがった、

 快感に蕩け、脱力していた身体がピクンと震える。

「やぁッ、もう… う、動かないで… 」

「どうして? 気持ちよくない?」

「ちがっ… うぅンッ! でも… んぅっ、ん…」 

 秘裂が擦りたてられる刺激を堪えるように、ダリアの背が丸まり

 相手の背後に回されていた指に力が入る。

「なら、もっともっとイヤらしい声を聞かせて」

 トーンを上げた嬌声に後押しされるように、それまでゆっくりとしていた

腰の動きを激しくしていった。

「だめッ… こ、これ以上は… お願い、やっ…」

 服を掴んでいた指が解かれ、腕の中から抜け出そうとヴァールの肩を押す。

 しかし散々秘裂を責められ力の入らない状態では、抱きしめるように

 廻された腕から逃れることは出来なかった。

「もうイッちゃいそう?」

「んッ… そうッ だか…ら… やめ… 」

 抱え込まれた腕のなかで、懸命にダリアが身をくねらせる。

「いいよ、ダリアの一番かわいい瞬間を見せてよ」

「だめ… ぅんッ…、ッ…  …!!」

 もはや言葉を発する余裕もなく、唇を噛み締め、息を詰めたまま

 それでもなおダリアは首を振って抗っていた。

「ダリア… そんなに俺とするのは嫌?」

 なおも続く抵抗に、ヴァールが複雑な表情のままダリアを強く抱きしめる。

 ぎゅっと押しつけるだけとなった刺激は、昇り詰める寸前だったダリアの

性感に僅かのゆとりをもたらした。

「…ちッ、ちがう、 イヤじゃ…… ない…」

「じゃあ……」

「…………って、 服 汚れる… から…」

 暫しの逡巡の後、羞恥と快楽の狭間でダリアが口を開く。

 だがヴァールの返事は予想とは違うものだった。

「……構わないよ」

「えっ…」

「知っているんだ。俺としている時のダリアが、いつもちゃんとは

イッてないこと。机での時だけなんだろ、遠慮しないでイケるのは」

「ぁ…」

 驚きのあまり声もでないダリアに、ヴァールはなおも言葉を続ける。

「俺としている時にも、思いっきりイッてみたいんじゃないの?」

「……… 」 

「ダリアの一番になりたいんだ」

 秘密を告げられ、不安になっていた心にその言葉が染み込んでいった。

 耐えられない程の羞恥と、全てを委ねたいという想いがダリアの内でせめぎ合う。

 そんなダリアを無言のまま強く抱きしると、ヴァールは葛藤し続ける少女を

 あやすように頬に、瞼にとキスの雨を降らせる。

 やがて…

(……こくん)

 ダリアが小さく頷き、ヴァールの背に廻した手がきゅっと服を握りなおす。

 それを合図にして、動きを止めていた二人が再びリズムを刻みはじめた。


(…超ドキドキする)

 ダリアが絶頂を迎える時のことを想像するとどうしても興奮が押さえられない。

 それでも何とか昂ぶる心を鎮め、ヴァールは丁寧な愛撫を繰り返した。

「ふッ…ぅん… んんっ… ああッ!」

 ダリアの喘ぎが段々と高まっていく。

 神気を受け敏感になっているクリトリスが押しつぶされると、

 熱い官能の渦が背筋を駆け昇り、秘裂から愛液を滴らせる。

「ダリア、もうちょっとコッチに来て。そう。」

 力強く腰が引き寄せられ、密着させたままユサユサと揺すられる。

 既に下着としての用を為さないほど濡れたシルクが秘裂に張りつき、

お互いが擦れ合う刺激をダリアに直接伝えていた。

「ふぅぅッ!! んッはぁぁ──! ああッ──」

「気持ちいい? それじゃ今度はこうして…」

 微妙に角度を調整して、秘裂にそって自分のモノが動くようにする。

 極限まで硬度を増したヴァールが前後する度、花弁全体が擦り立てられ、

 その上にある花芯から快感が湧き起こる。絶え間ない刺激は僅かな

 身じろぎすらアクセントにして、イレギュラーにダリアを責めていった。

 二人を中心に部屋の中に官能の香りが満ちていく。

「ああッ! ふぁッ─! ああッ──!! んッ、くぅ…っ んん…」

 時折ダリアの喘ぎ声のトーンが跳ねあがり、全身がブルブルと震える。

 だが、頂きの手前まで駆けあがった快感はそこで脚踏みし、

 狂おしいほどの快楽からまだダリアを解放してはくれない。

「…イケない?」

「んっ… んんっ!!」

 こくこく、とダリアが頷く。

「えっと… 止めた方が良い?」

 通常ならとっくに絶頂を向かえているはずの快感を受けながらも、

まだイケず身悶え続けるダリアが心配になって尋ねる。

「やッ、止めない…で ッ… お、お願い… 」

 快感のあまり苦しげに、それでも懸命にダリアの首が横に振られた。

 蕩けきり、潤んだ瞳がヴァールを見詰めている。

(イキたいのに、羞恥心と罪悪感が枷になってるのか。だったら…)

「ダリア。大丈夫だから……心配しないで」

「んっ…」

 その言葉に小さく頷いたのを見て、ヴァールの手がお尻に沿って降りていく。

「あッ! そ、そこっ…」

 その指がしっぽの根元に触れられた瞬間、ダリアの身体にピクンッと力が入った。

「ダリアの一番感じるところだろ。何もかも忘れて、イッちゃおう」

 五本の指がしっぽをサワサワと弄る。

 腰を抱き寄せられていてはその刺激から逃れ様もなく、

 ダリアはクリトリス以上に敏感な器官を責めたてられ身悶えた。

「んッ…! あっ、ンッ… はぁ…」

「この状態で前も刺激したらどうなるかな」

「……!」

 大きく目を見開いたダリアを無視して、腰の動きをゆっくりと再開した。

 途端にダリアの脚がヴァールの腰に絡みつき、その動きを妨げる。

 イクことを拒絶するというよりも、あまりの快感に身体が勝手にとった動きだった。

「やッ、… ためッッ… う、動かないで… んんッ!」

「じゃあ ダリアに動いてもらおうか」

 その抵抗にむしろ楽しむような表情を浮かべ、ヴァールの指がしっぽ根元を刺激する。

 指で輪を作り、しっぽの根元から毛にそってゆっくりとしごく。その度にしっぽが

 緊張と弛緩を繰り返す。湧き上がる快感にダリアの腰が勝手に跳ねまわった。

「ふわぁっ! だ、だめ… 強すぎる… あ、ああ──!」

「動いているのはダリアだろ。ほら、机でのオナニーの時はこう動くんだっけ?」

 ヴァールは巧みにしっぽを責め立て、さらにダリアの動きを誘導していく。

 二つの敏感な性感帯を同時に刺激され、ダリアの瞳が快楽に蕩ける。

 いつしかダリアは快感を受けるためにヴァールへと抱きついていた。

「ねえダリア…、クリとしっぽ、どっちが気持ちいい?」

 自分にしがみつき、快感に悶えるダリアの耳元でヴァールが問いかける。

「ふわぁっ… ああ… わ、分からない」

「言わないとやめちゃうよ」

「あ、ぁ…ッ んぅッ!  りょ、両方っ くぅッ 両方とも!!」

 髪を振り乱しながら、ダリアが叫ぶ。

「両方ともだなんて、ダリアもエッチな娘になったね」

「やぁッ! い、言わないで!」

「ふふっ、エッチなダリアのイキ顔、見せてくれよ」

 そう言ったヴァールの手に、神気が集まっていく。

「な、何っ… んんっ!」

 魔を調服させる神気に刺激され、しっぽがピクン、ピクンと跳ねまわる。

 それの動きに合わせて、ダリアの肢体が淫らに踊った。

「ああっ! だめ… だめぇっ! はぁっ、ああ──!!」

 今まで以上の快感の奔流が途切れることなく押し寄せる。 

 その刺激から逃れようと暴れる度、押しつぶされたクリトリスから

 新たな快楽の火花が弾け、ダリアの性感を絶頂に向け加速させた。

「ふぁ──っ …ああっ!! へんになるっ!! へんになるっ──!」

 今までとは桁違いの快感が背筋を駆け上がってくる。

(あ、 だめ… もう、耐えられない…)

 抱きしめられ、完全に逃げ場の無い身体が快感と不安に震える。

 そんなダリアを少しでも安心させるよう、ヴァールは片手で抱きしめながら、

 首筋へとくちづける。

「ああッ!! だめぇッ も、もう… んんっ!!」

「いいよ。可愛いよ… ダリア」

 そして甘く囁きながらもしっぽを責める手は止まらない。

「あぁ──ッ!! や、やぁッ… お願いっ 嫌いにならないでッ!」

 ダリアの悲鳴が切羽詰まったものになる。

「大丈夫、絶対嫌いになんかならないから。さあ、イッてみせて」

 そう言って愛らしいしっぽをいっきにしごき立てた。

 今までで最大の刺激にダリアの腰が反射的に跳ねあがり、

 クリトリスがヴァールへと押しつけられる。

「ああ───!! だめっ、だめッ──っ!! 」

 ヴァールの許しの言葉と、しっぽとクリトリスからの快感の嵐。

 その何もかも忘れるような刺激に、ダリアの頭の中が真っ白になる。

 拠り所を求めてヴァールに抱き付き、応えて強く抱きしめられる。

「ふわぁっ ぁッ あ、ああッ─  ああッ───!!」

 絶頂の叫びを上げた次の瞬間、ダリアの身体がビクンッと跳ねた。

 極限まで緊張していた全身の筋肉が一気に脱力し、そのままヴァールに

 もたれ掛かかる。


『しゃぁ────』

 

 失禁しながらもダリアの全身はピクン、ピクンと緊張と弛緩を繰り返していた。

 収まらない快感のなか、ヴァールの腕の中で迎えた絶頂の幸福感に包まれ

 ダリアの意識は闇に沈んでいった。



 * * *


 意識を取り戻したダリアと二人して湯浴みをした後、ヴァールは自分の

 寝室へと案内した。

 長い廊下を夜着をまとったダリアが無言のままに付き従う。

 やがて辿り着いた寝室はヴァールの部屋とは思えないほど小奇麗だった。

(やれやれ、今日ばかりはプライマル様々だな)

 いつも整理しろと五月蝿いプライマルに胸のうちで感謝しつつ、

 ダリアを部屋へと招き入れる。

 片付けられた部屋独特の清潔な空気が、二人を包み込んでいった。


「いっしょに、寝るの?」

 部屋にあるベットは、大きいが1つだけだ。それをじっと見詰めながら

ダリアが尋ねてきた。声色は普段通りで、そこから感情を伺うことは出来ない。

「えっ、あっ… いっ、嫌だったら俺はソファーで寝ても良いよ。

 ほ、ほら結構大きなソファーだし、 へ、部屋もそんな寒くないから大丈夫さっ」

 その問いに妙に慌てながら、取り繕うように答える。

「別に、 構わない…」

「そ、そう?  …そ、それじゃ、おいでよ」

 先にベットに乗ったヴァールが毛布をめくりダリアを招く。

 ダリアは無言のままベットの端に寝そべると、背を向けたまま

毛布へと包まった。


「緊張してる?」

 その声にダリアが振り向いた。二人の視線が重なりあう。

「……。 誰かと寝るの… 初めてだから」

 暫し無言で見詰め合った後、ダリアがうなずいた。

 しっぽが緊張を表すように、パタパタと音を立てる。

「そうか。でも、もうチョイこっち来いよ。そこじゃ寒いだろう」

「あっ……」

 抱き寄せられ、ダリアの身体に反射的に緊張が走しった。

 細い腕が胸の前で組まれ、ヴァールとの間に隙間を作ろうとする。

(…えっ?)

 しかし予想とは違い、ヴァールは抱き寄せたダリアに優しく毛布を

掛けただけで、そのままゴロンと寝転んだ。

「ほら、よかったら腕枕するけど」

「……(こく)」

 小さく頷いてダリアはおずおずと寄り添い、ヴァールの腕を枕にすると

 猫のように身体を丸めた。

「あっ…………、 暖かい……」

 毛布と、互いの体温がやさしくダリアを包み込む。

 その温もりに思わず驚きの声がこぼれた。

「そんなにびっくりした顔するなよ」

「ううん。なんだか…… 信じられないだけ。

 凍てつきの地獄では、ずっと一人だったから……」

 ダリアの指がギュっと服を掴む。

「もう… あそこには還えりたくない」

 ダリアの瞳からあふれた雫が月明かりに光る。

「ダリア、ずっと側にいるから…。 安心しておやすみ」

 他に言うべき言葉がなく、ヴァールは瞼にそっとくちずけた。

「ん……」

 微かに甘えた声を上げたダリアを、そっと肩口に寄せる。

 そしてやさしく抱きしめると、頭を撫で髪をゆっくりと漉いていった。

 その動きに合わせてダリアの目が細められてゆく。


* * *


「すぅ… すぅ……」

 暫くして、ヴァールの胸の上で微かな寝息が聞えだした。

 目をやると眠っているダリアはわすかに微笑むようにも見える。

(コイツと付合う……なんて、上司のエオリアに言ったらどんな顔するだろうか)

 無防備な寝顔に目を奪われながら、不意にそんな疑問が思い浮かぶ。

(天界……、追放とかされてりして…)

 怒りの余り、顔を青ざめさせるエオリアの姿が見えたような気がした。

(まさか、ね…)

 そんな不穏な想像をかき消すように胸の内で小さく呟くと、

 薄暗い月明かりに浮かぶ天井へと視線を戻す。

 幾つかの未来像が虚空に浮かび、そして消えてゆく。

「天使と悪魔……か」

 ため息と共に小さな呟きがこぼれる。

 考えなければならない事は多い。それは分かっていた。

 そして考えても仕方がないことも…。

 だが生来、面倒事を後回しにする性格がその全てを放棄させてしまう。

(まあいいか…、今はダリアがここにいる。幸せそうな寝顔が見られる。

 それでいいじゃないか… な…ぁ……)

 少女の体温を心地良く感じながら、ヴァールは目を閉じた。


 やがて深い闇の中、二つになった寝息が聞えはじめる。

 毛布で包まれた、仮初めの楽園(エデン)に朝が来るまでの一時、

 寄添うような寝息だけが、静かに時を刻んでいた。


(終)


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