プロローグ

狭いアパートの部屋に暗闇が射し、物音が止む。
 いつも通りの一日を終え、俺たちは今日も無事就寝時間を迎えた。
「ふーっ」
 疲れ切った身体を労わるように、布団をまとい熟睡。
 次の日もまたいつも通りの一日になる事を疑いもせず。
 ……現実は稀に気まぐれなイベントを起こす事があるという事を、
 トラブルと久しく遭遇してなかった俺はすっかり忘れていた。


 ジリリリリリリリリリリ!
 目覚ましの叫び声を疎い意識で聞きながら、俺は目を覚ました。
「ふあぁぁぁ〜」
 どあくび。
 流れてくる涙を右手で擦りつつゆっくりと上体を起こし、
 目覚ましを黙らせる。
「……」
 音が止んだところで、同居人を探す。
 いろいろと複雑な事情と様々な過程を経て、俺の義理の妹となった少女。
 不幸な人生を驀進しながらも、一部を除いて真っ直ぐに育ってきた女の子。
「……」
 その妹は、俺の隣で上半身を起こし、どこを見るでもなくボーっと
 眼を泳がせていた。
「おう、おはよう」
 毎日のように交わす朝の挨拶は大抵向こうからなのだが、今日は俺が
 先に声を掛けた。
 ここでいつもなら、ふにゃけた顔で
『あ、おふぁよーございますです』
 とでも言うのだが……
「……」
 黙 殺
 シカト? 馬鹿な。
「末莉。まだ寝ぼけてるか?」
「……」
 沈 黙
 無表情で暫く首をくるくる動かし、視線だけをゆーーーーーっくりと
 こっちに向けた。
「お、おい? どうしたんだ?」
 様子が変だ。
 まさか……反抗期!?
「んなわきゃーない」
 一人ツッコミ。朝はちょっと頭の弱い俺だ。
「……」
 末莉はそれにすら何も反応を見せず、ぼぼぼーっと俺を見ている。
 まさか、具合でも悪いのか?
 その旨を問い掛けようと口を開こうとした瞬間、気まぐれなイベントは
 トラブルとなって舞い込んできた。
「あの……どちらさま、ですか……?」
「……記憶喪失?」
「まあ、ありていに言えばそうです」
 職場で上司と話す内容としてはかなり異質な事を口にしながら、
 俺は普段と変わらない時間に仕事に精を出す。
 ただ、精神状態には極めて異常をきたしていた。
「原因は? 病院には行ったのかい?」
「まあ一応……」
「歯切れ悪いね」
「それが、原因はわからないらしくて」
 脳波やら何やら調べた結果、どこにも異常はないとの事。
 医者いわく、
『数日すれば思い出すでしょう』
 との事。
「随分楽観的なんだねー」
「こっちとしては逆に怖いですよ。原因不明でしかも理由すらわからないんですから」
 欠落した記憶は、俺に関する事全般。
 今二人で住んでいるあの部屋は覚えていないが、昔両親と暮らしていたあの部屋は覚えているんだよな。
 さらに、例のいかがわしい趣味に関しても記憶にない模様。
 それから察するに、ここ数年の記憶がごっそりなくなったという事らしい。
「なら日常生活には支障はないんだ」
「ええ。だから俺はこうして仕事に来れてる訳ですし」
「ふーん……」
 非常に嫌な予感を漂わせる思案顔で劉さんは顎を掻いた。
「司くん」
「なんすか」
「This is ビッグチャンス!」
「……は?」
「末莉ちゃんを君色に染めるチャンス」
「……」
「末莉ちゃんを君色に染めるいい機会」
「いや、日本語に直さんでもわかるんで」
「今の彼女は、少なくとも思春期に得るであろう様々な知識や性癖に関しては卵から孵ったばかりの雛も当然なんだよね?」
「はあ」
「なら、今から君の個人的極まりない趣味を彼女に刷り込めば……」
 刷り込めば……。
 …………。


  裸エプロン    学生服  巫女服   スクール水着
    ピンクなのに白衣  テニスウェア  メイド服
  ブルマ     だぼだぼセーター  フリル     拘束具
   ボンテージ   ルーズソックス    あみタイツ
  ネコ耳   白のYシャツ一枚  ぱっつんぱっつんの体操服名札入り
 バニーガール   チャイナドレス   お風呂上がりのバスタオル姿と水滴

 
 ごごごごごごごごごごごごごごご!

 脳の質量が一気に増した気がした。
「ふっ、馬鹿馬鹿しい」
「……鼻血出てるよ」
「ぶっ!?」
 と、まあそんなこんなでこの日の仕事はあまり身が入らなかったかも
 しれない。


 帰宅。
「おかえりなさいませー」
 制服の上にエプロンという正統派なのかマニアックなのか微妙な
 格好の末莉の出迎えに俺は何故か生唾を飲んだ。
 一応、末莉には一通り現状を説明はした。
 ただ、あくまで一通りであって事細かくは話してない。どうせすぐ
 思い出すだろうというのもあったしな。
 ってな訳で、今の末莉は俺の事を以前本人が口にしていた
 『ちゃんと好き』の対象ではなく保護者兼兄として見ている。
 そう、保護者だ、兄だ。
 そんな俺が邪な感情を抱いていいはずがない。絶対に。マジで。
 いや、マジでマジで。
「……あの?」
「えうれるっ!?」
 不意打ちをくらい、口がもつれた。
 いつの間にやら末莉は玄関でボーっとしていた俺のすぐ傍に来て、
 上目使いでこちらの顔色を伺っている。
 吸い込まれそうなくらい、円らな瞳。
「円らだ……」
 あ、口に出ちまった。
「すぷらった?」
「いや、なんでもないなんでもないんだ」
「?」
 と、とにかく!
 俺は保護者なんだ。惑わされてはいかん!
「ごはん出来てますよー」
「あ、ああ」
 何故か動悸のおさまらない胸を押さえつつ、中に入った。
 くそっ……ただでさえ最近こいつを女として意識するように
 なっちまったというのに、よりにもよってこんな状況になるとは。
『末莉ちゃんを君色に染めるチャンス』
 妙に艶かしい目をしたおさげの悪魔が耳元で囁く。
「あのー、お茶……」
「やかましい!」
「ひあっ!?」
 ガチャンという鋭い音と共に、焦茶色の液体がちゃぶ台や畳の上へ四散した。
「ああっ、すいません!」
 俺が何かを言う前に末莉は謝罪をし、すぐにキッチンから布巾を取ってくる。
 悪いのは妄想に大声でツッコんだ俺なんだが……こういうところは
 記憶があろうとなかろうと変わらんな。
 基本的にそういう人間なんだな、こいつは。
 まず謝る。それが自分に非があろうとなかろうと。
 そういう所は再教育すべきなのかもしれない。
 などと真面目な事を考えていると、
「んしょ、んしょ」
 視界に妙な映像が映った。
 ゆれるすかあと。
 ちらりとみえるおぱんつ。
 あろう事か、末莉は四つん這いになってこぼれた茶を拭いていたのだっっっ!
 しかも、下半身をこっちに向けてっっっっっ!
「おうっ」
 俺は86のダメージを受けた。(残りRP398)※RP=Reason Point
「うああっ……染みになっちゃうかも」
 染みっ!?
 余波により14のダメージ。(残りRP384)
「んしょっ……んしょっ」
 末莉は力をこめて畳を拭く。
 それに伴い、まだ発達しきっていない未熟なお尻がぷるっぷるっと揺れる。 
 小振りだが弾力がありそうなお尻。
 純白に限りなく近いにもかかわらず、僅かに熱を持っていて人間味に
 溢れている肌。
 同じく純白の筈の下着が不純な色に見えるくらいだ。
 やばっ……理性が……RPが。
 …………。
「……末莉」
 ふら〜っ。
「あ、すいませーん、すぐに拭きますんで……うにゃうっ!?」
 無意識に手が伸びていた。
 俺はもう自己制御出来ないほどの状態に陥っているらしい。
(残りRP3)
 ……減りがはえーなおい。
「お、おにーさん?」
「末莉……」
「あ、あの……目が血走ってますよ」
「それはお前の綺麗で未発達なアレをこの上なくはっきり見るためだよ」
「そ、その……お口から涎が」
「それはお前の綺麗で未発達なアレをこれでもかっってくらい濡らすためだよ」
「え、えと……な、なんか足と足の間が腫れてらっしゃるようですが……」
「それは……」
(残りRP0)
「お前の綺麗で未発達なアレにコンバインするためさあああぁっっっ!!!」
「きゃいーっ!?」
 ……………………。
 …………。
 ……。
 ……夢を見ていた。
 真っ暗な闇に囲まれたそこには、上も下も右も左もない。
 常闇と虚無。
 しかし、すぐに光が射す。
 その光源を目で追うと、見覚えのある懐かしい顔が二つ見えた。
 父さんと母さんだ。
 俺を生んでくれた人たち。
 俺を護ってくれた人たち。
 俺に生という希望と機会を与えてくれた、光より尊い存在。
『……』
『……』
 その二人は遠くで何か話をしている。
 ……遠過ぎてちょっとわかり難いな。
 だが、これは俺の夢だ。近付くぐらい訳ない事。
 俺は真っ暗な空間を飛び、二人に接近した。
 こっちに気付く様子はない。まあ夢の産物だしな。
 そっと聞き耳を立ててみる。
『……まいったな』
『ええ……まさかあの子が……』
 ん? 俺の事を話してるのか?
『××××だなんて……ああっ』
『泣くな。ちゃんと教育できなかった俺たちが悪いんだ』
 か、肝心の部分がよく聞こえなかったが……すごく不穏な空気だなおい。
『でもっ! いろいろなことをちゃんと責任もって預かれるようにって
 つけた名前のあの子が……ううっ』
『……仕方ないさ』
 俺の事……?
 俺、親を泣かしてる?
『ああ……あちらの親御さんにどう説明したら……』
『誠意を示すしかないだろう。娘さんの人生を無茶苦茶にして
 しまったんだからな』
 ……はい?
『うう……まさか、私たちの子が……』
『言うな!』
 言え! 言ってくれ! 一体何がどうなって……。
『私たちの子が、ロリコンだったなんてえぇぇぇぇぇ!!』

「誰がロリコンだあああああああっ!!」
 自覚なき叫び。
 それと同時に、自分がトリップしていた事に気付く。
 はっ!? 俺は一体!?
 末莉……そうだ、末莉のお尻に理性を持ってかれて……。
 ピチャッ……ピチャッ……
「……?」
 妙に股間が生温いな。ヌルヌルするし。
 ……うおっ!?
 その方を見た瞬間、絶句した。
「あむ……んむ……」
 おしゃぶってます!
 末莉たんがおしゃぶりしとりますよ!
「んっんっんっ……」
 チュポッ、ヌチュリなどと言う淫猥な擬音と共に絡みつく舌と
 唾液が俺の最も性的興奮に敏感な部分を刺激している。
 ジュジュ、ジュルッ
「おおうっ」
 チュッ、チュッ、ジュポッ
「ひゃっほい」
 オットセイのような意味不明な鳴き声が思わず口から漏れてしまう。
 何が、どうして、などという思考が溶かされる……。
「はむっ……ぷはっ」
 一時開放。外気に触れたドロドロの棒が急速に冷める。
 それがやたら刺激的だ。
「おにいさぁん」
 すっかり従順な目で俺を見上げる末莉。
 ……調教済み?
 え? いつの間に? どうやって?
 俺……理性が飛んだついでに取り返しのつかない事やっちゃった?
「もっと……もっとえっちなことしてぇ」
「……」
 ブチッ
 パパパパパパパパパパン!
 ピ〜ヒャラピ〜ヒャラパッパパラパ〜
 ヒュウゥゥゥゥゥ……ドオオオオオン! パラパラパラパラ
 ベンベンベベンベンベンベベンベンベンベンベベンベンベベベベン
「まとぅりぃぃぃぃぃっっっ!!」
「うあぁん」
 沢村司はぶっ壊れていた。
 完膚なきまでに、ぶっ壊れていた。
 ……と言う訳で。
 俺は末莉のアレでナニな部分を自分色に染めるため、
 個人育成をする事にした。
 ……正直、罪悪感とか道徳理念とかいろんな理性に圧迫されなくもない。
 しかし! もう細かいことは気にしない事にした。
 俺はロリコンだ。ああペドフィリアさ。
 変態? イエイッ! 鬼畜? カマン!
 外道と呼ばれようが世間様から後ろ指さされようが、
 この道を選んだ事になんら悔いはない。
 理由は……わかるよな?
「あの……今日はどうされます?」
 今日も今日とて末莉を育成。
 さあ行こう! この全国2780万人のロリータコンプレクッスの
 アイドル、末莉たんを俺色に染め上げるその日まで!

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