「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

乃絵美は、荒い息を整えながら、まだ軽く押し寄せている快楽の波の余韻に浸っていた。

堂島は、手にまとわりついた乃絵美の淫液をエプロンドレスで拭きながら、くつくつと笑っていた。

「聞きましたか?」

その問いは、乃絵美へ向けられたものでないことは、テーブルに横たわっている乃絵美にも判った。だが、乃絵美の両親は何も答えない。

「ヒヒヒ・・・とんだ兄妹だ」

(とんだ兄妹?)

「伊藤さん。あんたの家じゃ、子供らに近親相姦なんてことを勧めてるのかね」

(近親相姦って・・・どういうこと?)

「こりゃあいい。世間の人々にも聞いてもらおうじゃないか・・・伊藤さんの家じゃ、兄妹で、こーんなことをしてるって」

(あっ・・・!!)

乃絵美は、ようやく気がついた。

自分の口走ってしまったことを。

紅潮した頬から、あっという間に血の気が引いていくのが判った。

ずっと隠していた想いを・・・よりにもよって、両親と、こんな男の前で漏らしてしまうなんて・・・

「あの・・・わた・・・私・・・」

言い繕おうにも、上手い言い訳が思いつかなかった。

身体の芯では、まだ熱い快楽がふつふつとたぎっているのに、心の中は極寒の世界だ。

「幸い乃絵美ちゃんは、処女だ。まだ兄に汚されてはいない・・・」

(汚す?汚そうとしているのは、この人なのに・・・)

そう思いながらも、乃絵美は反抗することができず、押し黙るしかない。

「ここで、儂が先に男の味を教えてやるのは、むしろこの子にとって幸せなことだよ。なあ」

両親は、目に涙を浮かべながら、泣き笑いの表情を浮かべている。

(ああ・・・ごめんなさい。お父さん・・・お母さん・・・)

乃絵美は、あまりの恥ずかしさに、両親の表情を見ることができない。

「そうだ」

堂島は両親を手招きして、意地悪そうな笑みを浮かべた。

「乃絵美ちゃんは、どうもだだをこねるのでね・・・ここはひとつご両親に説得して貰おうじゃないか」

(説得って・・・?)

「ほら、来なさい」

堂島の呼びかけに、渋々とカウンターから両親が出る。

「さあ、ほらもっと、近寄って・・・そう。テーブルの両端に」

両親は、テーブルの上に倒れている乃絵美の左右に立った。

下半身を剥き出しにされて、実兄への恋慕を叫んだ娘について、どう思っているのか。

悲痛な表情は、その全てを読みとらせることはできないようだった。

堂島は、にやにやと両親と、乃絵美を見る。

「さあ、ご両親は乃絵美ちゃんの両腕を押さえて」

「えっ・・・きゃっ」

乃絵美の腕を父と母が抱え込む。

「そのまま、動けないように」

「やだっ・・・お父さんっ、お母さんっ」

乃絵美の必死の抵抗にも、両親の腕の力は収まらない。

「そう・・・これで挿入できる」

そう呟いた堂島のモノは、荒々しく勃起していた。

堂島の陰茎の先が、再び乃絵美のスリットに押し当てられた。

それだけで、その感触は魔性の快楽のように思えた。

(こんな・・・っ)

今なら、きっと入ってしまう。

処女にも関わらず、乃絵美には絶望的な確信があった。

乃絵美がどれだけ心の中で拒もうとも、一度昇り詰めて充血した乃絵美の性器は、ひくひくと蠢くだけだ。

「くっ」

先ほどのように腰をよじろうにも、堂島の両腕にがっちりと乃絵美の両足を抱え込まれていた。

「お願いっ・・・離してぇっ」

乃絵美は激しく首を振りながら、堅く拘束された両腕をふりほどこうと、必死の抵抗をする。

「乃絵美っ・・・乃絵美・・・乃絵・・・」

両親は、愛する娘の名前をつぶやきながら、堅く目を閉じて、全身の力を込めてその腕を握りしめていた。

「ヒヒ・・・さぁ、処女喪失だよ。乃絵美」

いつしか、堂島が乃絵美に呼びかける言葉から、”ちゃん”が消えている。

乃絵美には、それが堂島の所有物であるという自負の現れのような気がして、吐き気がした。

「ひっ・・・ぎっ」

懸命に膣口を閉ざそうと力を込めるものの、堂島の脈打つ陰茎はゆっくりと、乃絵美の膣内へと進入していく。

「あぁ・・・」

耳年増なクラスの女の子が言っていた処女喪失の痛みの話を思い出す。

身を裂くほどの痛みだった、死ぬかと思った・・・それらの話は全てまやかしだったのだ、と思った。

今、乃絵美の中を満たしつつある堂島のそれは、初めての肉壁を押し広げられる痛みよりも、遙かに乃絵美の背筋を炎で焦がすほどの激しい快楽のほうが勝っている。

陰茎は、一息に奥まで刺すことなく、入り口からさほどでもないところで進入を止め、また膣口まで戻しては、再び前の位置ほどまで挿入される。

「うぁ・・・あぁ・・・」

堂島は、亀頭を埋める程度のところで、細やかなグラインドをさせていた。

時折織り交ぜられる上下のグラインドが、半ば剥かれたように露出しかけたクリトリスを刺激すると、そのたびに乃絵美の口から吐息が漏れる。

「乃絵美・・・亀頭の先に、乃絵美の処女膜を感じるよ」

堂島が亀頭だけをこね回すように出し入れしているのは、そのせいだったのだ。

「いやぁっ・・・あぁ・・・っ」

それどころか、膣口の付近を出入りする淫茎は先に昇り詰めたときに与えられた指での快楽以上のものだ。

「あっ・・・あぅ・・・あああ・・・」

乃絵美は、身も心も快楽に支配されつつある。

「も・・・もうっ・・・」

乃絵美に、また激しい快楽の波が訪れようとしているときだった。

「乃絵美」

堂島の陰茎が不意に動きを止めた。

「あ・・・・・・」

四肢を押さえられた乃絵美にとって、それは快楽の供給が止まることをも意味する。

むず痒い感覚。

先の絶頂以上のオルガスムスを迎えようとしているそのときだから。

「はぁ・・・はぁ・・・」

乃絵美は、何とか動こうとする。

だが、決して四肢は乃絵美の意志に添おうとはしない。

そもそも、四肢を動かすことが可能ならば乃絵美が逃げ出すことは可能だったのだが、そんなことはもう乃絵美の心の中にはない。

(もうすぐ・・・もうすぐなのに・・・っ)

堂島から惜しみなく与えられた快楽に捕らわれてもやのかかった乃絵美の心は、間近に迫っていた快楽の波だけを求めている。

「乃絵美・・・ここで止めてもいいかな」

「えっ・・・!?」

堂島は、いやらしい笑みを浮かべていた。

堂島には、わかっているのだ。

乃絵美がどれほど求めているのかを。

乃絵美がどれだけ溺れているのか、全て知られているのだ。

「そんな・・・」

「言ってごらん・・・”私の処女を、奪って下さい”って」

「!」

乃絵美のもやのかかった心にも、それが何を求めているのかが判る。

「い・・・言えません」

乃絵美の身体だけでなく、心をも奪おうとしているのだ。

「ヒヒ・・・そうかね」

「あぁ・・・っ」

堂島は、再び亀頭を処女膜まで押し進める。

その快楽に、乃絵美の全身が震えた。

「ふぁあ・・・あふ・・・」

陰茎は、先ほどよりはゆっくりと乃絵美の膣口をこね回す。

「言うんだ。乃絵美」

僅かに収まりかけた波がまたすごい勢いで戻ってくるのが判る。

「あ・・・ああ・・・」

膣の奥から、更に堂島を受け入れようと蜜が溢れ出すのが判る。

「ふぅ・・・あっ・・・」

その蜜が堂島の陰茎にねっとりとからみつき、膣口だけでなく、陰唇も、クリトリスも刺激を強める。

「あう・・・ああ・・・あー・・・」

乃絵美は、全身が性器になったように受け止めきれないほどの快楽に身を震わせる。

「あ・・・あ・・・」

ぶるるっ。

大きな震えと同時に、乃絵美の中に、今まで味わったことのない激しい脈動が襲いかかってきた。

(もう・・・・ダメっ)

乃絵美の中で、何かが弾けた。

全身を襲う何かに満たされながら、乃絵美は叫んだ。

「はぁっ・・・あああっ。お願いっ・・・私のっ・・・乃絵美の処女を奪ってぇっ」

同時に、乃絵美の両腕を掴む両親の腕に、ぎゅっと力が籠もるのを感じた。

そして、めりめりと引き裂くように、堂島の陰茎が乃絵美の15年間守り通してきたものを奪うのを感じていた。

「ひっ・・・あっ・・・あうっ・・・あああーーーっ」

堂島の陰茎が肉襞の奥まで届いた時、乃絵美は二度目の、後戻りのできない快楽の波に飲み込まれていたのだった。

「ふぅ・・・」

乃絵美は、ゆっくりと湯船に身を沈めた。

身体の節々が痛い。

しかも、まだ身体の芯で、ぼんやりと先ほどまでの快感がくすぶっている。

処女膜を奪われると同時に、大きな絶頂を迎えてから、更に2回。

その2回のうち最後の1回は、堂島自身も乃絵美の絶頂に合わせて果てていた。

高校に入学したばかりの、自慰すらしたことのなかったおとなしい少女が、都合4回ものオルガスムスを感じたのだった。

「処女なのに・・・」

そう呟いて、もう処女ではないことに、改めて気がつく。

乃絵美の両肩にくっきりと残っている両親の手の後は、それを手引きしたのが乃絵美を産み育ててくれた両親だということの証だった。

見知らぬ男に、処女を奪われたという事実が、心に深い暗闇を作っている。

しかも、ただ力ずくで犯されたのではない。

何度も絶頂に達せられて、そのたびに乃絵美自身が望んだかのように、男を求める言葉を口にさせられたのだ。

思い出すだけで、恥ずかしさで頬が染まる。

堂島の指や陰茎を求める言葉を口にしたことは、自分の意志ではないと思う。

けれども、まだ身体の奥に残る快楽の残り香が、それに疑問を投げかけるのだった。

「あ・・・」

湯船の中に、ゆらりと白いものが溶けだしていた。

「やだ・・・」

それは、乃絵美の充血して腫れぼったくなったスリットから漏れている。

堂島の精液だった。

シャワーで十分に流したつもりだったのが、まだ乃絵美の膣内に残っていたらしい。

湯に溶けてよくわからないが、乃絵美にはその中に喪失のときの血が混じっているような気がする。

乃絵美は、身体が暖まって弛緩していくのを感じながら、これからのことを考えた。

今日は金曜日。

堂島は、明日も明後日も来ると言っていた。

両親は泣き顔に笑みを張り付けながら、店を臨時休業にしてお待ちしています、と答えていた。

堂島が帰ったあと、両親は泣きながら乃絵美に詫びたが、同時に耐えてくれとも言った。

そうしなければ、店を奪われ、更に巨額の借金を負ってしまうのだと。

乃絵美には、そうした大人の仕組みはよく判らない。

ただ、未だかつて見たことのない憔悴した両親の表情を見て、「うん」と頷いた。

どうして頷いてしまったんだろうと考えると、自分があの快感を求めているような気がして、怖くなった。

(そんなこと・・・ないっ)

湯船の中でひとりごちて、首を振ったとき、

「ただいまー・・・ひぃ、疲れたよ」

扉の向こうで、兄の声が聞こえた。

ようやく、部活が終わったのだろう。

今は、兄の顔を見たくなかった。

きっと、泣いてしまうから。

乃絵美は、涙をこらえて目を堅く閉じたまま、深く、更に深く、浴槽に身を沈めた。

明日からの自分の運命を呪いながら。

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