愛と春巳が戦い出してからもうどれほど経っただろうか。


「お前等みたいな下等生物が 私を傷つけるとはな。甘く見ていたか」

 6本あった春巳の触手は2本が切断され、体にも無数の傷がついている。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

 一方の愛も直接のダメージはまだ無いものの、パワーの差をスピードで補うために疲労が相当ひどい。

恐らくあと僅かしかこの動きを維持できないだろう。

「大丈夫か?」

「分からない。 でも… やるしかない!」


 秋俊の問いに対して、自らに言い聞かせるように叫ぶと地を蹴り、再び走り出した。

 それを遮るように上空から春巳の触手が2本、超高速で伸びる。

 ヒュン!! ピシュン!!

 迫り来る触手を最小限の動きで避け、春巳を目指す。外れた触手達が地面に穴を穿っていく。


「ちょこまかと小賢しい! シャァァァァ!」

 1本の触手が細く分かれ、一気に襲いかかる。流石にこれは避けきれない。

 バシュ! ズシュ!

 触手が細い為にほとんどが愛の防御障壁ではじかれた。それでも幾つかは肌を切り裂く。

 だが愛は体の痛みにも怯まず。  流れるの血には構わず。  ひたすら突き進む。

 狙うは一点。春巳の心の臓!

「翔!!」

 縋り来る触手を一気にかわし、魔法少女が宙を翔ける。


「甘い!!」

 その愛の動きに呼応するかのように、突如春巳の足元の土が盛り上がり、触手の壁がそそり立つ。

「クッ! 周防!」

 瞬時にロッドを突き出し、体を包み込む触手の壁に法力をぶつけ、反動で体勢を整える。

 だが、これで攻めの勢いは止まってしまった。勝機と見たか、春巳の触手が一気に愛に襲いかかる。

 頭上から迫る触手を避け、右から襲い来るのを受け流す。左からの触手には逆に反撃を加えた。

 そして正面からの触手を


 ─── 愛は避けることが出来なかった ───


 決して避けられない攻撃ではなかった。だが、愛の背後には  …秋俊が居た。

「俺のせいなのか…」

 呆然とつぶやく秋俊の視線の先で触手が愛を包み込んで行く。そして秋俊にも。

「ごめんね… 秋俊…」

 愛が涙を流しながらつぶやいたのを、秋俊は薄れ行く意識の中で聞いた。

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