乃絵美は、朦朧とした意識の中、ようやく家の前にたどり着いた。

あれから、どれだけの時間が過ぎたのだろう。

(やっと・・・帰って来られた・・・)

とてつもない疲労感が、乃絵美の全身を覆っていた。

淫楽に溺れたフィアッセは、発情した牝犬のような様相のまま、奥の扉へと戻って行った。

扉の奥で聞こえた鎖の音が、奥に繋がれる誰かの存在を示していたけれど、乃絵美はあれ以上あの場に居たくはなかった。

はだけた制服を直すと、ふらふらとよろめくように学校を出たのだった。

(でも・・・)

ドアノブに伸びる手が躊躇する。

疲労感以上に、今の乃絵美を満たしている感覚によるものだ。

性欲。

簡潔に言ってしまえば、たった二文字で表せてしまうもの。

ピンクのペーストを飲み込んで以来、その感覚は徐々に強くなっている。

「はあ・・・」

つい、ため息が出る。

(こんなところを、お兄ちゃんに見られたら・・・)

いつもなら、恥ずかしいと赤面してしまう。

けれど、今夜は違う。

兄の声を聞いたら、兄の姿を見かけたら、それだけで乃絵美から押し倒してしまいかねない。

(お兄ちゃん・・・)

胸中に兄の姿を思い出しただけで、また乃絵美の陰裂はどろりとした陰汁を滴らせてしまうのだから。

「はぁ。誰にも見つからないように、入ろ・・・」

憂鬱そうに呟いてから、勇気を出してドアノブに手をかける。

「どうしたんだい? 家に入りにくいのかな」

ふいに、後ろから声をかけられる。

乃絵美は、驚いて振り返った。

「よっ。乃絵美ちゃん」

古びたカブのライトが乃絵美を照らし出す。

後部に据え付けられた配達用の箱に魚初のロゴ。

「竜之介さん・・・」

乃絵美は、ほっと胸をなでおろす。

同じ商店街で魚屋を営む魚初の初芝竜之介だった。

「べ、別に・・・」

乃絵美は照れ笑いをしてごまかす。

竜之介は探るような表情で、乃絵美を見つめる。

滅法喧嘩に強く義侠心に篤い商店街の若旦那と評判の青年だった。

商店街の娘たちに評判の端正な容貌がじっと見つめると、それだけで口説かれているような気がしてくる。

ましてや、薬の効果で限界近い状態まで欲情してしまった乃絵美にとって、それは誘惑そのもののように感じられるのだった。

「み、みのりさんは退院したんですか?」

慌てて、違う話題を振る。

新婚の竜之介は、高校時代からの恋人であったみのりと夫婦二人で魚屋をやっている。

そして、妻のみのりは身体を壊して、先週より入院していたのだった。

「あーっ。話題逸らそうとして、怪しいな・・・そうか」

(べ、別に・・・竜之介さんのこと好きとかじゃ・・・ないのに・・・)

そう思っていても、自然と、胸が高鳴る。

それだけでなく、クリトリスは硬く勃起し、陰唇は熱く火照ってしまうのが、今の乃絵美だ。

(でも・・・もし・・・)

竜之介の肌。竜之介の指。竜之介の唇。

見つめるほどに、全身が熱くなってきてしまう。

「・・・お兄ちゃんと喧嘩したな」

「ええっ?」

乃絵美は、驚いて我に返る。

「ち、違うよ・・・」

慌てて首を振っても、竜之介はからからと笑うばかりで取り合わない。

「はは。仲良くしろよ・・・じゃ」

竜之介は、笑顔のままカブを走らせていった。

「ふぅ・・・」

思わず、ため息が漏れる。

(ごめんなさい・・・)

胸中の思い人に謝ろうとして、思考が止まる。

(今、謝ろうとしてたのって・・・)

それは、兄に対してなのだろうか。

それとも、堂島なのか。

判らない。

しばらく考えてから、初めて口で愛撫しようとして、無下に去った堂島を思い出す。

「やっぱり、私はお兄ちゃんのこと・・・」

そう呟いて、再びため息をつく。

乃絵美が自分の部屋に戻ることが出来たのは、それから小一時間も後のことだった。

乃絵美は物音を立てないように、とんとんと階段をあがっていく。

もう深夜だから、普通に歩いているだけで、階下の両親が目を覚ましてしまう。

声を押し殺して、バスタオル姿のまま。

「ふぅ・・・」

ようやく、部屋までたどり着いて、ため息を漏らす。

安堵だけではない。

熱いシャワーを浴びて、ようやく身体の火照りが収まったから。

誰の求めにも応じてしまいそうな、身体を焼くほどの焦燥感はもうない。

今は、全身を覆うけだるい疲労だけだ。

(もう、寝よう・・・)

バスタオルのまま、ベットに倒れ込んでしまう。

ひんやりとした布団の感触が、素肌に心地良い。

「はぁ・・・」

仰向けになると、バスタオルがはだけて、15歳の全裸が晒される。

未成熟ながら、少女特有の滑らかで眩しいほどに美しい曲線を描いた裸も、今は部屋に飾られたぬいぐるみたちしか見る者はない。

(今日は・・・)

と、今日あったことを振り返る。

堂島に出会ってしまったこと、教室で受けた恥辱の行為・・・

(そうだ・・・教室で、私・・・)

思い出しただけで真っ赤になる。

身体に埋められたバイブレーターを隠そうして、結局達してしまったこと。

全身が快楽に包まれながら、失禁してしまったこと。

それが、今この瞬間に体験していることのように思い出された。

(もう、学校に行けない・・・)

恥ずかしさで、泣きたくなった。

「もう・・・やだ・・・」

けれど、涙を堪えた乃絵美の中には、奇妙なもうひとつの感覚がわき上がっている。

絶望の奥で、ひっそりと息を潜めて、それでいて決して消えようとはしない快楽を求める心。

認めたくない。もうひとりの乃絵美。

いやらしいことに耽溺する弱くて脆い乃絵美。

無意識に、力無く横たわっていた手が、乳房を包み込む。

「ん・・・」

包んだ手が外側から回すようにゆっくりと力を込めていく。

乳房を大きく包んだ指が硬さを取り戻しつつある乳首を挟み込んでいく。

(胸だけ・・・)

自分を律しようと考えながら乳房を揉む手はだんだんと力強さを持ち始めている。

それは、堂島の愛撫にも似た、乃絵美なりの愛撫だった。

「ふぁ・・・はぁ・・・」

気がつけば、右手は乳房を離れて、スリットへと伸びている。

(だめ・・・折角、我慢できそうなのに・・・)

そう思いながらも、スリットを撫でる指を止めることはできない。

「いや・・・いや・・・」

スリットからは、早くもシャワーで洗い流した後とは思えないほどの滴りが漏れ初めている。

(でも・・・)

ふいに、フィアッセの狂態が思い出された。

(あの薬のせいなんだから・・・)

だとしたら、仕方ないんだ。なんて思ってしまう。

それは、危険な誘惑だけれど、濡れそぼった指で陰核に刺激を送り初めている乃絵美には、その誘惑を拒むことはできそうにないのだった。

「はぁ・・・あぁ・・・っ」

スリットをかき分けて、中指が尿道の下へと這っていく。

「あぁ・・・あ・・・」

綺麗に爪を切りそろえた指が、陰唇の奥の小さな穴を探り当てていた。

「ん・・・っ」

中指の第一関節と第二関節にだけ力を込めて、ゆっくりゆっくりと差し込んでいく。

「んぅ・・・んっ・・・ん・・・」

ようやく、中指が第二関節まで埋まる。

乃絵美の小柄な体格のせいだろうか、堂島の陰茎や、それ以上の大きさのバイブレーターをも飲み込んだはずの膣内は、もう元のままの15歳のサイズに戻ってしまっている。

それだけに、力を込めて差し入れても、もう一本指を差し入れることは難しそうだった。

「はぁ・・・ああ・・・っ」

それでも、乃絵美は、飲み込まれた中指を支えている残りの指で小陰唇の粘膜をまさぐる。

「あ・・・ふぅ・・・んっ」

刺激を与える程に、蠢く指と連動するように、中指も抽出されてしまう。

「くぅ・・・ふっ・・・」

異物を吐き出そうとする膣と、抗って埋め込もうとする指が、自然と出し入れしているのと同じ動きになってしまっていた。

「ふぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

激しい刺激に、声が漏れるのも忘れて、身悶えしてしまう。

「気持ち・・・いいっ・・・」

誰に聞かせるでもなく、堂島の教え通りに呟いていた。

「あふ・・・はぁ・・・ああ・・・っ」

けれど、一言発しただけで、もう言葉にならないあえぎ声だけになる。

もう、何も考えられないほどに、指戯に夢中だから。

(止まらないっ・・・!)

心の奥底に罪悪感はあるのに、もう快楽を求める心のほうが遙かに勝っている。

どれだけいけないことだと思っても、指が導く快感の虜なのだ。

「あ・・・っ」

ぶるっと、軽い痙攣。

背筋まで反り返る絶頂感が近いのがわかった。

「やっ・・・あ・・・っ」

どろどろの中指に付き従うように、薬指をも陰唇の奥の穴へと差し入れていく。

「あぅ・・・はぁっ・・・うぅ・・・」

うめくような声を漏らしながら、徐々に動きを強くしていく。

「い・・・いっちゃ・・・」

もうじき来る大きな波。

それを予期して、思わず身を固くする。

「あっ・・・!?」

荒い息のまま、何が起きたか判らず薄目を開けた。

(来ない・・・?)

いつもの、大きな波。

今日、堂島の手で何度も味わった絶頂感が、訪れない。

(どうして・・・?)

そう思いながら、膣内に埋められた二本の指で刺激してみる。

「んっ・・・」

確かな快感。

でも、それは大きな絶頂を迎えるものではなくて、単発で訪れる普通の刺激だった。

「やだ・・・よ・・・」

体中が、激しい欲望を求めているのに、どれだけ刺激しても絶頂には至らない。

自慰を重ねても、残るのはちりちりとした欲求不満ばかりだった。

「うぅ・・・」

やるせなさで、苦しい。

イきたい。

どうしても、あの激しい快楽に身をゆだねて、気持ちよくなりたい。

思えば思うほど、苦しい身体が身悶えしてしまう。

(もしかして・・・)

じれる頭で、考える。

(指じゃ、イけないんじゃ・・・)

そう考えながら、堂島のものやピンク色のバイブレーターが脳裏に浮かぶ。

(ああいうものを・・・何か・・・)

ふらふら立ち上がると、部屋を見渡す。

年頃の娘にしては少し少女めいた部屋にあるのは、ぬいぐるみと文具ぐらいのもの。

(ペンぐらいしか・・・)

机上のペンを数本掴んでみたものの、頼りない感触にすぐ手放す。

「ふぅ・・・」

あれこれと物色したものの、めぼしいものは見つからない。

なのに、乃絵美自身は、じれて耐えられないほどに欲望に飢えている。


カタと、肘に何かが当たった。

「あ・・・」

CDジャケットほどの小さなフォトスタンド。

その中には、無愛想に立った兄と、その横ではにかんだ乃絵美の姿が納められていた。

「お兄ちゃん・・・」

胸の奥で、せつない軋みが鳴った。

陰裂から漏れ溢れた蜜が、乃絵美の膝の内側を伝っていた。

「お兄ちゃん・・・なら・・・」

そう呟くと、熱病に冒されたようにふらふらと部屋を出た。

乃絵美は、静かに兄の部屋の扉を開いた。

「・・・起きてる?・・・お兄ちゃん」

静寂。

耳を澄ませば、僅かに時計が針を進める音と、兄の寝息だけが聞こえるけれど、それすらも表通りを時折通る車の音にかき消されるほどの小さなさざめき。

「・・・寝てるの?」

微かな失望。

起きていたら、兄は乃絵美を見て、どう思っただろう。

バスタオル一枚を巻いただけの、生まれたままの姿態。

そのバスタオルから伸びた細い太股からは、先刻浴びたシャワーではない、乃絵美自身が分泌した雫が伝っている。

紅潮した頬が、堅く尖った乳首が、乃絵美の心情を表していた。

「お兄ちゃん・・・」

身体に巻いたバスタオルを取り去ると、乃絵美はベットに跪く。

タオルケットから覗いた兄の足。

陸上部で鍛えた、引き締まったふくらはぎを見ているだけで、乃絵美の胸は苦しく締め付けられる。

「・・・好き」

聞こえない言葉。

伝えたい言葉。

そして、言葉よりも欲しいもの。

兄の匂い。

兄の温もり。

それが目の前にあると思うと、溜まらなくなる。

「ん・・・」

気が付くと、乃絵美は兄の足に舌を這わせていた。

親指から指の間を丹念に舐めて、その舌先は徐々にくるぶしへ、そして、ふくらはぎへと伸びていく。

「んん・・・」

ねっとりと這う舌が、パジャマの裾に阻まれて止まる。

「はぁ・・・はぁ・・・」

乃絵美は、ゆっくりとタオルケットをずらす。

「ん・・・」

と、僅かに兄の口が開く。

「!」

乃絵美の心臓が止まりそうになる。

けれど、兄は寝返りを打っただけで、また、静かな寝息を立て始めた。

「ほっ・・・」

胸をなで下ろしつつ、乃絵美は再び兄に跪くと、パジャマのウェストに手をかけた。

寝返りを打って、仰向けになったせいで、脱がしにくくなってしまった。

反面、乃絵美の眼前に兄の股間が晒されることになる。

薄手の木綿ごしに見える膨らみは、乃絵美の子宮を熱く焦がす。

「お兄ちゃん・・・待ってて・・・」

熱病にうなされるように呟くと、乃絵美は引き締まった腹筋に微かに食い込んだパジャマのゴム紐に、そっと指を差し込む。

そして、ゆっくり、ゆっくりと、ズボンを下ろしていく。

「はぁ・・・はぁ・・・」

ようやく膝の手前まで下ろすと、ズボンから手を離した。

残るは、パンツだけだった。

仰向けのまま、深い眠りに落ちている兄の股間を包んでいるのは、白いブリーフ一枚。

(ブリーフも脱がせなくちゃ・・・)

パジャマに手をかけたとき以上に慎重な手つきで、ブリーフに指を差し入れると、ゆっくりと引き下ろしていく。

「あ・・・」

兄の股間の膨らみが引っかかり、引き下ろす手がとまる。

そっと、兄の陰茎を押さえて、はっとする。

「熱い・・・」

兄の陰茎は、熱く、硬くなっていた。

「・・・お、お兄ちゃん。起きてるの?」

おそるおそる、兄の顔を伺う。

安らかな寝息を立てる兄は、起きている様子もない。

「・・・寝たふりしてるの?」

泣きそうな声で、もう一度聞く。

こんなところを見られたら、なんて言い訳していいか分からない。

だが、兄は、そんな様子もなく、ただ安らかな眠りについていた。

(寝てるのに・・・)

なのに、こんなにも硬く、勃起するものだろうか。

乃絵美は、戸惑う。

(だとしたら・・・)

いやらしい夢を見ているのだろうか。

(誰の夢?・・・私のこと・・・じゃないよね)

惨めな自覚。

兄が、乃絵美に対して、そういう感情を持っていないことは、誰よりも乃絵美自身が痛感しているのだから。

「いいの・・・」

気を取り直して、乃絵美はブリーフを下ろす。

引っかかっていた、兄の陰茎が反動で、ぶるんと震えるように動いた。

熱く硬いそれは、乃絵美の胸を高鳴らせながら、そそり立っている。

「お兄ちゃんが、誰を好きでも・・・」

乃絵美の、愛液に濡れそぼった指が、兄の陰茎をそっとくるんだ。

「今は・・・乃絵美だけのお兄ちゃんだからね・・・」

乃絵美の唇が、兄の先端に触れた。

軽いキス。

「あ・・・っ」

それだけで、声が漏れるほど、熱く感じてしまった。

(やっぱり・・・お兄ちゃんなら・・・)

きっと、いかせてくれる。

そんな確信が涌いていた。

乃絵美の目の前、わずか5センチ先に、兄の陰茎がある。

高鳴る胸と、逸る思いを押さえながら、まじまじと見る。

(堂島さんのとは・・・違うんだ)

亀の頭のようになった部分が剥きだしになった堂島のそれとは違い、兄の陰茎は、先端を覗くと、柔らかな皮に包まれている。

兄の男の匂いに混じって、微かなアンモニア臭。

硬くそそり立った陰茎なのに、兄のは子供の頃と同じ形だった。

それは、昔から兄を見ていた乃絵美に安堵の思いを抱かせる。

「これが、お兄ちゃん・・・」

そう思うと溜まらなくなって、舌を這わせる。

「あふ・・・」

亀頭と包皮の間に這った舌が、唾液の潤滑で滑り込んでいく。

(剥けちゃう・・・んだ・・・)

驚きながら、丁寧に舌を這わせて、包皮を剥いていく。

途中、兄の苦しげな寝息に何度か中断しながらも、結局亀頭をくるんでいた包皮を全て剥いてしまった。

剥いてしまえば、兄のものも堂島のものと同じだった。

(お兄ちゃんのほうが・・・少し、小さいのかな)

なんて、見比べて、そういう比較をしてしまっているはしたない自分に赤面する。

(でも、お兄ちゃんは、お兄ちゃんだもん・・・)

自分に言い聞かせて、再び舌を這わせる。

「んふ・・・ん・・・」

這わせながら、乃絵美の指は充血したスリットに伸びている。

(・・・さっきより、ずっと気持ちいい)

そう思った。

乃絵美は火照った身体を兄の足にすり寄せて、兄の体温を感じる。

硬い乳首が兄の太股と擦れるだけで、軽くいってしまいそうなほど。

心なしか、兄の寝息も乃絵美の愛撫に応えるように、せつなげなうめきが混じるようになっている。

「んく・・・ん・・・ん・・・」

乃絵美は、口いっぱいに兄の陰茎を頬張ってスライドさせる。

「あ・・・あ・・・」

寝息だけでない、兄の声。

ただの寝言。

けれど、それは乃絵美の愛撫を感じて漏れた言葉。

(感じてるの・・・お兄ちゃん・・・)

嬉しくなって、口中の亀頭に、更にねっとりと舌をからめる。

スリットをまさぐる手も、更に淫靡に蠢いていく。

乃絵美の二本の指がどろどろの膣内を掻き回し、親指は陰核を刺激する。

「んはぁっ・・・お兄ちゃん・・・ん・・・んふぅ・・・っ」

寝室であれだけ刺激しても昇り詰められなかったのに、こうして兄のものを愛撫しながら自分の手で慰めているだけで、もういきそうだった。

「んく・・・んふ・・・ん・・・んんん・・・」

軽い絶頂を何度も繰り返しながら、尚もフェラチオを続ける。

兄の口からも、切なげな息づかいが聞こえる。

震えるような吐息。

兄も、もうすぐなのが、わかる。

(・・・いいよ・・・乃絵美が口で受け止めてあげる・・・)

乃絵美の太股を伝う陰液は、幾重もの筋を作って、床に滴っている。

指から溢れた雫が、更に床に染みを増やしていく。

(乃絵美も・・・もういきそう・・・)

剥かれた陰茎に激しい愛撫を加えながら、また軽く痙攣する。

(いっちゃう・・・もう・・・いっ・・・っ)

激しい快感の波が押し寄せていた。

頭の中が真っ白になる。

「んくぅっ・・・・ん・・・っっ・・・・!」

乃絵美の絶頂と同時に、兄もびゅくびゅくと溢れるほどに乃絵美の口中に放出していた。

そのとき、兄の口からひとこと、寝言が漏れた。

「ん・・・真奈美・・・ちゃん・・・・」



惨めだった。

肩で荒い息をしながら、もやのかかった頭が元の思考を取り戻していく。

(お兄ちゃんは・・・)

それ以上考えたくなかった。

兄が夢見ていた相手。

それは、鳴瀬真奈美なのだった。

(あれも・・・)

あの乃絵美の愛撫すらも、兄の夢の中では真奈美がしたことになっているのだろう。

(あんなに・・・あんなに気持ちよさそうに感じていたのは・・・真奈美ちゃんだと思っていたから?)

目頭が熱くなる。

床に落ちたバスタオルを拾うと、火照った身体をくるむ。

口いっぱいに溜まった兄の精液を広げた掌に出す。

少し迷ってから、それをシーツになすりつけてふき取った。

目尻に溜まった涙がこぼれそうだった。

こぼれそうな涙を手の甲でぬぐうと、そっと立ち上がる。

「お兄ちゃんの・・・ばか」

そう呟くと、乃絵美は兄の部屋を出た。

乃絵美は堂島にされた恥辱の数々よりも、兄の一言に胸が張り裂けそうな思いだった。

ひとしきり泣いて乃絵美がまどろみ始めたとき、もう外は白み始めていた。

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