LOL:たかだか娯楽に、いちいち目くじらたてるのは馬鹿だ
TAN:されど娯楽
LOL:ゲームなんてのは所詮暇潰しだろ?
LOL:たとえばだ、あるゲームがある。そいつはまぁ一般的に言われるビジュアル
ノベル、おっと紙芝居ゲームだ
TAN:うん
LOL:そいつは、絵は無茶苦茶、音楽は雑音レベル、シナリオもまあ少々は見る
べきところもあるが、少なくともナンバーワンには絶対ならない。
LOL:そのゲームは、しかし売れた。オタク的な、口コミで売れてくってやつだ。
TAN:少し言い過ぎの嫌いがあるネ
LOL:そのゲームがイイという奴は大抵こう言うんだ。シナリオがいい。
TAN:そしてそのゲームが嫌いな奴はこう言うね。泣きたきゃ映画でも見てろ。
LOL:俺は分析してみたんだ、そのゲームを。
TAN:ご苦労さん
LOL:物語だ。単純明快な世界に飽きがきて、日常という単語にすら手垢がついて、
さて次はなんだというところにそのゲームはどんぴしゃとはまりやがったんだ。
TAN:・・・
LOL:ニーズって奴だ。早い話が、オタクが望んでいる世界がその中にあったってこ
とだ。俺はそのゲームは一種踏み絵的なものだったと思う。
TAN:話がずれてきてんだけどさあ、結局LOLは何が好きなわけ?
LOL:for elise
TAN:十二分にオタクだよ
LOL:俺もそう思う
TAN:(笑)
System:LOLさんが退出されました
System:TANさんが退出されました
たかだか娯楽に一番目くじらをたてる人間が出す結論はいつも同じ。
「ひとそれぞれ」
気が違いそうだ。何一つ明確な答えは出せないのだろうか?
それとも、そんなものははじめから存在しないのだろうか?
「で?何か反論はあるかね?」
「ねえよ。ああそうさ、アンタの言うとおりだろうさ。無作為に選んできた二十歳
以上の男百人と、あきばお〜と紙風船とメッセから選んできた百人じゃ、明らかに
後者の方が童貞率が高いだろうさ。まったく正しいよ、アンタは」
胸をむかつかせながら目に敵意を込めてヤツを見る。
いつものヤツとは違う。今度は痩せている。それも病的に。しかし目だけが異様
な熱意を持って俺を見ている。
俺がいるのはビルの屋上。柵を乗り越えたところにいるヤツと二人きりで話している。何かの皮肉か、雪がふっている。
「それで?キミはそれについてどう思うんだね?」
クソ、クソ、クソ。自分は冷静な皮肉屋なのだ、とでも言いたげな口調。
「知るかタコ。たかが生殖行為だ。俺達は切り離されているんだ」
「何から?」
「他人、からだ。テメエの好きな言い方で言えば現実ってところになんのか?」
「だが、それでも別に、生きていくのには困らない。キミが見ているのはあくまでも
キミだけ。しかしそこには発展や進化という思想が無い」
俺は柵を蹴飛ばして叫んだ。
「だからなんだってんだ?!テメエは何が言いてえんだ?!俺達にどうしろって
んだ?!助言のつもりか?!社交性豊かなオタクなんざ見たことねえよ!」
「ふむ、どうやらキミは何か勘違いしているようだ」
ヤツは柵を掴んでいた手をはなし、宙に身を投げ出し、そして叫んだ。
「もう、どうしようもないのだよ!」
全身にかいた汗が体をべとつかせ、不快になった俺は窓を開けて煙草に火をつけた。
さて、この目の前に家があってベランダがあってそこに幼なじみの一つでもいれば俺
は違う人間に育っていたのだろうか?くだらねえ。まったく、くだらねえ。
本当は、別にたいしたことじゃないんだ。とりたてて騒ぎたてるようなことじゃな
いはずだ。俺と同じようなタイプはごまんといる。俺よりひどい、一般人から見れば
変態そのままのようなやつだってそれなりに暮らしてる。
だが、それじゃあいったい、何が俺をここまで苛つかせる?
何もかもが鬱陶しくなった俺は、布団に潜り込んで何も考えずに眠った。