気がつくと俺はたき火を挟んで一人の男、油染みた顔に臭そうなバンダナを巻いた
長髪の男と向かい合っていた。
「エロゲーに何を求めるんだ?」
まるで地獄の底から響いてくるような、しわがれた声でそいつは俺に尋ねた。
「エロ、それだけだ」
俺は答えた。ジーンズのポケットを探ってみると、ショートピースがあったので口にくわえた。
「君は、間違っている」
その男は悲しそうにいった。
「エロくないエロゲーに何の価値がある?エロいからエロゲー、そうだろ?」
俺は付け足したが、男は悲しい顔のままだった。
「君は、間違っている」
焚き火の火が揺らめき、男の油染みた顔を照らした。
「我々には、与えられている。それは今までのどんな物とも違う、手段だ。
それを持ちながら、何もしない。それは」
男は言葉を切り、ため息をついた。
「それはもはや」
どこかで非常ベルの音がした。
そこで目が覚めた。枕元でがなり立てる目覚ましに手を伸ばして止め、俺は天井を見上げて
大きくため息をついた。部屋の外から聞こえてくるのは蝉の鳴き声。
「またかよ・・・」
最近、同じような夢ばかり見る。その夢は何故だか俺を酷く苛つかせる。
典型的なオタクと向かい合って、やたらと抽象的な話ばかりする。そんな夢を見て、
いい気分になるはずがない。
俺は頭を振って、夢のことを頭から追い出そうとした。
今日はバイトがある日だった。