喫茶ロムレット。
駅前の商店街に位置するその喫茶店は、土曜日にも関わらず『本日臨時休業』と書かれた札が貼られている。
(もう、来てるのかな・・・)
札を見て、更にどんよりと気分が暗くなった。
カウベルを鳴らして乃絵美が帰宅する。
「待っていたよ。乃絵美」
入り口近くの席に座っていた堂島が、セーラー服の乃絵美を抱きしめる。
(いやっ)
眉をひそめて、堂島を引き離す。
「あの・・・着替えてきますから」
乃絵美は、堂島を避けるように、そそくさと二階へあがっていく。
「待ってるよ。ヒヒ」
堂島のいやらしい声が、背後から聞こえた。
(やっぱり・・・いやっ)
階段を駆け上りながら、もう階下には降りたくない気持ちでいっぱいになる。
部屋に入るなり、ベットに身を投げ出しごろんと一回りして仰向けになると、兄のことを想った。
(お兄ちゃん・・・どうしたらいいの)
けれど、兄はいない。
兄は、部活に出ている。
そして、それが終わったら、真奈美のところへ行くのだ。
昔見たドラマで、幼い頃離ればなれになった男女が大きくなってから再会し、一夜をともにするドラマを思い出した。
あの頃は、一夜をともにするということが、とてもロマンチックに思えたが、今は不安と嫉妬・・・それに嫌悪感が胸に広がる。
(お兄ちゃんも、真奈美ちゃんと・・・するのかな)
それは、妹ゆえの、どうにもならない無力感だった。
真奈美は、どんな女の子だったろう。
乃絵美が幼児といって差し支えないほど幼かったころのことだから、乃絵美自身の記憶はない。
兄のアルバムに残っている猫をもって大きなリボンをつけた少女の姿が、乃絵美にとって最も鮮明な真奈美の記憶だった。
兄が気に入っていた真奈美の大きなリボン。
乃絵美が、今でも子供っぽい大きなリボンをつけているのは、兄が熱っぽく真奈美のリボンが可愛いと語っていたからのような気もする。
女性に興味を示さない兄がただ一人執着した女性・・・それが真奈美という女の子だった。
(きっと、お兄ちゃんは・・・)
そう思うと、胸が苦しくなる。
「あ・・・」
じんわりと、股間が潤うのを感じた。
(お兄ちゃんのこと考えてるだけで・・・)
ショーツを汚すほどではないが、乃絵美のスリットは濡れ始めていた。
「ん・・・」
今まで、自慰すらしたことがなかった乃絵美が、無意識のうちにショーツの上から、スリットを指でなぞっていた。
堂島が与えた快楽は、乃絵美の性の扉を、開き始めている。
「お兄・・・ちゃん・・・」
室外には聞こえないような、ほんの小さな声で呟く。
じゅん・・・と、また少し濡れる気がした。
(私だって、お兄ちゃんのこと・・・)
そう思いながら、ショーツの中に指を滑り込ませようとしたとき
「早くしなさい」
ノックと同時に、父の声。
堂島に言われて呼びに来たのか、声には苛立ちと焦りが感じられた。
「う、うん」
乃絵美は、ベットから身を起こすと、かぶりをふってセーラー服を脱いだ。
そして、白と黒のコントラストがきいたエプロンドレスに手をかけた。
(今日は、長い一日になりそう)
そんな予感がした。
「乃ー絵ー美ぃっ」
階下に降りた乃絵美を一番に迎入れたのは、堂島だった。
堂島は両腕を乃絵美の前に出しだして抱擁するかのように、乃絵美を招く。
(くっ・・・)
乃絵美は、眉をひそめそうになるのを押さえながら、必死の思いで作り笑いを浮かべる。
どうしたら乃絵美が嫌がるかを知り尽くしたかのような、堂島の機嫌の良さは、そんな計算さえ含まれているような気がする。
「ほら、乃絵美。早く降りてきなさい」
昨日は、あんなにすまなそうな顔をしていた父は、早くも女衒のように堂島の手引きをしている。
(お店の存続のため・・・なんだよね)
判っていても、父の態度は不快だった。
父のほうを向かずに、階段を下りると、堂島のいる席の前に立った。
「待ちくたびれたよ」
「申し訳・・・ありません」
なんだか悔しくて、ぎゅっと拳に力が入ってしまう。
(我慢しなきゃ・・・)
「部屋で、オナニーでもしてたのかなぁ。お兄ちゃんのこと考えながら」
びくっ
と震えた。
(見てた・・・の?)
見ていた筈はない。
けれども、初めてしかけたオナニーを見透かされたようで、乃絵美の心臓は破裂しかねないほどに動揺してしまう。
「そんなっ・・・こと、してま・・・せんっ」
必死の思いで、言葉を振り絞り、言い訳する。
両親の目からは、卑わいな言葉を投げかけられて羞恥のあまりに動揺しているだけにしか見えない。
だが、堂島には、乃絵美の全てが見られているのではないか、と乃絵美は感じた。
「いいんだよ。乃絵美」
堂島は、乃絵美の腰に巻かれた大きなリボンを解いた。
ロムレットの制服であるモノトーンのエプロンドレスのワンピースは、腰のリボンをとるとウェストのくびれのないマタニティドレスのような状態になる。
「あ・・・」
乃絵美の手が解かれたリボンを追うが、堂島はそれを許さず、リボンを向こうの席に置く。
「お兄ちゃんのことは、儂が忘れさせてやろう」
言いながら、堂島の手がスカートの下に延びる。
「やっ」
無駄と知りながらも、乃絵美はやはり抵抗する。
しかし、堂島をとめることはできず、野太い指がスカートの下のショーツに触れてしまう。
「んっ」
乃絵美がしかめた顔をそらすのを満足げに眺めがら、尚もショーツの感触を楽しむ。
恥骨の感触を、ウェストのラインを、そして、スリットの谷間を。
「報われぬ恋なぞ忘れて、儂と楽しんだほうが・・・おや」
堂島の指が動きを止めて、探るように同じ箇所を何度も触る。
「え・・・?」
そこは別段いやらしいところではなく、へその下のあたり。
下には陰毛すらない、ただショーツの柄と刺繍だけしかないところだ。
「ほう・・・」
けれども、堂島は満足そうに、そこを撫でる。
「あの・・・何か?」
「くひひ・・・そうか。うれしいねえ」
「うれしい・・・?」
「そうさ、乃絵美は、儂のために・・・儂に抱かれるために、ちゃんとめかし込んできてくれておるじゃないか」
(めかし込むって・・・あっ!)
堂島が言っている意味が分かった。
先刻、兄を想って濡れた後が残っているような気がして、ショーツを取り替えたとき、乃絵美が持っている中でも、一番上等な、複雑なレースのついた綺麗なシルクのショーツに履き替えたのだった。
それは、どうせ見られるのだったら笑われたくないという無意識な選択から出たものだったが、堂島には自分のために履いてきたのだととられたのだ。
「ち・・・違います」
乃絵美からすれば、堂島を想って履いたのではないが、結果として同じ効果をもたらしていることが、顔から火が出るほどに恥ずかしかった。
「ヒヒ・・・照れたところも、可愛いものだ」
堂島は、真っ赤に染まった乃絵美の頬に舌を這わせると、ゆっくりと腕を引き、膝の上に座らせる。
(・・・昨日と、同じ)
昨日と、同じ格好。
昨日の夕方、乃絵美は同じように堂島の膝の上に座り、同じようにスカートの下に手を入れられていた。
違うことがあるとすれば、もう乃絵美が処女ではないということと、まだ昼過ぎだということだけだった。
「今日は、時間もたっぷりあるし・・・何度もいかせてあげるよ」
そう言いながら耳たぶを軽く噛む。
(お兄ちゃん・・・)
堂島が愛撫を続けている間、乃絵美は堅く目をつぶって、ここにはいない兄の姿を思い浮かべる。
(あ・・・)
思い浮かぶのは、大きなリボンをつけて眼鏡をかけた少女と裸で抱き合う兄の姿。
(違う・・・)
必死でその思いを打ち消そうとする。
けれど、兄は真奈美のほうを向いたまま。
真奈美への愛撫に執心している。
(やめて・・・お兄ちゃん)
不思議と真奈美の顔はぼんやりしたままだ。
幼い日のアルバムにしか記憶のない乃絵美には、真奈美の顔がわかるはずもない。
ただ、自分の無力だけを感じる。
(お兄ちゃんは・・・私の)
と、そこまで言いかけたとき、我に返った。
「何を考えてるのかなぁ?」
耳元で、堂島がささやいたからだ。
ささやきながら、堂島の左手は乃絵美の乳房を揉みしだいている。
そして、残された右手がショーツの中の陰核を探り当てたところだった。
「な・・・何も」
気がつけば、ワンピースはたくし上げられ、存分に弄ばれた乳首は堅く勃起していた。
(お兄ちゃん・・・)
こんなにいやらしくなってしまうのは、兄のことを想っていたからだ。
乃絵美はそう思うことにする。
堂島の巧みな愛撫で快感を感じているとは思いたくなかった。
ショーツは、すでに乃絵美自身が分泌した蜜で濡れ、半ば脱がされている。
昨日よりも感じている。
「あ・・・ふぅ・・・」
陰核を撫でる指に、思わず声が漏れてしまう。
それでも、乃絵美は、どうしても堂島によって気持ちよくさせられているとは思いたくない。
快楽に身をゆだねていく己自身に嫌悪し、それを認めたくないながら、身体だけはそれに反応し、堕ちていく。
それこそが、堂島の思う壺なのだが、幼い乃絵美にはそんなことは判らない。
「どうだ。もう気持ちよくてたまらんだろう・・・ひひ」
「やぁ・・・いや・・・そんなこと・・・ない・・・の・・・に・・・」
ただ、力無く首を振るだけだ。
「そうかね」
堂島は、乃絵美を抱きかかえると、くるりと反転させた。
「きゃ・・・」
堂島の膝の上で、乃絵美は堂島と向き合う格好になる。
俯いた乃絵美の視線には、いきり立った堂島の陰茎があった。
ぴとり、と恥丘に当たったそれは、火照った乃絵美の身体よりも更に熱い。
堂島は、やや薄くなった額を、陰茎に釘付けになっている乃絵美の額に押し当てた。
「ん・・・」
そして、くいと顔を上げさせて、鼻の頭にキスをして言った。
「そろそろ挿れるとしよう」
堂島は言うなり、乃絵美の臀部を鷲掴みにして、軽く持ち上げる。
生来病弱で細身の乃絵美は、堂島が驚くほどに軽い。
「ふぁっ」
堂島が持ち上げた先には、いきり立った堂島自身がある。
そこに、乃絵美の濡れそぼったスリットを当てがう。
「あ・・・」
乃絵美のスリットは、体重がかかる前から堂島を受け入れるかのように滴を漏らしている。
その滴を堂島の陰茎にぬりたくるように、亀頭で陰唇をこね回した。
「あく・・・はぁ・・・」
敏感になっているスリットに、陰茎が何度も潜り込みかける。
昨日よりも、もっと・・・スリットは堂島を求めている。
(違うのに・・・)
乃絵美の心がどれだけ否定しても、身体は抗することができない。
「乃絵美」
「は・・・あぁ・・・はい」
もどかしい亀頭の刺激に悶えながら、堂島の呼びかけに応じる。
「挿れて、欲しいだろう」
「いや・・・」
そう言いながら、乃絵美のスリットは堂島の亀頭を追うような動きすらみせていた。
陰唇をなぞる陰茎の熱さは、乃絵美に快楽を約束する魔性の熱を帯びている。
「乃絵美は、いやらしい娘だな・・・ヒヒ」
堂島にとって、乃絵美がどう思うかは関係なかった。
今、乃絵美の身体が欲するものを与える。
それが、今の堂島の役目なのだから。
「ほうら・・・」
ずぶり
そういう擬音が似合うほどに、蜜を溢れさせながら、乃絵美のスリットに堂島の陰茎が埋まっていく。
(きつ・・・いよう・・・)
乃絵美は震える吐息を必死で押さえながら、堂島を感じている。
ゆっくり、ゆっくりと、堂島の亀頭が乃絵美の中に収まる。
そして、更に陰茎の全てを飲み込んでいく。
「はぁっ・・・ふっ・・・うっ・・・」
その動きは、あまりにも緩慢で、持ち上げた堂島の腕にも随分な負担をかけるものであったけれど、昨日処女を失ったばかりの15歳の少女にとっては、苦痛のない快楽ばかりの挿入となった。
「あっ・・・あぁ・・・うん・・・」
猛り狂うような性欲をぶつける同世代の男の子では得られない老練な技が、乃絵美を一層快楽の虜へと導いている。
「ふぅっ・・・はぁ・・・はぁ・・・あぅ・・・」
乃絵美の中は、男を受け入れるにはまだ未熟なせいか、随分ときつい。
小柄であるという身体的制約以上に、昨日破瓜を迎えたばかりの乃絵美の女陰は、まだ激しい快楽を受け入れるほどに整ってはいない。
それなのに、こんなにもスムーズに受け入れることができるのは、堂島が乃絵美の身体を熟知しているからだ。
昨日、数時間にもわたってこの少女を愛撫したときに、堂島は乃絵美の全てを識り尽くした。
乃絵美のどこが感じるのか、どうすればどう反応するか。
そして、どう開発すれば、どうなっていくのか。
それすらも、堂島の掌中にある。
だから、これから導くのだ。
乃絵美を、快楽の渦へと落とすのだ。
そう決めた。
考えるだけで、愉悦が堂島を満たす。
代議士として、つまらない仕事ばかりだった日常の中にふと現れた、清廉な少女。
いつもなら激しく犯し、いたぶり、虐げ、手下に下げ渡す。
下げ渡された女は、手下たちに陵辱されつくされ、性奴へと堕ちる。
誰にでも抱かれ、男なしに生きられない女になるのだ。
昨日、初めて乃絵美を見たときには、この少女も同じようにしてやろうと思っていた。
なのに、今では乃絵美を心から自分の快楽に捕らわれさせてやりたいと願っている。
(儂だけのものにしてやる)
そう誓っている。
乃絵美には、そう思わせる何かがあった。
だから、昨日帰るときに、今日も来ると言ったのだ。
明日は来られないだろうが、これからも許される限りここに通うのだ。
自分でも、不思議に思うほどに執着している。
「あふ・・・はぁっ・・・あ・・・」
どれほどの少女を籠絡してきたのであろうか、堂島の乃絵美を見る目は、鋭く、そしていやらしく光っている。
それだけに、少女が実兄に恋しているという事実が、おかしくもあり、口惜しくもあった。
(儂だけのものにしてやる)
何度も、心の中でそう呟く。
乃絵美の身体は、自分が開発している。
このまま、兄に戻れなくしてやる。
堅く誓いながら、乃絵美の奥まで届いた陰茎を突き上げたり、陰核を刺激したりする。
「あ・・・あっ・・・あ・・・」
乃絵美は、その一挙一足に翻弄されて、更なる快楽に震えた。
「どうだ。気持ちいいだろう・・・ひひひ」
挿入のときよりも少しだけ早く、けれどもやはり緩慢な動きでスライドさせる。
「ああー・・・あっ・・・あっ・・・」
どうしようもなく、気持ちがいい。
乃絵美は、もう何も考えられない。
「そろそろ、いくか?ヒヒ」
堂島は、乃絵美の耳たぶをねぶりながら、腰を動かし続けている。
「あぁ・・・あんっ・・・あんっ・・・」
ようやく激しくなってきた腰の動きに、小ぶりな乃絵美の乳房が揺れる。
揺れた乳房が密着する堂島の身体に当たっては跳ね返り、汗をとばしながら、ぴとぴと音を立てて揺れる。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
堂島が、片手を腰から離し、乃絵美の乳房の感触を楽しむ。
Bカップといったところだろうか。手のひらで収まる形の良いバストは頂上で堅くなっている乳首と絶妙なバランスを保って、ほどよい柔らかさを持っていた。
「はぁっ・・・あっ・・・あ・・・」
きゅぅっと乳首をつまむと、それだけでも乃絵美は敏感に反応する。
「はふぁ・・・あっ・・・ああ・・・」
乃絵美は、無意識のうちに、堂島の首に手を回している。
「あ・・・も・・・もう・・・」
堂島の見立てよりも、ほんの少しだけ早く乃絵美が達しようとしている。
「いくか?」
堂島自身も、もうそろそろ、射精感が強まっている。
もうそろそろだった。
「あ・・・んっ・・・は、はいっ」
乃絵美は、かろうじて頷く。
「ひっ・・・あああっ・・・いっ・・・いっちゃいま・・・ああっあ・・・ああああああっ」
乃絵美の中が膨張し、急に締まる。
「あ・・・あ・・・」
声にならない声をあげて、弓反りになりながら、何度も痙攣する。
乃絵美が、その激しい快楽に翻弄され、絶頂を迎えているとき、堂島も達していた。
びゅくびゅくと音をたてるように、堂島の精液が乃絵美の膣内に発射される。
「ふぅっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
堂島にとって、これほどまでに充実した射精は、何年、いや十何年ぶりだった。
「はぁ・・・はぁ・・・堂島・・・さん・・・」
からみついた乃絵美の腕が解け、力つきた乃絵美はソファーに倒れる。
「最高だよ・・・乃絵美」
堂島は、ゆっくりと力を失って乃絵美から離れる自分の陰茎を感じながら、乃絵美の髪をなでた。
(まだだ・・・)
堂島は、感じている。
まだまだ。
もっと、犯して、乃絵美から自分の精液の臭いしかしないほどに、犯し尽くさなければ・・・
でなければ、乃絵美の中にある兄の姿をかき消すことなどできない。
「はぁ・・・はぁ・・・」
乃絵美は、まだ余韻に浸って横たわっている。
乃絵美の父よりも更に年を重ねている堂島にとって、立て続けに何度も挿入や射精を繰り返すというのは無理なことだ。
(しばらくは、乃絵美を愛撫して楽しむか)
激しく乱れた息を整えながら、乾いた喉を潤そうと、コーヒーカップを手に取る。
乃絵美を待つ間に頼んだ、ウィンナーコーヒー。
さめたウィンナーコーヒーには、真っ白な生クリームが浮かんでいた。
(これで・・・)
乃絵美と、ウィンナーコーヒーを交互に眺めながら、堂島の口元には笑みが浮かんでいた。
(ただ乃絵美を抱くだけでなく、もっと楽しむ方法があったな)
もう、呼吸は整いつつある。
「さて、乃絵美。次は新しい遊びを教えてあげるよ」
そういって、乃絵美を引き戻す。
(まだまだ、時間ある)
堂島は、めくれあがったワンピースを脱がしながら、時計を確認する。
「たっぷり楽しませて貰うよ・・・ヒヒ」
下卑た笑い声をあげながら、全裸の乃絵美をテーブルの上で四つん這いさせた。
(そう。まだまだ、これからだ・・・)
そして、コーヒーカップの上の生クリームを指ですくい、そのまま指を菊座に押し当てた。
「ひっ」
乃絵美は、驚いて振り返る。
そこは、生来触れられるところではなく、乃絵美自身、そうした用途で用いられる知識がない。
それだけに、驚いた。
「ど、堂島さん・・・何を!?」
「おとなしくしていろ」
不安そうな乃絵美をよそに、堂島は菊座の周りに生クリームを塗りたくる。
「あ・・・あの・・・」
そして、生クリームまみれになった人差し指を、つぷり、と菊座に差し込んだ。
「ひあっ」
生クリームが潤滑油になって、堂島の指はいとも簡単に菊座へと潜り込む。
「ひっ・・・いやっ」
乃絵美が身をよじる。
「おとなしくしていなさい」
堂島が乃絵美の股を押さえ込みながら、更に指を突き入れる。
けれど、第一関節から向こうは、乃絵美の抵抗があってか、入らない。
「いや・・・ですっ・・・こんなのっ」
「いいから、力を抜きなさい」
ぐいぐいと菊座を刺激する。
「んくっ・・・だめ・・・き、汚い・・・ですぅ・・・っ」
乃絵美の括約筋が、堂島の指を締め上げて、ともすれば押し返されそうにすらなる。
「お願い・・・ですっ・・・んんっ」
堂島が力を込めると、合わせるように、乃絵美も力を込める。
「あふ・・・んっ・・・堂島・・・さんっ」
一進一退だった。
「お願い・・・ですっ・・・他のことなら・・・何でも・・・」
堂島は指の動きを止めた。
「何でも?」
「ふぅっ・・・」
「何でもする、か?」
「・・・」
また突き入れる。
「しっ・・・しますっ・・・しますからっ・・・」
「ふむ」
ぬるり、と堂島は指を抜いた。
そして、悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
それは、菊座に指を入れるよりも辛いことを思いついた、ということだった。
「じゃあ・・・」
堂島は、ゆっくりとソファーの背にもたれかかると、煙草をふかした。
「ふぅ・・・」
一息つくと、なめ回すように乃絵美の姿を眺める。
「あ、あの・・・」
テーブルの上の乃絵美は、うろたえるより他ない。
手は、胸と陰部に添えて隠すような仕草をとるものの、この状態では隠していないも同然だった。
「そうだな・・・オナニーでもしてもらおうか」
「えっ」
乃絵美の顔から血の気が引く。
「オナニーだよ。オナニー」
(そんな・・・!)
「できません」
頭を振る。
「そんなにしたくないなら・・・」
堂島は、まだクリームの残ったコーヒーカップに手を伸ばす。
さっきの続きをしてやる、という意志がクリームを掬うようにいやらしくくねらせた指先の動きからも伺える。
「したこと・・・ないです」
少し罪悪感。
それは決して嘘ではないけれど、階下に降りる前に兄を想って濡れた自慰に似た体験を思い出してしまう。
「本当に?」
「は・・・い」
ためらいながら、乃絵美は頷く。
「乃絵美ぐらいの年の娘で、自慰もしたことがないなんて、考えられないがねえ」
「本当ですっ・・・お・・・オナニー・・・なんて、したこと・・・ないです」
思わず口にしたオナニーという言葉に、赤面してしまう。
(今まで、そんな言葉口にしたことも無かったのに・・・)
けれど堂島は、ふーん、と軽く呟いてなおも疑いのまなざしを向けている。
「信じて・・・下さいっ。本当なんです。だから・・・」
「そうは言ってもねえ」
「堂島さんっ・・・!」
「それとも、お気に入りの道具でも使わないと出来ないかな」
「どっ、道具なんて使いませんっ」
言って、はっとする。
「じゃ、道具を使わないで、やってみせておくれ」
「ち、違うんです・・・本当に・・・」
おろおろと、うろたえる乃絵美を見て、堂島はコーヒーカップを掴み、中のクリームに指を伸ばす。
「いやっ」
堂島はためらいなく、クリームに指を浸す。
二本の指はすっかりと、コーヒー色に染まったクリームまみれになる。
「し、しますっ」
言って、
(あっ)
と、失言を後悔する。
堂島は、乃絵美のエプロンドレスでクリームをふき取ると、再び深くソファーに座る。
「よしよし。じゃ、早くしなさい」
「あ・・・やっぱり・・・その・・・」
と言いかけてそらした目線の先に、コーヒーカップ。
(あれだけは・・・嫌っ)
菊座に指を入れられるおぞましさを思い出すと、とてもできないとは言い出せなかった。
(でも、どうすれば・・・)
何となく知識としてはあるものの、乃絵美にはどう始めていいかきっかけが掴めない。
戸惑って、もじもじとする乃絵美の心を見透かすように、堂島が声をかけた。
「乃絵美」
「は、はい」
「まずは、『乃絵美のオナニーを見て下さい』というんだ」
「ええっ!?」
動揺。
「乃絵美は、そんなことも知らないのかい」
対する堂島は、さっきまでの笑みから一転して真顔だ。
「知ら・・・ない?」
訳が分からない。
「人にオナニーを見せるときは、そう言うんだ」
「そんなこと・・・聞いたことありません」
「でも、言わないとも聞いたことがないだろう」
尚も、堂島は畳みかける。
「そうだけど・・・そんなこと、言えません」
少し涙目になりながら、やっぱり抗弁する。
「みんなしていることだよ」
「でも・・・」
知らぬ間に、堂島の口調が優しくなっていく。
「アダルトビデオは見たことあるだろう」
「・・・・・・」
見たことはある。
兄の部屋のベットの下に隠されていた秘密のビデオ。
そこでは、真理子と呼ばれるショートカットの女子高生が大きな胸を顕わにして自慰にふけり、その後前髪の長い同じ年ぐらいの高校生の男の子と、真琴という女子高生が加わり3人でいやらしく絡み合っていた。
その後、同級生の友人から普通に男女一組がセックスするビデオを見せて貰うまで、セックスは複数人でするほうが普通なのではないかと不安になっていたこともあったのだが・・・思えば、最初に見たそのビデオの冒頭では、確かに堂島が言ったような台詞を言っていた。
(確かに・・・『真理子のオナニー見て下さい』って言ってたかもしれない)
乃絵美の脳裏に、ビデオのモニターに映し出された大きな胸が浮かぶ。
あのときは、今以上に小さな乳房にコンプレックスを感じただけだったけれど、今にして思えば、それは重要なことを言っていたのかも知れないと乃絵美の不安がかき立てられた。
「思い出したかい?」
「し、知りません」
胸を高鳴らせてビデオを盗み見た記憶まで覗かれているような気がする。
「みんな、言うんだよ」
「そうかも知れないけど・・・でも」
「でも?」
「恥ずかしい・・・」
胸元を押さえる手にも、自然に力が入る。
「じゃあ、儂の耳元で儂にだけ聞こえるようにな」
「・・・はい」
乃絵美は、堂島の肩に手を添えて、耳元でささやく。
その声は、本当に堂島にしか聞こえないほどにか細い。
「乃絵美の・・・オナニーを見て下さい」
言って、更に顔が火照った。
「いい娘だ」
堂島は、言いながら乃絵美をテーブルの上に座り直させる。
ぺたり、と座ったテーブルはひんやりと冷たい。
足だけが、堂島の座るソファーまで降りていて、丁度堂島と向き合ってテーブルを椅子代わりに座るような格好になった。
堂島の視線が、真正面にある乃絵美の陰部にあることに気づいて、あわてて両足を閉じた。
「さあ、始めなさい」
今閉じたばかりの両足を強引にこじ開けて催促する。
「あ・・・はい」
乃絵美は、おずおずと手を胸に持っていく。
小ぶりな乳房に、白く細い綺麗な指の力が加わる。
「ん・・・」
ゆっくりと乳房を揉みながら、乃絵美は目を閉じていた。
目を閉じれさえすれば、堂島の視線も、両親の姿も見えない。
「んふ・・・」
火照った身体に、再び心地よい快感が与えられる。
「んん・・・」
堂島が揉んだ仕草を思い出しながら、両手でリズミカルに揉んでいく。
「ん・・・ん・・・」
乃絵美自身気づいていないけれど、動きに合わせて吐息が漏れていた。
「乃絵美、何をしておるんだね」
「えっ・・・」
驚いて、目を開ける。
「こら、動きを止めてはいかん」
「は、はい」
再び、目を閉じ、揉む。
「人に見せるときは、何をどうしているか、どんな感じが言うんだよ」
「え・・・」
乃絵美の意志とは無関係に指の間に挟まれた乳首が硬さを取り戻していく。
「今は、胸を揉んでいる」
「・・・はい」
「どんな感じかね」
答えられない。
堂島のしたのを真似て乳房を揉んでいる。
独特の動きだけに、堂島がそれに気づかないわけがない。
だから、その行為を感じていると口にするのは憚られるのだった。
「気持ちいい、というんだよ」
乃絵美の躊躇を見透かすように、堂島が促す。
「でもっ・・・」
乃絵美が目を開けると眼前に堂島の顔があった。
堂島は、額と額を当てる。
「正直に」
優しくそう言うと、ちゅ、と軽くキス。
「あ・・・」
こんなに大嫌いな男なのに。
こんなに簡単なキスなのに。
胸が高鳴ってしまう。
「気持ち・・・いいです」
吐息と共に吐き出したのは、今の乃絵美の、正直な心情だった。
「んふ・・・んっ・・・」
しばらく胸を揉んだ後、乃絵美の両手はスリットへと伸びていた。
代わって、乃絵美の乳房は堂島の両手が慰めていた。
(やだ。堂島さんのほうが・・・)
上手い。
自分の身体なのに、自分よりも快楽を与える部分を熟知しているかのようだ。
「ほら、今は?」
「あっ・・・ここは・・・その・・・」
「小陰唇」
「しょ・・・小陰唇を・・・触っています」
「それで」
「小陰唇を撫でると・・・気持ち・・・いいです」
堂島に促されながら、触る部位が変わるごとに、いやらしい言葉を言わされてしまう。
(こんないやらしいこと・・・嫌なのに)
内心嫌悪しながらも、口にするごとに、身体の奥がじゅんっ、と熱くなる感覚。
(感じたくないのに)
けれど、段々蜜が漏れていくのは止まらない。
「あ・・・あぁ・・・」
「そこは?」
「ん・・・」
「クリトリスだよ」
「クリトリス・・・ふぅ・・・あ・・・気持ち・・・いい」
もう濡れるというより、溢れるというほうが正しいぐらいになっていた。
「指を、入れてごらん」
「んふぅ・・・」
言われるままに、人差し指を差し入れる。
「うぁ・・・んっ」
もう、何も考えられなかった。
「そうだ。指でかき回しながら、もう片方の手は・・・そうだ。クリトリスを」
頭の中が、脳が、脊髄が、そして乃絵美の身体すべてが、快楽のためだけに動く。
「あぁ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」
乃絵美の理性は認めたくないことだったが、堂島の言うことに従うことが快楽を得る一番の近道であることは確かだった。
「指をもう一本入れるんだ」
「は・・・はいぃっ・・・んっ」
乃絵美のスリットはまだ二本を楽に受け入れるほどこなれてはいない。
「堂島・・・さん・・・きつ・・・痛・・・いです」
堂島のそれを受け入れているのだから、入る道理なのだが、それは単に物理的に入るというだけで、きついことには変わりなかった。
「少しずつ・・・慣れていくんだよ」
そう言いながら、またキスをする。
「んふぅ・・・んん・・・」
今度は、ねっとりと舌を絡ませる。
(段々、慣れていくものさ・・・)
それは、乃絵美の心を指して言った言葉でもあった。
いつしか、乳房を揉む動きも激しくなっているのだが、今の乃絵美にはそんなことすらも気づかない。
「あ・・・あ・・・堂島・・・さんっ・・・もうっ・・・」
軽い痙攣。
「乃絵美っ」
激しい口調。
「は・・・はいっ・・・あ・・・あ・・・」
「言うんだ」
「え・・・あ・・・な、何・・・を?」
乃絵美は訪れつつある絶頂を感じている。
指の動きは始めた頃とは比べものにならないぐらい激しい。
「儂のことを、好きだと言うのさ」
「あ・・・あ・・・え・・・?」
乃絵美は訳が分からない。
頭が働かない。
胸が、スリットが、全身が性器になったような感覚に導いている。
ただ、快楽の波に押しつぶされようとしているのだ。
「でも・・・あぁ・・・あ・・・」
「言えっ」
堂島の口調は尚も激しい。
「わた・・・わたし・・・あくっ・・・あ・・・」
限界は近い。
堂島の手の動きが止まった。
「あ・・・いや・・・」
「聞く」
「あ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
最早、乃絵美には思考能力らしきものは残されていない。
ただ、乃絵美自身の指が生み出す快楽の渦に向かってまっすぐに進む。
「儂のことを好きだな?」
「あ・・・あ・・・」
更に、乃絵美の脈動が激しくなる。
そこを、堂島の手が動いた。
「ひっ」
堂島の手はあらん限りの握力で、乃絵美の乳房を握りしめた。
「言えっ」
「ひっ・・・いっ・・・あぁっ・・・ど・・・」
そして、大きな脈動。
「堂島さんっ・・・好きっ・・・好きですっ・・・あぁ・・・あああああーっ」
頭の中が真っ白になった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
乃絵美は、ぐったりと倒れる。
倒れて乱れた髪をかき分けて、堂島は乃絵美の唇に、もう一度キスをした。
「ん・・・んん・・・」
舌を絡めながら、堂島は優しく乃絵美の乳房を揉む。
余韻の残る乃絵美には、たまらなく心地よい。
「んふぅ・・・んく・・・んく・・・」
知らずのうちに乃絵美も、堂島に会わせて舌を絡めていた。
「ん・・・」
そして、堂島の首に手を回してしまう。
頭の中には幾千もの言い訳が浮かぶ。
でも、こんなにも・・・気持ちがいいんだから。
そう思いながら、後で絶対後悔することを確信していた。
きっと、昨日と同じ。
快楽の後の激しい自己嫌悪に苛まれるのだ。
それでも、今は堂島のキスに酔いしれてしまうのだった。
「・・・んはぁっ」
長いキスを終えると、ようやく堂島は乃絵美から離れた。
(あ・・・)
けだるい身体を起こしながら、気づく。
(今日のって・・・ファーストキス、だった)
思い出すと、後悔のせいか胸が痛んだ。
堂島は、ズボンのファスナーを上げ、帰り支度を始めていた。
(ようやく、終わったんだ・・・)
気がつけば、日が暮れていた。窓の外はすっかり暗い。
「さて、今日のところは帰るとしよう」
「は・・・い」
嬉しいのに、身体に残る余韻が素直に喜べなくて、つい言葉が詰まる。
「また近いうちにに来るよ」
「は、はい」
堂島は、ネクタイを締め直す。
「それで・・・だ」
「?」
「お別れのキスはしてくれるのかな?」
それは、嫌々だったのか。
乃絵美自身が望んだのか。
そのときの乃絵美には判らなかったけれど。
別れのキスは、その日一番の激しいフレンチキスだった。