夜の秋葉原が好きだ。 
自動販売機と街灯の灯りが照らし出すこの街は、 
俺の奇形化した欲望を照らし出しているようで、 
ひどく居心地が良い。 
 どこかの店が十二時販売をするらしく、うちの 
店に来るような奴らがたむろしていた。 
幸せそうな顔だ。別に俺は奴らを蔑まない。俺と 
は無関係の人種だ。そう思うようにしている。そ 
うでも思わなきゃやってられない。時々考えるの 
は、何故エロゲーをやるのかということだ。あの 
夢を見るようになってからは、頻繁に考えるよう 
になった。今の俺には、性欲処理のため、という 
言葉が言い訳にしか聞こえない。エロゲーという 
メディアが持つ特異性は、そこに使用者の意志が 
存在しうるということだ。たとえどんな一本道の 
クソゲーだろうとしても、テキスト主体である限 
り、メッセージを進めるのはプレイヤーのクリッ 
クだ。 
 他のメディアは使用者を観客にするが、エロゲ 
ーにおいては主演になる。俺はそれこそがエロゲ 
ーの優れている点であると考える。加藤とは相容 
れることはないだろう。あいつは物語に自分を埋 
めたいだけだ。クソ、反吐が出る。あいつと俺は、 
同じ位置にいるんだ。あいつと俺は、少しばかり 
殻が違うだけで肝心の中身はまったく同じなんだ。 
 殻に包まれているのは寂しさ。 
 俺達は何らかのコミニュケーションスキルを獲 
得できずにいる。それが悪いことかは俺は知らな 
い。そうでない奴もいる。だが、大多数はそうだ。 
 クソ、こんなことを考えても空しくなるだけだ。 
 あの群の中に混じれば、俺も幸せになれるのか? 

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