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彼と彼女の夏

彼と彼女の夏 序章 2006/06/26(月) 23:41:29 ID:Yu6SXQHf0
6月末。
梅雨真っ盛り。
空には薄い雲がかかり、明るいながらも雨が降り続いている。
そんな中、ガレージの中で彼は作業していた。
やがて来る夏のために。
(プラグレンチ、プラグレンチっと)
工具箱をかき回す。
(焼け具合はどうかな)
スパークプラグを取り外す。
スパークプラグ先端はキツネ色に焼けていたが、若干黒くなっていた。
(悪くない…けど、ちょっと濃いな)
スパークプラグを元に戻すと、キャブレターの方を見た。
(下は調整できるけど、問題は上だな)
今のままでも動く事に関して問題は無い。
以前の夏ならそのままにしておいただろう。
しかし、今年は彼女が来る。
グズついているこのバイクを見たら笑うだろう。
性格が現れてるね、と。
だから、きちんとしなければならない。
完璧、は無理だが、できる限りの事はする。
そう決めていた。
再び作業に戻る。
チェーンの伸び具合、前後タイヤの空気圧、各レバーの遊び、摺動部のグリスアップ。
手馴れた手つきで作業を進めていく。
(今日は終了)
一通りの作業を終え、工具を片付け始める。
やがて、ガレージは以前の状態を取り戻した。
何とはなしに外を見ると、雨は止んでいた。
「よし」
バイクを外に出し、ヘルメットを被り、グローブを着ける。
太陽は雨が降っていたとは思えないような強い日差しを浴びせてくる。
夏はもうすぐだった。

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