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デモンベイン・アルTrueEnd後日談

261 : ◆Rion/soCys :04/09/12 22:37:12 ID:QxZWdfpY
再会したアルの細い肩を抱きながら、ゆっくりとアーカムの街を歩く。

「あ、ニグラス亭・・・こっちの世界にもあったんだ」
「ふむ・・・ここで食べたことはなかったな。当時の九郎の経済状態では致し方ないが」
「悪かったな・・・今度はここで何か食うか」

ときどき、今まで気づかなかった思い出の建物の横を通り過ぎたりして感慨に耽る。
評判のアイスクリーム屋。映画館。裏路地の市場。
この世界に戻ってから、今までだって見ていたはずなのに
何故か気づかなかった思い出の場所。
アルと並んで歩くことで、その場所が急に息づき、色を持ち始める。
俺一人では、味気ない灰色の街だったアーカムシティが
命と活気にあふれる世界に変わっていくような気がした。
いろいろと回り道をして、ようやく我が家にたどり着く。

「・・・まだこの、薄汚い部屋に住んでおったのだな」
「悪かったな、薄汚くて・・・」
「まったくだ。薄汚いだけでなく、相変わらずろくな調度品もないし、物資も枯渇しておるのだろうな」

当たりだよ、こんちくしょう。
俺一人だったんだからそんな色々揃える必要なかったっつーの。

「だが・・・懐かしい・・・帰ってきたのだな、妾は・・・」
「ああ・・・お帰り、アル」

もう一度、しっかりとアルを抱きしめた。

262 : ◆Rion/soCys :04/09/12 22:38:28 ID:QxZWdfpY
つもる話は尽きることがない。

「そういえば、ウェストの野郎に出くわしたぜ。エルザも一緒だった。相変わらず破壊ロボで暴れてやがってさ」
「ほう。それで汝、どうしたのだ?」
「一発かましてやったさ。まあ、俺がいるからには好き勝手させねえよ」
「この世界でも、汝とあやつは腐れ縁で繋がっておるようだな」

そんな世界は激しくご免こうむりたい。

「他にも、縁のあった者はほとんどこちらの世界にもおるのではないか?」
「ん?ああ、そうだな・・・ライカさんやガキんちょどももちゃんといるし、覇道の姫さんや執事さんにも会ってるし」
「む。あの小娘、まだ汝にまとわりついておるのか」
「おいおい・・・そもそも、お前を捜すきっかけだって姫さんから事件調査の依頼があったからなんだぜ?」
「余計なことを。そのような依頼などなくとも、いずれは我らは巡り会うはずなのだ」
「いずれ、じゃなあ・・・姫さんの依頼のおかげで一日でも、一時間でも・・・早く出会えたんなら、やっぱり感謝だぜ」
「うつけ・・・真顔で恥ずかしい事を言うでないわ・・・」

「それにしても、なんか妙な感じだよな」
「何が妙なのだ?」
「お前とはこうしてまた出会えた。ウェストの野郎も相変わらず暴れてる。なのにブラックロッジは存在しない。変じゃねえか?」
「別におかしくはなかろう。この世界にはマスターテリオンがおらぬのだから」
「奴がいないから、奴が組織したブラックロッジも結成されてないのはわかるよ。でも、そのメンバーは・・・いてもいいのか?」
「そうだ。マスターテリオン以外の者は、ブラックロッジの信徒でなくなっても、この世界に存在する可能性がある」
「・・・ウェストみたいに、か?」
「はなはだ不本意で迷惑だがな・・・」

263 : ◆Rion/soCys :04/09/12 22:40:10 ID:QxZWdfpY
「ちょっと待て・・・それじゃ、アンチクロスの奴等もこの世界にいるかもしれねえのか!?」
「汝と縁があるという点では、かなり因縁があるからな。ブラックロッジが存在せぬ以上、アンチクロスとは呼ばれておらぬだろうし
 徒党を組んでもおらぬだろうが、また汝の前に何らかの形で立ちはだかるやもしれぬぞ」
「げげっ!?」

いいことばっかりじゃねえってわけか・・・

「ああいう連中はこの街のようなところに潜んでいることが多い。汝、魔術の修行は怠ってはおるまいな?」
「え?ああ、そりゃまあ・・・でも、あいつらがまた鬼械神とか出してきたら対抗できるのか?デモンベインはもうないんだろ?」
「ふふん」
「・・・なんだよ、その思わせぶりな笑いは」
「マスターテリオンが存在しない世界では、覇道鋼造はデモンベインを用意する必要はない。だが・・・」
「・・・だが、なんだよ?もったい付けるなって」
「マスターテリオンが存在しない世界では、妾が本来リンクしていた鬼械神、アイオーンは破壊されていない」
「なるほど・・・じゃ、そのアイオーンってやつなら呼び出せるってわけか。デモンベインじゃないのは残念だけど」
「そうだな・・・明日にでも顔合わせで「召還」しようと思うが、どうだ?」
「ん・・・また操縦とか覚えなきゃなんねえしな。いいぜ、やってやるよ」

新しい・・・いや、アルにとっては元々の鬼械神であるアイオーンを召還するため
久しぶりのマギウス・スタイルになった俺達は、人気のない海岸までやってきていた。
「ここらでよかろう・・・召還の呪文は妾が唱える」
「わかった」
「では・・・始めるぞ!」

264 : ◆Rion/soCys :04/09/12 22:43:24 ID:QxZWdfpY

青白く光り輝く魔法円を描きながら、アルが呪文の詠唱を始める。
「憎悪の空より来たりて・・・」
・・・え?
「正しき怒りを胸に・・・」
おい。ちょっと待て・・・
「我らは魔を断つ剣を取る!」
待てよ・・・それは・・・それは・・・!
「汝、無垢なる刃・・・・・・デモンベイン!」

呆気にとられる俺の前に
そびえ立つ鋼鉄の巨体が衝撃波とともに顕現する。
懐かしい戦友の姿が、そこにあった。

「デ・・・デモンベインじゃねえか!ちきしょう、なくなったんじゃなかったのかよ!」
「一度はな。妾がこの世界に帰還したとき・・・一度、デモンベインは消えた。
 始めから存在しなかったように、消え失せてしまったのだ。
 だが、すぐに妾は気づいた。なくなっていた、妾本来の鬼械神とのリンクが復活していることにな。
そして、それが・・・デモンベインとのリンクであることに。
 そうだ九郎・・・デモンベインは、正しく汝と妾の鬼械神になったのだ!」
「騙しやがったなアル!・・・ちゃんと・・・ちゃんといるじゃねえか!デモンベインがよ!」
「騙したとは人聞きの悪い。感動の再会は、意表を突いたほうがより感動的であろう?妾の気配りに感謝して欲しいものだな」
「ああ・・・ちきしょう、嬉しいぜ!また・・・また此奴に・・・戦友に会えるなんてよ!」
「・・・汝、妾と再会したときより嬉しそうだな?」
「ああ、お前みたいな性悪との再会より、デモンベインにまた会えたことのほうがよっぽど嬉しいぜ!」
「ぬかしたな?・・・まあいい・・・さあ、乗り込むぞ!」
「応よっ!」

誰もいない海岸にそびえ立つ機械の神が
互いの帰還を祝福するように今、声無き声で咆吼をあげる。

今、俺達は帰ってきた・・・

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