■戻る■

在る死者のものがたり

310 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:43:13 ID:TMYt1OCj
――――キィコ――キィコ――キィコ――
 ブランコが軋んだ音を立てていた。
 最近の児童はTVゲームにでも忙しいのだろうか。児童公園に設置された遊具は永らく使
われた形跡もないまま、風雨に朽ち果てようとしていた。このブランコもその一つだ。昔
は子供たちが先を争って遊んだ遊具も、錆付き固まって、揺れるたびにキィキィと甲高い
音で鳴いていた。
――――キィコ――キィコ――キィコ――
 見上げれば、満天の星空。
 深夜の公園は独特の空気がある。静かで、空虚で、ひどく寂しい匂いがする。
 懐かしい匂いだった。この世界に現れ出でて、多分最初に感じた外気の匂いだ。匂いの
記憶は、苦闘と栄光の日々を思い起こさせる。もう、ずっと過去になってしまった初陣の
日。その日から繰り返された血と、鉄と、そして勝利。その全てが自分のものだと思うほ
どには傲慢ではないけれど、その礎を確かに担っていたはずだった。
 その全てが朽ち果てようとしていた。
 時の流れは過去の栄光を不要と断じ、その存在を亡きものへと追いやってしまった。
 死ぬ事は怖くは無い。
 ただ、生きていたという証が。あの、血と鉄と苦闘の日々が否定されるというのは、す
こし、寂しかった。
――――キィコ――キィコ――キィコ――
 いつまでもこうして、錆付いた遊具の中で朽ち果ててしまいたい。そんな想いが生まれ
て、消えた。その時だった。

311 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:44:02 ID:TMYt1OCj

――――ィィィ――

 闇の向こうから、遠雷のような響きがした。
 静かな夜気には嗅ぎ慣れた匂いが混じり初めていた。
 熱い呼気の、鉄を打ち合う火花の、流れ出る血潮の―――戦いの、匂いだ。

「―――グルゥ」
 ”彼”は、小さく唸りを上げると、ブランコに腰掛けた体を起こした。
 闇の中に黒々とした巨躯が立ち上がる。屈めたような姿勢でなお、頭の位置はどんな遊
具の登頂よりも高い。顔はシルエットの時点でヒトのそれとは大きく違う。黄色い、閉じ
ることの無い両の目が、トカゲじみた平べったい顔の横で隆起している。全身を鱗で鎧っ
た身体は、星明りにてらてらと輝いていた。
 彼はこの世界の住人ですらない。異界の術により、魔力によって造りだされた存在だ。
 二度、三度、二又に割れた赤い舌が空気を舐めた。蛇のそれに酷似したその器官は、空
気に混じる微細な匂いをも知覚する。レーダーのように匂いの源を探り出し、そしてのそ
りと歩き出した。
「ぬぁ〜〜はっはっは。深夜遅くに失礼しますっ。我等は秘密結社ヴァルキルっ!」
 戦いは、すぐそこにあった。


312 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:45:02 ID:TMYt1OCj

  在る死者のものがたり


「メッツァー様、ご報告いたします!」
 豪奢なつくりのドアを押し開けて、ココノ・アクアはメッツァーの居室に飛び込んでき
た。よほど慌てて来たのだろう。元より癖の強い髪は大いに乱れ、唇から漏れる吐息は切
れ切れになっている。有能な彼の奴隷にしては珍しい。
「どうしたココノ。何をそんなに慌てている」
「はい、申し訳ありません。先日、廃棄が決定した下魔ですが……」
 メッツァーが従える魔物には大きく二種類に分けられる。
 片方は魔界から直接召還する比較的強力な上魔。他方は魔力を用いて有機物から合成す
る下魔だ。
 魔界のものとは言え、元より生命体であった上魔に対し、下魔は大量生産の利く”もの”
だ。全て同じ設計図から作られたそれらには、外見も能力も個性というものは存在しな
い。全てが同じ二本足で立ったトカゲのようなその姿をしており、戦闘や単純労働に使い
潰される。
 必要ならば造られ、不要ならば削除される。それだけの存在だ。
「ああ、あれか。それがどうした?」
「その……。その内の一体が逃亡いたしました。申し訳ありません、私の管理不行き届き
です」
 下魔が脱走したのはこれで二度目だ。一度目は、よりにもよってメッツァーが赴任した
その日。マナ収集の際はぐれた一体が諜報活動に出ていたメッツァーを襲ったのだ。無論、
その時は事なきを得たが、同じ失敗を二度繰り返した者を許すほど、メッツァー・ハイ
ンケルという男は甘くは無い。
 『死ね』そう命令されるのをココノは胸の奥で覚悟する。
(大丈夫、私は死ねる。この人の命令なら)
 意を決して正面を向き直り、そして見たのはいかにも面倒そうな主人の顔だった。

313 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:47:16 ID:TMYt1OCj
「何だそんな事か」
 些事に心を砕かせるな。そう表情が言っている。
「え?」
「構わん。上魔の大量召還が可能になった今、下魔などどうなろうと知ったことではない
わ。むしろ処分する手間が省けた。逃げたものが暴れれば、スイートナイツや本国の連中
への牽制にもなる。放っておけ」
「で、ですが。脱走したのは最初期から下魔ですし、戦闘経験もずば抜けて多いですから
……」
 画一的に造られる下魔であっても、後天的な原因で個体間には差異が生じる。成長と言
っていいだろう。実戦を生き抜いた下魔は、作成直後のそれに比べてかなり高い戦闘能力
を有するようになる。十数度の戦闘を生き抜き、女王騎士団の魔力を啜った個体ならば、
スイートナイツの必殺技の直撃すら耐え切る生命力を有するまでに成長する。
「とは言え所詮は下魔であろうが。よもや、情が移ったなどと言う訳でもあるまいに?」
「まさかそんなこと! 私は、ただメッツァー様の……」
 もじもじと、恥ずかしげにするココノを、メッツァーは笑みすら浮かべて見つめていた。
愛らしい彼の奴隷は、剥き出しにした太股をすり合わせ、悶えるような仕草で畏まる。
怜悧な仮面の下に隠した欲望が、むらむらと湧き上がるのを彼は自覚した。
「まあ、それほどまでに下魔どもを気にしていると言うならば、下魔どもの巣に裸で放り
込んでやろうか? きっと貴様の愛しいバケモノどもが、たっぷり可愛がってくれるだろ
うよ」
「そ、そんな!?」
 一転蒼白となったココノに、メッツァーの笑みは益々歪に広がってゆく。
「ココノ。貴様は何者だ?」
「は、はい。私はメッツァー様の奴隷……」
「違うな。ただの奴隷であるはずが無い。そうだろう?」
 魔王じみた微笑に、ココノの身体は震え出す。背筋は凍るほどに寒いのに、頭はぼぅっ
とするほど熱くなる。これから起こることを期待して、胸がどくどくと高鳴っていた。
「……は、はい。ココノは、メッツァーさまのいやらしい肉奴隷です。いつも、メッツァ
ー様にして欲しくて、見つめられただけで……濡れてしまう。いやらしい肉穴です」

314 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:48:08 ID:TMYt1OCj
 愛らしい顔立ちに似合わないむっちりとした太股をすり合わせると、淫らな汁音が聞こ
えた。恥知らずなくらいに切り上げられた下穿きは、もう垂れ落ちそうなほどいやらしい
汁に濡れそぼっていた。
「そうだ。元女神騎士団だと言うにも関わらず、恥知らずに汁を垂れる肉穴だ」
「……そ、そうです。ココノは、アップルナイツの誇りも、忠誠も、メッツァー様のが欲
しくて、全部裏切りました。メッツァー様のをいやらしいところに入れられたら、全部わ
からなくなってしまうダメな奴隷ですっ!」
「その裏切り者の肉奴隷が二度も同じミスをしたわけだ。どうすべきだと思う?」
「ば、罰を。罰を与えてください! いやらしいココノにたっぷりと、罰を与えてくださ
い!」
「よかろう。服を脱げ」
 荘厳ですらある命令に、いそいそとココノは従った。熱っぽく浮ついた手つきで自ら衣
服を剥がして行く。最後に残った股布は、ぬめる粘液にを染み込ませて、重い水音を立て
て床に落ちた。
「ぬ、脱ぎました」
 何一つ覆うもののない白磁の肌が灯りを受けて浮かび上がる。均整の取れた体つきはま
るで一つの芸術品だ。柔らかく隆起した胸のふくらみは、これからの事を期待するように、
硬く先端を勃起させていた。
「まずは、下魔の巣に行くぞ。これから処分されるものどもに、せめて最後の悦びをくれ
てやろうではないか」
「は、はぃ」
 主人の後を歩くココノの足取りは、まるで熱病に浮かされたようだった。

315 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:49:20 ID:TMYt1OCj
  * * * *

「セーフスターハケーン!」
「つーか、発見されたのこっちじゃん!」
 二人の男が駆けていた。
 白い仮面に黒装束。タイツとブーツとグローブとベルト、古式ゆかしいシタッパ装備を
身に付けて、背には膨れ上がった風呂敷包みを担いでいる。包みに入りきらなかった物品
が街灯の光を受けてきらりと黄金に輝いた。
 彼らは秘密結社ヴァルキルの戦闘員コゾーン。仮面の下は普通の一般市民と変わらない
が、これでも立派な悪の組織の尖兵だ。
「待ちなさいっ!」
 そして、それを追いかける少女。
 長く艶やかな黒髪が印象的な美少女だ。青を基調とした変形セーラー服に、手にした武
器は段平だ。濡れたように光る刃先は、素人目にもいずれの名刀かと思わせる迫力がある。
ミニスカートをはためかせ、同時に段平を煌かせながら追いすがるその様子は、凛とい
うより物騒なものを思い起こさせる。政府直営の正義の味方ホワイトラブリースターこと、
唐紅葉月だ。
「待てと言われて待つヤツいるか!」
「つーか、なんでセーフスターが俺たちみたいな下っ端追ってるんだよ! 怪人は何やっ
てんだ!?」
「あんた達のせいで全員深夜出動よ! 絶対、ぜぇったい逃がさないわよ!」
「キリッサ様。たーすーけーてー」
 泣きながら助けを叫ぶ。が、無線から返って来たのは無情なものだった。
『あー、ごめんごめん。こっちも緑色の人と交戦中でさ。自力で何とかしてね』
「マジか〜!?」
「ウーリンはどうしたんだよ!」
「現在二ブロック先でレッドと交戦中! ドクターはピンクと一緒に反応消えたってさ!」
「あああああああああっ! あの野郎どっかにシケ込みやがったな! うらやましいぞ畜
生っ!」
「俺もピンクタンハァハァしてぇーッ!」
「馬鹿な事言ってないで、黙って捕まれー!」

316 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:51:43 ID:TMYt1OCj
 追うも逃げるも、深夜の街に大声を響かせて走り続ける。人気の絶えた深夜のオフィス
街だ。真っ黒に林立するビルの谷間に、お互いの声がうわんうわんと反響する。
 道は、まっすぐ続く二車線道路。追いかけっこの勝敗は純粋な脚力にかかっている。方
や普段鍛えた若い娘のカモシカのような脚。こなた、元リストラ組の中年男性二人組。し
かも、背中には余計な荷物。
「ダメじゃん」
「逃げ切れないな」
 彼我の差に思い至り、二人は後ろを振り返る。
「観念したのかしら? おとなしく投降すれば罪は軽くて済むわよ」
 一気に間合いを詰めようと速度を上げる葉月。その手が二人に届く、その一瞬前。
「てや!」
 あろうことか、二人は戦利品をぶちまけた。
「え、あああああ!?」
 金貨やインゴット、貴金属に宝石類。目もくらむような高価な品々が、キラキラと街灯
の光を反射しつつアスファルトの地面にばら撒かれる。
「はい、パス」
 一瞬の混乱。そのさ中、いかにも高価な壷が葉月目掛けて飛んで来た。
「わ、っとっと!」
 思わずそれを受け取る葉月。咄嗟の事にバランスを崩したその足が、堆く積まれた金塊
の山に引っかかる。無意識に壷を庇おうとしたのが致命傷だった。壷を抱えた姿勢のまま
、彼女は見事に地面にコケた。
「逃げロー!」
「アラホイサッサ!!」
 その隙に、コゾーン二人は逃げた。全力疾走だ。みるみるその姿が遠くなる。
「ま〜ち〜な〜さ〜い〜!!」
 慌てて葉月も立ち上がる。投げつけられた壷(時価数千万円也)の破片を振り払い、目
を血走らせて追跡する。
「あー、あー。こちらコゾーンと‐二十四号。逃亡のためキヌガサビル前で戦利品をぶち
まけました〜。手が空いてる人がいたら回収お願いします」

317 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:53:07 ID:TMYt1OCj
 追いつくと、コゾーンの片方が通信機片手にそんな事を言っている。慌てて葉月は振り
返る。しかし、援軍らしい者の姿は無い。取り返した分捕り品を確保するか、それとも追
跡するか。迷っている間にも、コゾーンはどんどん距離を離していく。
「ぅく……むむむむむっ!」
 二秒迷って、葉月は駆け出した。追跡を優先したのだ。三度、逃げるコゾーンに肉薄す
ると、聞こえよがしに通信機の音がした。
『こちらコゾーンぬ‐三十二〜四十七号。インターセプト完了〜』
「乙〜。こっちはホワイトタソに追われてますー」
『後ろから確認しますた。今から合流するわ』
 どどどどど、と怒涛のような足音が追ってくるのを葉月は聞いた。
「……うそ」
 どこから現れたのか、背後にはコゾーンの集団がいた。一人や二人ではない。数にすれ
ば十五人。前にいるのを合わせると十七人になる。相手をするとなると、ちょっと覚悟が
必要だ。
「こちらコゾーンと‐二十四号。ホワイトタソをカコみました。手が空いたコゾーン、もし
くは怪人がいたら集まって下さい〜」
 しかも、その数はまだまだ増える。
「……面白いじゃない」
 吹っ切れたように、葉月を眦を上げる。ぞろぞろと彼女をとりかこむ白い仮面の群れに、
月光を背にした段平がきらりと輝きを発した。

318 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:54:21 ID:TMYt1OCj
 * * * *

 むせ返るほどに濃い、牡の臭い。
「ぁぁ、ふぁぁ……」
 いきりたつ牡器官の臭いを嗅ぐ度に、ココノは自らがどれほどいやらしくなってしまっ
たかを自覚させられる。
「どうした? 早く満足させてやれ」
 ”穴”の上で彼女の主人が見下ろしていた。地面をくりぬいただけの殺風景な巣穴にい
るのは、一糸纏わぬココノと十数体の下魔。明日にも処分させられるものどもは、早くも
欲望を滾らせて彼女の周囲を取り囲んでいた。
「は、はい。いますぐに……あむむ、んぐ……」
 花びらのような可憐な唇が躊躇無く肉棒を咥える。舌から直接染みこんで来るいやらし
い味。先端から滴り出した粘液が、ぴりぴりと彼女の脳を痺れさせてゆく。
「おぶふ。あむ……ぁふ、おいひぃ……」
 てらてらと濡れる肉の塊が彼女の口腔を犯してゆく。下魔の体液は強烈な媚薬だ。触れ
た部分すべてを性器に変え、身体の芯まで染み込んで女をいやらしい肉へと堕としてしま
う。麻薬と言ってもいい。禁断症状は薬そのものではなく、肉棒の感触だ。肌に塗りこま
れる度、胎内に注ぎ込まれる度、いやらしい事しか考えられなくなっていく。
「おいひぃよぉ。もっといっぱい、おいしいの。臭くて熱いお汁、ココノに飲ませて!」
 舌が熱い陰茎に触れるたび、ココノの背筋がびくびくと震える。淫核のように敏感にな
った舌は、淫らな感触を得るたびに、彼女を軽い絶頂に突き上げる。しかも、それで終わ
ることは無い。絶頂の上にさらなる快感が降り積もり、どんどんと、何も考えられなくさ
せられる。
「あぶ、おむ。んぷ、ぁはあっ! すごぃぃ、ココノ、犯されてます。卑しい下魔のおち
んちんで、ココノのお口、犯されてますぅ」
 舌を筒状に丸めて、口一杯に含んだの肉棒を喉まで擦らせる。唾液と先走りが喉から乳
房まで滴り落ちてゆく。柔らかな乳房の先端は、触れてもいないのに今にもはじけそうな
ほどに張り詰めていた。
「早くしろ。他の連中も、もう待ちきれんぞ。ほうれ、口ばかりでなくそのいやらしい身
体すべてを使って満足させてやれ」

319 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:55:44 ID:TMYt1OCj
 肉を咥える柔らかな頬に、別な肉棒が押し付けられる。つんと、きつい臭いのする汁が
ココノの可愛らしい顔を汚す。迫ってきたのはそれ一本ではない。あるものはココノの手
に握らせ、あるものは柔らかな尻に擦りつけ、あるものは張った乳首に肉棒を突き立てる。
「んはぁぁぁぁぁ、くはぁ。だめぇ、お尻こすれちゃう。たくさんの肉棒が、ココノのお
尻をぐにぐにって犯してますぅ。ぁあん、脚も、おなかも、太股も、犯されてるのぉ。い
やぁ、乳首を硬くて熱いのでぐりぐりしたらぁ……臭い下魔のにおいが、ココノの身体に
染み付いちゃうのぉ」
 びゅくびゅくとココノの口を犯す陰茎が吐精した。凄まじい量だった。熱い、臭い汁が
あっと言う間に喉から溢れる。小さな口からこぼれた粘汁は、彼女の顔を、胸をどろどろ
に汚してなお、びゅくびゅくと噴き出し続けていた。
「ふぁぁぁぁぁ。出てる、出てますぅ。熱いぬるぬるが、ココノの顔にかかってます……
ぁぁ、飲みきれない。まだ、出てるぅ……」
 震える肉棒が射精を終えても、彼女は開放されはしない。すぐさま次の肉棒がココノの
唇に突っ込まれる。全身にふりかかる精液を潤滑液にして、全身を犯す肉棒は動きをさら
に早めてゆく。既に、乳だ尻だという見境すらない。背中であろうと、腋であろうと、彼
女の肌ならばどこでも良いとばかりに、いきりたつ肉棒が這い回る。そのたびに、ぬめる
媚毒が皮膚から染み込み、ココノの身体をどんどんいやらしくしてゆく。溺れるほどの精
液が、絶えず彼女に降りかかり、全身性器と化した肌をごつごつとした肉棒が犯していっ
た。
「あひぃ、はぁぁぁ。出てる、精液出てますぅ。おっぱいにそんなぁ、三本も……はぁぁ。
すごいよぉ、ぬるぬるしたのが、乳首に絡んで。ああああああ、背中がぬるぬるでぇ…
…お尻にびゅくびゅくかかってるぅ……」

320 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:57:22 ID:TMYt1OCj
 壊れてしまったのかとすら思える。陸に上がった魚のように口をぱくつかせて、ただ快
楽を貪る事しか出来なくなったようにすら思える。しかしまだ、この先がある事を彼女は
知っていた。舐められ、弄られ、擦りつけられて、大輪の花のようにぱっくり開いたその
性器も、雄を誘う器官へと調教された尻穴も、まだ一本の肉棒も咥えてはいない。
 ただの肌がここまでの快楽を生むのなら、雄を向かえるためのこの器官はどれほどきも
ちいいのだろう。考えただけでココノの鼓動が跳ね上がる。壊れるかもしれない。だが、
この快楽の中で壊れるなら、それは幸せな事かもしれない。
「さぁ、ココノ。尻を上げろ。お前のいやらしい所をよぉく晒して、して欲しい事を言っ
て見ろ」
 心臓を鷲掴みにされるような主の声。それだけで、ココノはいやらしい汁を垂らして達
してしまう。肉体を弄ばれるのとは桁の違う甘美感。声を聞くたび実感させられる、自分
は、とうの昔に壊れてしまったのだと。
「はぃ……。ココノのこのいやらしい穴を、どうか皆様の逞しいもので塞いでください。
裏切り者の元アップルナイツの胎を汁まみれにして、卑しい下魔の子供を孕ませてくださ
ぃぃぃ……」
 満足げに微笑む主を見て、ココノはもう一度達した。

321 :在る死者のものがたり :04/10/03 23:58:51 ID:TMYt1OCj
  * * * *

「てやぁぁぁぁぁっ」
 裂帛の気合がビルの街に木霊する。
 雲霞のごとく詰め寄る仮面の男達。立ち向かうはただ一人、冴え冴えと輝く刀を手にし
た少女。高く舞い上がり、スカートを翻し、手にした刀を振り回す。その動きは達人の域
に含まれてしかるべきものだ。数で勝る仮面の男も、おいそれとは距離を詰められない。
 睨み合いに似た攻防が、幾たびと繰り返される。何度ともなく見た光景だった。
「おい、怪人の応援はまだか?」
「中央銀行で粘られてる。こっちにはしばらくかかりそうだ」
「やるなぁ、あっちも。じゃ、こっちはこっちでホワイトスターの足止め&SAFEの応援が
来たら逃げるって事でおk?」
「同意」
「陵辱マダー? チンチン(AA略」
「怪人が間に合ったらナー」
「半脱ぎ輪姦マダー?」
「触手孕ませマダー?」
「だ、黙んなさいっ!」
 わめく男達に少女の刀が切り込んで行く。風を切り裂く剣先から、こりゃたまらんとば
かりに仮面の男達は逃げ回る。逃げ回りつつ、背後の迫った連中はじわりじわりと包囲を
狭めて行く。寄せては返し、気づけば背後に迫ってくる仮面の男たち。集団そのものが、
まるで一つの生き物のような光景だった。じわりじわりと体力を削られながら、少女は無
謀な突撃を続けさせられる。
 攻め手は彼女でありながら、追い詰められているのもまた、彼女だった。
(援軍が来るまで、何とか……)
 組織力なら彼女の属するSAFEも負けてはいない。セーフスターの他の面子も助けに来て
くれるはずだ。それまで耐え切る事ができれば彼女の勝ちだ。勝敗はまだ、五分に見える。
「お、何だよ。怪人来てるじゃん。早く言えよなー」
 それが、あっさりと覆された。
 並み居るコゾーンの最中に、一際大きい姿があった。身長は2mを優に超えているだろ
う。全身をぬめぬめと光る鱗で覆った二足歩行のトカゲといった風情だ。瞼の無い黄色い
眼球が空ろに葉月を見つめている。

322 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:00:13 ID:dQrjHwu5
「てぃやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 先手必勝、とばかりに葉月は一気に踏み込んだ。構えは蜻蛉。全力を傾けた初撃は、何
者だろうが止められない。そのはずだった。
「グルゥ?」
 キィンと、鉄が擦れる音がした。それだけだった。必殺のはずの一撃が、鱗に弾かれ傷
一つつけることもできなかった。
 鱗は予想を遥かに上回るほどに硬い。その下には分厚い皮膚の層、そして生ゴムを幾層
にも圧縮したような筋肉が埋まっていた。例え全身の力を込めたとしても、すべて阻まれ
吸収される。
「……くっ、たぁぁぁぁあっ!」
 再び葉月は構えなおす。斬撃が駄目なら刺突だと、斜め正眼に構えた段平が怪人の喉下
目掛けて飛んでいく。渾身の一撃。必殺の剣先が喉元に届こうかとしたその瞬間、それは
あえなく鱗まみれの手の平に阻まれた。
「グル、ガァァッ!」
 怪人が吼えた。片手で葉月の身体を振り回す。受け止めた段平ごと彼女を掴み上げ、ア
スファルトの地面に容赦なく叩き付けた。
「おいおい。圧倒的じゃないか」
「新型怪人か? ドクターもすげえの作ったな」
「そうなると、そろそろ新必殺技が出る頃か」
「最近だと新メンバーだったりもする」
「俺、ツインテールの小悪魔系キボソ」
「漏れはショートカットのボーイッシュが……」
「むしろ女装ショタというのも……」
「否! ショタに女装させるなど、極上のケーキに蜂蜜をぶちまける行為だ!」
「蜂蜜プレイハァハァ」
 コゾーン達が無駄話ができるほど、その力は圧倒的だった。一撃加えられただけで、葉
月は反撃の力を失ってしまった。肋骨の二三本は折れているだろうか。全身を襲う激痛に
、得物を手放さないのが精一杯だった。
「……くっ、そぅ」

323 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:02:01 ID:dQrjHwu5
 鉤爪のある大きな手が、軽々と葉月の身体を持ち上げる。朦朧とする視界に、開きっぱ
なしの黄色い目玉が近づいてくる。ぼふぅと、生臭い吐息が彼女の顔に降りかかる。
「な、にを……する……むぶっ。おうぅっ!」
 小さな愛らしい唇に、赤い肉の塊が突っ込まれた。舌だ。並の男性器よりもはるかに長
く、太いその舌が、ぬとぬととした唾液を垂らしながら彼女の口を犯していた。
「んぶっ、あむむ……むぷ、ふひぃっ」
(……ふ、太、激し……噛み切れ、ない)
 二又の舌先が葉月の舌に巻き付いた。感覚の鋭敏な舌裏をしごくように這いまわり、わ
ななく舌先を尖った先端が弄ぶ。顎は限界まで開かさせられ、ぬとぬとに濡れた赤い肉が
唇を犯すように往復していた。
 口腔はもう甘い匂いの唾液に溺れていた。滾々と垂れ落ちる粘汁は口から垂れ落ち、純
白のコスチュームをいやらしく濡らしている。決して呑むまいと閉じた喉を押し広げられ、
ぬめった汁が滝のように食道を流れ落ちて行く。
「はぶぅ。むぷぁっ、むぁぁぁ……」
 びくり、と葉月の身体が震えた。背筋から脳髄から、全身が灼けたように熱くなる。ぬ
める唾液が染み込んだ唇が、擦れるたびに電撃のような快感を生み出す。舌に至っては、
しごかれるたびに男性器のようにびゅくびゅくと痙攣する。
「は、ひゅご。ほひゅぁぁぁああああああっ!」
 喘ぎが喉を震わせた。びりびりと響く振動は、そのまま喉を、口腔を、舌を、唇を震わ
せて、葉月の身体に快楽を刻み付ける。一声出してしまったら、もう止まらない。声の生
み出す快感に、喘ぎ声が零れ落ち、彼女をさらに責め立てる。
「はひぃっ……ひぁぁあああああああっ!!」
 ごぼりと、触れられてもいない淫部から濁った愛液が噴き出した。
(……ィ、いっちゃ……た? こんな、事で……)
 まるで小便のような量だった。どくどくといった勢いで垂れ落ちる粘液は、あっという
間に股布から染み出して、ロングブーツの内側に滴っていく。
(濡れ……足、きもちわる……)
「おぶぅぅぁはあああ。んちゅ、んぷぁ。はぁぁぁぁ……」
 考えていられたのはそこまでだった。一瞬止んでいた怪人の舌が再び蠢き始める。

324 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:03:30 ID:dQrjHwu5
 内頬に硬い肉の感触が触れた。それだけで、葉月は二度目の絶頂に達していた。口の中
はもう、どこに触れても悪魔じみた快感がどくどくと湧き出すいやらしい器官に成り果て
ていた。
 その中を蛇のような舌があます所無く犯しつづける。唇から喉奥までを淫部に見立てて、
太い肉が往復する。ごつごつと隆起した表面に、媚毒を混じえた唾液をまぶして、上あ
ごを、唇を、食道の中までもを犯しつづける。
 口腔が女性器であるなら、舌はまるで陰茎のようだ。葉月の意志に反して硬く突き出さ
れたその舌に、細く鋭い二又の下が幾重にも絡みつく。きりきりと、緊縛するように締め
付けながら、何度も何度もしごき続ける。最も敏感な舌先は、針のように鋭い先端が突き
刺さるほど強く吸い付き、弄ぶ。
「あぶぅ。ふひゃぁ、んむむむ……ぷふぁ、あむぅぅぅううう……」
 達した回数を数えるどころではなかった。舌が擦れるたび、肉が往復するたび、喘ぎが
喉を震わせるたびに、より高い絶頂へと追い立てられていく。気づくと、頬を涙が濡らし
ていた。だらしなく開いた足からは、じょぼじょぼと黄色い液が流れ続ける。乳首は破裂
しそうなほどにびちびりに張り、全身が弛緩したまま痙攣していた。呼吸すらままならな
い。心臓がまともに動いているのが不思議なくらいだ。
(舌、有り得な……何か、原因……媚薬?)
 スパークし続ける脳の中、途切れ途切れに思考が働く。他に感じられるのは、ただただ
快感だった。
 何も見えない、何も聞こえない。ただ、口の中から生まれた快感が、暴風のように葉月
の全身を弄んでいた。
「グ、ルゥ?」
 その動きが、突然止まった。霞みきった視界に、きょろりとした黄色い目玉が困ったよ
うにきょろきょろと動いていた。
「な、に……よ」
 口は、いつのまにか開放されていた。出した声に喉が震えて、びしゃりとまた淫部が汁
を噴き出す。もはや気持ち悪いだのと言っていられる状態ですら無くなっていた。
「なに、してんのよ……」
 周囲はコゾーン達で埋め尽くされている。このバケモノが終われば、次の相手はこの連
中だ。犯されて、穢されて、それでも今の彼女の身体は、それを悦んでしまうだろう。そ
れが悔しくて仕方ない。

325 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:05:26 ID:dQrjHwu5
「犯れば、いいでしょ……早く犯んなさいよ、この……」
 葉月の声を待たずして、灼熱の剛直が彼女の身体を貫いた。
「ふひゃ、きゅあああああああああああっ!」
(太、大きぃぃぃぃぃぃぃ!)
 考えられたのはそれだけだった。後は、爆発のような快感だけが脳を満たした。
 今まで、葉月は一人の男しか知らなかった。敗北した彼女を何度ともなく犯した敵、Dr.
ヘルナイトのそれは、千切れるほどに太く長かった。しかし今、彼女を犯すそれは、彼の
ものすら比較にしない。
 太さは、ともすればそれほど変わりは無いかもしれない。みちみちと膣口を押し広げる
感触は近いものがある。しかし、長さは比較にすらならない。一刺しで子宮の奥まで満た
された。犯され得る一番奥の感触を覚える間も無く、肉の凶器はさらに奥へと進入する。
押し上げられた子宮が、ぼこりと腹に浮かび上がる。まるで、子宮の上から内臓そのもの
を犯されているようだった。
「くはぁぁぁぁぁ、きゃあああああああああああああっ!」
 びゅくり、腹を犯す陰茎が震える。粘りけのある熱い液体が、僅かに残った子宮の隙間
を埋め尽くす。白濁とした媚毒が膣内から直接快感神経に流れ込んでくる。
「あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。おぶお”お”お”お”お”お”お”お”お”お”っ!」
 心臓が弾けた。目は白眼を剥き、腰は有り得ない方向に向かってギシギシと人形じみた
動きをしている。口からは、もやは涎どころか泡が吐き出されている。
「い、いかん!」
 遠くで誰かの声がした。
「やめろ! やりすぎだ!」
「引き離せ! 死んじまうぞ!」
「心臓マッサージするぞ! 誰か人工呼吸を頼む!」
「誰かドクター呼んで来い! 緊急事態だ!」
「聞こえるか!? 意識をしっかり持て! 返事しろ! おい!!」
 遠くで聞こえる誰かの声。必死に呼びかける声の中、葉月の意識はゆっくりと闇に落ち
て行った。

326 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:07:04 ID:dQrjHwu5
  * * * *

 生温い液体の海にココノは浮かんでいた。
「……しょっぱい」
 茫洋と定まらない頭の中で、口に残った味覚だけが妙にはっきり知覚できた。
(なんだろう? 懐かしい味)
 精液の味ではない。あれはもっと苦くて、ぼやけたような後味がある。これはもっと鮮
烈な味だ。幾度となく味わった、それだけははっきりと分かった。
「ココノ。いつまで寝ている」
 主の、メッツァー・ハインケルの声がした。それでようやく目が覚めた。
「は、申し訳ありませんメッツァー様」
 すぐさま跳ね起きると、淀みなくその場に跪く。
 ココノは裸身のままだった。下魔どもに犯された姿そのままだ。ただし、彼女を浸す液
体は違う。ぼやけた白濁ではなく、目が覚めるような真紅。部屋一面を覆う血化粧が、裸
のココノを飾っていた。
「……これは、いったい?」
「処分を行った。それだけだ」
 一段高みから見下ろすメッツァーに感情らしい色はない。
「処分……では、この血は下魔どもの?」
「ただ処分するのも無駄だからな。新規に召還した上魔のエサにくれてやったらこのザマ
だ。食事のマナーぐらいは教えておく必要があるようだ。ココノ、清掃用に二、三体下魔
を作成しておけ」
 そして、作り出された下魔はその日の内に削除されるだろう。元より、メッツァー・ハ
インケルという男は、夥しい屍の山を築き上げ、ここまで登りつめて来た。たかが道具が
どれほど無残な姿を晒そうが、今更何の感慨も無い。
「ご命令のままに。メッツァー様」
 ぞくりと、ココノの背中に走った震えが、はしたない肉奴隷が感じる官能なのか、一人
の配下が思う怖気なのか。それはココノ自身にも区別はつかなかった。

327 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:10:05 ID:dQrjHwu5
  * * * *

「グルォォォォォォォォッ!」
 雄叫びを上げる。
 戦いだけが生きる意味だった。戦い、打ち倒し、犯し……ただ、そのためだけに彼は生
み出された。それだけが悦びだった。
 奪われ、打ち捨てられ、そして今一時手に入れたその悦びに、彼は打ち震えていた。身
を打つ痛みも、全身に蓄積する疲労も、熱い肺が吸い込む冷たい空気も、何もかもが愛し
い。
「だぁっ、洒落になんないぞこいつ」
「制御効かない怪人なんて作んなよっ」
「無駄話は後にしろ! 総員戦闘フォーメーション!」
 取り囲む黒衣の男達を、まるで玩具のように放り投げる。優に二十人はいるだろうに、
ただただ圧倒的な力の前に振り回されるばかり。背中にしがみつく男を片腕で投げ捨て、
群がる敵を蹴り足で追い払う。振り下ろした右腕の一撃で、人工樹脂の仮面が砕け散る。
仮面ごと頭蓋骨を砕かれた男は、そのまま3mほど吹き飛んだ。
「フォロー!」
「いえっさー!」
 鋭く響く誰何の声。すぐさま新手が穴を塞ぎ、倒れた男に応急処置を施す。流れるよう
な手際の良さだ。十分に訓練された兵士でなければ出来るはずもない。
「ルグ、ォォォォォォォォ!」
 雄叫びは悦びだ。相手にとって不足は無い。一体一体の能力が人間並みであろうとも、
訓練された軍団は一つの強力な戦力単位として機能する。先ほど倒した娘よりも、事によ
っては女神騎士団よりも、危険な相手となるだろう。
 さらなる一撃を加えようと両腕を振り上げた、その時だった。
「皆の衆、待たせたでござる〜!」
 地上に銀月が煌いた。
 女だ。まだ年端も無い少女だ。硬質な銀の髪、狼を思わせる耳と尾、四肢の先端は獣毛
と爪すら備え、唇の下には鋭い牙が見え隠れする。鍛え上げた真銀(ミスリル)のような
その四肢を、獣のように躍動させて少女は真っ直ぐに駆けて来る。
「待ってました! やっちまえウーリン!」

328 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:12:13 ID:dQrjHwu5
「とああああああああああっ!」
「グロォォォォォォ!」
 上げた拳を振り下ろす。全体重を込めた呵責の無い攻撃だった。それが、あっさりと空
を切る。目標を見失った拳はそのまま直進し、アスファルトの地面につきささる。
 月光に銀色の髪が煌いた。白銀の肢体が疾風のように吹き上がる。宙に少女が舞ってい
た。一跳びで攻撃を飛び越しかわし、打ち下ろした拳の上に着地する。鱗まみれの腕を肩
まで駆け上がると、トカゲのようなその頭を蹴り上げた。
「ちぇすとぉっ!」
 愛らしいくらいの気合だった。しかし、威力は桁が違った。意識が後頭部から吹き飛ん
でいくような一撃だ。日本刀の斬撃も、スイートナイツの必殺技すら耐え切るその身体が、
一撃で崩れ落ちる。焦点の合わない眼球が中空を見上げた。
 銀色の少女がいた。中空に輝く月に届けとばかり、白い肘を振り上げていた。
「とりゃああああああっ!」
 硬く分厚い頭蓋を肘と膝が挟み打つ。みしりと、骨が砕ける音がした。狼の牙じみた一
撃、2mを超える巨体がぐらりと傾く。しかしまだ、死が彼を捉えるには時間があった。
「ゴゥルォ、オオオオオオオ!」
 倒れつつ少女の脚を鷲掴む。柔らかい、良い感触がした。最後になるであろう女の肌の
感触を愉しみながら、その腕を我が身もろとも振り下ろす。道連れが彼女ならば、十分以
上に幸福だった。
 少女が受身を取ろうと身体をひねる。だが、僅かながら間に合わない。焦りと恐怖が交
錯する少女の顔を、満足げに彼は見つめていた。
「とぅりゃあああああああああっ!」
 その鼻面目掛け、フルスイングの鉄パイプが飛んだ。砕けた頭蓋を突き抜けて衝撃が直
接脳を打つ。僅かの所で脚を掴む握力が途絶えた。自由になった少女の身体がふわりと宙
に舞いあがる。
「布開け〜。受け止めろ〜!」
「了解!」
 大きな布を開いた一団が、落下する少女を待ち受ける。空中で姿勢を合わせて、少女は
布の中心に降り立った。ぼふん、と軽い音をたてて布がたわむ。落下の衝撃はすべて受け
止められていた。

329 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:13:57 ID:dQrjHwu5
「かたじけない」
「防災訓練が役に立ったな。さて、さっさとバケモノ退治と行くか!」
「悪の組織の台詞じゃねえなー」
「正義の味方はノびてるもん」
 四方八方から縄が飛ぶ。両腕に、両足に、首に、腰に、投網のごとく巻き付いた縄はみ
るみる身体を覆い尽くす。脱出しようと足掻いたその瞬間、もう一発、フルスイングの鉄
パイプが顔面にめりこんだ。
「ガ、ゲァァ!」
 反撃しようと腕を振り上げると、それより早く狼少女の一撃が入った。衝撃が身体の芯
まで突き抜ける。膝が力を失って崩れ落ちる。縄がきりきりと首を締め上げていた。
「……ごぉ、ぁ……」
 いい死に方だ。意識が暗転する直前、彼は思っていた。
 戦いだけが生きる意味だった。戦い、打ち倒し、犯し……ただ、そのためだけに彼は生
み出された。だから、戦いの中で死にたかった。不要物と棄てられるのではなく、戦って、
死んでいきたかった。
 棄てられ、廃棄されるのは”もの”だ。生きたものではない。
 生きる意味があった。そして、死ぬ事ができた。”もの”として生まれた彼には、それ
はとても幸福な事だった。
 夜気を含んだ冷たい風が吹いていた。
 生まれて初めて感じた外気と、同じ匂いの風だった。

330 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:15:51 ID:dQrjHwu5
  * * * *

「ゲマだな、これは」
 ウーリン到着より十数分後、遅れて現れたDr.ヘルナイトはそう言った。
 部隊はほぼ、撤収状態に入っている。この場で応急処置が必要なのは数名。特に重態な
のは先の怪人に犯られたホワイトラブリースター。つまり、敵である唐紅葉月だ。
「ゲマ? って、なんですかそれ」
「俺もシアシアに分析を頼まれただけだから詳しい事はよくわからん。どこぞの組織の怪
人らしい。まあ、何にせよ念のため血清作っておいたのが役に立った。ちょっと腕を抑え
ていてくれ」
 元救急救命士のコゾーンの応急処置の甲斐あって、危険な状態は脱してはいた。しかし、
体内に注入された体液は今も彼女の身体を蝕んでいる。体温の上昇、心拍数の異常増加、
呼吸困難、自律神経系は無茶苦茶にされていると見て間違いは無い。時折発作的に起き
る全身痙攣は、現在鎮静剤で治まっていた。
「『こんな事もあろうかと』ってヤツですね」
 にやりと笑うコゾーンに、同じくDr.ヘルナイトもにやりと返す。
「残念ながらそうでも無い。なにせアレは最後の最後にしか言ってないんだからな。そう
そう言っていい台詞では無いのだよ」
 無駄口を叩きながらも、注射器を扱う手つきは鮮やかなものだった。マッドサイエンテ
ィストの例に違わず、『どちらかと言えば天才』たるDr.ヘルナイトもまた、貴様の専門は
何だと問いただしたくなるほど何でも出来る。怪人生成の生物学、遺伝工学から、負傷者
や病人の治療、作戦で使用する機材の開発、はては社内備品の修理に至るまで、すべて一
人でやってのける。それが天才の天才たる所以なのかもしれないが。
「よし、後はSAFEに連絡入れてその辺に転がしておけばいいだろう」
「後遺症とかは大丈夫ですかね?」
「まあ、当分は男が欲しくなって悶々とするくらいだな」
「ドクター! 自分はホワイトラブリースターの監視任務を志願したいものであります!」
「よし、任せた。デジタルビデオカメラと盗聴器は忘れるな。ダビングしたブツはDVDに編
集してやるから一番に俺の所に持って来い。尚、被写体に手を出すのは禁止だ。分かった
な!」
「了解であります!」

331 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:17:00 ID:dQrjHwu5
 がっし、と男二人が腕を組む。その二人を中心に、仲間達が一人、また一人と集まって
くる。朗らかに微笑み合う男達を、天空に浮かぶ満月が煌々と照らしていた。美しい光景
だった。
「あのー。友情を分かち合っている所申し訳無いのでござるがー」
 輪に入れないウーリンが、困った顔をして立っていた。
「どうした?」
「こやつの処分をいかにすべきでござろうかと」
 彼女の足元には、ゲマがひくひくと痙攣しながら倒れていた。まだしばらく起き上がる
気配は無いが、放っておけば息を吹き返すだろう。驚くべき生命力だった。
「やはり、持ち主の所へ帰すべきでござろうが……」
「それはやめておけ。送り返しても殺されるだけだろう」
「どういう事でござるか?」
 信じられないと目を見張るウーリンを、Dr.ヘルナイトは優しく撫でる。彼女が落ち着く
まで逆立った白銀の毛を撫で下ろし、それから、溜息をつくように言った。
「最近、こいつを作った組織は大量の肉片を廃棄してる。その肉片をDNA鑑定をしたが……
99%の確率でゲマのものだった」
「な、何故そのような事を!?」
「連中はこいつら以外に主力となる怪人を所有している。ゲマはまあ、戦闘員と言った所
だ。主力怪人一に対し、ゲマを三、四体というのが基本的な戦闘単位となっていた。が、
最近それが変化してきた。恐らく、主力怪人の量産が可能になったのだろうな。怪人2に
ゲマ2。場合によっては怪人四〜五体で現れる事も増えてきたらしい」
 ここまで言って、Dr.ヘルナイトは忌々しげに奥歯を噛む。彼にしても、我が子とも言う
べき怪人が同じ目にあっていたら。そう思うだけで怒りが込み上げてくる。
「不要ならば棄てる。必要で無いものは殺す。そういう奴等なのだろう」
 悪の秘密結社としては、それが正しい選択なのだろう。だがしかし、正しくても許せな
い事と言うのは存在する。
「……それ、リストラって事ですよね」
 静かに、コゾーンの一人が言った。

332 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:18:36 ID:dQrjHwu5
「そうだな」
 彼は、営業効率が悪いと言う理由でリストラされた会社員だった。彼だけではない。元
請けの締め付けで閉鎖に追い込まれた小工場の職工もいる。院内の勢力争いに負けて放逐
された研究員もいる。不要と断じられ、闇の中へと投げ捨てられ、社会的に殺された者達
が行き着く所、それが秘密結社ヴァルキルだった。
「じゃあこいつ、俺たちの仲間じゃないですか」
「そうだな」
 面倒な事になったぞと、Dr.ヘルナイトは苦笑する。なんとも嬉しそうな苦笑だった。
「ドクター。なんとかなんないですか?」
「こいつ、俺たちの仲間にしてやってくださいよ」
「あんた、天才じゃないですか」
「拙者からもお願いするでござる。こやつをお助け下され」
 口々に声が上がる。彼らはみんな弱者だ。だからこそ、弱い立場の気持ちがわかる。
「技術体系がかなり異なった怪人だ。恐らくはかなり強固な洗脳が施されているだろうし、
会話が成り立つように知能も上げてやる必要がある。それに知識や常識、ヴァルキルへ
の忠誠心も教え込まねばならんだろうな。ほとんど再改造だ」
 一つ二つと指折り数えて、やらねばならない作業を上げる。聞くからに困難そうな仕事
だった。Dr.ヘルナイトは一つ息をつき、それからにやりと不敵に笑う。
「面白そうな仕事だ。是非やらせてもらおうか」
 答えなど、最初から決まっていた。

333 :在る死者のものがたり :04/10/04 00:19:57 ID:dQrjHwu5
  * * * *

 大音響の宣戦布告が遠雷のように轟いていた。
「ぬぁ〜〜はっはっは。深夜遅くに失礼しますっ。我等は秘密結社ヴァルキルっ!」
 びりびりと震える大気、緊張と興奮が混じった呼気、鉄を打ち合う火花の匂い、流れ落
ちる血潮の香り。今ここに、戦いの空気が渦巻いていた。
「我らは悪である! 秩序を破壊する悪である! しかし、秩序の名の下に、弱者をいた
ぶる巨悪を殺す悪である! 巨悪を倒し、新たなる秩序を敷いた時、人は我らを何と呼ぶ
か? そう、正義である! 繰り返す! 我らは悪である! すべてを引っ繰り返し、正
義に孵る悪である!」
 渦巻く血と鉄と戦いの匂い。ひゅうと吹き抜けた空気が、ひどく懐かしい匂いを運んで
くれた。静かで空虚、ひどく寂しく懐かしい匂い。夜の外気の匂い。
 静寂に沈む深夜の空気を、膨れ上がる熱気が侵食して行く。
「出番だ、新入り!」
 戦うために彼は生まれた。
 のそりと立ったその身長は2mを優に越え、強靭な筋肉と骨格の身体は翡翠の鱗に鎧わ
れていた。骨格からして人間の物ではない頭部には、黄色い閉じることの無い目玉がくっ
ついている。
 顔の半ばまで裂けた口から、二又に割れた蛇の舌が中空を探るように顔を出した。
「ゆけい! ヴァルキルの新たなる怪人ヘルゲマー! 貴様を捨てた連中に、貴様の強さ
を見せてやれ!」
「ギギィ!」
 戦うために彼は生まれた。まだ戦えると生まれ変わった。
 夜空に響く産声を上げ、彼は冥王の戦列に加わる。並び立つのは屈強な死者達。いずれ
も、社会に殺された哀れな生ける屍だったものたちだ。
「目標、秘密結社ゼーロウ! 行くぞ!」
 そして戦いは、すぐそこにあった。
■戻る■