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大十字九郎の非日常的な災難

248 :大十字九郎の非日常的な災難・序章1 :04/09/07 01:08 ID:q/QhqedY
──アーカムシティ。
又の名を『トンでも都市』と言われているとか何とか……、それはともかく、今や世界中が最も注目している
都市である。
巨大ロボットが暴れたり、キ■■■やら電波が入った奴らが暗躍していたりと何かと破壊や騒動とは縁が
切れない地域なので、そう周囲の国々から思われてもしょうがないだろう──



ガゴォォォォォッッ!!
深夜。
裏通りの一角。
静寂を破るような轟音が響く。
もうもうと土煙を上げる中、俺──大十字九郎は石畳を砕いた異形と対峙していた。
無論、今の俺はマギウスへと変身している。
「おい、アル!奴の正体は検索出来たか!」
「ああ、魔法薬や毒薬について書かれた項が奴の正体だ…気をつけろ、どのような攻撃をしてくるのか予想
がつかん」
肩の上に乗っているアルと会話しながら、再び襲い掛かる触手をマギウス・ウイングで切り裂いた。


249 :大十字九郎の非日常的な災難・序章2 :04/09/07 01:10 ID:q/QhqedY
──抜け落ちてしまったアルの断片を探していた俺達は、ある場所で起きていた化け物騒ぎの調査をする
事になったのがそもそもの始まりだ。
まあ、予想通り、その化け物は断片が実体化したモノだったのだが……。


しかし……
俺は改めてその異形を見つめる。
細長い、ドドメ色の表皮は粘液に包まれ、頭のてっぺんからは無数の触手が蠢いている。
そして、顔?の辺りには巨大な目。
鋭い牙が生えた口は収縮を繰り返している。
なんか腐ったソーセージというか、ウィンナーというか……
うへ、しばらくソーセージ類が食べられなくなりそうだ。
「!避けろ!!」
「くっ!」
アルの鋭い声がしたと同時に後ろへと飛ぶ。
と同時に、『巨大ウィンナー』が吐き出した唾液が足元に吐き出されると。
ジュッ!という音と共に、石畳が溶け出す。
「強酸の一種か!」

250 :大十字九郎の非日常的な災難・序章3 :04/09/07 01:13 ID:q/QhqedY
唾液を避けると今度は触手が襲って来る。
チッ、意外と素早い!
「汝!早く何とかしろ!」
うるせえ!
俺だって避けるのに必死なんだ!
……しかし、この状況は少しヤバイ。
何とか一瞬でも気をそらせれば……!
その時。
遠くから聞こえるサイレンの音に、一瞬だけ『巨大ウィンナー』の意識がそちらへ向けられる。
…今だ!!
「アトラック=ナチャ」!
魔力で編まれた捕縛糸が、『巨大ウィンナー』をがんじがらめにする。
これで俺の勝ちだ。
そう思ったのだが──
「ぐああ!!」
「汝?!」

251 :大十字九郎の非日常的な災難・序章4 :04/09/07 01:14 ID:q/QhqedY
口から伸びた太い触手……その先端に付いている牙。
それが俺の右手に牙を立てていた。
「この野郎!」
俺はソレを掴むと、渾身の力で引き千切った。
「ごおおおこおおおおおおおおおおおぐうう!!!!!」
耳障りな声を上げてもだえ苦しむ『巨大ウィンナー』。
止めを刺そうとしたその時。
「…ぐああっ!」
噛まれた跡から全身へと広がる痛み。
「汝……!」
俺は石畳へ膝をついた。
集中力が途切れる。
すると、弱まった「アトラック=ナチャ」を引き千切り『巨大ウィンナー』がこちらへと顔を向けたが──
「な、何!」
一陣の風が吹くと同時に、元の魔術書の頁へと戻ると、あっという間に飛んでいってしまった。
「く…待て……」
「無理をするな!今は退却するぞ!!」
「くそ……」

252 :大十字九郎の非日常的な災難・序章5 :04/09/07 01:16 ID:q/QhqedY
「…う……」
「気がついたか、汝」
「て・てけり」

俺が目を覚ますと──最初に目に飛び込んで来たのは、不安げな色を翡翠色の瞳に浮かべたアルと、ゼ
リー状ナマモノのダンセイニだった。
俺は少しの間考えて……昨日の事を思い出す。
例の『巨大ウィンナー』に噛まれた俺は、何とか事務所へたどり着くことは出来たんだが──
部屋に入って、ソファーに腰掛けた所で意識を失ったのだ。
右手の方を見ると、包帯が巻かれている。
「これ…アルが手当てしてくれたのか……?」
違和感。
俺の声はこんな声だったのだろうか?
眉を寄せた俺を見上げると、アルは至極真面目な表情でこう言った。
「…汝よ、驚くなよ」
そう言うと、おもむろにアルは手に持った鏡を俺に向けた。

…………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………はい?

253 :大十字九郎の非日常的な災難・序章6 :04/09/07 01:17 ID:q/QhqedY
鏡に映っていたのは──一人の女だった。

黒に近いダーク・ブラウンのショートヘア。
紫紺の瞳。
通った鼻梁に、桜色の唇。
細い首から肩にかけてなだらかなラインを描き、シャツの上からでも豊満な胸が目立つ。
ややきつい眼差しだが、『美少女』といっても過言ではない。

凍りついた思考のままで、俺は右手を上げてみる。
と、鏡の中の女も右手を上げてって……だあああっっっ!
俺は慌ててズボンと下着を下げた。

無い。
そりゃ綺麗にさっぱりと。
密かに自慢だった俺の●●●で●●●●(検閲により削除)な天上天下無敵砲(仮)が……
「な…ななななな……」

イマイチ状況を理解していない俺。
そして二人(?)は俺の肩を叩くと。
「どうやら汝、女になってしまったようだの…ま、気を落とすな」
「て・てけり」

あ……
あああああああああああああああああっっっ!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!!」

良く晴れた青空の下。
俺の絶叫が響き渡った──
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