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D.C.のバッドエンド(杉並エンド)後

「ハァハァハァハァ・・・・」
 俺は今、ものすごくかったるい状況に陥っていた。
「コラ〜ッ!!待ちなさい、この変質者ぁ!」
 後ろから俺を追う音夢の声が聞こえる。
「ハァハァハァ・・・くそっ、杉並の奴はどこいっちまったんだ・・・?」
 そうだ、杉並―――――  事の発端は奴のある発言から始まった。
 
 時は5日程前にさかのぼる。
「ふっふっふっふ・・・・・」
「何一人でにやけてやがる。はたから見ると危ない人間だぞ」
 いや・・・・コイツは普段でも十分危ない人間なのだが。
「おお、いいところに来たなMy同士朝倉。今出来上がったばかりのこの書類を見てくれ」
そう言って杉並は「最重要機密」と書かれた書類を手渡してくる。
「・・・・・『あの娘の寝顔をスナイパーショット大作戦in風見学園』・・なんじゃこりゃ?」
「朝倉よ、今週の日曜日に学園祭が行われるのは知っているな?それに伴い、準備前日は学園に泊り込みで作業をするのが認められている」
「ああ、それがどうかしたのか?」
「そこでだ。我々非公式新聞部は他校にも定評のある風見学園女子生徒の寝顔写真を、学園祭で売り出すことに決定した!!」
「なるほど・・・って、そりゃ犯罪じゃねぇか!」
「何を言う。一般民衆に必要な情報を流すのはメディアの重要な役目だぞ」
「どこが必要な情報なんだよ」
「でだ朝倉。お前にスナイパーショッターとしての任務を授けることにする」
「ハァッ!?」
 いきなり何をのたまいやがる、コイツは!何故俺が犯罪行為に手を貸さねばならんのだ
「そんなかったりぃ企画にはのらん。他をあたれ」
「ほう。ならばこの写真を朝倉妹に見せてもいいという事だな?」
「なっ・・・!!それは・・・!?」
 杉並の手には、幼少時代の俺がさくらと【お医者さんごっこ】をして遊んでいる写真が握られていた。
「な・・・なななな、なぜ貴様がそれを持っているっ!?」
「朝倉妹というものがありながら、さくら嬢とも蜜月時を過ごしているとは案外お前も 隅に置けんな?朝倉よ」
  くっ・・・もし音夢がこんなものを見たら・・・。 考えるだけでもゾっとした。
どうやら俺に拒否権はないらしい・・・。


「まあ、お前がそこまで拒むのなら仕方がない。骨は拾ってやるぞ。朝倉」
「わぁーったよ!手伝えばいいんだろ手伝えば!!」
「おお、お前ならそう言ってくれると信じていたぞ!」
 俺は半ばヤケになって杉並の企画に乗ることにした。それがこんなかったるい事になるとはその時は露知らず。

 そして学園祭前日。学園祭の準備も一段落した俺たちは、今宵行われる作戦の      最終打ち合わせをしていた。
「よし、作戦の最終確認だ朝倉。まずここが俺たち男子生徒の寝泊りする2階校舎。
標的がいるのは4階の校舎だ。」
「ああ、分かってる。」
「今回の作戦のメインターゲットは当然、学園のアイドル白河ことり、そして朝倉妹に  わんこ、水越眞子だ。」
「了解・・・・って、音夢も撮るのかよっ!?」
「朝倉妹は白河ことりに次いで人気があるからな。標的には外せないだろう?」
  ばれた時のことを考えるとあまり撮りたくはないが・・・確かに音夢は学園では
それなりに人気があるので撮らなければならないのだろう。
「まず最初の関門は4階に渡る際に通る3階の校舎。ここには見張りの講師陣が常に 
監視体制についている」
「はぁ!?そんなこと初めて聞いたぞ」
「安心しろ。既に手は打ってある。」
そう言って杉並は話を続けた。
「そして第二関門は4階の警護にあたっている風紀委員の面々だ。」
「ん?風紀委員が見張りしてるって事は、音夢と美春も起きてるってことなんじゃないのか?」
「いや、俺の掴んだ情報によると朝倉妹とわんこは、午前1時に他の風紀委員と見張りを交代することになっている。よって作戦決行時間を午前2時30分に変更することにする。」
「ここは風紀委員に見つからないようにして目的の教室に入ればいいんだな?」
「うむ。恐らく標的は全員同じ1−Bの教室にいるはずだ。後は写真を撮って誰にも見つからずにこの教室まで戻ってくれば任務完了だ」
「はぁ・・・・かったる・・・」

 作戦決行までしばし英気を養う俺たち。やがて夜もふけ、時刻は午前2時15分を指していた。 


(そろそろ時間だ、朝倉。出撃準備は整ったか?)
 声のした方向を振り向くと、全身黒タイツで身を纏い、銀行強盗で使うような覆面をした男が立っていた。
「おわっ!?誰だ、お前は!!」
(馬鹿者、大声を出すな!他の連中が起きてしまうだろう!)
覆面を外す男から現れたのは杉並の顔だった。何を考えてるんだコイツは?
(つーかお前、なんでそんな怪しい格好してんだよ!) 
(怪しいも何も俺たちはこれから敵地へ潜入するのだぞ?もしもバレた時の事を考慮してこれくらいの武装は施さねばなるまい。お前も早く戦闘服に着替えろ)
 そう言って杉並は、俺にお揃いのタイツと覆面を放り渡してきた。
(・・・・・まじでこの格好で行くのか?)
(任務成功率を上げるには迅速な行動が必要だ。制服では機動性に欠けるからな)
 そして俺は、全身黒タイツに覆面をして首からカメラをぶら下げるという 親が見たら間違いなく泣くような姿で出撃することになった。
父さん・・・母さん・・・・生まれてきてごめんなさい・・・。
(何をしている朝倉。そろそろ出撃するぞ)
(・・・・・あぁ、そうだな・・)
軽く影のかかった声で返事をし、俺たちは教室を後にした。

教室を出て階段を上り、まずは第一関門・三階の踊り場に到着していた。
見張りには我らがクラスの担任 暦先生が、かったるそうに踊り場に設置された椅子に座っていた。
「ここは杉並が何とかしてくれるんだったよな?」
「ふふふ、まかせておけ」
なにやら持ってきた鞄の中を漁る杉並。
「にゃっ!」
中から出てきたのは一応生物学上はネコと称される謎の生命体だった。
「うたまるじゃねぇか!?」
「さあ行け!未知なるネコよ」
 そう言うと杉並は暦先生の方角にめがけて、にぼしを放り投げた。
「ん?なんだ、このにぼしは・・・?」 
 暦先生がにぼしに気付いて席を立とうとした、その時
にゃっ、にゃっ、にゃっ、にゃ♪」
 うたまるは幸せそうににぼしに喰らい着いていた。
「お前は・・・!!いつぞやの謎のネコ!?」 「にゃにゃ〜ん?」


「ふ・・・ふっふっふっふ・・・」 唐突に笑い出す暦先生。
「今日こそ捕まえて研究材料にしてくれる!」
「にゃにゃっ!?」
 普段のん気なうたまるも野生の勘がヤバイと告げたのか、一目散に廊下のほうへ  逃げ出していった。それを追うようにして暦先生は廊下の闇へと消えた。
「第一関門突破だな」
「・・・そうだな」
 その場でうたまるに合掌した俺たちは更に上へと階段をあがっていく。

「見張りの風紀委員は2人か」
「うむ。情報通りわんこと朝倉妹ではないようだな」
  しかし目的の教室に行くには、どうしても彼らの前を通らなくてならないようだ。
「よし、ここからは別行動を取るぞ、朝倉。俺は奴らを引き付ける役目と退路の確保に回る」
「え!?俺一人で写真撮るのかよ!」
「あの厳重な警戒態勢を突破するにはそれしかなかろう。」
「・・・かったりぃな」
「では、健闘を祈るぞ。お互い生きて会おう、My同士よ」
  杉並はそう言うと4階の廊下に飛び出した。
「!! 誰だお前は!?」
いきなり現れた黒タイツ覆面男に驚く風紀委員の方々。無理もないだろう・・
「貴様らに名乗る名などないわ!」
  質問の答えになってないことを言って杉並は屋上への階段を上がって行った。
「なっ・・・!?ま、待てっ!」
  杉並を追って屋上へと消える風紀委員たち。というか、屋上って逃げ場ないんじゃないか?
まぁ・・・杉並だしな。なんとかやるだろう。そう思い、俺は自分の任務をこなす事にした。

目標の教室に辿り着き、俺は静かにドアに手をかける。
ガラガラガラッ・・・・・  中を覗くと規則的な寝息が所々から聞こえてきた。
(ふぅ・・・どうやら全員眠っているみたいだな)
これで誰か起きてました なんて事だったら、その時点で作戦はおじゃんだからな。
  俺は音を立てないように教室の中に入る。
(さてと・・・まずは誰から撮るかな・・・)


とりあえず教室の入り口から一番近い奴に標的を定めた俺は、そいつに向かってカメラを覗く。
(おっ、最初の獲物は眞子か)
 杉並が用意したこのカメラは、赤外線なんちゃらでどんな暗い場所でも
まるで昼時のように明るく見えるらしい。というか、見えた(眞子が)。
 しかもフラッシュをたかなくても鮮明な写真が取れるという実に都合のいいものだった。
(さてと・・・んじゃ、さっさと撮って次行きますか)
シャッターを切ろうとしたその時・・
「ん・・・ん〜・・・あさくら〜・・・・」
(!!)
まずい!起きたか!起きてしまったのか!? 動揺する俺をよそに寝返りをうつ眞子。
どうやらただの寝言だったらしい。
(ふぅ〜・・驚かせやがって・・・)
体中から嫌な汗が出たが、気を取り直して照準を眞子に合わせる。
(・・・・・・・コイツ、普段はあんな男勝りなくせに、寝顔は可愛いじゃねーか・・・)
  はっ!違う違う!今は作戦中だ。さっさと撮って次の標的に移らなくては。
(はい、チーズ) 純一は小声でそんなことを言いながら眞子をカメラに収め、次なる標的に移る。
  
 (さて、次はどいつかな?)
眞子の隣で寝ている奴に照準を合わすと、我が妹 音夢だった。
(おぉ、ぐっすり眠ってるな。そういえばいつも寝るの早いのに、今日は1時まで風紀委員の見張りしてたんだっけか)
(ふふふ、今から寝顔を撮られるとも知らずに口まで開けてちゃって)
  カシャッ 

(さてと、次は・・・っと、おお!ことりだ!)
さっさと撮ってしまおうと思っていたが、俺はフレーム越しに映ることりに見惚れていた。
(流石に学園のアイドルと言われるだけあるよな・・・・何つーか・・人形みたいだ)
そして、知らない間に自分の手がことりの髪に伸びようとしてることに気付く。
(おわぁ!何やってんだ、俺は!こんな格好でそんなことしたら言い逃れは出来んぞ・・)
(くだらん考えを起こす前に撮っちまうか。) カシャッ


(ふぅ〜・・・後は美春を撮って終了だな。)
(え〜っと、美春は・・・・・あ、いたいた。)
美春はバナナの抱き枕を抱いてグッスリ眠っていた。
(流石美春だな。寝ているときまでバナナと一緒なのか)
幸せそうに微笑む美春の寝顔に照準を合わせ、シャッターを切る。
(バナナの夢でも見てんのかもな・・・)

(よっしゃっ!!これにて任務終了だぜ!)
最初はかったるさ全開だったが、やり終えてみると妙な満足感が湧いてきていた。
(後は、無事に教室まで戻れば・・・)
純一が、そう思ったときだった。
「バナナ・ボンバ―――――ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(ッ!!)
今まで幸せそうに寝ていた美春が大声で叫び始めた。
「ん〜・・・むにょむにょ・・・」
(ね・・・寝言かよっ・・・・)  ため息をつく純一。          
「ん・・・・・・美春?どうしたの?」
「ん〜・・・?何か今変な声が聞こえた気がする」
ヤバい! そう思った純一だが、入り口は今の声で起きた眞子に封鎖されていた。
「ごめん、みんな。ちょっと電気つけるね〜」
 といって眞子は入り口付近にあるスイッチを入れる。 パチッ パチッ

「あれ?美春寝てるね」
「ん?どうかしたんですか?」  
「あ、ごめんね白河さん。起こしちゃったかな?何か美春がうなされてるみたいで」
「そうなんだ?でも、その割には幸せそうな顔で寝てるっすね」
「・・・・確かに」
「ん?」
「どうしたんです?眞子」
「何か美春ちゃんの布団、妙に膨らんでない?」


 ビクッ!!
「きゃぁ、何か動いた!」
「な・・・な・・・何よぉ。お、お化けとかじゃないわよねぇ?」
「眞子ってお化けが怖いんですね」
「え?こ、怖くなんかないわよっ!?」
「じゃ、じゃあ眞子。美春の布団を調べてきてくれませんか?」
「うぅ〜・・・・・分かったわよぉ」
恐る恐る美春の布団に近づいていく眞子。この時、純一には近づいてくる眞子の足音が
死のカウントに聞こえたと言う・・・。

そして時は冒頭部分に戻る。
マズイ。非常にマズイ事態に陥っていた。
 美春の布団に隠れていた俺は眞子達に見つけられ、一目散に4階の教室から退散した。
とにかく階段を下りようと踊り場へ向かうが、杉並に振り切られた風紀委員とそこで鉢合わせてしまう。
 そして今俺は4階の廊下を眞子、音夢、風紀委員に追われながら疾走していた。
「ハァハァ・・・ち、ちくしょう、杉並の野郎っ!!何が退路を確保する だ!おもっきし塞がれてんじゃねぇか!」
  やがて校舎の端に着き、廊下は行き止まりとなってしまう。
「おいおい・・・まじかよ・・」
「待ちなさい変質者〜!!」
 拳に炎を纏った眞子が近づいてくる。俺は捕まった時のことを想像して身の毛がよだった。
「くそっ!かったりぃ!!」
 俺はとっさに近くにあった教室に身を隠した。
「入ったはいいけど・・・隠れるところがないじゃねぇか!?」
    くっそ・・・どうする?どうするよ俺!?諦めて自首するか?
   いや、捕まったら最後。五体満足ではいられないだろう・・・
    一生離乳食しか食べられなくなるかもしれん!
 そんな考えを巡らせていると、教室のドアが勢いよく開け放たれる。
「追い詰めたわよ!」
  眞子と音夢が教室に入ってくる。
「年貢の納め時ですね。大人しく縄にかかってください」
「くっ・・・・」


「では、このような状況を四字熟語で何というか?分かる方いますか?」
「はい、和久井先生!」
「お、では朝倉君」
「絶体絶命です」


 そう、俺は絶体絶命な状況に立たされていた。徐々に教室の隅に追いやられていく。
もう逃げ場はなかった。 諦めよう。思えばそんなに悪い人生でもなかった――――
「こっちだ!」
 そう思ったとき、掃除用具入れの中から声が聞こえてきた。
何故掃除用具入れの中から――――?そのときの俺はそんなことを考える思考能力はなく、無我夢中で掃除用具入れの中へ飛び込んだ

「えっ!?」
眞子たちは目を疑った。ついさっきまで確かに追い詰めていたはずの変質者が、掃除用具入れに入って消えてしまったのだ。
「何?どうなってるの?」
「た、確かにこの中に入ったはずなんだけど・・・・」
 掃除用具入れの中は空っぽであった。
「や、やっぱり幽霊だったんじゃない?ほ、ほら。この学校幽霊出るって噂あるし・・」
「でも、あんな変な格好の幽霊なんておかしいですよ」
「確かに・・・そうかも」
「とりあえず見失ったものはしょうがないですから、一度先生方に報告して警備を強化してもらいましょう」


「ハァハァハァハァ・・・」
「間一髪だったな。朝倉よ。」
「ふざけんな・・ハァハァ・・・・お前のおかげで寿命が10年は縮まったつーの!」
「まぁまぁ、最後はきちんと助けたのだから結果オーライだろう」
 俺は掃除用具入れに入った後、用具入れの床が突如開き、そのまま2階の掃除用具入れまで自由落下していた。
どうやら杉並が用具入れに小細工を仕掛けていたらしい。
「しかし俺があそこに追い詰められなかったらどうする気だったんだよ?」
「ん?階段は風紀委員が塞いでいただろう?お前があの部屋に逃げ込むことくらいは予測済みだ」


「それは何か?もし俺が音夢たちに見つかってなくても、風紀委員に見つかって
 追いかけられることを前提にした退路だったわけだ?」
「その通りだ。流石は朝倉、察しが良いな。その方がスリルもあって面白かっただろう?」
「・・・・・・・・・・・・。(コイツはいつか絶対消す。)」
「ところで朝倉よ。例の任務は無事遂行できたのか?」
「ああ、ほらよ」
  杉並にカメラを放り投げる。
「おお、そうかそうか!流石俺の見込んだ男だ。現像を楽しみにしてろよ朝倉?お前には一番最初に拝ませてやろう」
「分かったから、もう教室帰るぞ・・・・。何か俺はドッと疲れた・・・・」
  無事任務終え、教室に戻る俺たち。精神的にも疲れていた俺は、死んだように眠りについた。

  一夜明け、学園祭当日。
「う〜す、杉並いるか〜?」
「おお、来たか朝倉!見よ、この麗しい天使達の寝顔を!!」
「おぉ・・・」
 自分で写真を撮っておいて何だが、かなりいい感じに仕上がっている。
モデルがいいからか、雑誌に載っててもおかしくないくらいだ。
「しかし、朝倉妹だけ口をあけているのが残念だな」
  そういえば音夢だけ変な寝顔を撮ったんだった。
「まぁいい。これはこれで、その手のファンが買っていくだろうからな」
「そういうもんなのか?」
  しばらく俺と杉並は4人の寝顔について熱く語り合っていた。
そう、熱く語り合っていたから気付かなかったんだ。悪魔がそこに近づいてる事に・・・
「しかし白河ことりは流石だな。何と言うか、寝てるときまで完璧だ」
「美春なんて寝るときバナナ抱えて寝てるんだぜ?」
「ほう、普段凶暴な眞子も寝てるときだけは可愛げがあるな」
「・・・・・・・・随分楽しそうな話をしてますね?兄さん、杉並君?」
「あたしたちも混ぜてもらっていいかしら・・・?」

時が止まった――――
 背後から聞こえてくる悪魔の声に、俺と杉並は壊れたブリキ人形のように首をカタカタならして振り向いた。
悪魔なんて可愛げのあるものじゃない。そこには魔王と鬼神の姿があった。


「待ちなさいよ〜朝倉〜っ!!」
「兄さん〜!待ちなさ〜い!」
  眞子と音夢の叫びを背中に聞きながら、俺と杉並は廊下を疾走していた。
「はぁ・・・だからお前と関わるのは嫌なんだよ」
「そう言うな。これも青春の1ページと思えば楽しいものだろう?」
「どこがだっつの・・・・かったりぃ・・・俺はもっと普通の青春を望む」
「ふっ、とりあえずこれからも青春を謳歌したければ、今日と言う日を生き延びねばなるまい?」
「・・・・だな」
 
そして今年も、俺と杉並は風になった。
こんなかったるい日常がいつまでも続けばいい――――
今年の学園祭はそう思えるような、学園祭だった。         END
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