少女のユメ
「由女よぉ、俺の嫁さんになってくれねーか?」
「へ?」
いきなりの悪司の発言に、由女の目が点になった。
ミドリガオカ悪司組事務所、悪司の寝室。
いつものように?由女は呼び出されて連れ込まれていた。最初は二言三
言、言葉を交わしていたのだが……
「な、なななな、な、なに言ってるんですか、わわわわ、私、私ですよ!?」
いきなり求婚の言葉を告げられて、由女は背後の壁まで後ずさりした。
「おう。ってーか、俺は女に別の女へのプロポーズをするような趣味はな
いぞ」
由女のダイナミックな反応に、悪司の方も少し唖然としながら言い返す。
「え、えーと……」
悪司に真剣な表情を向けられているが、由女はそれを直視できず、俯い
てしまう。
「いや……嫌なら無理にとは言わねーけど」
「そっ!」
悪司は平然とした表情のままでそう言ったが、由女は過敏に反応して声
を上げてしまう。
自分の声に慌てたようにして、声のトーンを落とす。
「そう言うわけじゃ、ありません……けど……」
「じゃあ、OKってことだな?」
由女の言葉に、悪司が彼らしく、短絡的に聞き返す。
由女は俯きがちなままで、一番の懸念事を口にしようとする。
「で、でも私、こんな躰、なのに……」
やはり最初に口をついて出たのはこのことだった。
「それも判っててプロポーズしてるわけなんだけどよ」
悪司はそう言ってから、彼にしては珍しく、微かにだが恥ずかしそうな
表情になった。
「そもそも、俺がお前に惚れたのもそれ絡みだしよ」
「え?」
由女は少し驚いたように、顔を見上げる。
「つってもたった今の話だけどな……お前が、自分を女として抱いてくれ
るのが嬉しいとか言ってるのが、あんまりに可愛かったからよ」
「え……そ、それで……いいんですか?」
「おう」
悪司の言う理由に唖然としてしまう由女だったが、同時に心のどこかで
喜んでいる自分が存在していることには気付いていた。
那古教時代、由女の躰に対する苦悩を理解していた人間はほとんどいな
かった。人々が自分をどんな存在かも知らずに崇められるのは、由女にと
って苦痛でもあった。
聖女の陽子や遥はそのことも知って好意的に接してくれた。しかし、同
時に那古教の教祖、那古神としての自分を強く要求したのもこの2人だっ
た。悪司組との抗争でこの2人を失ったと知った時、深い悲しみに嘖まれ
ながらも、一方でやっと重圧から解放されたという気持ちがあったのも事
実だった。
今も共に生活している元聖女、寧々にはそう言う意味ではむしろ、先の
2人より気を許していた。しかし、現在彼女は悪司組の頭脳、島本純と交
際中。性的交渉も持った間柄としては、少し裏切られたような気持ちもあ
ったが、同じ女性としては歓迎できた。
だからこそ……自分を“女性”として求めてくれる悪司は、酷い人だと
思いながら、憎み切れずにいた。そして躰を重ねる度に、その感情は徐々
に好意へと変わっていってしまった。
「もっとも別に、お前のことよく知らないで一目惚れしたのとは違うぞ。
ここ数カ月、お前のことはそれなりにわかった言ってるつもりだ」
悪司が言う。その言葉に、由女はごくっ、と喉を鳴らしてから、神妙な
面持ちになる。
「わかりました……それなら……」
「OKしてくれるのか?」
聞き返して来る悪司に、由女は自分でも驚いてしまいそうな程、自然に
笑顔になっていた。
「はい」
その優しげな微笑みを上げながら答えた。
「よーし、じゃあ早速市議会に行って婚姻届だ」
気の早い男は、そういって行動に出た。確かに、まだ日は高いが……
「えっ、ちょっちょっ、悪司さん……っ」
由女は手を引っ張られて、共に部屋を出ていく。
2人がそこに戻ってきた時は、すでに日はとっくに暮れて、外は夜の闇
に包まれている。
「まいったな……まさか由女の戸籍がねぇとは」
忌々しそうに、悪司が呟く。由女も意気消沈したようにベッドに腰を下
ろしていた。
正確にはないと言うより、どこの誰だかわからないと言った方が合って
いる。由女には戦時中以前の記憶がないのだ。
とりあえず、市長になった夕子と市議会の鴉葉に頼んで、由女の戸籍を
でっち上げることにしたが、さすがにそれだけの工作となると、一朝一夕
にはできない。
「でも……今日は、嬉しかったですよ」
にへ、と由女が顔を上げて、笑みを浮かべた。彼女は今、那古教時代の
和服ではなく、柄物のブラウスとフレアのスカートを着ていた。市議会か
らの帰りに、商店街で悪司が買ったものだった。
「いや……その程度までそんなに喜ばれてもな」
むずがゆそうに、悪司は言う。
由女にしてみれば、性交渉の上だけではなく、私生活でも1人の少女に
戻れた、そう思えたことが嬉しかった。
「じゃあ、とりあえず今日はもうやることもねぇしよ」
ニヤっと笑いながら、悪司は由女の隣に腰を下ろした。
「はい……」
対照的に、初々しく頬を染めながら、少し恥ずかしそうに微笑みながら
答えた。
悪司が由女の肩を抱き寄せる。由女はそっと目を閉じて顎を上げた。2
人の唇が重なる。
一度離れ、お互い裸になる。悪司は脱ぎ散らかした服をざっとまとめた
だけだったが、由女は丁寧にたたんで部屋の壁際にそっとおいた。
「しかし、ちみっちゃくて可愛いなー、お前は」
「え、そ、そうですか?」
悪司の言葉に由女は顔を真っ赤にする。
「よっと」
「きゃっ……」
由女の小さい躰が、ベッドに仰向けに倒される。
「んっ……」
そのまま上体を抱き締められ、唇を重ねられる。
「ふぁ……」
そのまま、背中を優しく撫で回された。
「なんだよ、もう興奮してるのか?」
少し意地悪そうに笑いながら、悪司が言う。やんわりとベッドの上に由
女の躰を寝かせると、その股間で、彼女のペニスがすでに身を起こしてい
た。
「そ、それは、そのっ……」
「あー、いいっていいって。悪いっつってるわけじゃねーんだからよ」
困惑したように言う由女に、悪司はそう言い返すと、由女のペニスを優
しく掴んで扱きあげる。
「ふぁぁっ……ひぁっ……」
びくびく……と躰をゆすってしまい、ベッドのシーツを掴む。
――野郎のより敏感だよな、やっぱりクリトリスの役目もしてるわけか。
悪司は由女の反応に喜びを覚えつつ、ひとしきり由女のペニスを扱き上
げた。
ペニスから手を離して、両手でその下の割れ目に触れる。
「んっ……はぁ……はぁ……」
少し刺激が減った為か、由女は息をついた。
くに……悪司の指が、軽く由女の割れ目を開く。とろっ……と愛液が中
から溢れ出してきた。
「ひぁ……ぁっ……!」
「もう、きっちり濡れてるな」
言いつつ、指を軽く押し込んで優しくかき回す。
「はぁ……ぁ……ぁっ……」
由女の息がどんどん昂っていく。
「入れても大丈夫だよな?」
前戯もそこそこに、悪司は自分の逸物を由女の女性にあてがおうとする。
それに、由女の方が吃驚したように反応した。
「え……あ、悪司さん、前から、じゃっ……」
今まで何度も悪司と躰を重ねたことは合ったが、常に由女の背後からだ
った。前からの体位だと由女が絶頂した時に、彼女の放ったものが相手に
かかってしまう。それを由女は理解していた。
だが、悪司はにやっ、と笑って、
「バーカ、前から抱けねぇ相手を嫁さんにしたりしねーよ」
そういって、左手で由女の頭を少し乱暴に撫でた。
「悪司さん……」
「行くぜ」
ず、ずずっ……
由女の中に、悪司のペニスが埋まっていく。
「ふぁぁぁっ、は、ぁぁっ……っ!」
「く、きつっ……」
由女はまるで処女のように涙を滲ませながら哭き声を上げ、悪司は締め
付けに顔を歪ませる。ただでさえ常人より大きな悪司のモノを、常人より
小柄な由女の中に押し込んでいるのだから、当然とも言える。
ゆっくりとした挿入だったが、由女は激しく背を仰け反らせて哭き声を
上げる。由女のペニスが断続的にびくついた。
それでも、奥まで挿入を終えると、悪司は由女の上体を抱き締めて、三
度キスをする。
「んっ、んぅ…………ぷは、はぁ……はぁっ……」
喘ぎながらキスを交わし、唇が離れると、由女は熱く荒い息をした。
「くっ……」
ずずっ……
悪司がストロークを始める。
「ふぁぁっ……はぁっ……」
由女は悩ましげな表情で声を上げる。その声に悪司はより興奮を覚えて、
ストロークを少しずつ速くしていく。
「由女、お前……可愛い、ぞっ」
いいながら手を伸ばし、由女の慎ましやかな乳房を手で被って、こねく
り回すように揉みしだく。
「ひゃぁぁぁっ、ひぁぁっ……っ!」
由女は強過ぎる快感を与えられて、涙を零しながら良がる。
ストロークする悪司のペニスを、ぎちゅっ、ぎちゅっと由女の膣が締め
付けた。
「くぅぅっ、お、お前……あ、あんまり可愛いから、もう、出ちまう……
っ」
普段のこましぶりはどこかへ飛んでしまい、顔を歪ませながらストロー
クを激しくしていく。
「はぁぁぁっ、も、はぁっ、わ、たしっ、壊れ、あ、はぁぁっ……」
悲鳴に近い声を上げる由女。その膣内で、悪司のぺニスが射精感に膨張
する。
「くぅっ、で、出るっ」
どくっ、どくどくっ!
「ふぁぁぁっ、はぁぁっ、はぁ、ぁ、ぁぁっ……!!」
びゅくっ、びゅくっ、びゅるるっ……
由女もまた、激しく背を仰け反らせて絶頂しながら、互いの腹部に自ら
の精をまき散らしてしまう。
「くぅっ……」
ずるり、と由女の中から悪司のぺニスが引き抜かれる。
「ふぁぁっ……ぁぁ……っ」
由女は余韻にとろん……としながら、荒い息をしている。
悪司はタオルでまず自分の腹部から由女の精液を拭い、力なく横たわっ
ている由女の腹部も拭き取る。
「あ……悪司さん……」
はぁはぁ……と息を整えながら、由女は悪事を見上げる。
すると悪司はぎゅっと由女を抱き締めた。キスを交わしてから、囁くよ
うに言う。
「これからは、ずっと一緒にいろよ」
「はい……」
由女は肯定の返事をして、ぎゅっと抱きつきかえした。