私はたぶん本を捜した

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 ──私は本を捜していた

 食卓についた。
「ライカ姉ちゃん、おはよう」
「ライカ姉ちゃん、おはよう」
「・・・・」(しゅたっ!)
みんな揃っていた。
 「九郎ちゃんは」
「そこに」
空腹で気絶していた。今月に入って4度目だ。
ぐるるるると、空っぽのお腹が鳴っている。ぴくぴく、九郎ちゃんが震えている。
 私は九郎ちゃんを椅子に座らせから、皆で朝食を摂った──いつも通りの味がした。

 ──私は本を捜しに行かなければならない。
 「いってきます」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「・・・・」
子供達に挨拶を返して、私は教会を出た。

 ──私は本を捜しに行かなければならない。

 って、別に私は悪夢に縋って生きているわけではありませんよ、念の為。
 ただ、日頃から、全力で遊ぶ子供達の相手をしたり、
社会不適合者の生活を面倒みたり、アーカムシティの■■の■ー■ーとして、
既知外の相手をさせられたりで、ストレスが溜まっているんです。
 欲求不満なんです。女だって、男の人で言うところの
「ヌキたい」っていう衝動があるんです。
 でも、わたしは教会のシスター。神に仕える身。
 別に、基督教的倫理観なんて露程もないけど、
仕事柄、龍を背負った取引相手との秘密の逢瀬なんてものがあった事は無いし。

 だから──私は本を捜さなければならないのです。
 もしくはAVだったかも知れないし、ドラッグだったかも知れないし、
大人のおもちゃだったかもしれないのだけど、そうじゃなくて、
私が捜しているのは、あくまで「オカズ」なんです。
 それも、普通の「オカズ」ではなくて。とても特殊な趣味じゃないと、ダメ。
私は所謂、■■■■。「肉体が精神を凌駕する」って状態。
私の妄想で、肉体的快感を得る事は、困難を極める。個人の限界だ。
 もっと、新鮮なシチュエーションで。
 もっと、斬新なプレイを。
 もっと、過激な快楽を。
新しい世界に出会うことを願いながら……
──私は本を捜している。
フラフラと夢遊病者のように……
ニヤニヤと精神病者のように……



──私は本を捜さなければならない。

やってきたのは、アーカムシティ一の電気街。
大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代のアーカムシティの中でも
特に混迷極めし欲望の坩堝。
「ぴょん派」だの「てへ派」だのといった仮想者達の論争が、
乱闘に発展するのは、何処の国でも同じ。
そんな喧騒を十■■罪で切り分けながら街を歩くうち、
ふと、目の前に古書店があるのに気付いた。小さいけど、何か妖しい雰囲気を感じる。
ちょっと、覗いてみようかしら……

「これは、まぁ……」
中に入って、本棚に並ぶ本の数と、店内に充満する瘴気に声を失くす。
品揃えも凄いが、このヤバイ気配。
お嬢様がクラシックCDの後ろにヘビメタを隠すように、
聖書を並べた棚の後ろ、秘密のドアの向こうの部屋にある私のコレクション。
妖気はともかく、部屋に漂う瘴気ならば、噂に聞くミスカトニック大学の
秘密図書館に勝らずとも劣らないだろうと思っていたのに……
ココは、その私の誰にも言えない自慢を打ち砕くのに充分な空気を持っていた。
私は敗北を感じながらも、期待を抱く──ここなら見つかるかも知れない。

「何かお探しものでも?」
「えっ?え、ええ。そうな──」
突然、背中から声を掛けられて、振り向いた私は、
しかし、そこで一点、いや、正確には二点に目を奪われ、続く言葉を失う。

「魔」>「爆」

本日、二度目の敗北。

 「それで、どういった本をお探しかな?」
「ええ……ああ、私の捜しているのはちょっと特殊な代物で……」
「ふむ。たとえば……変態趣味のオカズ本、とかかな?」
「なっ……!?」
「ああ……いや、そんな顔しないでよ。別に大したことじゃあない。
 なんて言うかね、長いことレンタルビデオ──もとい、
 本屋をやっているとね。分かるのさ。求めるものが普通と違う客のことがね。
 特にね……今夜のオカズを求めている人間ってのは、これは特別だ。
 見ただけで分かってしまう。」
 店長は近くの棚から1つの箱を引き抜いた。ソレには『はじるす』と書かれている。
「──特殊なシチュエーション。人々に刺激を与える本。
 人々はそれを行使し、『奇蹟』を起こす。
 『S&M5906に処女をささげる少女』
 『エターナル・ヴァージン』
 『暴走ロボと後輩に襲われる女性教師』
 ……この『はじるす』もそうさ。そんなとんでもない力を秘めている本なんだ。」
「そこまで分かるんなら話が早いわ。店長さん、私にソレを売ってくださらない?」
 私が頼むと、店長は申し訳なさそうに顔を顰めた。
「ごめんね、それは無理だ」

 彼女は続ける。
「この店には、あなたが必要とするような嗜好の本を置いていないんだよ」
「置いてないって……あなた、その手に持っているのは何ですか?
 自分でそれは特殊な本だって説明してたじゃないですか」
「それはそうなんだけど、この本は他のお客さんの予約取置き分──じゃ無くて、
 あなたには合わないのさ。
 あなたは近い将来、必要とするはずだ!最高の力を持った本を……
 そう、『神』をも招喚できるような窮極の本を!」
「え……あ……えーと……」
 いけない……なんか盛り上がっています、この人。
こっちの話はまったく聞かずに、どんどん進めてしまってます。どうしましょう?
いつもは私の役なのに……
「あるんだよ。
 最高位の本の中に『神』をSSスレに招喚できるヤツがね。
 まあ、正しくは、神掛かった職人なんだけど。
 とにかくあなたが必要とするのは、きっとそういう本なんだと思うよ」
 もう何が何だかさっぱりだ判りません。
私は完全に店長のペースに飲み込まれてしまい、言葉も出さない。
「嗚呼、楽しみだ。楽しみだね。
 あなたが手に入れる魔導書はどんなのだろう?
 『アイ2』かな?『Theガッツ』かな?
 もしかしたら、それは、かの『永留守』だったりするかも知れないね──」

 結局、あのまま店長の勢いに流されてしまい、気付いたら店の外に出てしまっていた。
なんか、今日は負けっぱなし。
 入れ替わりに店内に入っていくメイド姿の女性をぼんやりと眺めた後、私は教会に帰った。

だけどその日の夜──

──私は遂に本を見付けた


──私はたぶん本を見付けた。

深遠。
深遠。
果て無い、限りない『電子』の海の中、
総ての情報が渦巻くその場所で。

総ての情報を積み重ねて無数の虚構を構築し、
無数の虚構から無限の真実を紡ぎ出すその場所で。

弱者の屍が風に揺れ、
強者の驕りが時に遷ろうその場所で。

私はたぶん本を見付けた。

※注意。
突然ですが、このあと、ヨグ=ソトースの門が開きます。
平行世界ではネタバレ検閲プログラムは作動しません。
ネタバレ回避の方、およびSANチェックに失敗した方はココで終了してください。

──九郎!大十字九郎だ!>>238でもなければ、正義のヒーローでもないぞ!
生も死も、聖なる>>238の思うがままに……
>>238を騙るつもりはないそうか。
ならば>>238。妾は>>238と契約する
さあ、踊ろうではないか。あの忌まわしき>>238が奏でる、狂った輪舞曲の調べに乗って
我輩の>>238最強伝説をしかと胸に刻み込み、冥土の土産とするが良いのである!
さあ……付き合ってもらうぞ、>>238
ならばこそ、>>238を信じて下さい
>>238は着実に、邪悪な位置に納まろうとしている
──そう。貴方にこそ相応しい>>238です。大十字九郎さん
>>238は動き出している。もう止められない。
きみは走り続けるしかない。いつか>>238の中心に立つ、その時まで
怖いよだけど、何もしなかったら>>238って分かっていて、
それでも何もしないで……やっぱり>>238になってしまう方が怖い!
危険なのである!!>>238に触れると怪我するぜ!!我輩が。
私はたぶん>>238を背負った……





そこに■が居るのを見て、私は泣いた。

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