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「青い空、白い雲!」
「うみだ!」
「ビーチだ!」
「常夏の楽園!」
「らくえんー!」
「泳ぐぞー!」

「……泳げないんじゃなかった?」

「…………」


白詰草話外伝  ― 熱い夏の日 ―
EPISODE OF THE CLOVERS anothre story "The Beach of Heaven"

※津名川さんちのクリスマス的ノリでどうぞ。

さて、海。綺麗な澄んだ海である。
そして、桐田製薬(つーか古痕)の面々が勢揃いである。
「たまにはこういうのもいいかもね」
津名川宗慈。
「そうね、久しぶりに羽を伸ばそうっと」
品藤聡美。
「せいぜい楽しむことね」
高宮エレン。
「エレンさんはどうするんですか?」
桐田篤子。
「透花ちゃーん、ビーチバレーしよー」
上代まり。
「ふむ……」
グラハム・ヘゼル。
「荷物運んでおきますよー」
その他研究者達(←酷い扱い)

そして、
「海ー」「うみー」「海……」
「……(眠い)」「……(おなかすいた)」
古痕の誇るエクストラ5人。

「って訳で、自由行動でーす」
いやに明るい品藤の声によって、場が解散となった。
社員旅行の海外旅行。粋なイベントである。
「よーし、篤子、行くわよ」
「エレンさん、行くってどこですか?」
「ほら、いいから付いて来る」
「は、はいー」
と、高宮エレンは早々に何処かに消える。
知佳・知登と桐田篤子を連れて。
「宗慈さーん、泳ごー」
エマが駆け寄り、エレンの方を見ていた津名川の袖を引っ張る。
「泳ごうって、エマ、泳げたか?」
「大丈夫(きっぱり)」
「さゆもおよぐー」
「あー、分かったから、着替えておいで」
『はーい』
三人はパタパタと部屋に戻る。
「相変わらずね」品藤がそっと声をかけてきた。
「まあね」頭をかきながら答える。
「それじゃあ私も着替えてこようかな」
品藤が去ると、もうその場には津名川しか残されていなかった。
「チームワークもあったものじゃないなぁ」
ぼやきつつ、着替えるために部屋に向かう津名川宗慈なのであった。

「泳ぐぞ!」「およぐー」
「……なるほどね」
エマの腰には、しっかりと浮き輪が装着されていた。
「ほら、準備体操しないと駄目だよ」
透花が暴走がちの二人を何とか操作している。
「塩水は飲まないようにするんだよ」
「はーい」
ばしゃばしゃばしゃ
威勢良く海に突っ込むエマ。
後を追う沙友……転んだ。
二人を見ながら後から進む透花……沙友に手を貸した。
「微笑ましいわね」
いつの間にか品藤が隣にいた。
「海は初めてだからね、はしゃいでるんだよ」
「すっかり『お父さん』なのね」
「ん、そうなのかもね」
と、後ろに殺気!
ビクッ!津名川の本能が告げる。「キケンダ、トビノケ!」
ばっ!
本能に従い飛びのく。
そこを、疾風が駆け抜けた。

「透花ちゃーん、ビーチバレーしよー」
上代だった、疾風の正体は。
「よく避けれたわね」
「僕もなぜだか分からないよ」
訳の分からん会話が成り立つ。
「透花ちゃーん、ぶはっ(鼻血)」
「か、上代さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、ちょっと興奮しただけ」
何やってんだか。苦笑しつつ品藤がハンカチを渡しに行く。
必然的に、津名川は皆から離れて一人 ―――
「何をしている、津名川宗慈」
そんな津名川にかかった声は。
「荒山……?どうしてここに」
「なに、休暇だ」
絶対嘘だ。誰もが思った。
しかしながら、荒山鳥人は水着姿である。
競泳用ではなく、普通のパンツルックだが。
「津名川宗慈、せっかくだ。お前の度胸を試させてもらおう!」
シャキーン!
荒山が取り出したものは、

「フリスビー?」
「そうだ」
なぜ?その場にいた誰もが疑問符を浮かべる。
「行くぞ!」
そんなことは意に介せず(見えていないのだろう)荒山は振りかぶる。
「俺の円盤を受けれるか!」
サイドスロー、円盤が荒山の手を離れる。
ぎゅん、ざすっ!
「くっ」
何とか受け止めた。
「さぁ、津名川宗慈、次は貴様の番だ」
くいっと手を向ける。「来い」のポーズ。
「無論、落としたほうが負けだぞ」
ルールはそれらしい。
「仕方が無いか。行くぞ!」
結局、津名川も乗り気である。

「宗慈さん、がんばれー」「せんせがんば」「無理しないで下さいね」
「透花ちゃーん、ビーチバレー」「それどころじゃないんでしょ」
ギャラリーの見守る中、二人の対決は始まった。

「がんばれー」「れー」
二時間。とりあえず二時間経過。
ギャラリーは二人になっている。エマと沙友だ。
透花は、仕方なく上代とビーチバレーをしている。
品藤と、そこの茂みで隠れ見てた荒山の部下と共に。
「上手いじゃない、お兄さん」「これでも学生のころはバレー部でして」
結構上手く打ち解けている。

さて、津名川VS荒山。
「どうした、もうそれで終わりか!」
津名川宗慈、満身創痍。立ってるのがやっと。
「くっ」
渾身の力を入れて投げる……砂に足を取られた。
へろへろ〜
力なくフリスビーが落下する、かのように見えた。
が、しかし。
「うおおおおおおおおおおおお!」
猛烈なチャージで荒山が滑り込み、見事にキャッチ。
『すごーい』ギャラリー(二人)から歓声が。
「貴様!姑息は手を使いおって!」
荒山さんブチ切れです。
「性根を叩き直してくれる!」
荒山の目に炎が灯るのを、エマは見た。

結局、開放されるのにはあれから更に三時間を要した。
「次に会うときは互角以上の戦いを期待する」
荒山が去り際に言った台詞だ。
部下さんは、「久しぶりに楽しかったです」だそうである。

「ふー、おもろかたー」「宗慈さん、がんばったねー」
「僕はもうふらふらだよ」
「透花ちゃん資質あるよ」「え、そ、そうですか?」
「うん、私も向いてると思うな」
がやがやとホテルに戻ってきた面々。
ロビーで高宮エレン一行ととばったり出くわす。
「高宮は何していたんだい?」
「 潜 水 」

時が止まった。

「あら、馬鹿にしないでよね。今日の夕食も捕ったんだから」
それは潜水というのか?
「篤子には、ちょっと早かったかもね……」
どうも気絶中らしい。知佳に背負われている。
「それじゃ、夕食の時にまたね」
エレン達は颯爽と消えていった。

「はぁ」
ベットに倒れこむ。部屋に戻ってきたのだ。
天井を見ながら、津名川はため息をついた。
どっと疲れた気がする。実際疲れているのだが。
「あと三日、この調子なのかな」
考えてみる。三秒でやめた。
「社員旅行も大変だよ」
すっと目を閉じようとした時、
「ご主人様、お食事だそうです」
透花がノックしてきた。
「今行くよ」
立ち上がる。ちょっとふらついた。
思わず苦笑し、
「まぁ、たまにはいいかな?」
誰にともなく呟いた。


EPISODE OF THE CLOVERS anothre story "The Beach of Heaven" ---END


「晩ごはんは何だい?」
「鯨、だそうです」
「くじらぁ!?」

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