シルフィたん

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「お父さんやお母さんが、簡単に死ぬわけないよ……」
シルフィの何気ない言葉が、俺には妙に引っ掛かった。
勿論、俺の軽い冗談に対する返事だということはわかっている。
だが、その時のシルフィの、何というか一種の怯えにも似た表情を、
三年もの間吟遊詩人としての経験を積み重ねた俺の目は、見逃さなかった。
「えっと……何の話だっけ」
そう言って微笑むシルフィは、
既に俺の知っている昔のままのシルフィに戻っていた。

その夜、長旅の疲れが溜まっていたにもかかわらず、
久し振りに故郷に戻ってきた興奮も手伝ってか、俺は中々眠りに就くことができずに
ベットの上からぼんやりと、月明かりに照らされた窓の外を眺めていた。
―――と、不意に、人影が庭を横切り、教会の中に入っていくのが見えた。
一人ではない。三人か四人か…、どちらにしろこんな時間に教会に何の用だろうか。
不審に思った俺は、部屋を出て教会の様子を見に行くことにした。

教会の前まで辿り着いた時、すでに扉は堅く閉ざされていた。
一見すれば、何事も無いかのようにも思える。だが、その扉の向こうからは、
隠し切れない人の気配、とでも言うべきものが伝わってきた。
そして、さすがに安普請だけはある。軽く耳を当てただけで、
中の声が微かながら聞こえてきた。
「……ぅ……ゃ…ぅ……ぁぁ……」
??
もしかして病人でも担ぎこまれたのだろうか、それはどう聞いても呻き声だった。
だが、次に聞こえた声で、俺のその想像がまったく見当違いであることに気付いた。
「…ら、シルフィ……っと真剣になめろや…」
!!!


そんなばかなっ!
あのシルフィが……焦る気持ちを抑えながら、俺は中にいる人間に気付かれぬよう
そっと教会の中へとすべりこんだ。
小さな教会の一番奥にある、いつもはシルフィが説法をしている祭壇の向こう側に
その人影はあった。
そこには、思ったとおり四人の、おそらく町の商人とおぼしき男達がいた。
そして、その男達に囲まれるようにして跪く一人の少女―――シルフィがいた。
目の前に繰り広げられている光景は、俺の予想の範疇を、大きく越えていた。
シルフィは、両手をきつく皮紐らしきもので縛られ、
目もやはり皮紐らしきもので覆われていた。
それを見た俺は、いったい如何なる事態であるかが、わかってしまった。
これは―――――売春だ、と。
各地を放浪している頃、同じような光景を何度も見てきた。
高貴であるのか、または顔見知りであるのかなどで、身分を知られたくない者が
金で買った女の自由と視界を奪い存分に凌辱するのだ。
たとえばこれが、売春などではなく純粋に強姦だとすれば、視界を奪う必要などない。
ことが済んだあとで、殺してしまえばいいのだから……。
むしろその方が俺にとっては救いがあったかも知れない。
今すぐ飛び出して、男達を皆殺しにすればいいだけのことだ。だが、これは違う。
突きつけられた現実が、俺の身体を金縛りのように動けなくしていた。
その間にも、男達は代わる代わるシルフィの、まだ幼さの残る肉体を堪能していた。
一人は、俺が入ってきたときには既に、シルフィの薄い腰を抱えて
背後から叩きつけるように貫いていた。
まだ硬いであろう肉壁を無慈悲に押し広げられ、醜悪な肉棒で膣の奥深くを
掻き回される度に、シルフィは、その可愛らしい顔を歪ませ、
押し殺すような呻き声を漏らし続けていた。

「んぐ……っ、ぐっ、ぅう…っ、うっ、うっっ…」
「おいおい、シルフィちゃんよぉ、いくら気持ちいいからって、
俺のものに歯でも立てたら、承知しないからな…」
一人がシルフィを後ろから責め立てている間にも、もう一人の男は
腰を抱え上げられ四つん這いになったシルフィの前に立っていた。、
目隠しをされて暗闇の中にいるシルフィの頭を抑え、、
その小さな口の中に収めるには不釣合いな巨大にそそり立った肉棒を、
無理やりに捻じ込むようにして呻き声をあげる咽喉の奥まで突き挿していた。
「むぐ……っっっ…ぐ…っうっ……ぅぅ…かっ…うっ」
おそらくは初めてではないにしろ、まだ快感を得るには程遠いであろう女陰を
背後から欲望にまかせて打ちつけられ、同時に顎が外れるのではないかと思うほど
目一杯広げてもなお、入り切れないほどの肉の塊で唇を犯されて、
シルフィは息をするのも侭ならないのか、時折大きく身体を震わせた。
にも関わらず、男達は一切容赦する気配を見せないばかりか、
むしろ、シルフィが苦しむ様を見てさらに興奮が高まってるのか、、
さらに激しく、シルフィの小さな身体を前後から挟み込んで潰してしまおうとでも
しているのかと思えるほど、一突き一突きに力を込めて
シルフィの中に、自らの分身を叩き込んでいった。
俺はこの時、既に、目の前で行われている悪夢のような光景を、
機械的に瞼の奥に焼き付けておくことだけしか、できなくなっていた。
節くれ立った肉棒に抉られたシルフィの薄っぺらい花陰が、
男の動きにあわせて捲れあがったり、一緒に埋没したりするのが見えた。
咽喉の奥深くまで男の巨大なものが侵入する度に、シルフィののどが
不気味に膨れ上がるのが見えた……。
俺が教会の中へ潜り込んでから一体どれだけの時間が経ったのだろうか。
俺は、妹のシルフィが複数の男達によって思うがままに凌辱されるという、
信じ難い光景を見せつけられて、旅の間に身に付けた冷静な判断力も、
身の危険を察知する注意力も、完全に奪われてしまっていた。
だから、シルフィと男達との狂宴に気をとられている内に、自分の背後に
男達の仲間が忍び寄っていることに気付くのにも、遅れてしまった。
そもそも、男達が何人いたのかという、いざとなればシルフィを救い出すためには
大事なことさえも、この時には失念していた。
気付いたときには時既に遅かった。
振り向こうとした俺の首筋に、冷たくて鋭い、鉄の感触があった。
俺はこの時、敗北と自らの死を悟った。
何故なら、その突き付けられた切っ先には、寸分たりとも
ぶれや迷いが感じられなかったからだ。間違いなく相当な使い手だった。
そのような相手に注意を怠ってしまった俺が勝てるはずが無かった。
「―――――…………ふぅ」
死ぬのか。それならそれで構わない……そう思った。
少なくとも、今の、受け入れがたい現実からは逃れることが出来る。
三年間故郷を離れていたとはいえ、可愛い妹のことは、何処に居ても
決して忘れたりなどしてはいなかった。
だから、今回にしても何が書いてあったのか解からない手紙を受け取って、
心配になって戻ってきたのだ。それがまさか、こんなことになっていようとは。
色々な土地へ行って、色々な人と逢って、今まで知らなかった世界を知りたい。
それが俺を旅へと向かわせた大きな要因の一つだった。だというのに、
いざ旅を終えて帰ってきた故郷で、知らないほうが幸せなこと、を
突きつけられるとは、全くもって滑稽というべきだろう。
俺はふふっ…と自嘲気味に笑った後、背後にいる男に話しかけた。
「俺を殺すのは構わんが、一つお願いがある。
俺がここで見ていたことを、フィーには知らせないでやって欲しいんだ」
勝手気ままに放浪の旅をしてきた俺なんかが今更いなくなっても、
取り立てて心配する者などいないだろう。
それよりも、もしも今この教会で行われている陰惨な肉宴を兄である俺に
見られていた、なんてシルフィが知ったら、
恐らくその場で自らの命を絶ってしまうに違いなかった。
それならば、夜のうちに再び旅立ってしまったことにしたほうがいい。
だが、男の口から発せられた言葉は、またしても俺の予想を越えたものだった。
「何か勘違いしてるんじゃないか?クリフ。お前さんを殺すつもりなんざ無いよ」
この声は―――――師匠!!!?
「おっと、クリフ。大声は出すなよ?シルフィに気付かれたくは無いだろう?」
俺は、思わず叫びそうになるのを寸でのところで抑えて、小さく頷いた。
「しかし…何故師匠がここに……!それに、あれは…シルフィはいったい…」
俺の問いかけに師匠は、かつて剣を教えていた頃を彷彿とさせるような、
厳しい口調で切り返してきた。
「俺に聞かなければわからんのか?」
やはり師匠はお見通しということらしい。そう。わかっていた。
師匠が男達と一緒にいたことを知った時点で、事態の殆どがわかってしまった。
ただ、それを認めるのが恐かったのだ……。
あの売春行為はシルフィの意思、客と辺りをつけるのは師匠の仕事、ということだ。
それならば全て辻褄が合う。

「んんっ…んっ…ふっ……ぐっ…ぐ……んぐ…っうううっ…!!」
師匠と俺が問答している間も、シルフィの苦悶の声は止むことがなかった。
相変わらず男達のシルフィに対する責めは厳しかった。
今まで近くで傍観していたもう一人の男も、
シルフィの身体を蹂躙する輪に加わっていた。
その男の片方の腕が、肉棒が激しく出入りして既に赤く鬱血していると思われる
シルフィの、おんなのこの部分あたりをまさぐっていた。
「くひ……っ」
ふいにシルフィが奇妙な叫び声をあげた。            
……困ったことっていえば寄付金が集まらないことかなぁ)
シルフィは昼間、そう言って笑っていた。
貧富の差が著しい城下街の、その貧しいほうに属する地区に建てられた教会。
『困った人達を助けるため』という理念は立派だが、その結果がこれだ。
それでもシルフィは、両親が布教のため旅立った後も一人で教会を守ってきた。
共働きの家の子供を預かり、勉強を教え、一緒に遊び、
貧民街を巡回して、苦しくて救いを求める者がいれば施しをした。
ただでさえ維持するのが大変な教会を、シルフィが一人でどうにかできると
考えるほうがどうかしてるというものだ。
結果、教会を守るため、困っている人々を助けるために、
シルフィは自らの、まだ成長しきってもいない肉体を、
肉欲に塗れた成り金共に投げ出さなければいけなくなった、ということだ。
しかし、まだひとつだけ解せないことがあった。
それは、師匠が傍についていながら、こんなことになるまで放って置いたことだ。
俺の疑問を察したかのように、師匠が口を開いた。
「全て、シルフィが望んだことなんだ」
「フィーが……全て?」
「俺だってなぁ、シルフィのことは実の娘みたいに思っているんだ。
こんな女衒みたいなこと、嬉々としてやってるわけがないだろう……」
「だったら――――っ」
「三年間も放って置いたお前に、怒る資格があるのか?
あの子は、シルフィはな…………お前のことをずっと待っていたんだ」
「………………」
「両親が去ってからの一年間、あの子は、『お兄ちゃんが帰ってきてくれる』と
言って、俺やレイチェルの手助けを断りつづけてきたんだ」
「……フィー」

男の指が、シルフィの固く閉じられたもう一つの穴に侵入しようとしていた。
シルフィにとっては排泄器官でしかないであろう、細かな皺に包まれたその中心に
男は、中指を抉るようにして潜り込ませていった。       
「みっ…みゃぁぁ……ぁぁぁぁぁぁっ」
おそらく『いやだあ』と叫んでいるのだろう。
男のものを咥えさせられつづけているシルフィの口からは、もはや
まともに聞き取れる言葉を発せられることがなかった。
今もなお目隠しをされたままの為、表情さえも窺い知ることができない。
まさに男達の欲望のままに操られる少女人形、とでもいうべき物になっていた。
「くひゃ……っ、あぅ…、は…っ、にゃ……ぅぅ、ぅっ…うくっ」
口を咽喉の奥まで貫かれ、膣は隙間もないほど根元まで嵌めこまれ、
さらには尻の穴にまで指で蹂躙されて、シルフィの呻き声も、
いったいどの責めに反応しているのか、わからない状態になっていった。
口を閉じることも出来ずに垂れ流されるシルフィの唾液が、
唇からのどを伝って、まだ膨らみ始めたばかりのような、小振りな乳房に届いた時、
シルフィの尻の穴を弄んでいた男が、もう片方の手で、そのシルフィの乳首を
力一杯握り潰すように捻った。
「が…………っっっっっ!!あああぁぁぁ……っつつ」
成長途上の乳房は、女の子にとっては性器そのものよりも敏感な場合もある。
「おおっ…このこりこり感が堪らん…!!」
「おいおい、壊しちまっては元も子もないんだ、少しは手加減してやれよ」
「へへっ、そりゃあお前のほうだろ。さっきから息が出来なくなってるぞ、この娘」
男達の口から発せられる言葉に我慢の限界を感じた俺は、一歩踏み出そうとしたが、
再び、師匠の言葉に立ち止まらなければならなくなった。
「あれも、シルフィが望んだことの一つなんだ」
「しかし……っ」
「今日で、最後にするつもりなんだよ」
「それとこれと、どう関係が……」
「シルフィは、目的はどうあれ、寄付をしてくれたことに心から感謝していたんだ。
だから、お前が帰ってきたのを機にこのような行為を辞めるかわりに、
今までの感謝の意味を込めて、一番の上客だった連中に、
『一晩中何をしても構いません』と言ったんだよ。
おそらく…それがシルフィなりのけじめのつけ方でもあったんだろうな」
「あの子の為を思うなら、これ以上は見ないでやってくれ、クリフ」
師匠に促され、俺は覚束ない足取りで部屋に戻ってきた。
「そして、これからはシルフィの為に、一緒に教会を盛りあげてやることだ」
言われるまでも無かった。
正直に言って、今回もちょっと立ち寄ったら、また旅に出るつもりだった。
だが、もしもまた俺がいなくなったら、シルフィはどうなる!!!
考えるまでもないことだった。

シルフィはその晩、明け方近くまで宿舎には戻ってこなかった……。

    ―――――――
次の日から、教会にはいつも通り神官として人々に奉仕するシルフィと、
妹を助けながらせっせと屋根の修理に勤しむクリフの姿があった。
「お兄ちゃん、休憩しようよぅ。急に無理すると身体壊しちゃうよ?」
「おう、フィーお前も無理しないで、困った事があったら俺に言うんだぞ」
「うんっ」
「おやおや、すっかりいい兄貴になっちまって。よかったな、シルフィ」
「おじさん、はい。……ご迷惑をかけちゃいました」
シルフィは、近づいて話しかけたりんご亭の親父に、何故か小声で返した。
「しかし……上手くいったとは言え、本当にあれでよかったのかい?」
「しーーっ、……はい、手伝ってくれた方々にも、感謝してると伝えて下さい」
「しかし、シルフィも思い切った手に出たものだな、確かに、あれほどのものを
見せられて、のほほんとしていられる奴はいないだろうが、身体は大丈夫かね」
「うぅ…言わないでくださいよぅ……恥ずかしいょ」
「まあ、おかげでシルフィの望み通り、クリフが居着いたんだから
身体を張った演技をした甲斐があった、ということなんだろうな」
「演技じゃないですよぅ…死ぬほど辛かったし、死ぬほど恥ずかしかったんだから」
りんごの木の下で交わされているひそひそ話は、屋根の上までは届かなかった。
屋根の上では、クリフが黙々と作業を続けていた…。   
                            おわり。
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