宮代花梨。

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「あ…っ」
いきなりだった。
クラスメイトの男子に肩口を掴まれ壁に叩きつけられた花梨は、
その拍子に後頭部を打ちつけてしまった。
一瞬何が起きたのか花梨にはわからなかった。が、軽く頭を振って前を向いたとき、
迫ってくる男子の顔面によって状況を把握した。
(キスされる……!?)
花梨は、反射的に顔を背けて逃れようとした。
しかし、相手はそれを許してはくれなかった。
ストレートパーマで綺麗に伸びた花梨の髪を、乱暴に掴んで正面を向かせると、
そのぷっくりした唇に、自分の唇を重ねていった。
「ん……っ!!……んんんっ」
あまりの出来事にパニックをおこしそうになりながらも、
両手をばたつかせて、なんとかその場から逃れようと試みる花梨だったが、
唇と同時に、身体全体を壁に押し付けられた為に、
そこには逃げるために必要な隙間など残ってはいなかった。
同年代の女の子の中ではやや大柄で、言動も若干男勝りなところがあるとはいえ、
この状況下において、宮代花梨は、紛れもなくか弱い女の子でしか無かった。
「や……うっ、う……んんっ!」
逃げることはおろか、顔を背けることすら許されない状態では、
ただ瞼をぎゅっと閉じ、せめてもの抵抗の証として、
塞がれた唇から断続的に、小さい呻き声をあげることが精一杯だった。
(やだ…っ、誰か、助けて……!)
心の中でいくら叫んでみても、すでに日も暮れかけた校内には人影もまばらで
花梨の発する小さな呻き声に気付く者など、いるはずもなかった。



その日の放課後、花梨はクラスメイトの男子に呼び出されて校舎の裏側に来ていた。
「宮代…部活が終わってからでいいんだけど、その……ちょっと、来てくれないか?」
その男子に言われたのはそれだけだった。
しかし、少し口篭もるようなもじもじした態度から、
きっと告白に違いない、と花梨は確信していた。
もちろんそれが彼女の読みどおりに告白だったとしても、受けるつもりなどなかった。
が、その場で呼び出しを拒絶しない程度に嬉しかったのも事実だった。
それはそうだ。花梨といえど女の子である。
例えそれが気にもとめていない男子からのものであっても、
告白されて嬉しくない筈がなかった。
だから、部活が終わって庄一が一緒に帰ろうと声を掛けて来たとき、
「あー…用事あるんだ。先に帰っててよ」
と軽くやり過ごしながら、花梨の心は、ほんのちょっとだけれどうきうきしていた。

「えーと…、何?」
花梨はぶっきらぼうに言った。
制服に着替えて、呼び出された場所へ花梨が到着したときには、
当然ながら呼び出した男子もすでに来ていた。
しかし、いざその場に到着してみると、告白どころか恋愛沙汰そのものに縁のなかった花梨は、
もしも本当に彼の用件が告白だったとしたら、どう対処すればいいのかということを、
まるで考えていなかったことに今更ながら気付いてしまった。
するとそのとたんに、先程までのうきうき気分とはうって変わって、今の状況が、
凄く面倒臭いことのように思えてきてしまったのだ。
早く用件だけ済ませて帰りたい、それがその時の彼女の本音だった。
何度も言うようだが花梨は恋愛に疎かった。
だから、告白しようと意気込んでいる若い男の危うい心のバランスなど、
知る由もなかった。


長い、実に長いキスだった。
まるで花梨の柔らかい唇を、時には貪り尽くすかのように激しく乱暴に、
かと思うと、その感触を楽しんでいるかのように優しく丹念に。
ただ、決して彼女の唇から自分の唇を離すことは無く、延々と吸いつき続け、
舐めまわし、唾液を嚥下し、舌を挿入していた。
ようやくキスという名の暴力から花梨が解放されたときには、
暮れかかっていた陽は完全に落ち、あたりには夜の帳が訪れようとしていた。
そのあまりにも長すぎるキスによって、すでに花梨の唇は感覚を失っていた。
そして、唇の感覚と一緒に、抵抗する気力をも失っていた。
放心していた、と言ったほうが正確だろう。
「ふ…ぁ」
男が身体を離して花梨への束縛を解いたと同時に、
文字通り腰が抜けたかのようにずるずると、その場にへたり込んでしまった。
その様子を、彼女のクラスメイトでもある男子生徒は満足げに見下ろしていた。
そう。たしかに満足したのだろう。
そのとき彼の頭の中には「あの宮代花梨とキスをした」という思いが溢れかえっていた。
スラリとした長身でありながら女の子らしい柔らかさを併せ持った身体。
くせが強いけれど艶のある髪の毛。
大きくて潤んだ、まるで仔犬のような人懐っこさを感じさせる瞳。
本人にはあまりその自覚は無いのだろうが、花梨は校内でも指折りの美少女に他ならなかった。
それならば何故に、今までアプローチをかける男子がいなかったのかと言えば、
彼女の幼馴染である瀬能透矢の存在があったからだった。
頭が良くスポーツも万能、性格も穏やかで人望が厚い。おまけに容姿端麗。
そんな男が近くにいたのでは腰が引けてしまうのも仕方が無かった。
だが、今は違う。状況が変わった。
その瀬能透矢が交通事故の後遺症で記憶を失ってしまったことにより、
今までのような手も足も出ない怪物、という存在ではなくなったのだ。
そして、それは同時に、今までは憧れでしかなかった宮代花梨をも、
手の届く存在として感じさせることとなったわけである。




「宮代、騒いだりするなよ……」
暫く放心状態だった花梨は、男の声でようやく我に返りつつあった。
(こんな所で何してるんだっけ)
(あれ……暗くなっちゃった)
(助けて透矢……助けて)
(苦しい……息が出来ないよ……どうしてこんなことに)
(帰りたい)
だがしかし、著しく思考が混乱していた。
見えていても認識できない、そんな感じに心と身体の焦点が合っていなかった。
「あ……」
そして、声を出せる程度に回復してときには、再び花梨の自由は失われていた。
どこから持ってきたのか、あるいは最初からそのつもりで用意していたのか、
花梨の両腕は布のガムテープでぐるぐるに縛られてしまっていた。
さらに、首には犬用と思われる大きな首輪。
男はその首輪から伸びている鎖をつかんで笑っていた。
「前から一度やってみたいと思ってたんだ、これ……」
その言葉を聞いたとたん、激しい怒りのためか花梨の顔が紅潮してきた。
それもそのはず、花梨にとっては男の執ったその行動は最大級の侮辱だった。
今はまっすぐにしているとはいえ、もともと外に跳ねるくせっ毛のせいで、
友人から「犬っぽい」とか「犬花梨」とか言われ続けていたのだから。
それが仲の良い友人、透矢や庄一や和泉、または庄一の妹の鈴蘭ならば笑って聞けた。
だが、あろうことか無理矢理に唇を奪われたあげく首輪を着けられたのでは、
その相手を許せと言うほうが無理だ。
「ちょっとあん―――」
両手を縛られているのも顧みず、怒鳴ってやろうと立ち上がろうとしたその時、
花梨は、鈍い、しかし全身を貫くような衝撃を感じてうずくまってしまった。
「ひゃっ……う!!!」



「痛い?だったら……抵抗しないほうがいいよ、宮代。じゃないと……」
男はそう言うと、鎖の先に付いているボタンらしき物を押した。
「きゃあ……っ!」
花梨の身体がビクンッと大きく跳ねた。
「や……っ、な、何……あ、ああっ!!」
そして今度はまるで何かに操られているかのように、小刻みに揺れ動いた。
その様子を、にやにやしながら男は見つめていた。
「躾用の首輪を改良したんだ。すごいでしょ。そこいらのスタンガンよりも強力だからね」
「い、痛い……っ、やめ…て!」
花梨に取り付けられた首輪は、電気が流れるような仕掛けが施されていたのだった。
しかもそれは男が言ったように、本来の犬の躾に使うものとは比べ物にならないくらいに
強力な改造がなされていた。
「やめてあげるよ…僕だって別に、宮代を傷つけたいわけじゃないんだ。
ただし、抵抗したら……今度は最大出力でスイッチを入れるからね」
男が一瞬だけ、手元のつまみを回した。
「………っ!!!!!」
声にならない声で花梨は絶叫した。
これ以上は無理だというくらいに身体が反り返っていた。
そして再び、その場に崩れ落ちた……。

ぴちゃ、ぴちゃという濡れた音が、暗闇から生まれていた。
花梨は、その音を朦朧とした意識の中で聞いていた。
よもやそれが、自分自身の下半身から発せられているとは思ってもいなかった。
ただ何となくむず痒いような、そんな感覚だけはあった。



男は意識を失いぐったりとしている花梨の両膝を割って、その間に顔を埋めた。
憧れのクラスメイトの、女のコらしい甘さと部活後の汗の酸っぱさが混じった匂いを
胸一杯に吸い込んでくらくらとしながらも、抵抗がない今のうちとばかりに、
花梨の腰から、飾り気のない小さな布を取り去った。
「こ……これが宮代の……」
男は、準備万端に用意していたライトを当てて凝視した。
白くふっくらとした下腹に、薄桃色の花びらが息づいていた。
意外にも花弁を守るべき若草はほとんど生えてなく、それが逆に淫靡さを醸し出していた。
「まさか、剃ってるわけじゃないよな……」
おそるおそる指を伸ばして男は丘の部分を指の腹でなぞってみたが、
そこには剃り跡特有のザラツキはなかった。
「はぅ…」
意識が定かでないとはいえ、敏感なところを撫でられて花梨が
小さい溜め息のような声をあげた。
起きてしまったのかと思い、動きを止めて男が様子を窺ったが、どうやら反射的な
ものらしいと確信すると、男の興味はいよいよ本格的に花梨の処女のワレメへと移っていった。
縦スジから恥ずかしげに顔をのぞかせている花びらに指をあて、ゆっくりと左右に開く。
肌の白さも相まって、そこに現われたピンクの粘膜はこの上無く生々しかった。
「うわ……」
男は思わず感嘆とも驚愕ともとれる声をあげた。
いかにも女性らしい体つきと比べると、さほど発達していない小陰唇の上部で
包皮に包まれている小さな突起に、親指を押し当てた。
「く…ぅ……ぅん」
再び花梨の口から声が漏れたが、男は今度は構わず女性器を弄び続けた。
こりこりとクリトリスをいじったかと思うと、おもむろに舌を伸ばしていった。



厳密に言えば、完全に意識を失っているわけではなかった。
夢うつつ、とでも言おうか。
今、自分におきていることが一体なんなのか、夢なのか現実なのか花梨にはわからなかった。
ただ、身体の奥が痺れてくるようなそんな感覚に身を委ねていた。
「ふ……ぅ」
自らの唇から漏れる吐息も、それが自分から生まれているものだということさえ
認識できずにいた。

典型的な元気系スポーツ少女の花梨だが、同時に年頃の女の子でもある。
オナニーの経験が皆無、というわけではなかった。
実家が神社で、花梨自身も巫女ということもあり、周囲からは性的なこととは
無縁と思われがちだが、むしろその抑圧もあったのかもしれない。
部屋が離れにある開放感も手伝ってか、まだ家族が寝静まっていないであろう時間から、
下着の中に指を差し入れて湿り気をもった秘所を刺激してしまうこともあった。
そんな時花梨の脳裏にあるのはいつも、幼馴染の透矢である。
彼に囁かれ、撫でられ、愛される自分の姿を想像しては、
毎夜のように自らを慰めてしまうのだった。
だから、今、愛情のかけらも感じていないクラスメイトに性器を弄ばれていても、
白い靄の掛かったような世界に包まれている花梨の意識は、
そのいつもの、自慰行為の延長線上にあった。
むしろ、与えられる刺激が自分の指ではない分、
花梨はいつも以上の快楽を感じていたかもしれない。
「ん……んっ」
花梨の桃色の肉壁には、彼女の意志とは関係なく今やこぼれださんばかりの蜜が、溢れていた。


膣口から溢れ出す少し粘り気のある液を目の当たりにして、男は生唾を飲んだ。
「宮代花梨が俺の愛撫に感じている」
そう思ったのだ。
ならば、さらに快感を導き出してやろうと、押し当てていた舌の先を尖らせて
粘膜の奥へと突入させようとするのだった。
「うあっ……うぅ」
いかに自慰行為の経験があるといっても、処女には違いない花梨のそこは
男が思っているよりも狭く、異物の侵入を頑なに拒んだ。
しかし、花梨のほのかに酸味の混じった愛液と、
初めて目の当たりにした女性器そのものにすっかり心を奪われている男には、
そんなことを考慮する余裕など無かった。
ぐにゅ、ぐにゅっと音が聞こえてきそうなほど、
自分の舌を無理矢理にでも挿入しようと必死になっていた。
昨日までは声を掛けることすらできなかった憧れの女の子が、
自分の愛撫で蜜を垂らしている。
そう勘違いしている彼は、今では立場が逆転して
自分のほうが花梨よりも優位に立っていると錯覚していた。
だから、快感を与えようとしていた気持ちは何処へやら、
舌を入れようとしている自分を拒絶されたことがゆるせなかった。
また同時に、狭い膣口を自分の部位で抉じ開けるという行為自体が、彼を極度に興奮させていた。

男は、両側に指を添えて花梨の薄い陰唇を拡げるようにしながら、
さらに奥深くへと硬く尖らせた舌を捻じ込んだ。
「ひ……ああっ!」
それまでのむず痒さとは違う痛みを感じて、
花梨の意識がようやく現実のほうに引き戻されようとしていた。




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