這い寄れ混沌

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 嗤い声が聴こえる、
 くすくす、くすくす、と。
 俺は、
 俺は、
 俺は、
 俺は――
 ――俺は本を捜していた。


 @ 絶望すらも朽ち果てた
 A 俺はこの悪夢にすがって生きる
 B 俺はナイアさん(魔乳・えっち。しかも妹)と幸せになる
 C 俺はシスターでプリンセスな生活を送る。イエー。


 ……さ、三番かな?
 いや、しかし四番ならそれに加えて『ごしっく』で『ろりー』な少女も楽しめるしな……。
 
 よし決めた。四番だ。
 そして毎朝「お兄ちゃんのえっちぃ☆」だの「おにいちゃん、お・は・よ・う(はぁと)」だのと言って貰う。
 そうさ、お兄ちゃんはエッチなのさーとかいいながらルパンダイブ。ナイアさんとあのロリ少女で遅刻しちゃうのさ。
 OK。この路線で行こう。
 本なんて捜さなくてもいいや。
 よっしゃ、そうと決まれば早寝早起き。明日のためにもう寝ちまおうっ!
 ああ、早く起こしにきてくれないかなマイシスターっ!




「起きるのだ、お兄ちゃん。朝であるぞ」
 妹が身体を揺さぶる。
 もう朝だった。
 原色で塗り潰された朝陽が、カーテンの隙間から射し込んでいた。
 棺桶のような目覚まし時計を確かめる。
 四つの針が完全無秩序に時を刻んでいた。
 ザクザクザクザク。
 でも、そんなことは気にしない。気にならない。
 俺を起こしにきた『妹』に比べれば。
「早くしないと、遅刻しちゃうのである。ま、それもまた運命かといえば否定するエレメントもナッシング?
 イッツ・ア・デスティニィィィィ!!」
 ギターの音が響き渡る。
 やかましくて、無視もできやしない。

「……なんで、よりにもよってオマエなんだよ、コンチクショーッッッ!!」

 飛び起きた。跳ね起きた。その勢いを殺さず、右足を軸にして廻し蹴リ。
 ほぼ奴の右耳の横からスタートした俺の左足は、抜群の遠心力を得て一回転。
 裂帛の気合を纏った渾身の一撃は、しかし風と服を斬るだけで、本来の破壊力を発揮することはなかった。



 ――チィッ! スウェーで避けたのか。
 意外とやるじゃないか。
 しかし、奴――ドクター・ウェスト――も完璧には躱しきれなかったようで、上着が少し破れている。
「お、お兄ちゃん……どうしたのであるか? はっ! ま、まさかお兄ちゃん、この我輩に欲情して……」
「してないっ! つうか、なんでお前がこんな所に出てくるんだこの(放送禁止用語)がッ!」
「あ、ああ……た、大変である。我輩、貞操クライシス!? ああ、でもこの貞操はお兄ちゃんに奉げる為なのであるし……ノゥプロブレム?」
「問題ありまくりだド変態」
「ああ、甘く愛しく時にすっぱく、ハートを抉る熱い一言。それだけで、ああそれだけで、我輩の心はこんなにもジューシィ……」
「いや、意味がわからん」

 とりあえず、パジャマが血まみれになるまで殴っておいた。

「いやぁん……お兄ちゃんったら、激しすぎるのである……」
 とどめに、首を人間の限界に挑戦するまで曲げた。

 カーテンを勢いよく開ければ、心地よい春の匂い。
 今日もいい天気だ。
 とりあえず、部屋に落ちている赤い何かはほっとこう。

 食卓についた。
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
 みんな揃っていた。
 頭が痛くなりそうなメンツが、みんな揃っていた。
 ちなみに、最初から順に。
 マスターテリオン、アウグストゥス、カリグラ、クラウディウス、ウェスパシアヌス、
 ティトゥス、ティベリウス、リューガ、ウィンフィールドさん、治安警察の二人、
 そして、いつのまに復活したのか、ドクター・ウェスト本人である。

 いくらなんでも、本当に十二人用意するとは思わなかった。
 しかも、ずらずら並べられても誰が誰がだかよくわからない。
 こんなことになるんだったら、最初の選択肢で謙虚にBを選ぶべきだった。



 て、選択肢に戻るって手段があったか。ほぼ確実に反則技だが。
 まあ、あの世界だってさんざんやり直したらしいし、これくらい許されるよな?
「どうしたのであるか、マイブラザー?」
「なんでもないさ」

 CTRL+B 選択肢に戻る 使用!
 ふっ、と意識が消え、最初の選択肢に――

 @ 絶望すらも朽ち果てた。兄貴たちの餌食になり、快楽を享受する。
 A 俺はこの悪夢にすがって生きる。兄貴たちの餌食になり、終わらない夜を過ごす。
 B 俺はタカさん(筋肉)と幸せになる。
 C 俺はマッシヴでイイオトコな生活を送る。ウホッ。

 ――戻れなかった。
 選択肢が変わっていた。
「なぜだぁぁぁぁ!!」





 ――それを見て、悦に入っている女性がひとり。
 こーいうイタズラにおいては、ナイアルラトホテプ、本領発揮。

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